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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.251 − 照 (てらす) −
早朝、「松林図屏風」(長谷川等伯)さながらの風景が、執務室の前庭に出現します。
木立は朝霧で隠れ、木々の間を霧が浮遊しています。
赤銅色の朝陽が山から顔を出します。顔を出すと黄色に変わります。霧は何処かへ去っていきます。
日没後の西の空、この時季、宵の明星が一際(ひときわ)輝いています。
月との組み合わせは、ラピスラズリ色の空を背景に、華やかで、静寂、天空の絵画です。
季節の表情が荒々しく、風、雨に風情を感じるどころではありません。
風や雨で、各地で、交通の運行が乱れています。定時運行の為に、日夜、黙々と働いている多くの人々、乱れて初めて気付く存在です。“失って初めて気付く有り難さ”…。
時は、積み重ねでもあり、過ぎ去っていくものでもあります。
この時季、時は去り、二度と取り戻せない事を感じます。
今、太陽が顔を出している時間がもっとも短い時季です。
暗闇(くらやみ)は人間(ヒト)を不安にさせます。我が国では冬至、海外でも、クリスマス、聖ルチア祭を始め、太陽の復活を願う行事が行われています。これらの行事は、古来、人々の生命や生活が、太陽がもたらしてくれる明かりや熱に懸かっていたことを今に伝えています。
“光のページェント”と銘打って、各地で催しが開かれています。
樹木に巻き付けられた無数の灯(あかり)が夜を彩(いろど)っています。樹木にも生命があり、営みの周期がある筈です。樹木が、貴方達は“省エネ”と騒いでいるのでは、と皮肉っているのでは…。
只、我々の祖先が持っていた寒さや闇の恐怖の記憶が、現代の人々に受け継がれているのではとも…。
(vol.60 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=86)
(vol.106 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=134)
先人達が、光や闇をどう捉えていたかは谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に窺われます。
蝋燭(ろうそく)の灯りは、古来、人間(ヒト)の居場所を照らし、人々の作業や語らいを可能にし、心まで暖かくする役目を果たしてきました。
ラトゥール(vol.67、231)、高島野十郎(vol.16、231)の絵は、灯(あかり)や光に対する人間の心理まで描き出しています。
(vol.67 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=93)
(vol.16 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=32)
(vol.231 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=268)
庭の白砂や屏風の金箔は、現代の照明を前提にすると、先人達の工夫を忘れてしまいます。
(vol.60 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=86)
帰宅後、白熱灯のスタンドの下で、文章を記し、書物を繙(ひもと)いて、時空を越えた対話をしています。
夜を日に継いで動いている現代人に、ほの暗さ、机から離れるに従って暗くなっていく周囲の薄明かりは、心まで優しく包んでくれます。
お天道様に従って生活していた我々の先人達には、闇を駆逐(くちく)した電灯(でんとう)は、春の到来であり、収穫をもたらしてくれる希望の象徴であったのではないでしょうか。
電灯の導入前、人々が光をどう考えていたかを伺えるモノに灯籠があります。
石灯籠(いしどうろう)、窓に日輪(太陽)と月輪(三日月)が穿(うが)かれています。蝋燭の明かりを入れると、闇の中で太陽と月の形が浮かび出されます。
その意匠は、時の循環の暗示です。風による蝋燭(ろうそく)の揺らめき、心の動きを映し出しているようです。
家々の灯に、“生きる”、あるいは“人生”をみたのは高校生の時以来です。
(vol.50 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=75)
(vol.106 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=134)
(vol.213 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=250)
灯(あかり)は、人々に様々な感慨を与えてくれます。
みんなかへる家はあるゆふべのゆきき
山頭火
作者は、人々が帰る先にある筈の家の灯をみていたのではないでしょうか。
今週の花材は、両室とも一年の仕事の手仕舞(てじまい)を象徴するように静かに、優しさを持ち、凜として佇んでいます。心まで居住まいを正してしまいます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
木立は朝霧で隠れ、木々の間を霧が浮遊しています。
赤銅色の朝陽が山から顔を出します。顔を出すと黄色に変わります。霧は何処かへ去っていきます。
日没後の西の空、この時季、宵の明星が一際(ひときわ)輝いています。
月との組み合わせは、ラピスラズリ色の空を背景に、華やかで、静寂、天空の絵画です。
季節の表情が荒々しく、風、雨に風情を感じるどころではありません。
風や雨で、各地で、交通の運行が乱れています。定時運行の為に、日夜、黙々と働いている多くの人々、乱れて初めて気付く存在です。“失って初めて気付く有り難さ”…。
時は、積み重ねでもあり、過ぎ去っていくものでもあります。
この時季、時は去り、二度と取り戻せない事を感じます。
今、太陽が顔を出している時間がもっとも短い時季です。
暗闇(くらやみ)は人間(ヒト)を不安にさせます。我が国では冬至、海外でも、クリスマス、聖ルチア祭を始め、太陽の復活を願う行事が行われています。これらの行事は、古来、人々の生命や生活が、太陽がもたらしてくれる明かりや熱に懸かっていたことを今に伝えています。
“光のページェント”と銘打って、各地で催しが開かれています。
樹木に巻き付けられた無数の灯(あかり)が夜を彩(いろど)っています。樹木にも生命があり、営みの周期がある筈です。樹木が、貴方達は“省エネ”と騒いでいるのでは、と皮肉っているのでは…。
只、我々の祖先が持っていた寒さや闇の恐怖の記憶が、現代の人々に受け継がれているのではとも…。
(vol.60 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=86)
(vol.106 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=134)
先人達が、光や闇をどう捉えていたかは谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に窺われます。
蝋燭(ろうそく)の灯りは、古来、人間(ヒト)の居場所を照らし、人々の作業や語らいを可能にし、心まで暖かくする役目を果たしてきました。
ラトゥール(vol.67、231)、高島野十郎(vol.16、231)の絵は、灯(あかり)や光に対する人間の心理まで描き出しています。
(vol.67 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=93)
(vol.16 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=32)
(vol.231 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=268)
庭の白砂や屏風の金箔は、現代の照明を前提にすると、先人達の工夫を忘れてしまいます。
(vol.60 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=86)
帰宅後、白熱灯のスタンドの下で、文章を記し、書物を繙(ひもと)いて、時空を越えた対話をしています。
夜を日に継いで動いている現代人に、ほの暗さ、机から離れるに従って暗くなっていく周囲の薄明かりは、心まで優しく包んでくれます。
お天道様に従って生活していた我々の先人達には、闇を駆逐(くちく)した電灯(でんとう)は、春の到来であり、収穫をもたらしてくれる希望の象徴であったのではないでしょうか。
電灯の導入前、人々が光をどう考えていたかを伺えるモノに灯籠があります。
石灯籠(いしどうろう)、窓に日輪(太陽)と月輪(三日月)が穿(うが)かれています。蝋燭の明かりを入れると、闇の中で太陽と月の形が浮かび出されます。
その意匠は、時の循環の暗示です。風による蝋燭(ろうそく)の揺らめき、心の動きを映し出しているようです。
家々の灯に、“生きる”、あるいは“人生”をみたのは高校生の時以来です。
(vol.50 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=75)
(vol.106 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=134)
(vol.213 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=250)
灯(あかり)は、人々に様々な感慨を与えてくれます。
みんなかへる家はあるゆふべのゆきき
山頭火
作者は、人々が帰る先にある筈の家の灯をみていたのではないでしょうか。
今週の花材は、両室とも一年の仕事の手仕舞(てじまい)を象徴するように静かに、優しさを持ち、凜として佇んでいます。心まで居住まいを正してしまいます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■葉ボタン アブラナ科/多年草/《名前の由来》幾重にも重なっ
た葉が牡丹のように美しいことから/キャベツのような観賞用の植
物。寒さに強く、冬のガーデニングに利用される。
■コチア アカザ科/常緑低木/クリスマスツリーが雪を覆ったよ
うな樹形が特徴。白銀色の多肉植物のような肉厚な葉をもつ。
■フリージア アヤメ科/球根植物/甘い香りを放つ春の花。花
径に8〜10輪程の花をつけ、次々と開花する。
■菊〔アナスタシア〕 キク科/多年草/花弁が花火のように広
がった大きな菊。通常の菊と異なり、細く繊細な花弁が特徴。
■ブルニア〔シルバーブルニア〕 ブルニア科/枝先で多数に分
かれ、銀白色の丸い花序をつける。丈夫で長く楽しめ、ドライフラワー
にも適す。
■タニワタリ チャセンシダ科/常緑シダ植物/樹上や岩上に着
生するシダ植物。光沢のある鮮やかな緑色で、波打つ大きな葉が特
徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2511.jpg
■葉ボタン アブラナ科/多年草/《名前の由来》幾重にも重なっ
た葉が牡丹のように美しいことから/キャベツのような観賞用の植
物。寒さに強く、冬のガーデニングに利用される。
■コチア アカザ科/常緑低木/クリスマスツリーが雪を覆ったよ
うな樹形が特徴。白銀色の多肉植物のような肉厚な葉をもつ。
■フリージア アヤメ科/球根植物/甘い香りを放つ春の花。花
径に8〜10輪程の花をつけ、次々と開花する。
■菊〔アナスタシア〕 キク科/多年草/花弁が花火のように広
がった大きな菊。通常の菊と異なり、細く繊細な花弁が特徴。
■ブルニア〔シルバーブルニア〕 ブルニア科/枝先で多数に分
かれ、銀白色の丸い花序をつける。丈夫で長く楽しめ、ドライフラワー
にも適す。
■タニワタリ チャセンシダ科/常緑シダ植物/樹上や岩上に着
生するシダ植物。光沢のある鮮やかな緑色で、波打つ大きな葉が特
徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2511.jpg
【秘書室】
■アランダ〔チャクワンファーム〕 ラン科/
アラクニスとバンダを交配した人工種。花弁に
入る斑が特徴で、暑さに強く花持ちが良い。
■シキミア ミカン科/常緑低木/実のよ
うな丸い蕾をたくさんつけ、蕾を鑑賞するものと
して流通。蕾の時期がとても長く、10月頃に
蕾をつけ、花が咲くのは2〜3月頃。雄雌異株
で雌株だけが赤くなる。
■アンスリュウム〔バタフライ〕 サトイモ科
/常緑多年草/光沢があり造花と見間違うよ
うな花で、主に苞を鑑賞する。「バタフライ」は
白と緑のバイカラー品種で、寒季は白い部分
がピンクがかる。
■カーネーション〔ノビオバイオレット〕
ナデシコ科/多年草/母の日の花として古く
から親しまれ、バラ・菊に並び世界的に生産量
が多い。「ノビオ」シリーズは紫やボルドーを基
調とした覆輪が綺麗な品種。他「ノビオバーガ
ンディ」「ハードロック」「バタフライ」等もある。
□その他 使用花材:
ユーカリ〔ポポラス〕・コニファー〔ブルーアイス〕
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2512.jpg
■アランダ〔チャクワンファーム〕 ラン科/
アラクニスとバンダを交配した人工種。花弁に
入る斑が特徴で、暑さに強く花持ちが良い。
■シキミア ミカン科/常緑低木/実のよ
うな丸い蕾をたくさんつけ、蕾を鑑賞するものと
して流通。蕾の時期がとても長く、10月頃に
蕾をつけ、花が咲くのは2〜3月頃。雄雌異株
で雌株だけが赤くなる。
■アンスリュウム〔バタフライ〕 サトイモ科
/常緑多年草/光沢があり造花と見間違うよ
うな花で、主に苞を鑑賞する。「バタフライ」は
白と緑のバイカラー品種で、寒季は白い部分
がピンクがかる。
■カーネーション〔ノビオバイオレット〕
ナデシコ科/多年草/母の日の花として古く
から親しまれ、バラ・菊に並び世界的に生産量
が多い。「ノビオ」シリーズは紫やボルドーを基
調とした覆輪が綺麗な品種。他「ノビオバーガ
ンディ」「ハードロック」「バタフライ」等もある。
□その他 使用花材:
ユーカリ〔ポポラス〕・コニファー〔ブルーアイス〕
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2512.jpg