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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.281 − 悟 (さとる) −
梅雨明け、肌を刺すような日差し、淡紅や紅の百日紅(サルスベリ)が風に揺れています。
見上げると太陽に挑むような趣(おもむき)です。蝉が一斉に鳴き出し、熱さを際立たせています。
遥かな昔、法顕(ほっけん)が砂漠の熱さを、「悪鬼熱風、上に飛鳥なく、下に走獣なし」と記しています。現代の熱さで僅かに想像できます。
信夫の里は、盆地です。最高気温では、いつも全国の上位争いをしています。只、夜は、涼しくなります。川風が身体も心も涼しくしてくれます。
この時季の花、グラジオラス、来客用の部屋にはボランティアの方から届いた朱や赤紫、部屋が華やいでいます。自宅には青みがかった薄紫、心を静めてくれます。
毎年、ある患者さんをお見舞いに訪れます。この時季は、薄紫の薔薇(ブルームーン)を届けます。
冷気がしびれを増すというので、冷房を入れずにいる患者さんの身体と心に、この色が涼しさを届けてくれる事を願ってです。
先日、敬愛する友から蓮の花を鑑賞しながらの食事に誘われました。
蓮の花、万葉の昔から、日本人に美人の代名詞として愛されてきました。ざらついた日々の遣る瀬無さを思い遣っての友の優しさです。中国の磁器を思わせる完璧な造型、花弁の落ちる時に移ろいゆく儚さを感じます。
執筆や考え事をしている時、時には会議でも、音楽を流しています。
聴いている訳ではありません。只、先日、思わず聴き入ってしまいました。ビリー・ホリディの「恋は愚かと言うけれど」です。今まで何度も聴いているのに…。
彼女の嗄(しゃが)れた声、全盛期とは別人です。身も心もぼろぼろになり、死を間近にした人間の歌声です。
彼女の唄を聴いて、これを企画し、世に出した製作者、プロの凄みを感じます。
私には歌詞の意味は聞きとれません。しかし、そこには、少し大袈裟に言えば鬼気迫る、言葉の壁を越えて訴えてくる何かがあります。
同じような印象を持った演奏に、生前最後の録音となった、スタンゲッツの「ファーストソング」があります。
(vol.37 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=61)
楽器の演奏ですから、言葉(歌詞)は聴き手との間に入っていません。作曲者自身の演奏を含めて、他の演奏者の同じ曲を聴いても、同じ気配は感じられません。
「英語を母国語とする人にとっては、楽器の演奏でも心の裡で歌詞を歌いながら演奏している。そこが、日本人との違いで、彼我に大きな溝がある」、という意味のことを、昔、読んだことがあります。
そんな経験もあり、クラシックを含め外国語の歌詞の入っている楽曲には、中々、入っていけませんでした。
これらの曲の旋律、懐かしさと寂しさをあわせもっているのは確かです。只、それだけでない、この世を去り行く人の諦念のような気配を2人の演じ手に感じます。
暫(しば)し、手を休め、“移ろわぬ美”に思いを馳せてしまいました。
長谷川等伯の「松林図屏風」、観る度に心に迫ってきます。
(vol.11 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=26)
(vol.78 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=104)
(vol.251 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=288)
(vol.253 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=290)
奈良、簡素な本堂の秋篠寺、その中に佇んでいる伎芸天(vol.14)、若い時に出会い、夏や冬の休みを利用して、最寄りの駅から歩いて、何度も通いました。
(vol.14 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=29)
秋篠のみ寺を出でてかえり見る
生駒ヶ岳に日は落ちんとす
会津八一
(※編集註:原文ひらがな)
この歌の風景に何度も出会いました。
あれから長い年月が経ち、自分は年老いてしまいました。
しかし、出会った音楽、絵、仏像は、出会った時から変わっていません。“移ろわぬ物”、人生と対照的です。
人の世の儚さが心に迫ってきます。
今週の花材は、寒色系で涼やかさと緑で吹き渡る風を表現しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
見上げると太陽に挑むような趣(おもむき)です。蝉が一斉に鳴き出し、熱さを際立たせています。
遥かな昔、法顕(ほっけん)が砂漠の熱さを、「悪鬼熱風、上に飛鳥なく、下に走獣なし」と記しています。現代の熱さで僅かに想像できます。
信夫の里は、盆地です。最高気温では、いつも全国の上位争いをしています。只、夜は、涼しくなります。川風が身体も心も涼しくしてくれます。
この時季の花、グラジオラス、来客用の部屋にはボランティアの方から届いた朱や赤紫、部屋が華やいでいます。自宅には青みがかった薄紫、心を静めてくれます。
毎年、ある患者さんをお見舞いに訪れます。この時季は、薄紫の薔薇(ブルームーン)を届けます。
冷気がしびれを増すというので、冷房を入れずにいる患者さんの身体と心に、この色が涼しさを届けてくれる事を願ってです。
先日、敬愛する友から蓮の花を鑑賞しながらの食事に誘われました。
蓮の花、万葉の昔から、日本人に美人の代名詞として愛されてきました。ざらついた日々の遣る瀬無さを思い遣っての友の優しさです。中国の磁器を思わせる完璧な造型、花弁の落ちる時に移ろいゆく儚さを感じます。
執筆や考え事をしている時、時には会議でも、音楽を流しています。
聴いている訳ではありません。只、先日、思わず聴き入ってしまいました。ビリー・ホリディの「恋は愚かと言うけれど」です。今まで何度も聴いているのに…。
彼女の嗄(しゃが)れた声、全盛期とは別人です。身も心もぼろぼろになり、死を間近にした人間の歌声です。
彼女の唄を聴いて、これを企画し、世に出した製作者、プロの凄みを感じます。
私には歌詞の意味は聞きとれません。しかし、そこには、少し大袈裟に言えば鬼気迫る、言葉の壁を越えて訴えてくる何かがあります。
同じような印象を持った演奏に、生前最後の録音となった、スタンゲッツの「ファーストソング」があります。
(vol.37 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=61)
楽器の演奏ですから、言葉(歌詞)は聴き手との間に入っていません。作曲者自身の演奏を含めて、他の演奏者の同じ曲を聴いても、同じ気配は感じられません。
「英語を母国語とする人にとっては、楽器の演奏でも心の裡で歌詞を歌いながら演奏している。そこが、日本人との違いで、彼我に大きな溝がある」、という意味のことを、昔、読んだことがあります。
そんな経験もあり、クラシックを含め外国語の歌詞の入っている楽曲には、中々、入っていけませんでした。
これらの曲の旋律、懐かしさと寂しさをあわせもっているのは確かです。只、それだけでない、この世を去り行く人の諦念のような気配を2人の演じ手に感じます。
暫(しば)し、手を休め、“移ろわぬ美”に思いを馳せてしまいました。
長谷川等伯の「松林図屏風」、観る度に心に迫ってきます。
(vol.11 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=26)
(vol.78 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=104)
(vol.251 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=288)
(vol.253 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=290)
奈良、簡素な本堂の秋篠寺、その中に佇んでいる伎芸天(vol.14)、若い時に出会い、夏や冬の休みを利用して、最寄りの駅から歩いて、何度も通いました。
(vol.14 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=29)
秋篠のみ寺を出でてかえり見る
生駒ヶ岳に日は落ちんとす
会津八一
(※編集註:原文ひらがな)
この歌の風景に何度も出会いました。
あれから長い年月が経ち、自分は年老いてしまいました。
しかし、出会った音楽、絵、仏像は、出会った時から変わっていません。“移ろわぬ物”、人生と対照的です。
人の世の儚さが心に迫ってきます。
今週の花材は、寒色系で涼やかさと緑で吹き渡る風を表現しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/
新緑・花期・紅葉と一年を通して楽しめる樹木。
4〜5月頃にスズランのような小さな白い花が
咲く。生垣やシンボルツリーとしてなど、庭木
でも人気。
■トルコギキョウ〔セシルブルー〕 リンドウ
科/多年草/花の大きさや咲き方、花色がと
ても豊富な夏の花。品種改良が盛んで毎年多
くの新種が登場する。「セシルブルー」は濃紫
色で可憐な小輪一重咲。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン
玉のように真ん丸に咲く菊。一般的な菊と異な
り可愛らしく、お祝い用途によく利用される。
■エバーライト イソマツ科/多年草/ハイ
ブリッドスターチス(HBチース)の一種。HBチ
ースは宿根性スターチスをもとに異種間交雑し
たもの。よく分岐してボリュームがあり花付が
良い。「エバーライト」の他、「ブルーファンタジ
ア」や「ムーンライト」等ある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2811.jpg
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/
新緑・花期・紅葉と一年を通して楽しめる樹木。
4〜5月頃にスズランのような小さな白い花が
咲く。生垣やシンボルツリーとしてなど、庭木
でも人気。
■トルコギキョウ〔セシルブルー〕 リンドウ
科/多年草/花の大きさや咲き方、花色がと
ても豊富な夏の花。品種改良が盛んで毎年多
くの新種が登場する。「セシルブルー」は濃紫
色で可憐な小輪一重咲。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン
玉のように真ん丸に咲く菊。一般的な菊と異な
り可愛らしく、お祝い用途によく利用される。
■エバーライト イソマツ科/多年草/ハイ
ブリッドスターチス(HBチース)の一種。HBチ
ースは宿根性スターチスをもとに異種間交雑し
たもの。よく分岐してボリュームがあり花付が
良い。「エバーライト」の他、「ブルーファンタジ
ア」や「ムーンライト」等ある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2811.jpg
【秘書室】
■クルクマ〔プーディンマスターピース〕 ショウガ科/球根
植物/幾重にも重なり花弁のように見える部分は苞で、苞の
間に小さな花が咲く。暑さに強く夏でも花持ちが良く、水中花と
しても楽しめる。「プーディンマスターピース」は濃いピンク色。
■トルコギキョウ〔エグゼラベンダー〕 (理事長室と同花材)
「エグゼラベンダー」は存在感のある大輪八重咲。花弁が多く
フリンジが入り、赤みがかった紫色。
■ヒペリカム〔マジカルヴィクトリー〕 オトギリソウ科/半常
緑低木/花期は初夏で黄色い小さな花が咲く。主に花後の実
を楽しむものとして流通。「マジカルヴィクトリー」は爽やかなグ
リーンの実。
■モンステラ サトイモ科/蔓性植物/成長するにつれ、
葉に切れ込みや大きな穴が開く。独特なユニークな葉姿でイン
テリアグリーンとしても人気。
■キソケイ モクセイ科/常緑低木/花期は5〜7月頃で2
cm程の黄色い花が咲く。切り花では主に葉物として流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2812.jpg
■クルクマ〔プーディンマスターピース〕 ショウガ科/球根
植物/幾重にも重なり花弁のように見える部分は苞で、苞の
間に小さな花が咲く。暑さに強く夏でも花持ちが良く、水中花と
しても楽しめる。「プーディンマスターピース」は濃いピンク色。
■トルコギキョウ〔エグゼラベンダー〕 (理事長室と同花材)
「エグゼラベンダー」は存在感のある大輪八重咲。花弁が多く
フリンジが入り、赤みがかった紫色。
■ヒペリカム〔マジカルヴィクトリー〕 オトギリソウ科/半常
緑低木/花期は初夏で黄色い小さな花が咲く。主に花後の実
を楽しむものとして流通。「マジカルヴィクトリー」は爽やかなグ
リーンの実。
■モンステラ サトイモ科/蔓性植物/成長するにつれ、
葉に切れ込みや大きな穴が開く。独特なユニークな葉姿でイン
テリアグリーンとしても人気。
■キソケイ モクセイ科/常緑低木/花期は5〜7月頃で2
cm程の黄色い花が咲く。切り花では主に葉物として流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2812.jpg