HOME > 理事長室からの花だより
理事長室からの花だより
新着 30 件
理事長室からの花だより
vol.236 − 学 (まなぶ) −
通勤路、槐(エンジュ)の落花が散り敷かれ、群生している向日葵(ヒマワリ)は地上に垂れています。
道路の法面(のりめん)に咲く鉄砲百合も少し萎れ、庭先の朝顔も小さくなり、芙蓉(フヨウ)も盛りを過ぎました。
構内には蜻蛉(トンボ)が群れ飛んでいます。いよいよ秋です。
若い時に入った喫茶店の再訪を切っ掛けに(vol.230)、久し振りにいくつか“珈琲(コーヒー)店”を訪れてみました。“追憶への小さな旅”です。
(vol.230 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=267)
“時”が磨いた店内の風合いに、若かった頃に味わった喜び、ほろ苦さ、後悔など、当時の感情までもが蘇りました。
(vol.230 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=267)
煙草は吸いませんが、学生時代、店のマッチ箱や灰皿を蒐集(しゅうしゅう)していたことを懐かしく思い出しました。今、それらは、度重なる引越で失われてしまい、跡形もありません。
浮き世(憂き世)では、月日が経てば周りの人も、一人一人の内面も変わってしまいます。戻れない過ぎ去った日々、再び手にすることは出来ないと知りながら、戻ることを渇望(かつぼう)している自分がいます。
人間とは、「記憶」を有するだけに、“切ない生き物”です。
“過去の確認”で手にできるのは残響だけです。
老舗の何軒かで出会ったのは、時は過ぎ去り、切望しても同じものは二度と得られないという“愛惜(あいせき)”でした。
店によっては、歳月の積み重ねは、気品を古色に、伝統を頑迷(がんめい)に変質させていました。
学ぶところもありました。それは、「伝統」とか「スタンダード」の有り様です。
引き継ぐ人々が、移ろい行く時間や世情に合わせて、日々自らを変えていくことで初めて、伝統やスタンダードであり続けてゆくことができます。新たな何かを加えないと、伝統は固陋(ころう)と化してしまい、スタンダードとしての地位は保てません。
確かな何かを受け継ぐ人々は、先ず、それを創り出した人達の努力を我が身のことと受け止める必要があります。そして、似たような道を辿らなければ、そこに宿っている精神とか想いとかを、時を越えて充分に継承は出来ないのではないでしょうか。
それだけに、伝統を受け継ぎ、現在もスタンダードとして存在し続けている店舗は、“見事”です。
そこには、次代を担っている主(あるじ)や若い店員さん達に動きや笑顔、そして良い居心地がありました。
そんな事を思いながら、コーヒーを味わいました。
久し振りに再会した大倉集古館の普賢菩薩騎象像(ふげんぼさつきしょうぞう)、学生時代、寺社や庭園巡りで出会った岩船寺のそれと好一対です。
当時、岩船寺と浄瑠璃寺(vol.14)の間の磨崖仏の道(vol.25)を度々(たびたび)逍遙(しょうよう)しました。
(vol.14 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=29)
(vol.25 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=42)
時が置き忘れていったような岩船寺の三重の塔、今、どうなっているのでしょうか。あれから40年以上が経ちました。その後訪れることは絶えてなく、歳月だけが過ぎてしまいました。
歳月の移ろいとともに、心に潤いや膨らみがなくなってきました。裡なる何かが萎(しお)れていってしまうのは、“小さな関心の喪失”の積み重ねの結果なのでしょう。
9月9日(1947)、建築家オルタの命日です。
彼は、「玄関を正面に置く」という、今は誰も当たり前と思って気にもしない様式を最初に提案しました。“創る”ことの偉大さと素晴らしさを今に伝えています。
今週の花材は、執務室は深まりゆく秋を、秘書室は白磁の肌合いと相俟(あいま)って、秋の穏やかさを感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
道路の法面(のりめん)に咲く鉄砲百合も少し萎れ、庭先の朝顔も小さくなり、芙蓉(フヨウ)も盛りを過ぎました。
構内には蜻蛉(トンボ)が群れ飛んでいます。いよいよ秋です。
若い時に入った喫茶店の再訪を切っ掛けに(vol.230)、久し振りにいくつか“珈琲(コーヒー)店”を訪れてみました。“追憶への小さな旅”です。
(vol.230 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=267)
“時”が磨いた店内の風合いに、若かった頃に味わった喜び、ほろ苦さ、後悔など、当時の感情までもが蘇りました。
(vol.230 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=267)
煙草は吸いませんが、学生時代、店のマッチ箱や灰皿を蒐集(しゅうしゅう)していたことを懐かしく思い出しました。今、それらは、度重なる引越で失われてしまい、跡形もありません。
浮き世(憂き世)では、月日が経てば周りの人も、一人一人の内面も変わってしまいます。戻れない過ぎ去った日々、再び手にすることは出来ないと知りながら、戻ることを渇望(かつぼう)している自分がいます。
人間とは、「記憶」を有するだけに、“切ない生き物”です。
“過去の確認”で手にできるのは残響だけです。
老舗の何軒かで出会ったのは、時は過ぎ去り、切望しても同じものは二度と得られないという“愛惜(あいせき)”でした。
店によっては、歳月の積み重ねは、気品を古色に、伝統を頑迷(がんめい)に変質させていました。
学ぶところもありました。それは、「伝統」とか「スタンダード」の有り様です。
引き継ぐ人々が、移ろい行く時間や世情に合わせて、日々自らを変えていくことで初めて、伝統やスタンダードであり続けてゆくことができます。新たな何かを加えないと、伝統は固陋(ころう)と化してしまい、スタンダードとしての地位は保てません。
確かな何かを受け継ぐ人々は、先ず、それを創り出した人達の努力を我が身のことと受け止める必要があります。そして、似たような道を辿らなければ、そこに宿っている精神とか想いとかを、時を越えて充分に継承は出来ないのではないでしょうか。
それだけに、伝統を受け継ぎ、現在もスタンダードとして存在し続けている店舗は、“見事”です。
そこには、次代を担っている主(あるじ)や若い店員さん達に動きや笑顔、そして良い居心地がありました。
そんな事を思いながら、コーヒーを味わいました。
久し振りに再会した大倉集古館の普賢菩薩騎象像(ふげんぼさつきしょうぞう)、学生時代、寺社や庭園巡りで出会った岩船寺のそれと好一対です。
当時、岩船寺と浄瑠璃寺(vol.14)の間の磨崖仏の道(vol.25)を度々(たびたび)逍遙(しょうよう)しました。
(vol.14 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=29)
(vol.25 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=42)
時が置き忘れていったような岩船寺の三重の塔、今、どうなっているのでしょうか。あれから40年以上が経ちました。その後訪れることは絶えてなく、歳月だけが過ぎてしまいました。
歳月の移ろいとともに、心に潤いや膨らみがなくなってきました。裡なる何かが萎(しお)れていってしまうのは、“小さな関心の喪失”の積み重ねの結果なのでしょう。
9月9日(1947)、建築家オルタの命日です。
彼は、「玄関を正面に置く」という、今は誰も当たり前と思って気にもしない様式を最初に提案しました。“創る”ことの偉大さと素晴らしさを今に伝えています。
今週の花材は、執務室は深まりゆく秋を、秘書室は白磁の肌合いと相俟(あいま)って、秋の穏やかさを感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ハイビスカスローゼル〔カクテルレッド〕 アオイ科/非耐寒性常緑低木
/原産:西アフリカ/一般的なハイビスカスとは異なり、ガクが肥大する食用
種。ハイビスカスティーの原料で、ジャムやソース、サラダなどに使用。花期
は秋で、花後に赤暗色の実をつける。
■モカラ〔ライラックブルー〕 ラン科/原産:東南アジア/バンダ・アラク
ニス・アスコケントルムの3種の蘭を交配した人工種。南国の花で暑さに強
く、花持ちも良い。「ライラックブルー」は綺麗な紫色。
■ボンベイケイトウ ヒユ科/一年草/原産:アフリカ・アジア/《名前の
由来》花序が鶏の鶏冠に似ていることから“鶏頭”/花期は6〜9月で、赤や
ピンク、オレンジ等の花穂をつける。「ボンベイ」は花穂が扇型になる品種。オ
レンジ・グリーン・パープルの3色を使用。
■キソケイ モクセイ科/常緑低木/原産:ヒマラヤ/《名前の由来》ソケ
イに似た黄色い花を咲かせることから/樹高は1〜2mでよく枝分かれし、5
〜7月頃に2cm程の黄色い花が咲く。切り花では葉物として流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2361.jpg
■ハイビスカスローゼル〔カクテルレッド〕 アオイ科/非耐寒性常緑低木
/原産:西アフリカ/一般的なハイビスカスとは異なり、ガクが肥大する食用
種。ハイビスカスティーの原料で、ジャムやソース、サラダなどに使用。花期
は秋で、花後に赤暗色の実をつける。
■モカラ〔ライラックブルー〕 ラン科/原産:東南アジア/バンダ・アラク
ニス・アスコケントルムの3種の蘭を交配した人工種。南国の花で暑さに強
く、花持ちも良い。「ライラックブルー」は綺麗な紫色。
■ボンベイケイトウ ヒユ科/一年草/原産:アフリカ・アジア/《名前の
由来》花序が鶏の鶏冠に似ていることから“鶏頭”/花期は6〜9月で、赤や
ピンク、オレンジ等の花穂をつける。「ボンベイ」は花穂が扇型になる品種。オ
レンジ・グリーン・パープルの3色を使用。
■キソケイ モクセイ科/常緑低木/原産:ヒマラヤ/《名前の由来》ソケ
イに似た黄色い花を咲かせることから/樹高は1〜2mでよく枝分かれし、5
〜7月頃に2cm程の黄色い花が咲く。切り花では葉物として流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2361.jpg
【秘書室】
■グリーンアナベル ユキノシタ科/落葉低木/
原産:アフリカ/小さな花が集まって開花し、20cm
程の手毬状になる。緑色の蕾が開花が進むにつれ
白色に変化。今回使用しているのは、満開に咲き切
り白色からグリーンに変化した状態。ドライフラワーに
も適し、リース等で人気。
■ソラナム〔ブラックパール〕 ナス科/一年草/
原産:アフリカ/ソラナムは“観賞用のナス”を意味
し、約1700種あるナス科ナス属の総称。一枝にプ
チトマトのような実をたくさん付ける。「ブラックパー
ル」は黒真珠のような光沢のある黒色の実がなる品
種。
■アンスリュウム サトイモ科/常緑多年草/原
産:中南米/光沢があり造花と見間違うような花。う
ちわのような花弁に見える部分は苞で、棒状の部分
が花。
ピンク-「ピンクパンサー」
クリーム-「バニラ」
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2362.jpg
■グリーンアナベル ユキノシタ科/落葉低木/
原産:アフリカ/小さな花が集まって開花し、20cm
程の手毬状になる。緑色の蕾が開花が進むにつれ
白色に変化。今回使用しているのは、満開に咲き切
り白色からグリーンに変化した状態。ドライフラワーに
も適し、リース等で人気。
■ソラナム〔ブラックパール〕 ナス科/一年草/
原産:アフリカ/ソラナムは“観賞用のナス”を意味
し、約1700種あるナス科ナス属の総称。一枝にプ
チトマトのような実をたくさん付ける。「ブラックパー
ル」は黒真珠のような光沢のある黒色の実がなる品
種。
■アンスリュウム サトイモ科/常緑多年草/原
産:中南米/光沢があり造花と見間違うような花。う
ちわのような花弁に見える部分は苞で、棒状の部分
が花。
ピンク-「ピンクパンサー」
クリーム-「バニラ」
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2362.jpg