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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.264 − 辿 (たどる) −
卯月(うづき)です。
お彼岸を境に、大気も大地も春になりました。少し急激過ぎる変化です。
雪に苦しめられたこの冬、春を迎える嬉しさが一段と募(つの)ります。
湿度を持った大気は弛(ゆる)み、朝陽に輝く景色は霞がかっています。
夜空の星、角が取れて輪郭が柔らかくなっています。
遠空を生命のごとき雲が行く
含むひかりの春はうつくし
河野愛子
我が身も、春を直(ひた)と見据えて、一期一会、この春を味わわねばなりません。
構内の白木蓮(ハクモクレン)も咲き出しました。新しい学期を迎える環境が整いつつあります。
今年も多くの若者が大学を巣立っていきました。
学生が大学を去っても、学生の心から大学が去ることはありません。
母校に赴任した当初、「今居る組織や仲間は愛せないが、これから出会う組織や仲間は愛せる」、という空気が一部の学生にみられました。
海外を含め各地で修業し、それなりに世間の風に当たってきた我が身には、一部の学生の矜恃(きょうじ)の欠如と虚無的な姿勢、心痛みました。
このような斜に構えた姿勢は、それ故に、その後の人生は寂しく、厳しいものになっていくと諭してきました。
人生は出会いに尽きます。しかも、一生のなかで出会う人の数は限られています。
その限られた人との関わりが人生です。卒業生には、今まで出会った人、これから出会うであろう人を大切にして歩んで欲しいと、切に願っています。
式で、名前を呼ばれて返事をする人、しない人、学位記を渡す時、目を合わす人、俯(うつむ)いたままの人、お目出度う(ございます)の声掛けに、「有難うございます、頑張ります」と答える人、無言の人、様々です。プロとしてのとば口(くち)、既に、個性や身の処し方の差が顕(あらわ)れています。
“人生の扉は他人が開く”のです。世の中、自らの努力だけで渡っていける程、単純ではありません。
世間は最初から不公平です。不条理と矛盾に満ちているのです。そんな世の中を、近くに居る仲間を頼り、遠くに居る人を信じることで乗り切ってゆくのです。毎年、式辞で伝えているのですが…。
(平成25年度学位記授与式式辞 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/sotu_sikiji260325.html)
“何かを聞けば何かを思い出す”、これらの歌を聞く時、その時期のことが忽然(こつぜん)と蘇ってきます。
卒業式、小学生の時は「蛍の光」、中学生の時は「仰げば尊し」を歌いました。
「人に歴史あり」、考えてみれば両者とも不思議な成り立ち、「歌にも歴史あり」です。ミステリーを読むような生い立ちとその後の歩みです。
「蛍の光」はスコットランド民謡、「仰げば尊し」は、近年アメリカにその源があることが明らかになりました。
明治の先人達の、選曲の感覚、只々(ただただ)、脱帽です。これらの曲を誰が、どのように選んで我が国にもたらされたのでしょうか。
そして日本語の作詞者、どのような経緯や想いで今も歌い継がれているこれらの歌を詠(よ)んだのでしょうか。これらを知ることは、日本人の基底にある精神の琴線(きんせん)に触れるような気がします。
振り返ってみれば、「アニー・ローリー」、「故郷の空」などのスコットランド民謡、「ダニー・ボーイ」、「ロンドンデリーの歌」などのアイルランド民謡、「グリーンスリーブス」、「埴生の宿」(はにゅうのやど)などのイングランド民謡、「アメイジング・グレイス」、フォスターの数々の名曲を含むアメリカ民謡、これらの曲、何故に、日本人の心の琴線に触れたのでしょうか。
これらの曲を探し当て、今の形に紡(つむ)ぎ出した先人の鋭敏で繊細な、音や文字に対する力量、これからも大切に護(まも)っていきたいものです。
今週の花材は、色彩が対照的です。
執務室は青と白の対比が凛々しさを、秘書室は暖色で優しさを象徴しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
お彼岸を境に、大気も大地も春になりました。少し急激過ぎる変化です。
雪に苦しめられたこの冬、春を迎える嬉しさが一段と募(つの)ります。
湿度を持った大気は弛(ゆる)み、朝陽に輝く景色は霞がかっています。
夜空の星、角が取れて輪郭が柔らかくなっています。
遠空を生命のごとき雲が行く
含むひかりの春はうつくし
河野愛子
我が身も、春を直(ひた)と見据えて、一期一会、この春を味わわねばなりません。
構内の白木蓮(ハクモクレン)も咲き出しました。新しい学期を迎える環境が整いつつあります。
今年も多くの若者が大学を巣立っていきました。
学生が大学を去っても、学生の心から大学が去ることはありません。
母校に赴任した当初、「今居る組織や仲間は愛せないが、これから出会う組織や仲間は愛せる」、という空気が一部の学生にみられました。
海外を含め各地で修業し、それなりに世間の風に当たってきた我が身には、一部の学生の矜恃(きょうじ)の欠如と虚無的な姿勢、心痛みました。
このような斜に構えた姿勢は、それ故に、その後の人生は寂しく、厳しいものになっていくと諭してきました。
人生は出会いに尽きます。しかも、一生のなかで出会う人の数は限られています。
その限られた人との関わりが人生です。卒業生には、今まで出会った人、これから出会うであろう人を大切にして歩んで欲しいと、切に願っています。
式で、名前を呼ばれて返事をする人、しない人、学位記を渡す時、目を合わす人、俯(うつむ)いたままの人、お目出度う(ございます)の声掛けに、「有難うございます、頑張ります」と答える人、無言の人、様々です。プロとしてのとば口(くち)、既に、個性や身の処し方の差が顕(あらわ)れています。
“人生の扉は他人が開く”のです。世の中、自らの努力だけで渡っていける程、単純ではありません。
世間は最初から不公平です。不条理と矛盾に満ちているのです。そんな世の中を、近くに居る仲間を頼り、遠くに居る人を信じることで乗り切ってゆくのです。毎年、式辞で伝えているのですが…。
(平成25年度学位記授与式式辞 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/sotu_sikiji260325.html)
“何かを聞けば何かを思い出す”、これらの歌を聞く時、その時期のことが忽然(こつぜん)と蘇ってきます。
卒業式、小学生の時は「蛍の光」、中学生の時は「仰げば尊し」を歌いました。
「人に歴史あり」、考えてみれば両者とも不思議な成り立ち、「歌にも歴史あり」です。ミステリーを読むような生い立ちとその後の歩みです。
「蛍の光」はスコットランド民謡、「仰げば尊し」は、近年アメリカにその源があることが明らかになりました。
明治の先人達の、選曲の感覚、只々(ただただ)、脱帽です。これらの曲を誰が、どのように選んで我が国にもたらされたのでしょうか。
そして日本語の作詞者、どのような経緯や想いで今も歌い継がれているこれらの歌を詠(よ)んだのでしょうか。これらを知ることは、日本人の基底にある精神の琴線(きんせん)に触れるような気がします。
振り返ってみれば、「アニー・ローリー」、「故郷の空」などのスコットランド民謡、「ダニー・ボーイ」、「ロンドンデリーの歌」などのアイルランド民謡、「グリーンスリーブス」、「埴生の宿」(はにゅうのやど)などのイングランド民謡、「アメイジング・グレイス」、フォスターの数々の名曲を含むアメリカ民謡、これらの曲、何故に、日本人の心の琴線に触れたのでしょうか。
これらの曲を探し当て、今の形に紡(つむ)ぎ出した先人の鋭敏で繊細な、音や文字に対する力量、これからも大切に護(まも)っていきたいものです。
今週の花材は、色彩が対照的です。
執務室は青と白の対比が凛々しさを、秘書室は暖色で優しさを象徴しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■カラー〔ウェディングマーチ〕 サトイモ科/球根植物
/《名前の由来》花型(苞)がYシャツの襟に似ていること
から/花弁のように見える筒状の部分は苞で、中心の棒
状が花序。「ウェディングマーチ」はカラーの代表的な品種。
■デルフィニュウム・シネンシス〔グランブルー〕
キンポウゲ科/多年草/ヨーロッパを中心に約250種。
花色は青系を中心に紫、ピンク、白もある。シネンシス系
は可憐なスプレー咲の品種。「グランブルー」は鮮やかな
青色。
■オクラレルカ アヤメ科/球根植物/アイリスの一
種で紫色の花が咲く。剣のように先がとがった長い葉を
もち、グリーンとして流通。勢いのある葉形で生け花など
で
人気がある。
■モルセラ シソ科/一年草/爽やかなライトグリーン
色と独特の茎のラインが特徴。円形で盃状のガクをもち、
その中に白く小さい花が咲く。ミントのような清涼感のある
芳香を放つ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2641.jpg
■カラー〔ウェディングマーチ〕 サトイモ科/球根植物
/《名前の由来》花型(苞)がYシャツの襟に似ていること
から/花弁のように見える筒状の部分は苞で、中心の棒
状が花序。「ウェディングマーチ」はカラーの代表的な品種。
■デルフィニュウム・シネンシス〔グランブルー〕
キンポウゲ科/多年草/ヨーロッパを中心に約250種。
花色は青系を中心に紫、ピンク、白もある。シネンシス系
は可憐なスプレー咲の品種。「グランブルー」は鮮やかな
青色。
■オクラレルカ アヤメ科/球根植物/アイリスの一
種で紫色の花が咲く。剣のように先がとがった長い葉を
もち、グリーンとして流通。勢いのある葉形で生け花など
で
人気がある。
■モルセラ シソ科/一年草/爽やかなライトグリーン
色と独特の茎のラインが特徴。円形で盃状のガクをもち、
その中に白く小さい花が咲く。ミントのような清涼感のある
芳香を放つ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2641.jpg
【秘書室】
■カンパニュラ〔チャイムライトピンク〕 キキョウ科/多年草
/《名前の由来》ラテン語の「小さな鐘」を意味する語から/世
界に約300種あり、日本でも4種が自生する。風鈴のような可
愛らしい花が連なって咲く花姿から「釣鐘草」の別名をもつ。
■ピンポン菊〔セイオペラノヴァ〕 キク科/多年草/通常の
菊と異なり、丸く可愛く咲く菊。「オペラノヴァ」はダリアのように
咲くデコラ咲。
■ライスフラワー キク科/半耐寒性常緑低木/《名前の由
来》花が米粒に似ていることから/カサカサとした質感の花で、
ドライフラワーにも適す。花色は今回使用のピンクの他、白色も
ある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2642.jpg
■カンパニュラ〔チャイムライトピンク〕 キキョウ科/多年草
/《名前の由来》ラテン語の「小さな鐘」を意味する語から/世
界に約300種あり、日本でも4種が自生する。風鈴のような可
愛らしい花が連なって咲く花姿から「釣鐘草」の別名をもつ。
■ピンポン菊〔セイオペラノヴァ〕 キク科/多年草/通常の
菊と異なり、丸く可愛く咲く菊。「オペラノヴァ」はダリアのように
咲くデコラ咲。
■ライスフラワー キク科/半耐寒性常緑低木/《名前の由
来》花が米粒に似ていることから/カサカサとした質感の花で、
ドライフラワーにも適す。花色は今回使用のピンクの他、白色も
ある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2642.jpg