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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.245 − 務 (つとめる) −
信夫の里は、錫色(すずいろ)の天空のもと、静まりかえっています。
鼠色(ねずみいろ)の低く垂れ込めた雲が、山と大地を繋ぎ、天地が一体となっています。
時雨(しぐれ)が今年も、律儀に、季節の訪れを知らせにやってきました。
時雨は、道路や役目を終えて休んでいる田畑を濡らし、それが侘びしさを一層募らせます。
世にふるも更に時雨のやどりかな
飯尾宗祇(いいおそうぎ)
旅先で、時雨に遭っての雨宿り、雨は冷たく、心細いものです。
突然の時雨の襲来、人生も似たようなものです。
信夫の里、盆地の境に長いトンネルがあります。
列車が里へ向かって進入すると、窓が一気に結露してしまいます。今年、初めてみました。
外気が冷たくなっていることを知らせてくれます。冬が近い、という自然からのメッセージです。
この時季の朝の太陽、澄み切った大気の中、夕陽のような橙色で、見惚れてしまいます。
この太陽、年に数回、神々しいまでに、輝く茜色(あかねいろ)に染まった朝焼けをみせてくれます。
大気の状態、雲の配列や形が絶妙に一致した時にだけみせる、自然の造形です。
構内の紅葉が盛りを終えようとしています。
楓(カエデ)の紅葉、燃えるような紅(くれない)を呈して燃え尽きようとしています。廊下やロビーの大きなガラス壁を通してみる景色は、そこで働く人間はもとより大学の訪問者の目をも楽しませてくれます。
自画自賛ですが、学生時代に訪れた祇王寺の吉野窓、曼殊院の大書院越しの紅葉を連想させる程です。
“紅葉狩り(もみじがり)”という言葉は、今は死語でしょうか。
振り返ってみれば、ここ何十年、紅葉を愛(め)でに出掛けるということは絶えて久しくありません。
若い頃、よく耳にした流行歌(はやり歌)が聞こえてきました。
“何かを聞けば何かを思い出す”、当時、悲壮な思いで各地の大学を訪れて教えを乞うた事が不意に蘇りました。
修行中の身(当時は無給副手)であった自分には全く評価出来ない組織標本、これを診(み)てもらう為に、紹介の手紙や電話を頼りに、それぞれの分野で高名な先生方を各地に訪ねました。
何の予備知識を持たない私に、どの先生も丁寧に教えて下さいました。
振り返ってみて、若さ故に出来たことだと思います。
名も無い若造を研究者として相手にして下さった先生方の姿勢、今でも私の手本です。
毎日のように心が波立つ報告が入り、その対策に心身が悲鳴を上げています。
“動いてはならない!”、裡なる心に従って、自らの心を鎮めるには“動くこと”と思い定め、普段の運動(vol.140、147、173)の他に、歩き廻っています。
(vol.140 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=173)
(vol.147 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=180)
(vol.173 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=207)
動くこと、何かを一心にする事が、心を空っぽにしてくれる、このことを知ったのは随分昔のことです。
皿洗いをしていて悟りました!
日比谷公園の周りを歩いていた時です。日比谷公園の境界に江戸城の石垣が使われていることに気付きました。凹凸(おうとつ)がついていて、切込み接ぎの名残が今でも見て取れます。
自己の運命(さだめ)に従って黙々と己(おのれ)の役割を果たし続けている石、このような石への思い入れは、「石に向かって、下の地面のことが気になるかと聞く」ようなものですが…。
今年も解剖慰霊祭が執り行われました。
(vol.146 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=179)
(vol.198 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=234)
自分を懐かしむ時は過ぎ、人生の終わりを身近に意識するようになってきたからでしょうか、遺族と亡くなった方の語らいが聞こえてきます。そこにあるのは自分の心の裡にある残響です。
今週の花材は、色彩の乏しくなるこの時季、執務室、秘書室とも、赤や薄紫を帯びた色が心に榾火(ほだび)を灯してくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
鼠色(ねずみいろ)の低く垂れ込めた雲が、山と大地を繋ぎ、天地が一体となっています。
時雨(しぐれ)が今年も、律儀に、季節の訪れを知らせにやってきました。
時雨は、道路や役目を終えて休んでいる田畑を濡らし、それが侘びしさを一層募らせます。
世にふるも更に時雨のやどりかな
飯尾宗祇(いいおそうぎ)
旅先で、時雨に遭っての雨宿り、雨は冷たく、心細いものです。
突然の時雨の襲来、人生も似たようなものです。
信夫の里、盆地の境に長いトンネルがあります。
列車が里へ向かって進入すると、窓が一気に結露してしまいます。今年、初めてみました。
外気が冷たくなっていることを知らせてくれます。冬が近い、という自然からのメッセージです。
この時季の朝の太陽、澄み切った大気の中、夕陽のような橙色で、見惚れてしまいます。
この太陽、年に数回、神々しいまでに、輝く茜色(あかねいろ)に染まった朝焼けをみせてくれます。
大気の状態、雲の配列や形が絶妙に一致した時にだけみせる、自然の造形です。
構内の紅葉が盛りを終えようとしています。
楓(カエデ)の紅葉、燃えるような紅(くれない)を呈して燃え尽きようとしています。廊下やロビーの大きなガラス壁を通してみる景色は、そこで働く人間はもとより大学の訪問者の目をも楽しませてくれます。
自画自賛ですが、学生時代に訪れた祇王寺の吉野窓、曼殊院の大書院越しの紅葉を連想させる程です。
“紅葉狩り(もみじがり)”という言葉は、今は死語でしょうか。
振り返ってみれば、ここ何十年、紅葉を愛(め)でに出掛けるということは絶えて久しくありません。
若い頃、よく耳にした流行歌(はやり歌)が聞こえてきました。
“何かを聞けば何かを思い出す”、当時、悲壮な思いで各地の大学を訪れて教えを乞うた事が不意に蘇りました。
修行中の身(当時は無給副手)であった自分には全く評価出来ない組織標本、これを診(み)てもらう為に、紹介の手紙や電話を頼りに、それぞれの分野で高名な先生方を各地に訪ねました。
何の予備知識を持たない私に、どの先生も丁寧に教えて下さいました。
振り返ってみて、若さ故に出来たことだと思います。
名も無い若造を研究者として相手にして下さった先生方の姿勢、今でも私の手本です。
毎日のように心が波立つ報告が入り、その対策に心身が悲鳴を上げています。
“動いてはならない!”、裡なる心に従って、自らの心を鎮めるには“動くこと”と思い定め、普段の運動(vol.140、147、173)の他に、歩き廻っています。
(vol.140 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=173)
(vol.147 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=180)
(vol.173 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=207)
動くこと、何かを一心にする事が、心を空っぽにしてくれる、このことを知ったのは随分昔のことです。
皿洗いをしていて悟りました!
日比谷公園の周りを歩いていた時です。日比谷公園の境界に江戸城の石垣が使われていることに気付きました。凹凸(おうとつ)がついていて、切込み接ぎの名残が今でも見て取れます。
自己の運命(さだめ)に従って黙々と己(おのれ)の役割を果たし続けている石、このような石への思い入れは、「石に向かって、下の地面のことが気になるかと聞く」ようなものですが…。
今年も解剖慰霊祭が執り行われました。
(vol.146 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=179)
(vol.198 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=234)
自分を懐かしむ時は過ぎ、人生の終わりを身近に意識するようになってきたからでしょうか、遺族と亡くなった方の語らいが聞こえてきます。そこにあるのは自分の心の裡にある残響です。
今週の花材は、色彩の乏しくなるこの時季、執務室、秘書室とも、赤や薄紫を帯びた色が心に榾火(ほだび)を灯してくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ムラサキモドキ クマツヅラ科/落葉低
木/ムラサキシキブの変種。6〜8月頃に花
が咲き、10〜11月に実がなる。房状で艶や
かな紫色の実を枝いっぱいにつける。
■スカシユリ〔キャンディブロッサム〕 ユリ
科/球根植物/《名前の由来》花弁の先端が
広く、付け根部分が細くなり、透けることから。
カサブランカ等の大輪品種に比べ、中輪咲で
花が小さく香りもない。「キャンディブロッサム」
はピンクの八重咲。
■トルコギキョウ〔エスプリピンク〕 リンドウ
科/多年草/《名前の由来》花型がトルコ人
のターバンに似ているからなど諸説あり/品
種改良が盛んで、花色や花型が多岐にわたり
種類が豊富。「エスプリピンク」は淡いピンクの
中輪タイプでフリル八重咲。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2451.jpg
■ムラサキモドキ クマツヅラ科/落葉低
木/ムラサキシキブの変種。6〜8月頃に花
が咲き、10〜11月に実がなる。房状で艶や
かな紫色の実を枝いっぱいにつける。
■スカシユリ〔キャンディブロッサム〕 ユリ
科/球根植物/《名前の由来》花弁の先端が
広く、付け根部分が細くなり、透けることから。
カサブランカ等の大輪品種に比べ、中輪咲で
花が小さく香りもない。「キャンディブロッサム」
はピンクの八重咲。
■トルコギキョウ〔エスプリピンク〕 リンドウ
科/多年草/《名前の由来》花型がトルコ人
のターバンに似ているからなど諸説あり/品
種改良が盛んで、花色や花型が多岐にわたり
種類が豊富。「エスプリピンク」は淡いピンクの
中輪タイプでフリル八重咲。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2451.jpg
【秘書室】
■アランダ〔チャクワンファーム〕 ラン科/
アラクニスとバンダを交配した人工種。バンダ
の花の大きさとアラクニスの花持ちの良さを持
つ。「チャクワンファーム」は斑点の入ったピン
ク色。
■トルコギキョウ〔ロベライエロー〕
(理事長室と同じ花材) 「ロベライエロー」はク
リーム色の中大輪八重咲。
■行李柳(コリヤナギ) ヤナギ科/落葉
低木/《名前の由来》行李(こうり・昔の物入
れ)を編むのみ使用されたことから/湿地帯に
群生する弾力のある柳。
■アンスリュウム〔シンバ〕 サトイモ科/
常緑多年草/蝋細工で出来ているような造花
と見間違いそうな南国の花。花弁のように見
える部分は苞で、棒状の部分が花。「シンバ」
は白色の苞の端に緑色が混ざる。
■フェジョア フトモモ科/常緑低木/グァ
バに似た熱帯果樹で、パイナップルのような味
の実をつける。肉厚な葉で裏は銀色の綿毛が
ある。葉物として切り花で流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2452.jpg
■アランダ〔チャクワンファーム〕 ラン科/
アラクニスとバンダを交配した人工種。バンダ
の花の大きさとアラクニスの花持ちの良さを持
つ。「チャクワンファーム」は斑点の入ったピン
ク色。
■トルコギキョウ〔ロベライエロー〕
(理事長室と同じ花材) 「ロベライエロー」はク
リーム色の中大輪八重咲。
■行李柳(コリヤナギ) ヤナギ科/落葉
低木/《名前の由来》行李(こうり・昔の物入
れ)を編むのみ使用されたことから/湿地帯に
群生する弾力のある柳。
■アンスリュウム〔シンバ〕 サトイモ科/
常緑多年草/蝋細工で出来ているような造花
と見間違いそうな南国の花。花弁のように見
える部分は苞で、棒状の部分が花。「シンバ」
は白色の苞の端に緑色が混ざる。
■フェジョア フトモモ科/常緑低木/グァ
バに似た熱帯果樹で、パイナップルのような味
の実をつける。肉厚な葉で裏は銀色の綿毛が
ある。葉物として切り花で流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2452.jpg