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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.266 − 較 (くらべる) −
信夫の里では、桜に競うように辛夷(コブシ)、木蓮(モクレン)、連翹(レンギョウ)、木瓜(ボケ)、時を知り、次々と咲き出しています。ラッパ水仙や菜の花の黄、大地を華やかにしています。
引っ越しの季節、家具をトラックに積み込んだり、運び出している風景がみられます。
作業している方々、動きが、きびきびしており、笑顔もあります。この風景、春の季語になります。
運ばれている椅子、脚が短く切られています。身長、靴を履いての屋内の生活、彼我の違いを考えるとやむを得ません。只、椅子の美しさという点からみると、製作者が顔をしかめているのが目に浮かびます。
椅子をみていると、職業柄、疲れない、座り心地の良い椅子とは何かを考えてしまいます。
椅子が権威の象徴であり、王族など貴族階級の専有物であったのは、昔のことではありません。「チェアマン」「大統領の椅子(座)を狙う」などの言い方は、その名残です。
椅子の普及は、あまり昔ではありません。19世紀、ミヒャエル・トーネットの曲木(まげき)の椅子の出現が契機とされています。どこにでも自生している木を自在に加工できる技術の出現です。
その結果、庶民でも椅子が手に入るようになったのです。暮らしの文化史上、革命です。
わが国で、家庭に椅子がみられるようになったのは高度成長期です。
椅子に接する最初は、学校です。小学校でのごつい木の椅子、今でも記憶に刻まれています。
「座る」を考えると、欧州と我が国の受け止め方には大きな違いがあります。
欧州では、立つ姿勢が、服装と同様、生活の基本です。最近まで「立ち机」があった程です。
我が国では座ることが基本です。
武道、芸能、禅、茶道などにそれをみてとれます。我が国の家屋、座の視点からの設(しつら)えです。
例えば、庭です。部屋から庭を眺める時、下は床や敷居(しきい)、上は長押(なげし)、両脇は柱で切り取って、絵画として鑑賞します。その時の視点は、座位です。
座位の姿勢は、正座、あぐら、結跏趺坐(けっかふざ)です。書斎で文机(ふづくえ)に向かって仕事をする時、正座か、座禅に用いる座蒲(ざぶ)を尻の下に入れて、胡坐(あぐら)をかいています。
座る時の姿勢の理想像は、座位をとっている仏像を横からみた姿です。
安定感のある坐像の座り方、憧れです。
座る文化のわが国で、広く椅子が用いられるようにはならなかったのは何故(なぜ)でしょうか。
なっているのではないか、という声が聞こえてきそうです。しかし、ソファーの前に座り、ソファーを背もたれにして胡座(あぐら)をかいているお父さんの姿、我が国の家庭でよくみる風景です。
暮らしの空間は「座る」ことを基本にして設(しつら)えられています。
日本人は、腰幅337ミリ、肩幅400ミリを標準に計算されているそうです。
例えば、新幹線の座席は450ミリです。鞄(かばん)も膝の上に載せられるように幅440ミリ前後です。
椅子を愛する男は、文房具と同様に、多くいます。
そんな男達にとって究極の椅子はチャールズ・イームズのラウンジチェアとル・コルビュジェのグランコンフォールでしょう。
ル・コルビュジェの終の棲家(すみか)となったコート・ダジュールの家は、鴨長明や吉田兼好など、世捨て人の庵と同じです。その家の椅子は縦、高さ430ミリと、箱のような体裁です。
削ぎ取った後に残るもの、今も昔も変りません。
4月14日(1964年、昭和39年)、環境問題に人々の関心を向けさせた偉大な科学者レイチェル・カーソンが亡くなっています。享年56の生涯です。
今週の花材は、両室とも薄い紅が透明感を伴った春の暖かさを象徴しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
引っ越しの季節、家具をトラックに積み込んだり、運び出している風景がみられます。
作業している方々、動きが、きびきびしており、笑顔もあります。この風景、春の季語になります。
運ばれている椅子、脚が短く切られています。身長、靴を履いての屋内の生活、彼我の違いを考えるとやむを得ません。只、椅子の美しさという点からみると、製作者が顔をしかめているのが目に浮かびます。
椅子をみていると、職業柄、疲れない、座り心地の良い椅子とは何かを考えてしまいます。
椅子が権威の象徴であり、王族など貴族階級の専有物であったのは、昔のことではありません。「チェアマン」「大統領の椅子(座)を狙う」などの言い方は、その名残です。
椅子の普及は、あまり昔ではありません。19世紀、ミヒャエル・トーネットの曲木(まげき)の椅子の出現が契機とされています。どこにでも自生している木を自在に加工できる技術の出現です。
その結果、庶民でも椅子が手に入るようになったのです。暮らしの文化史上、革命です。
わが国で、家庭に椅子がみられるようになったのは高度成長期です。
椅子に接する最初は、学校です。小学校でのごつい木の椅子、今でも記憶に刻まれています。
「座る」を考えると、欧州と我が国の受け止め方には大きな違いがあります。
欧州では、立つ姿勢が、服装と同様、生活の基本です。最近まで「立ち机」があった程です。
我が国では座ることが基本です。
武道、芸能、禅、茶道などにそれをみてとれます。我が国の家屋、座の視点からの設(しつら)えです。
例えば、庭です。部屋から庭を眺める時、下は床や敷居(しきい)、上は長押(なげし)、両脇は柱で切り取って、絵画として鑑賞します。その時の視点は、座位です。
座位の姿勢は、正座、あぐら、結跏趺坐(けっかふざ)です。書斎で文机(ふづくえ)に向かって仕事をする時、正座か、座禅に用いる座蒲(ざぶ)を尻の下に入れて、胡坐(あぐら)をかいています。
座る時の姿勢の理想像は、座位をとっている仏像を横からみた姿です。
安定感のある坐像の座り方、憧れです。
座る文化のわが国で、広く椅子が用いられるようにはならなかったのは何故(なぜ)でしょうか。
なっているのではないか、という声が聞こえてきそうです。しかし、ソファーの前に座り、ソファーを背もたれにして胡座(あぐら)をかいているお父さんの姿、我が国の家庭でよくみる風景です。
暮らしの空間は「座る」ことを基本にして設(しつら)えられています。
日本人は、腰幅337ミリ、肩幅400ミリを標準に計算されているそうです。
例えば、新幹線の座席は450ミリです。鞄(かばん)も膝の上に載せられるように幅440ミリ前後です。
椅子を愛する男は、文房具と同様に、多くいます。
そんな男達にとって究極の椅子はチャールズ・イームズのラウンジチェアとル・コルビュジェのグランコンフォールでしょう。
ル・コルビュジェの終の棲家(すみか)となったコート・ダジュールの家は、鴨長明や吉田兼好など、世捨て人の庵と同じです。その家の椅子は縦、高さ430ミリと、箱のような体裁です。
削ぎ取った後に残るもの、今も昔も変りません。
4月14日(1964年、昭和39年)、環境問題に人々の関心を向けさせた偉大な科学者レイチェル・カーソンが亡くなっています。享年56の生涯です。
今週の花材は、両室とも薄い紅が透明感を伴った春の暖かさを象徴しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■花蘇芳(ハナズオウ) マメ科/落葉低木/葉が芽吹
く前に紅紫色の花を枝いっぱいにつける。花期は4月で、蝶
を思わせる花形。白色の花を咲かせる白花花蘇芳(シロバ
ナハナズオウ)もある。
■OHユリ〔パラソル〕 ユリ科/球根植物/カサブランカ
と同じオリエンタルハイブリッド(OH)種。OH種は大きく優雅
な花姿と芳香が特徴。「パラソル」は濃いピンク色。
■アンスリュウム〔スパイス〕 サトイモ科/常緑多年草
/光沢があり造花と見間違うような花。花弁のように見える
団扇のような部分は苞で、主に苞を鑑賞。「スパイス」は赤
×緑のバイカラー品種。
■ユーカリ〔グニユーカリ〕 フトモモ科/常緑高木/コア
ラの食べる木として有名。オーストラリアを中心に約600種
分布。切り花で流通するものはコアラが食べるユーカリとは
別の園芸種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2661.jpg
■花蘇芳(ハナズオウ) マメ科/落葉低木/葉が芽吹
く前に紅紫色の花を枝いっぱいにつける。花期は4月で、蝶
を思わせる花形。白色の花を咲かせる白花花蘇芳(シロバ
ナハナズオウ)もある。
■OHユリ〔パラソル〕 ユリ科/球根植物/カサブランカ
と同じオリエンタルハイブリッド(OH)種。OH種は大きく優雅
な花姿と芳香が特徴。「パラソル」は濃いピンク色。
■アンスリュウム〔スパイス〕 サトイモ科/常緑多年草
/光沢があり造花と見間違うような花。花弁のように見える
団扇のような部分は苞で、主に苞を鑑賞。「スパイス」は赤
×緑のバイカラー品種。
■ユーカリ〔グニユーカリ〕 フトモモ科/常緑高木/コア
ラの食べる木として有名。オーストラリアを中心に約600種
分布。切り花で流通するものはコアラが食べるユーカリとは
別の園芸種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2661.jpg
【秘書室】
■バラ〔ハロウィン〕 バラ科/落葉低木/古く
から親しまれ、現代でも人気の高い花。花色・花
形は多岐にわたり約2万種を超す。「ハロウィン」
は茶色がかったアンティークピンク。
■カーネーション〔ノビオバーガンディ〕 ナデシ
コ科/多年草/母の日に贈る花として古くから親
しまれる。「ノビオ」シリーズは紫やボルドーを基調
とした覆輪が綺麗な品種。「バーガンディ」の他、
「バイオレット」や「バタフライ」、「ハードロック」等が
ある。
■アンスリュウム〔スノー〕 (理事長室と同花材)
「スノー」は白色品種で寒期はグリーンがかる。
■ヒペリカム〔ココグランド〕 オトギリソウ科/
半常緑低木/花期は初夏で黄色い花が咲く。主
に花後の実を鑑賞するものとして流通。実色は赤
ピンク系を中心に白や緑もある。「ココグランド」は
茶色。
■ドラセナ〔コーディラインホワイト〕 リュウゼツ
ラン科/日本で流通する観葉植物の代表種。「コ
ーディラインホワイト」は青葉のコルジリネ。以前ド
ラセナ類に分類されていたことから現在も「ドラセ
ナ」の名で流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2662.jpg
■バラ〔ハロウィン〕 バラ科/落葉低木/古く
から親しまれ、現代でも人気の高い花。花色・花
形は多岐にわたり約2万種を超す。「ハロウィン」
は茶色がかったアンティークピンク。
■カーネーション〔ノビオバーガンディ〕 ナデシ
コ科/多年草/母の日に贈る花として古くから親
しまれる。「ノビオ」シリーズは紫やボルドーを基調
とした覆輪が綺麗な品種。「バーガンディ」の他、
「バイオレット」や「バタフライ」、「ハードロック」等が
ある。
■アンスリュウム〔スノー〕 (理事長室と同花材)
「スノー」は白色品種で寒期はグリーンがかる。
■ヒペリカム〔ココグランド〕 オトギリソウ科/
半常緑低木/花期は初夏で黄色い花が咲く。主
に花後の実を鑑賞するものとして流通。実色は赤
ピンク系を中心に白や緑もある。「ココグランド」は
茶色。
■ドラセナ〔コーディラインホワイト〕 リュウゼツ
ラン科/日本で流通する観葉植物の代表種。「コ
ーディラインホワイト」は青葉のコルジリネ。以前ド
ラセナ類に分類されていたことから現在も「ドラセ
ナ」の名で流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2662.jpg