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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2014.09.05

vol.285  − 謝 (あやまる) −

道端や川岸に、萩(ハギ)、芒(ススキ)、芙蓉(フヨウ)、田圃(たんぼ)は黄色味を帯び、早場米は刈り入れが始まっています。草叢の中、黄、橙、薄紫の小さな蝶達が儚(はかな)げに舞っています。
大地の装いは、早や秋です。

果樹畑、緑葉の間から、林檎の紅と梨の黄色の実が顔を出しています。林檎と梨の色の綾錦(あやにしき)、みる者に華やぎを感じさせてくれます。

大地の緑、深みが頂点を極めています。しかし、その先端は萎(しお)れ始め、後退の影が忍び寄っています。
これから一雨ごとに、風は冷気を帯び、秋が深まっていきます。そぼ降る雨、夜半、吹き渡る風は、天地や草々を慎まし気にし、人間(ひと)の心は少し哀愁を帯びます。

         かなしきは秋風ぞかし稀にのみ
         湧きし涙の繁(しじ)に流るる
                           石川啄木

秋雨に濡れた樹木の葉が、水を含んだ緑のトンネルをなしています。雨上りの早朝、大学に向かう時、この下を通ります。ほの明るい気配、逸(はや)る心を、一時、凪(なぎ)にしてくれます。

毎年繰り返されている、海、山、川での死亡事故、「学習効果は遺伝しない」を実感させられます。

気候の劇変、地球の歴史からみれば、小さな変化かも知れません。地球を相手にしている友人は、地球温暖化という説に首を縦に振りません。時間軸の違いでしょうか。世の中、そう単純ではないということでしょう。

胸が痛むのは、用水路を点検に出掛けての死亡事故です。その多くは高齢の方です。自ら築き、あるいは先祖から受け継いだ、掛け替えのない田畑への水の供給路、そこには先人や自らの血、汗、涙が染み込んでいます。自分の分身なのです。
危ないと分かっていても、みに行かずにはいられなかった思い、発する言葉を失ってしまいます。

人間の倫理観や職業意識が、ときに、人をして、決然と、決死の行動をとらせます。
   (理事長室からの花だより vol.141 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=174
   (学長からの手紙 No.10 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/010.html

職業に伴う一途(いちず)な使命感を感じさせられたことが、先日、ありました。

病院玄関への道路の付け変え工事後の時です。
初日、相当な混乱が予想されました。6時過ぎ、出勤したところ、数人の職員が、敷地外の道路で既に準備にあたっていました。
診療の開始時刻、車やバスが続々と入ってきました。設計図では気付かなかった、想定されていない問題点が次々、持ち上がりました。
ボランティアの方々、関係職員が総出で、車椅子の介助を初め、何とか対応できました。体調の悪い職員まで、自らの意志で現場に出ていました。
只々、頭が下がります。勁(つよ)い志、その域に達していない自分です。

医療人は、自らの役割を果たしているので、この現場を目にしていません。只、医療人には、現場とは違う所で、自分達の仕事が支えられていることを、脳裡に思い描いて欲しいと願いました。他者への思い遣(や)りが生まれるからです。
「医療は医療人だけでは成立しない」、「目にみえることの他に、同じ位、目にみえないところで、多くの人々が医療の現場を支えている」ことに思いが至って欲しいのです。

9月1日(1923年、大正12年)、関東大震災の日です。甚大な被害、今、それを知る人は居ません。歴史となってしまいました。

9月5日(1905年、明治38年)日比谷焼き打ち事件が起きています。これが、近代日本の分岐点であったと言われています。歴史の分岐点は、その時代を生きていた人間には自覚されていません。歴史から学ぶ教えの一つです(黒岩比佐子「忘れえぬ声を聴く」)。

今週の花材は執務室は紫、秘書室は赤で、秋の二面性を表現しています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■りんどう   リンドウ科/多年草/秋の代表花で、野
草として古くから親しまれる。花色は青紫系を中心にピン
クや緑、複色もある。薬草としても知られ、根や茎根に健
胃作用がある。ピンク「みやこ」、白「ハイネスホワイト」
■クルクマ〔エメラルドパゴダ〕   ショウガ科/球根植
物/幾重にも重なり花弁のように見える部分は苞で、そ
の間に小さな花が咲く。花自体は目立たず、主に苞を鑑
賞する。「エメラルドパゴダ」は緑色。
■アンスリュウム〔シャンパン〕   サトイモ科/常緑多
年草/造花と見間違うような光沢のある花(苞)が特徴。
団扇(うちわ)の様な大きな苞と棒状の花序を持ち、暑さ
に強く花持ちが良い。「シャンパン」は白色で、夏はクリー
ム、冬はグリーンがかる。
■雪柳   バラ科/落葉低木/《名前の由来》花を散ら
した様が雪が降ったかのように見えることと、柳のように
しなやかな枝振りから/春に小さな白い花を枝いっぱい
に咲かせる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2851.jpg

【秘書室】
■ヒマワリ〔ビンセントネーブル〕   キク科/一年草/も
っとも有名な夏の代表花。黄色系を中心にエンジや茶色、
八重咲など品種が豊富。「ビンセント」シリーズは発色が良
く多弁で上向きに開花する。「ネーブル」の他、「タンジェリ
ン」や「ポメロ」、「クリアイエロー」等がある
■アナナス〔スタールージュ〕   パイナップル科/観賞
用の小さなパイナップル。水につけなくても1ヵ月程度楽し
める。
■ヒペリカム〔ファイヤーフレア〕   オトギリソウ科/半常
緑低木/花期は初夏で黄色い小さな花が咲く。主に花後
の実を楽しむものとして流通。実色は赤ピンクを中心にクリ
ームやグリーン、茶色もある。
■ドラセナ〔サンデリアーナバリケード〕   リュウゼツラン
科/笹のような細長い葉とストライプの斑が特徴。「バリケ
ード」は緑色が濃い品種。他に「サンデリアーナホワイト」
や「サンデリアーナゴールド」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2852.jpg

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