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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.287 − 過 (すぎる) −
蜩(ヒグラシ)の声を聞く間もなく、虫の音の時季になってしまいました。
一雨(ひとあめ)毎に秋が身近に感じられます。
秋雨(あきさめ)は、朝の霧、昼の虹をもたらし、人間(ヒト)を一時、詩人にしてくれます。
折節(おりふし)の移り変るこそ、ものごとにあはれなれ
徒然草19段
古人も季節の移り変わりは風情があると述べています。
「折節を知る」、日本人が自然との関(かか)わりのなかで、昔から大切にしてきた感覚です。
会津盆地の見渡す限りの田圃、一面の黄金色(こがねいろ)です。民謡「会津磐梯山」そのものの情景が眼前に展開されています。稲穂が垂れて、今や刈り取りを待つばかりです。
黄金色の田圃の中に一面の白い蕎麦の花、風に揺れています。少し寂し気です。
野菜や果物などの食材は、年中出廻っています。今や、季節の節目を感じさせる数少ない食材が、米であり蕎麦です。
季節の象徴が稲作だとすると、時代を象徴するのは人の作り出す風景です。
私の世代の人間にとっては、今尚、心の裡(うち)に生々しく在るのが、電柱です。送電線の鉄塔もです。
岸田劉生の「道路と土手と塀」、空の青と土の茶との対比が鮮やかです。影として描き込まれている電柱(電信柱)が気になります。
木村伊兵衛の作品に写っている電柱の佇まい、みる者に時代の空気を伝えてくれます。
今、景観上邪魔な存在だとして排除される事の多い電柱です。昔は木製でした。当時は、灯(あかり)をもたらしてくれる文明の象徴です。
停電も身近でした。激しい風雨の後、電線が垂れ下っている風景も珍しいことではありません。当時の、夕陽を浴びて長い影と共に写っている電柱のモノクロームの写真、時代の香りを写し取って余りあります。
高度成長期に入ると、首都圏に電気を送る鉄塔が山の尾根、田畑の中、河の上に屹立(きつりつ)するようになりました。視野の端から端まで鉄塔が整然と並んでいる風景も、今や、周囲の中に溶け込んでいます。
これらの風景、その裡、無くなる筈です。そして、いつの日か、時代を映している歌とともに、ある時代の象徴として、取り上げられ、語り継がれていくのでしょう。
今年も、水質日本一の折り紙の付いた荒川(須川)、上流に歩を進めると、霞堤(かすみてい)が、昔のまま使われています。
土の堤です。角は丸みを帯びて、自然の地勢のようにみえます。先人の知恵が今も利用されているのです。水天宮の石の小さな祠(ほこら)とともに、この河川が、荒れ川であったことを今に伝えています。
(vol.249 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=286)
「オルセー美術館展印象派の誕生−描くことの自由−」展、余りの人出にたじろぎ、早々に退散しました。
開拓者としてのマネ、最晩年の「ロシュホールの逃亡」、ひろしま美術館のルソーの「要塞の眺め」を連想させます。
(vol.154 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=187)
モネの「かささぎ」、シスレーの雪を描いた絵、彼等の求めた光や大気を描くという志(こころざし)、素人にも伝わってきます。
9月15日(1600、慶長5年)関ヶ原の戦いがありました。
今という時からみるから、勝敗は明らかなのです。今は、その時刻に、何処で、何が起こっていたかが、俯瞰(ふかん)しているかのように分かります。
只、それは“後知恵”です。当時は、乏しい情報の中、各々が命を賭けて決断していた筈です。
原発事故発生時の混乱を目の当たりにした人間には、当時の人々の決断や行動を嗤(わら)ったり批判は出来ません。
9月17日(1928、昭和3年)若山牧水が亡くなっています。享年43の生涯です。
今週の花材は、両室とも穏やかな静寂を感じさせます。このような心の佇まいであらねばと思います。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※来週の「理事長室からの花だより」は休載させていただきます。
10月3日(金)より連載再開いたします。
一雨(ひとあめ)毎に秋が身近に感じられます。
秋雨(あきさめ)は、朝の霧、昼の虹をもたらし、人間(ヒト)を一時、詩人にしてくれます。
折節(おりふし)の移り変るこそ、ものごとにあはれなれ
徒然草19段
古人も季節の移り変わりは風情があると述べています。
「折節を知る」、日本人が自然との関(かか)わりのなかで、昔から大切にしてきた感覚です。
会津盆地の見渡す限りの田圃、一面の黄金色(こがねいろ)です。民謡「会津磐梯山」そのものの情景が眼前に展開されています。稲穂が垂れて、今や刈り取りを待つばかりです。
黄金色の田圃の中に一面の白い蕎麦の花、風に揺れています。少し寂し気です。
野菜や果物などの食材は、年中出廻っています。今や、季節の節目を感じさせる数少ない食材が、米であり蕎麦です。
季節の象徴が稲作だとすると、時代を象徴するのは人の作り出す風景です。
私の世代の人間にとっては、今尚、心の裡(うち)に生々しく在るのが、電柱です。送電線の鉄塔もです。
岸田劉生の「道路と土手と塀」、空の青と土の茶との対比が鮮やかです。影として描き込まれている電柱(電信柱)が気になります。
木村伊兵衛の作品に写っている電柱の佇まい、みる者に時代の空気を伝えてくれます。
今、景観上邪魔な存在だとして排除される事の多い電柱です。昔は木製でした。当時は、灯(あかり)をもたらしてくれる文明の象徴です。
停電も身近でした。激しい風雨の後、電線が垂れ下っている風景も珍しいことではありません。当時の、夕陽を浴びて長い影と共に写っている電柱のモノクロームの写真、時代の香りを写し取って余りあります。
高度成長期に入ると、首都圏に電気を送る鉄塔が山の尾根、田畑の中、河の上に屹立(きつりつ)するようになりました。視野の端から端まで鉄塔が整然と並んでいる風景も、今や、周囲の中に溶け込んでいます。
これらの風景、その裡、無くなる筈です。そして、いつの日か、時代を映している歌とともに、ある時代の象徴として、取り上げられ、語り継がれていくのでしょう。
今年も、水質日本一の折り紙の付いた荒川(須川)、上流に歩を進めると、霞堤(かすみてい)が、昔のまま使われています。
土の堤です。角は丸みを帯びて、自然の地勢のようにみえます。先人の知恵が今も利用されているのです。水天宮の石の小さな祠(ほこら)とともに、この河川が、荒れ川であったことを今に伝えています。
(vol.249 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=286)
「オルセー美術館展印象派の誕生−描くことの自由−」展、余りの人出にたじろぎ、早々に退散しました。
開拓者としてのマネ、最晩年の「ロシュホールの逃亡」、ひろしま美術館のルソーの「要塞の眺め」を連想させます。
(vol.154 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=187)
モネの「かささぎ」、シスレーの雪を描いた絵、彼等の求めた光や大気を描くという志(こころざし)、素人にも伝わってきます。
9月15日(1600、慶長5年)関ヶ原の戦いがありました。
今という時からみるから、勝敗は明らかなのです。今は、その時刻に、何処で、何が起こっていたかが、俯瞰(ふかん)しているかのように分かります。
只、それは“後知恵”です。当時は、乏しい情報の中、各々が命を賭けて決断していた筈です。
原発事故発生時の混乱を目の当たりにした人間には、当時の人々の決断や行動を嗤(わら)ったり批判は出来ません。
9月17日(1928、昭和3年)若山牧水が亡くなっています。享年43の生涯です。
今週の花材は、両室とも穏やかな静寂を感じさせます。このような心の佇まいであらねばと思います。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※来週の「理事長室からの花だより」は休載させていただきます。
10月3日(金)より連載再開いたします。
今週の花
【理事長室】
■パフィオペディ〔ロビンフッド〕 ラン科/
《名前の由来》ギリシャ語の“パフィア”(ヴィー
ナス)と“ペディロン”(サンダル・上靴)の2語
からで、“ヴィーナスのスリッパ”という意味。
花弁の一部が袋状になることに由来/袋状に
なる唇弁が印象的で目を引くユニークな花姿。
「ロビンフッド」はシックなワインレッド色。
■シンフォリカルポス〔マジカルブライド〕
スイカズラ科/落葉低木/《名前の由来》ギリ
シャ語の“symphorein”(ともに生ずる)と“ka
rpos”(果実)の2語から。果実が房状になっ
ていることから/花期は7〜9月で、秋に真珠
のような実をつける。
■菊〔ドラクロア〕 キク科/多年草/ダリ
アのように見えるデコラ咲の菊。仏事に限らず
幅広く利用される品種。「ドラクロア」は赤色。
■アンスリュウム〔チアーズ〕 サトイモ科
/常緑多年草/光沢のある団扇の様な苞と
棒状の花序を持つ。苞を鑑賞するため、非常
に長く楽しめる。「チアーズ」は淡いピンク色。
■ドラセナ〔コーディラインレッド〕 リュウゼツ
ラン科/日本で流通する観葉植物の代表種。
「アジアンレッド」は赤葉で、正式にはドラセナ
ではなく「コルジリネ」。
■セダム〔オータムジョイ〕 ベンケイソウ科
/肉厚な葉を持ち、耐寒性耐暑性があり乾燥
にも強い。「オータムジョイ」は開花が進むにつ
れピンクに色付く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2871.jpg
■パフィオペディ〔ロビンフッド〕 ラン科/
《名前の由来》ギリシャ語の“パフィア”(ヴィー
ナス)と“ペディロン”(サンダル・上靴)の2語
からで、“ヴィーナスのスリッパ”という意味。
花弁の一部が袋状になることに由来/袋状に
なる唇弁が印象的で目を引くユニークな花姿。
「ロビンフッド」はシックなワインレッド色。
■シンフォリカルポス〔マジカルブライド〕
スイカズラ科/落葉低木/《名前の由来》ギリ
シャ語の“symphorein”(ともに生ずる)と“ka
rpos”(果実)の2語から。果実が房状になっ
ていることから/花期は7〜9月で、秋に真珠
のような実をつける。
■菊〔ドラクロア〕 キク科/多年草/ダリ
アのように見えるデコラ咲の菊。仏事に限らず
幅広く利用される品種。「ドラクロア」は赤色。
■アンスリュウム〔チアーズ〕 サトイモ科
/常緑多年草/光沢のある団扇の様な苞と
棒状の花序を持つ。苞を鑑賞するため、非常
に長く楽しめる。「チアーズ」は淡いピンク色。
■ドラセナ〔コーディラインレッド〕 リュウゼツ
ラン科/日本で流通する観葉植物の代表種。
「アジアンレッド」は赤葉で、正式にはドラセナ
ではなく「コルジリネ」。
■セダム〔オータムジョイ〕 ベンケイソウ科
/肉厚な葉を持ち、耐寒性耐暑性があり乾燥
にも強い。「オータムジョイ」は開花が進むにつ
れピンクに色付く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2871.jpg
【秘書室】
■りんどう〔サマーハイジ〕 リンドウ科/多年草/秋の代表華で野草とし
て古くから親しまれる。根や茎根に健胃作用があり薬草としても知られる。
「サマーハイジ」はピンク色で、明るいところでは開花する。
■クルクマ ショウガ科/球根植物/幾重にも重なり花弁のように見え
る苞をもち、その間に小さな花が咲く。花自体は目立たず苞を鑑賞する。今
回はミニタイプの可愛いクルクマを使用。
■千日紅〔ローズネオン〕 ヒユ科/一年草/《名前の由来》紅色が長く
色褪せないことから/小花を密集した球状の頭状花序をつける。綺麗に花
色が残り、ドライフラワーにしても楽しめる。「ローズネオン」は紫色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2872.jpg
■りんどう〔サマーハイジ〕 リンドウ科/多年草/秋の代表華で野草とし
て古くから親しまれる。根や茎根に健胃作用があり薬草としても知られる。
「サマーハイジ」はピンク色で、明るいところでは開花する。
■クルクマ ショウガ科/球根植物/幾重にも重なり花弁のように見え
る苞をもち、その間に小さな花が咲く。花自体は目立たず苞を鑑賞する。今
回はミニタイプの可愛いクルクマを使用。
■千日紅〔ローズネオン〕 ヒユ科/一年草/《名前の由来》紅色が長く
色褪せないことから/小花を密集した球状の頭状花序をつける。綺麗に花
色が残り、ドライフラワーにしても楽しめる。「ローズネオン」は紫色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2872.jpg