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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.272 − 岐 (わかれる) −
中洲(なかす)、ニセアカシアが並木のようにつらなっています。花が多く、圧倒される迫力です。
道端、アザミが健気(けなげ)に咲いています。
郭公(カッコウ)が鶯(ウグイス)に交って鳴いています。
飛び交う鳥、燕(ツバメ)も居ます。
餌を銜(くわ)えて悠然と目の前を横切っていく鳥がいます。人が居ないかのような振る舞いです。
毛虫が道を横切っていました。
踏み潰されるのではと、上着の袖に乗せて反対側の草叢(くさむら)に届けました。
自然が、何事にも動じずに時を重ねていくなか、変わる世情、若かった時とは異なる顔を垣間(かいま)見ることがあります。
町中(まちなか)、テレビからの賑(にぎ)やかな声や音、違和感を拭(ぬぐ)えない時があります。
「御笑い」です。
私の知っている笑いの芸、主人公は生真面目です。良かれと思って懸命に動くのに噛(か)みあわず、悲劇に終わってしまいます。チャップリンにみるユーモア(おかしみ)とペーソス(哀感)を含んだ笑いです。自分を貶(おとし)めての笑いです。古典落語も同じです。
今の芸、“弱い者いじめ”にみえてしまいます。主人公は、安全なところに身を置いています。そこに、自らに置き換えて笑ったり、考えさせられたりすることはありません。
“大衆芸能(死語か)は、世情の鏡”と言われます。時代遅れの旧(ふる)い人間になってしまいました。
“左折渋滞”、タクシーの運転手さんから聞きました。赤信号を無視して渡る人が多いことが原因だそうです。
小走りで二〜三歩、軽く会釈して歩み過ぎていけば、それだけで運転する人の心も安らぐでしょうに。
道路での工事、警備の方、通り過ぎる時に“申し訳ありません”、“すみません”と声を掛けてくれます。
職業人として当然、と言ってしまえばそれまでです。しかし、声掛けに通行人が軽く会釈したり、一言返して通り過ぎると、交流が生まれます。それが、文化です。
“江戸しぐさ”、傘かしげ、肩引き、町中で、時々、遭遇します。電子端末に目を落としたままぶつかっても、平然と歩き去る人を目にします。目顔での挨拶、“御免なさい”の一言、これが文化です。
そんな事どもを考えていると、捨てられずにいる小さな木の額に入れたモノクロ写真が脳裡を過(よぎ)ります。今も書棚の隅に伏せて置いています。
そこには、卒業式の日に撮った2人の中学生が写っています。側に写っている友はもうこの世にはいません。
当時、これから待っているに違いない未来、それを全く知らない2人です。同級生がみんな同じ道を歩むことなんてありません。振り返れば、この時が人生の最初の岐(わか)れ道であったのです。
その後の人生を知ってしまった今、時の移ろいの速さを感じてしまいます。
彼より長く生きた分、多くの悲哀を経験しました。
美術展、奥村土牛の「吉野」、「醍醐」、華やいだ雰囲気が伝わってきます。
散り敷かれた花びらの平面と立体の書き分け、凡人には窺(うかが)い知れない努力と工夫です。
鈴木其一の「牡丹図」、円山応挙の「富士三保図屏風」、改めて彼等の特徴を知りました。
其一は、近代絵画と見紛う程です。
(vol.190 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=226)
応挙(vol.156 他)、彼と親交があったとされる蕪村(vol.97 他)との類似性を感じます。郷愁は共通です。
そして、単なる写実でない、例えば雪松図屏風(ゆきまつずびょうぶ・vol.156 他)と鳶鴉図(とびからすず)、奥に潜んでいる、勁(つよ)さ、厳しさ、切なさを感じます。
《円山応挙、雪松図屏風》
(vol.156 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=189)
(vol.209 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=246)
(vol.254 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=291)
《与謝蕪村》
(vol.97 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=125)
(vol.103 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=131)
(vol.115 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=144)
(vol.119 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=150)
(vol.194 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=230)
今週の花材は、深まる緑の中に鮮やかな色彩が埋め込まれています。クリスマスベルの優しげな姿…。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
道端、アザミが健気(けなげ)に咲いています。
郭公(カッコウ)が鶯(ウグイス)に交って鳴いています。
飛び交う鳥、燕(ツバメ)も居ます。
餌を銜(くわ)えて悠然と目の前を横切っていく鳥がいます。人が居ないかのような振る舞いです。
毛虫が道を横切っていました。
踏み潰されるのではと、上着の袖に乗せて反対側の草叢(くさむら)に届けました。
自然が、何事にも動じずに時を重ねていくなか、変わる世情、若かった時とは異なる顔を垣間(かいま)見ることがあります。
町中(まちなか)、テレビからの賑(にぎ)やかな声や音、違和感を拭(ぬぐ)えない時があります。
「御笑い」です。
私の知っている笑いの芸、主人公は生真面目です。良かれと思って懸命に動くのに噛(か)みあわず、悲劇に終わってしまいます。チャップリンにみるユーモア(おかしみ)とペーソス(哀感)を含んだ笑いです。自分を貶(おとし)めての笑いです。古典落語も同じです。
今の芸、“弱い者いじめ”にみえてしまいます。主人公は、安全なところに身を置いています。そこに、自らに置き換えて笑ったり、考えさせられたりすることはありません。
“大衆芸能(死語か)は、世情の鏡”と言われます。時代遅れの旧(ふる)い人間になってしまいました。
“左折渋滞”、タクシーの運転手さんから聞きました。赤信号を無視して渡る人が多いことが原因だそうです。
小走りで二〜三歩、軽く会釈して歩み過ぎていけば、それだけで運転する人の心も安らぐでしょうに。
道路での工事、警備の方、通り過ぎる時に“申し訳ありません”、“すみません”と声を掛けてくれます。
職業人として当然、と言ってしまえばそれまでです。しかし、声掛けに通行人が軽く会釈したり、一言返して通り過ぎると、交流が生まれます。それが、文化です。
“江戸しぐさ”、傘かしげ、肩引き、町中で、時々、遭遇します。電子端末に目を落としたままぶつかっても、平然と歩き去る人を目にします。目顔での挨拶、“御免なさい”の一言、これが文化です。
そんな事どもを考えていると、捨てられずにいる小さな木の額に入れたモノクロ写真が脳裡を過(よぎ)ります。今も書棚の隅に伏せて置いています。
そこには、卒業式の日に撮った2人の中学生が写っています。側に写っている友はもうこの世にはいません。
当時、これから待っているに違いない未来、それを全く知らない2人です。同級生がみんな同じ道を歩むことなんてありません。振り返れば、この時が人生の最初の岐(わか)れ道であったのです。
その後の人生を知ってしまった今、時の移ろいの速さを感じてしまいます。
彼より長く生きた分、多くの悲哀を経験しました。
美術展、奥村土牛の「吉野」、「醍醐」、華やいだ雰囲気が伝わってきます。
散り敷かれた花びらの平面と立体の書き分け、凡人には窺(うかが)い知れない努力と工夫です。
鈴木其一の「牡丹図」、円山応挙の「富士三保図屏風」、改めて彼等の特徴を知りました。
其一は、近代絵画と見紛う程です。
(vol.190 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=226)
応挙(vol.156 他)、彼と親交があったとされる蕪村(vol.97 他)との類似性を感じます。郷愁は共通です。
そして、単なる写実でない、例えば雪松図屏風(ゆきまつずびょうぶ・vol.156 他)と鳶鴉図(とびからすず)、奥に潜んでいる、勁(つよ)さ、厳しさ、切なさを感じます。
《円山応挙、雪松図屏風》
(vol.156 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=189)
(vol.209 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=246)
(vol.254 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=291)
《与謝蕪村》
(vol.97 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=125)
(vol.103 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=131)
(vol.115 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=144)
(vol.119 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=150)
(vol.194 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=230)
今週の花材は、深まる緑の中に鮮やかな色彩が埋め込まれています。クリスマスベルの優しげな姿…。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/新
緑・花期・紅葉と一年を通して楽しめる樹木。4
〜5月頃にベル型の小さな白い花が咲く。他に
赤花の「ベニバナドウダン」、縞模様の「サラサ
ドウダン」もある。
■ケイトウ〔ボンベイケイトウ〕 ヒユ科/一
年草/花期は6〜9月で、赤やピンク、オレン
ジ等の花穂を付ける。「ボンベイ」は花穂が扇
型になる品種。他に花穂の形状が異なる「羽
毛ケイトウ」や「久留米ケイトウ」もある。
■スカシユリ〔セラダ〕 ユリ科/球根植物
/《名前の由来》花弁の先端が広く付け根部
分が細くなり透けることから/カサブランカ等
の大輪品種に比べ、中輪咲きで花が小さく香
りも無い。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕 オトギリソ
ウ科/半常緑低木/花期は初夏で黄色い小
さな花が咲く。主に花後の実を楽しむものとし
て流通。「マジカルトリンプ」は実が大きい赤色
品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2721.jpg
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/新
緑・花期・紅葉と一年を通して楽しめる樹木。4
〜5月頃にベル型の小さな白い花が咲く。他に
赤花の「ベニバナドウダン」、縞模様の「サラサ
ドウダン」もある。
■ケイトウ〔ボンベイケイトウ〕 ヒユ科/一
年草/花期は6〜9月で、赤やピンク、オレン
ジ等の花穂を付ける。「ボンベイ」は花穂が扇
型になる品種。他に花穂の形状が異なる「羽
毛ケイトウ」や「久留米ケイトウ」もある。
■スカシユリ〔セラダ〕 ユリ科/球根植物
/《名前の由来》花弁の先端が広く付け根部
分が細くなり透けることから/カサブランカ等
の大輪品種に比べ、中輪咲きで花が小さく香
りも無い。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕 オトギリソ
ウ科/半常緑低木/花期は初夏で黄色い小
さな花が咲く。主に花後の実を楽しむものとし
て流通。「マジカルトリンプ」は実が大きい赤色
品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2721.jpg
【秘書室】
■サンダーソニア ユリ科/球根植物/細い茎にベル型の小さな
花が連なって咲く。オレンジ色でランプを灯したような可愛らしい花型。
原産地でクリスマス頃に咲く事から「クリスマスベル」の別名を持つ。
■ヒマワリ〔サンリッチオレンジ〕 キク科/一年草/もっとも有名な
夏の代表花。黄色系を中心にエンジや茶色など品種が豊富。「サンリ
ッチ」シリーズは花粉の出ない品種。
■ジンジャー ショウガ科/花のように見える鮮やかな赤い部分は
苞。花期は6〜10月で、苞の間から白い花が咲く。
■バラ〔カルピデューム〕 バラ科/落葉低木/古くから親しまれ、
世界的に生産量の多い人気花。花色・花形が多岐にわたり約2万種を
超す。「カルピデューム」はサーモンピンク〜オレンジ色でフリル咲。
■ナルコラン ユリ科/多年草/ライトグリーンの葉に白い斑が入
る涼しげな葉。4〜5月頃にスズランのような花が咲く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2722.jpg
■サンダーソニア ユリ科/球根植物/細い茎にベル型の小さな
花が連なって咲く。オレンジ色でランプを灯したような可愛らしい花型。
原産地でクリスマス頃に咲く事から「クリスマスベル」の別名を持つ。
■ヒマワリ〔サンリッチオレンジ〕 キク科/一年草/もっとも有名な
夏の代表花。黄色系を中心にエンジや茶色など品種が豊富。「サンリ
ッチ」シリーズは花粉の出ない品種。
■ジンジャー ショウガ科/花のように見える鮮やかな赤い部分は
苞。花期は6〜10月で、苞の間から白い花が咲く。
■バラ〔カルピデューム〕 バラ科/落葉低木/古くから親しまれ、
世界的に生産量の多い人気花。花色・花形が多岐にわたり約2万種を
超す。「カルピデューム」はサーモンピンク〜オレンジ色でフリル咲。
■ナルコラン ユリ科/多年草/ライトグリーンの葉に白い斑が入
る涼しげな葉。4〜5月頃にスズランのような花が咲く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2722.jpg