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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.01.17

vol.253  − 復 (ふくする) −

信夫の里は、時雨(しぐれ)の真冬版、“白い太陽”と風花(かざはな)の季節です。
屋内に水仙を活けると、清楚な佇まいと共に、香りが、春が遠くないことを告げてくれています。

年の暮と始め、日本中が活動を止めます。
故郷へ帰る、旅に出る、自宅で過ごす、社会生活を維持する為の仕事をするなど、過ごす形は様々です。
結果、都市の雑踏が嘘のように消え、奇妙に感じる程の沈黙と静寂が街を支配します。

彩りの乏しい時季、植え込みの寒椿が、紅(あか)い花をつけて華やかさを演出しています。
神社の脇には、寒風のなか、寒桜が咲いています。
椿の大木も、濃い緑を背に、紅い花でその存在を主張しています。
脇には白い椿の代役のようにカメリア・ドルピヘラ(油椿)が植えてありました。

         赤い椿白い椿と落ちにけり
                         河東碧梧桐(かわひがし・へきごとう)

この情景を、静まり返っている街中の一角にみることができます。

“何かをみれば何かを思い出す”。香りにも当て嵌(は)まります。

歩いていると、コーヒーの香りが漂ってきます。
様々な香りや臭いに紛れ、普段は都会の香り(臭い)としか感じていないのが、この時季、遠くからでも分かります。

“喫茶店文化”が違った形で再び盛んになってきたようです。
我々の世代が味わった“昭和の喫茶店”は、高度成長期に花開きました。文人等様々な生業(なりわい)の人々が集う、ケーキやサンドイッチなどの軽食を売りにしている、本格的なコーヒーを提供する、“雰囲気”を味わう、クラシックやジャズなどの音楽を売りにしている、様々な店がありました。

その後、インスタントコーヒーが発売されて、喫茶店を利用する人や機会が減りました。
バブル景気が弾けると、多くの店が閉じられ、コーヒー文化は一つの終焉(しゅうえん)を迎えました。

このところ、欧州にあるカフェのような店、主(あるじ)の理念を前面に打ち出した店、読書の為の店、17世紀以来の歴史を有するウイーンやパリのカフェの支店やそれを模した店、内部の意匠にこだわった店、そして昔からある本格的なコーヒーの味を追求した店など、コーヒー文化の再びの勃興です。

コーヒー一つをとってみても“歴史は繰り返す”を実感します。
只、その繰り返し方は、その時代の世情を反映しており、同じではありません。さながら万華鏡のようです。

「松林図屏風」(長谷川等伯)の公開、混雑覚悟で出掛けました。観る度に発見や違った印象を受けます。
鑑賞する人々、部屋、展示場所、照明等の大切さをも再認識させられました。

彼の「牧馬図(ぼくばず)屏風」と「伝名和長年像(でん なわながとし ぞう)」が出品されていました。
初めてみる作品です。
やや野暮ったく感じますが、馬の躍動感や馬を取り囲む生き生きとした人々の描写に惹かれました。

画家として名を挙げようとしていた頃と晩年の絵が、「午年」(うまどし)を記念しての並列展示、画面から発する気、その間にあった彼の航跡、激動の歩みに思いが至ります。

1月15日(1939、昭和14年)、不世出の横綱、双葉山の連勝が69連勝で止まった日です。
“未だ木鶏(もっけい)たりえず”との電報は、今も語り継がれています。

1月19日(1981、昭和56年)、今や伝説の名大関、貴ノ花が引退しました。亡き父に代わり、断髪式に参加させて戴きました。
父と語らっていた彼の在(あ)りし日の真摯な姿、今も私が見習っている佇まいです。

1月26日(1997、平成9年)、藤沢周平の寒梅忌です。

今週の花材は、執務室は辛夷(コブシ)を始めとした大柄な白が、秘書室は小振りな白と薄紫が、来る春を告げています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■シデコブシ   モクレン科/落葉小高木/日本の
固有種で、本州中部の一部地域に自生。花期は3〜
4月で、葉に先だって花を咲かせる。花はコブシに似て
いるが、花弁が細く多い。
■菊〔ロサーノオレンジ〕   キク科/多年草/ブラン
ド菊「飛騨マム」の菊。“一本で絵になる花”をコンセプ
トに、蕾ではなく満開の状態で出荷される。巨大輪系
でダリアにも負けない存在感が魅力。
■OHユリ〔シベリア〕   ユリ科/球根植物/カサブ
ランカと同じオリエンタルハイブリッド(OH)種。大きく
優雅な花姿と芳香が特徴。
■ディンゴファーン
以前使用した「コアラファーン」に似て、ふわふわした
葉をもつ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2531.jpg

【秘書室】
■エピデンドラム   ラン科/細く伸びた茎の先端に小さな花が密集し、
半円形に咲く。多肉植物のように肉厚な葉をもつ。次々と開花し、切り花で
も長期間楽しめる。
■フリージア〔ブルーシー〕   アヤメ科/球根植物/甘い香りを放つ春
の花。花径に8〜10輪程の花をつけ、次々と開花する。「ブルーシー」は
紫色の一重咲き。
■ゼンマイ   ゼンマイ科/シダ植物/《名前の由来》若芽の丸まってい
る姿を古銭に見立てた“銭巻”から/おもちゃや時計の“ゼンマイ仕掛け”
の語源。胞子を飛ばすために伸びる「胞子葉」と通常の葉「栄養葉」があ
る。山菜として食用になるのは栄養葉の若芽。
■ポリシャス   ウコギ科/常緑低高木/アジア、アフリカ、オーストラリ
ア等の熱帯に約100種が自生。品種により葉形や葉色が異なる。刈込に
強く熱帯地域では垣根にも利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2532.jpg

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