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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.229 − 悔 (くいる) −
文月(ふみづき)、「夏はよる。月の頃はさらなり…」、時は移っても“夏の夜の月”は、今尚、“匂い”とともにこの季節の贈り物です。
日暮れ時、街を往き交う人々の姿が夕陽を浴び、セピア色に輝いています。いつかみた懐かしい光景です。
帰宅すると蝉が玄関で倒れていました。夏です。
梅雨の後半、ここ福島では、雨が作物に恵みを与えています。
通勤路、“花守”が手に掛けている紫陽花(アジサイ)は、天空に繋がるような藍の濃さです。“花泥棒”宜しく、密かに楽しませてもらっています。
記憶として残っている梅雨の情景、一時、人を思索に耽(ふけ)させる心象です。
夜もすがら何事をかを思ひつる
窓うつ雨の音を聞きつつ
和泉式部
雨音は、静けさを更に増し、裡(うち)なる声との対話を促します。
家屋から庇(ひさし)や軒先の縁側が消えてしまいました。一戸建ての家屋はビルに変わり、それとともに瓦(かわら)やトタン屋根が消えてしまいました。
心落ち着かせてくれる静かな雨音が遠ざかって長い時が経ちました。
近頃の梅雨、車軸を流すような降りが多くなり、昔とは違った形で静けさを際立たせます。
人の声とどかぬまでに雨降れば
あな林中のごとく謐(しず)けし
安永蕗子
人生は歌で追想できます。歌は、時空を越えての対話をも可能にしてくれます。あたかも人生という旅の思い出の記録のようです。今、時代や世代を越えて共有できる歌がどれだけあるのでしょうか…。
ソバの花やニッコウキスゲの写真が新聞に載っていました。
遥かな昔、勤務していた土地で、古老達から、ソバは米が栽培できなかった高冷地で作られていた、と聞きました。この花をみる度に“透明な寂しさ”を感じてしまいます。
(vol.37 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=61)
激変した環境、様々な制約のなかで、「復興」という掛け声の陰で、日々苦闘を強いられている人々に想いが及びます。
子供の頃、どうにもならない限界のなかで生きている悲しみの眼差し、躊躇(ためら)いがちな表情、口ごもる言葉、こういった人々が、確かに身近に居ました。
漠然とした不安と苛立ちを抱えての日々、どこかに行ってしまった人々の姿に愛(いと)しさを感じます。
原発事故の対応に忙殺される日々、人の気持ちも季節も変わっていきます。
「人の交わりにも季節あり」(南方熊楠)を思い出します。
「時間だけが過ぎてゆく」と嘆(なげ)きたくなる時、「われわれの享(う)ける生が短いのではなく、われわれ自身が生を短くしている」(セネカ)、この箴言(しんげん)が背筋(せすじ)を伸ばしてくれます。
荒(こう)を南野(なんや)の際に開かんと
拙(せつ)を守って園田に帰る
陶淵明(とうえんめい)
投げ出すのは良くありません。只、その位の覚悟が、今は必要です。
少し投げやりになっていた時、叱咤激励の手紙を恩師から戴きました。それが絶筆と知った時、悔いが残りました。
今週の花材は、執務室、秘書室ともに、夏木立を連想させます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
日暮れ時、街を往き交う人々の姿が夕陽を浴び、セピア色に輝いています。いつかみた懐かしい光景です。
帰宅すると蝉が玄関で倒れていました。夏です。
梅雨の後半、ここ福島では、雨が作物に恵みを与えています。
通勤路、“花守”が手に掛けている紫陽花(アジサイ)は、天空に繋がるような藍の濃さです。“花泥棒”宜しく、密かに楽しませてもらっています。
記憶として残っている梅雨の情景、一時、人を思索に耽(ふけ)させる心象です。
夜もすがら何事をかを思ひつる
窓うつ雨の音を聞きつつ
和泉式部
雨音は、静けさを更に増し、裡(うち)なる声との対話を促します。
家屋から庇(ひさし)や軒先の縁側が消えてしまいました。一戸建ての家屋はビルに変わり、それとともに瓦(かわら)やトタン屋根が消えてしまいました。
心落ち着かせてくれる静かな雨音が遠ざかって長い時が経ちました。
近頃の梅雨、車軸を流すような降りが多くなり、昔とは違った形で静けさを際立たせます。
人の声とどかぬまでに雨降れば
あな林中のごとく謐(しず)けし
安永蕗子
人生は歌で追想できます。歌は、時空を越えての対話をも可能にしてくれます。あたかも人生という旅の思い出の記録のようです。今、時代や世代を越えて共有できる歌がどれだけあるのでしょうか…。
ソバの花やニッコウキスゲの写真が新聞に載っていました。
遥かな昔、勤務していた土地で、古老達から、ソバは米が栽培できなかった高冷地で作られていた、と聞きました。この花をみる度に“透明な寂しさ”を感じてしまいます。
(vol.37 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=61)
激変した環境、様々な制約のなかで、「復興」という掛け声の陰で、日々苦闘を強いられている人々に想いが及びます。
子供の頃、どうにもならない限界のなかで生きている悲しみの眼差し、躊躇(ためら)いがちな表情、口ごもる言葉、こういった人々が、確かに身近に居ました。
漠然とした不安と苛立ちを抱えての日々、どこかに行ってしまった人々の姿に愛(いと)しさを感じます。
原発事故の対応に忙殺される日々、人の気持ちも季節も変わっていきます。
「人の交わりにも季節あり」(南方熊楠)を思い出します。
「時間だけが過ぎてゆく」と嘆(なげ)きたくなる時、「われわれの享(う)ける生が短いのではなく、われわれ自身が生を短くしている」(セネカ)、この箴言(しんげん)が背筋(せすじ)を伸ばしてくれます。
荒(こう)を南野(なんや)の際に開かんと
拙(せつ)を守って園田に帰る
陶淵明(とうえんめい)
投げ出すのは良くありません。只、その位の覚悟が、今は必要です。
少し投げやりになっていた時、叱咤激励の手紙を恩師から戴きました。それが絶筆と知った時、悔いが残りました。
今週の花材は、執務室、秘書室ともに、夏木立を連想させます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■木苺 バラ科/半落葉低木/原産:日本/ラズベリーやブ
ラックベリーなどの総称で木になる苺。春に苺に似た小さな白い
花が咲く。ヤツデのような切れ込みの深い葉型が特徴。
■アンスリュウム〔スパイス〕 サトイモ科/常緑多年草/光
沢があり造花と見間違うような花。花弁のように見える部分は苞
で、中心の棒状が花序。「スパイス」は赤に緑が入る覆色。
■カラー〔アギラ〕 サトイモ科/球根植物/《名前の由来》メ
ガホン状の苞がYシャツの襟に似ていることから/メガホン状の
花弁に見える部分は苞で、その中に花序がある。「アギラ」は濃
い黄色。
■ヒペリカム〔ピンキーフレア〕 オトギリソウ科/半常緑低木
/初夏に黄色い花が咲く。主に花後の実を鑑賞するものとして流
通。「ピンキーフレア」はピンク色。他に白〜赤、茶や緑の品種も
ある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2291.jpg
■木苺 バラ科/半落葉低木/原産:日本/ラズベリーやブ
ラックベリーなどの総称で木になる苺。春に苺に似た小さな白い
花が咲く。ヤツデのような切れ込みの深い葉型が特徴。
■アンスリュウム〔スパイス〕 サトイモ科/常緑多年草/光
沢があり造花と見間違うような花。花弁のように見える部分は苞
で、中心の棒状が花序。「スパイス」は赤に緑が入る覆色。
■カラー〔アギラ〕 サトイモ科/球根植物/《名前の由来》メ
ガホン状の苞がYシャツの襟に似ていることから/メガホン状の
花弁に見える部分は苞で、その中に花序がある。「アギラ」は濃
い黄色。
■ヒペリカム〔ピンキーフレア〕 オトギリソウ科/半常緑低木
/初夏に黄色い花が咲く。主に花後の実を鑑賞するものとして流
通。「ピンキーフレア」はピンク色。他に白〜赤、茶や緑の品種も
ある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2291.jpg
【秘書室】
■りんどう リンドウ科/多年草/《名前の由来》根が薬にな
り、竜の胆のように苦いことから「竜胆」/日本の秋を代表する花
で世界に約400種。“長寿の花”と言われ、敬老の日のギフトと
して人気。青色の他、ピンクや白、覆色もある。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン玉のように真ん丸
に咲く可愛い菊。菊の中でも特に長く楽しめる品種。今回は紫と
白の二色を使用。
■カーネーション〔ファリダ〕 ナデシコ科/多年草/母の日に
贈る花として古くから親しまれる。菊・バラと並び世界的にも生産
量の多い主要花。
■アンスリュウム〔バニラ〕 (理事長室と同花材)
「バニラ」はクリーム色。
■ドラセナ〔ニュードリーミー〕 リュウゼツラン科/日本で流通
する観葉植物の代表種。「ニュードリーミー」は緑の葉の縁に赤
が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2292.jpg
■りんどう リンドウ科/多年草/《名前の由来》根が薬にな
り、竜の胆のように苦いことから「竜胆」/日本の秋を代表する花
で世界に約400種。“長寿の花”と言われ、敬老の日のギフトと
して人気。青色の他、ピンクや白、覆色もある。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン玉のように真ん丸
に咲く可愛い菊。菊の中でも特に長く楽しめる品種。今回は紫と
白の二色を使用。
■カーネーション〔ファリダ〕 ナデシコ科/多年草/母の日に
贈る花として古くから親しまれる。菊・バラと並び世界的にも生産
量の多い主要花。
■アンスリュウム〔バニラ〕 (理事長室と同花材)
「バニラ」はクリーム色。
■ドラセナ〔ニュードリーミー〕 リュウゼツラン科/日本で流通
する観葉植物の代表種。「ニュードリーミー」は緑の葉の縁に赤
が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2292.jpg