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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.244 − 捧 (ささげる) −
信夫の里では、吾妻小富士に初冠雪、山茶花(サザンカ)も咲き出しました。
少しずつ、しかし確実に時は移ろっていきます。
構内の百合の木(ユリノキ)等の大樹などの葉が黄色に色付き、ローレンシャン高原(カナダ)の小型版をみるようです。落ち葉が地を舞い、それを片付ける箒(ほうき)の音が懐かしく、心の裡(うち)にまで響きます。
この時季、夕陽がもっとも輝き、人の心を打ちます。
晩(くれ)に向(むか)わんとして意(こころ)適(かな)わず
車を駆(か)って古原に登る
夕陽(せきよう) 無限に好(よ)し
只(た)だ是(こ)れ黄昏(こうこん)に近し
李商隠
黄昏の美しさが、人の心に漠然とした不安や寂寥感をもたらします。
時雨の中、安達太良山(あだたらやま、智恵子抄で知られています)を背に、幅広い虹が、低く信夫の里を跨いでいます。晩秋です。
晩秋の休日、徒歩で仕事での往復をしていると、道端の銀杏(イチョウ)の街路樹が、一見同じようですが、毎年、少しずつ、その姿形、彩りを変えているのが分かります。
と同時に、周囲の地形や建物の有り様も姿を変えてきていることにも気付きます。
何気ない日常的な風景もまた、一期一会であることを思い知らされます。
そんなことを考えながら人通りの少ない閑散とした道を歩いていると、落ち着いた、静謐(せいひつ)な街路の雰囲気のせいか“人生とは断念の積み重ね”を実感します。
前号に続き、タイタニック号の事故に拠(よ)って思いを馳せます。
(vol.243 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=280)
楽団員にみられた人間の高貴な振る舞いは、今という時代でも、洋の東西を問わず、見聞します。
(vol.141 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=174)
最近では、我が身を犠牲にして鉄路に居た老人を救った女性…。
他者の為に犠牲になれる(働ける)のは人間の偉大さです。そこまではできなくても、私のような凡夫でも、他人の愚痴に少しは耳を傾けることはできます。これも人間であることの証(あかし)の一つです。
他人の為に少しだけ働くこと、これこそが人間が人間である証です。
人間(ヒト)は誰でも矛盾に満ちた性格を持ち、それを何とか両立させて生きています。
一歩外に出れば厄介事の只中、折り合いを付けながら人生を歩んでいるのです。苦悩や揉め事の中に身を置き、それでも尚、律儀であろう、誇り高く生きようと、日々、仏になったり夜叉になったりして生きています。
しかも、そのどれもがその人の素顔です。人は一面性では語れません。
(vol.141 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=174)
(vol.217 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=254)
生きていると、絶えず心の葛藤が生じてきます。そこから生まれる物語は、行動や出来事という外面的な現象で構成されています。しかし、実は心の中での裡なる対話の結果です。
現代の慌ただしさは、これらの一つ一つの出来事(話)が、自らの、あるいは人々の伝説にする程の熟成時間を与えてくれません。
遣り切れない事件の数々、事故や事件後に警鐘を鳴らす人々、今や世間と仲間内との境界の見分けすらなくなり、混沌の世情です。だからこそ、世間は、人間の尊厳や涼やかな生き方が確かにあることを裏付けるような逸話を求めているのではないでしょうか。
人間は、観たいモノ、聞きたいコトを欲しがるというのは、一面の真実です。
殺伐とした今だからこそ、その対極にある物語を、多くの人々が欲しているような気がしてなりません。
今週の花材は、戸外の色彩とは対照的に、寒色系で涼やかと穏やかさが際立ちます。
こちらを諭(さと)しているようです
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
少しずつ、しかし確実に時は移ろっていきます。
構内の百合の木(ユリノキ)等の大樹などの葉が黄色に色付き、ローレンシャン高原(カナダ)の小型版をみるようです。落ち葉が地を舞い、それを片付ける箒(ほうき)の音が懐かしく、心の裡(うち)にまで響きます。
この時季、夕陽がもっとも輝き、人の心を打ちます。
晩(くれ)に向(むか)わんとして意(こころ)適(かな)わず
車を駆(か)って古原に登る
夕陽(せきよう) 無限に好(よ)し
只(た)だ是(こ)れ黄昏(こうこん)に近し
李商隠
黄昏の美しさが、人の心に漠然とした不安や寂寥感をもたらします。
時雨の中、安達太良山(あだたらやま、智恵子抄で知られています)を背に、幅広い虹が、低く信夫の里を跨いでいます。晩秋です。
晩秋の休日、徒歩で仕事での往復をしていると、道端の銀杏(イチョウ)の街路樹が、一見同じようですが、毎年、少しずつ、その姿形、彩りを変えているのが分かります。
と同時に、周囲の地形や建物の有り様も姿を変えてきていることにも気付きます。
何気ない日常的な風景もまた、一期一会であることを思い知らされます。
そんなことを考えながら人通りの少ない閑散とした道を歩いていると、落ち着いた、静謐(せいひつ)な街路の雰囲気のせいか“人生とは断念の積み重ね”を実感します。
前号に続き、タイタニック号の事故に拠(よ)って思いを馳せます。
(vol.243 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=280)
楽団員にみられた人間の高貴な振る舞いは、今という時代でも、洋の東西を問わず、見聞します。
(vol.141 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=174)
最近では、我が身を犠牲にして鉄路に居た老人を救った女性…。
他者の為に犠牲になれる(働ける)のは人間の偉大さです。そこまではできなくても、私のような凡夫でも、他人の愚痴に少しは耳を傾けることはできます。これも人間であることの証(あかし)の一つです。
他人の為に少しだけ働くこと、これこそが人間が人間である証です。
人間(ヒト)は誰でも矛盾に満ちた性格を持ち、それを何とか両立させて生きています。
一歩外に出れば厄介事の只中、折り合いを付けながら人生を歩んでいるのです。苦悩や揉め事の中に身を置き、それでも尚、律儀であろう、誇り高く生きようと、日々、仏になったり夜叉になったりして生きています。
しかも、そのどれもがその人の素顔です。人は一面性では語れません。
(vol.141 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=174)
(vol.217 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=254)
生きていると、絶えず心の葛藤が生じてきます。そこから生まれる物語は、行動や出来事という外面的な現象で構成されています。しかし、実は心の中での裡なる対話の結果です。
現代の慌ただしさは、これらの一つ一つの出来事(話)が、自らの、あるいは人々の伝説にする程の熟成時間を与えてくれません。
遣り切れない事件の数々、事故や事件後に警鐘を鳴らす人々、今や世間と仲間内との境界の見分けすらなくなり、混沌の世情です。だからこそ、世間は、人間の尊厳や涼やかな生き方が確かにあることを裏付けるような逸話を求めているのではないでしょうか。
人間は、観たいモノ、聞きたいコトを欲しがるというのは、一面の真実です。
殺伐とした今だからこそ、その対極にある物語を、多くの人々が欲しているような気がしてなりません。
今週の花材は、戸外の色彩とは対照的に、寒色系で涼やかと穏やかさが際立ちます。
こちらを諭(さと)しているようです
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■鉄砲百合〔雷山(らいざん)〕 ユリ科/球
根植物/《名前の由来》花形が鉄砲の形に似
ることから/一般的なユリと異なり、花の形が
筒状で横向きに咲く。沖縄では自生種が群生
する。
■バラ〔スーパーグリーン〕 バラ科/落葉
低木/古くから親しまれ、現代でも人気の高い
花。花色、花形など多岐にわたり、約2万種を
超す。「スーパーグリーン」は、花弁の多いフリ
ル咲き。自然栽培(染色なし)のバラの中で一
番緑色の品種。
■ポリシャス ウコギ科/常緑低高木/
《名前の由来》ギリシャ語の“ポリ”(多い)と“ス
キアス”(影)から。葉がわさわさと茂る様子か
ら/アジア、アフリカ、オーストラリアなどの熱
帯に約100種が自生。品種により葉形や葉色
が異なる。刈込みに強く、熱帯地域では垣根に
も利用される。
■アンスリュウム〔シンシア〕 サトイモ科/
常緑多年草/蝋細工で出来ているような、造
花と見間違いそうな南国の花。花弁のように見
える部分は苞で、棒状の部分が花。「シンシ
ア」は純白色。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン
玉のように真ん丸に咲く可愛い菊。日持ちの良
い菊の中でも、特に長く楽しめる品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2441.jpg
■鉄砲百合〔雷山(らいざん)〕 ユリ科/球
根植物/《名前の由来》花形が鉄砲の形に似
ることから/一般的なユリと異なり、花の形が
筒状で横向きに咲く。沖縄では自生種が群生
する。
■バラ〔スーパーグリーン〕 バラ科/落葉
低木/古くから親しまれ、現代でも人気の高い
花。花色、花形など多岐にわたり、約2万種を
超す。「スーパーグリーン」は、花弁の多いフリ
ル咲き。自然栽培(染色なし)のバラの中で一
番緑色の品種。
■ポリシャス ウコギ科/常緑低高木/
《名前の由来》ギリシャ語の“ポリ”(多い)と“ス
キアス”(影)から。葉がわさわさと茂る様子か
ら/アジア、アフリカ、オーストラリアなどの熱
帯に約100種が自生。品種により葉形や葉色
が異なる。刈込みに強く、熱帯地域では垣根に
も利用される。
■アンスリュウム〔シンシア〕 サトイモ科/
常緑多年草/蝋細工で出来ているような、造
花と見間違いそうな南国の花。花弁のように見
える部分は苞で、棒状の部分が花。「シンシ
ア」は純白色。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン
玉のように真ん丸に咲く可愛い菊。日持ちの良
い菊の中でも、特に長く楽しめる品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2441.jpg
【秘書室】
■デルフィニュウム〔スーパープラチナブルー〕 キン
ポウゲ科/多年草/ヨーロッパを中心に約250種が分
布。花色は青系を中心に白・ピンク・紫など。「スーパー
プラチナブルー」は可憐なスプレー咲(シネンシス系)品
種。
■アンスリュウム〔みどり〕■ピンポン菊
(いずれも理事長室と同花材)
■キウイづる マタタビ科/落葉蔓性植物/キウイフ
ルーツの蔓で、ユニークな曲線が特徴。今回は晒したも
のを使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2442.jpg
■デルフィニュウム〔スーパープラチナブルー〕 キン
ポウゲ科/多年草/ヨーロッパを中心に約250種が分
布。花色は青系を中心に白・ピンク・紫など。「スーパー
プラチナブルー」は可憐なスプレー咲(シネンシス系)品
種。
■アンスリュウム〔みどり〕■ピンポン菊
(いずれも理事長室と同花材)
■キウイづる マタタビ科/落葉蔓性植物/キウイフ
ルーツの蔓で、ユニークな曲線が特徴。今回は晒したも
のを使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2442.jpg