HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2014.08.22

vol.283  − 甦 (よみがえる ) −

気がつけば、空には鱗雲(うろこぐも)、夜は虫の音、天地は既に秋の到来を告げています。

葉が風に翻(ひるがえ)り、葉裏をみせています。
白を帯びた薄緑の葉裏と深緑の葉表が一体となって、尚、強い陽射しの中で輝き、戦(そよ)いでます。

都心、ホテルの入口に置かれている巨大な円形のプランター、その中にハイビスカスを見つけました。
別なホテルでは芒(ススキ)です。

頭上、我が国最古の街路樹であるマロニエ(西洋栃の木)の葉、巨大な栗のような実がみてとれます。
足元、捩花(ネジハナ)の淡い紅です。道往く人に、今が晩夏であることを教えてくれています。

夏休みは、と問われると、若い頃から発表している国際学会が脳裡を過(よぎ)ります。欧米が夏休みに入る直前に開催されています。発表後に、無為に過ごせる場所で、数日の休暇を取ることを常としていました。

1980年代の米国、ボストン、無事に発表が終わり、ロブスターを目当てに街に出ました。
予定した店に行きつけず、たまたま目の前に立っていたホテルのボーイさんに尋ねました。彼が、「ここのレストランでおいしいロブスターを出してくれる」と言い、館内のレストランに案内してくれました。

引き継いだメートル・ド・テル(給仕長)、ごく自然に、奥の角の席に案内して下さいました。
通りすがりの観光客、予約無し、相手にされないのが普通です。彼は、こちらに何ら緊張を強いず、自然体の振舞いで応対して下さいました。

調度品が醸し出す雰囲気、従業員の物腰、高級なホテルであることは直(す)ぐ分かりました。
下手な英語に辛抱強く付き合って下さって、ロブスターの料理を味わう事が出来ました。改めてメニューに眼を遣ると、リッツ・カールトンと書いてあるのです。

驚きました。リッツ・カールトン・ボストンは、会社発祥の地です。しかも、米国の様々な歴史の舞台に登場するホテルです。このレストランのロブスター料理、看板料理(signature)です。
後日、色々な秘話(エピソード)に彩(いろど)られているホテルであることを知りました。

彼等の態度から、“一流”とは何かの一端を窺(うかが)うことができました。

イタリア、リビエラ海岸のポルトフィーノ、小さな漁村です。学会で発表後、数日をここで過ごしました。明日は帰国という日、朝食でのことです。
担当の若いボーイさんに、「明日からまたストレスに満ちた仕事に戻らなくてはならない。ここを離れたくない」と話しました。返ってきた彼の答えは、「セ・ラ・ヴィ」でした。「それが人生だ」というのです。

出会い、偶然で、一瞬です。
旅では、その土地の歴史的背景や民族事情に不案内では充分楽しめない、という偏見を持っています。そういう自分には、街自体や歴史的建造物は目的ではなく、街並みの雰囲気や風景、そこで暮らしている人々との出会いが、海外の旅なのです。
出会いの積み重ねが、今の自分の振る舞いの一端を形作っています。

心に涼を求めて、「涼風献上 絵とやきもので暑中お見舞い」展に足を運びました。扇風機もエアコンも持たなかった我が国の古人達は、色、意匠など様々な工夫で暑さを凌(しの)いでいたのが分かります。

都会でありながらここの庭園は起伏に富み、蝉(セミ)の鳴き声や虫の音が大気に満ち、深々とした樹々の緑が天を覆っています。
足元にはギボシ、色と姿が心の裡に涼風を吹き込んでくれます。

今週の花材は、執務室は田中一村を思わせる構図です。
   (vol.16 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=32
   (vol.63 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=89
秘書室の主役は鬼灯(ホオズキ)です。子供の頃、鬼灯で遊びました。鬼灯、お盆を連想させます。



(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)




今週の花


【理事長室】
■プロテア〔ビーナス〕   ヤマモガシ科/常緑低木/《名前の
由来》ギリシャ神話の海神プロテウスの名より。同属とは思えな
いほど変異種が多く、自由自在に変身できるプロテウスの名に
ちなんで/圧倒的な存在感を持つワイルドフラワー。花持ちが良
く、ドライフラワーにも適す。
■アナベル〔グリーンアナベル〕   ユキノシタ科/落葉低木/
小さな花が集まって手毬状に開花。緑色の蕾は開花につれ白
色に変化し20cm程の手毬になる。今回は満開に咲ききり白色
からグリーンに変化したものを使用。そのままドライにもなり、リ
ース等で利用される。
■タニワタリ   チャセンシダ科/常緑シダ植物/樹上や岩上
に着生するシダ植物。光沢のある鮮やかな緑色で、波打つ大き
な葉が特徴。今回は120cm程の特に大きい葉を使用。
■ドラセナ〔コーディラインアジアンレッド〕   リュウゼツラン科
/日本で流通する観葉植物の代表種。「アジアンレッド」は赤葉
で、正式にはコルジリネ。以前ドラセナ属に分類されていたこと
から現在も“ドラセナ”の名で流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2831.jpg

【秘書室】
■グロリオサ〔ニューレッド〕   ユリ科/球根
植物/花弁が反り返り、赤く燃える炎のような
花姿。半蔓性植物で支柱などに絡まって成長
するため、葉先が巻きヒゲになる。「ニューレッ
ド」は朱赤色。
■モカラ〔シティゴールド〕   ラン科/バン
ダ・アラクニス・アスコケントルムの3種の蘭を
交配した人工種。南国の花で暑さに強く花持
ちが良い。「シティゴールド」は黄色。
■ホオズキ   ナス科/多年草/赤い提灯
がぶら下がったような姿が可愛らしい。提灯の
ような袋は咢でその中にオレンジ色の丸い実
がある。お盆の頃に各地でホオズキ市が開か
れ夏の風物詩。もっとも有名なのは浅草の浅
草寺。
■アレカヤシ   ヤシ科/常緑高木/原種
は10m以上にもなる高木。1〜3mほどの幼
樹がインテリアグリーンとして流通。優雅に広
がる羽状葉が綺麗なトロピカルなグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2832.jpg

▲TOPへ