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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.289 − 歎 (なげく) −
秋、こよなく美しく、切なくなる季節です。
会津盆地、稲刈りが終わり、時雨(しぐれ)です。信夫の里、並木のハナミズキ、葉は赤く染まり、柿やリンゴがたわわに実っています。秋深しです。
朝晩、風は冷たく、胸の裡(うち)まで冷え冷えとしてきます。
夕焼け、黒々と染まっていく街並み、その中に灯(あかり)、人間(ヒト)恋しくなります。
欧州に続き、米国への出張です。
スウェーデンと米国、祖国と大気の潤(うるお)いが違います。潤いが、日本の四季を確かなものにしています。大気の違い、自然だけで造り出されている北欧と米国の風景、自然と人間が折り合って作り出している我が国の情景、そこに住む人々の文化や心情にまで影響を与えているに違いありません。
ニューヨーク中心部から30分、そこは樹海です。縹色(はなだいろ)の空の下、木々の葉擦れの音と肌をなでる冷たさ、風が吹き渡っているのを知ります。
摩天楼、樹海からの日の出、米国の広大さを思い知らされました。
目的のメトロポリタン美術館、館長以外の幹部は皆女性でした。会談を含めての仕事、彼女等の身のこなし、表情、話し方、聡明(そうめい)という言葉がぴったりです。今回の出張で最も印象的でした。
出張を通じて、各国の季節に触れ、「折節(おりふし)を知る」、自然や出会った人をもてなす心、和の美を改めて考えさせられました。自然に寄り添い、自然に還る営み、変わらずに持ち続けていきたい伝統です。
北風(ほくふう)白雲(はくうん)を吹く
万里(ばんり)河汾(かふん)を渡る
心緒(しんしょ)揺落(ようらく)に逢い
秋声(しゅうせい)聞くべからず
蘇頲(そてい)
澄み切った空の下、 雲が風に流されてゆきます。 長い旅路のなかで、落葉をみ、物音を聞くと物悲しくなります。
秋に旅愁を感じるのは、古今東西、変わりないようです。
欧州への旅では、改めて日本人の仕事に対する誠実さ、正確さ、迅速さを知りました。
as soon as possible(出来るだけ早く)、a couple of minutes(2、3分)は、1時間以上です。
EU内の国際線、客室乗務員の離陸中での雑談、乗客の客席間違いを嗤(わら)いあっているふしだらな姿…。これが、昔、我々が憧れた西洋か…。
税関の対応、我が国では流れが滞留しないような臨機応変の職員の配置、それに引き替えて…、我が国の良さを改めて教えられました。
この時季、新酒が話題になります。
日本酒、杜氏(とうじ)、酒造メーカーのオーナーにも外国人が居る時代です。Sakeの時代になりました。
庶民が酒を飲む場と言えば、昔も今も、居酒屋です。江戸時代(寛延年間、9代将軍徳川家重の時代)には、居酒屋という名称が使われているとのことです。今、人気の立ち飲みが、原初の姿のようです。
女性が少なく、男性優位の江戸では、食事も賄えるように酒の肴(さかな)として、食物もだすようになりました。その様子は浮世絵にも描かれています。
修業時代、自転車で通勤の帰り、時々、独り、馴染みの小料理屋で遅い食事をしていました。
将来に何の希望も持てず、鬱々としていた時代です。女将さん、仲居さん、板前さんに愚痴を聞いてもらっていました。今は3人とも逝(い)ってしまい、この世には居ません。すべてが過ぎ去っていってしまいます。
独り考えて動いている今、あの時のような居心地のいい店を探したり、聞いたりしています。しかし、最早、探す時間も気力も残っておらず、理想の居酒屋を頭の中で作って、自らを慰めています。
日向燗の酒、煮付けの魚、そして話相手になってくれる相方が居れば、理想です。
今週の花材は、両室とも少し寂し気な秋の気配です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
会津盆地、稲刈りが終わり、時雨(しぐれ)です。信夫の里、並木のハナミズキ、葉は赤く染まり、柿やリンゴがたわわに実っています。秋深しです。
朝晩、風は冷たく、胸の裡(うち)まで冷え冷えとしてきます。
夕焼け、黒々と染まっていく街並み、その中に灯(あかり)、人間(ヒト)恋しくなります。
欧州に続き、米国への出張です。
スウェーデンと米国、祖国と大気の潤(うるお)いが違います。潤いが、日本の四季を確かなものにしています。大気の違い、自然だけで造り出されている北欧と米国の風景、自然と人間が折り合って作り出している我が国の情景、そこに住む人々の文化や心情にまで影響を与えているに違いありません。
ニューヨーク中心部から30分、そこは樹海です。縹色(はなだいろ)の空の下、木々の葉擦れの音と肌をなでる冷たさ、風が吹き渡っているのを知ります。
摩天楼、樹海からの日の出、米国の広大さを思い知らされました。
目的のメトロポリタン美術館、館長以外の幹部は皆女性でした。会談を含めての仕事、彼女等の身のこなし、表情、話し方、聡明(そうめい)という言葉がぴったりです。今回の出張で最も印象的でした。
出張を通じて、各国の季節に触れ、「折節(おりふし)を知る」、自然や出会った人をもてなす心、和の美を改めて考えさせられました。自然に寄り添い、自然に還る営み、変わらずに持ち続けていきたい伝統です。
北風(ほくふう)白雲(はくうん)を吹く
万里(ばんり)河汾(かふん)を渡る
心緒(しんしょ)揺落(ようらく)に逢い
秋声(しゅうせい)聞くべからず
蘇頲(そてい)
澄み切った空の下、 雲が風に流されてゆきます。 長い旅路のなかで、落葉をみ、物音を聞くと物悲しくなります。
秋に旅愁を感じるのは、古今東西、変わりないようです。
欧州への旅では、改めて日本人の仕事に対する誠実さ、正確さ、迅速さを知りました。
as soon as possible(出来るだけ早く)、a couple of minutes(2、3分)は、1時間以上です。
EU内の国際線、客室乗務員の離陸中での雑談、乗客の客席間違いを嗤(わら)いあっているふしだらな姿…。これが、昔、我々が憧れた西洋か…。
税関の対応、我が国では流れが滞留しないような臨機応変の職員の配置、それに引き替えて…、我が国の良さを改めて教えられました。
この時季、新酒が話題になります。
日本酒、杜氏(とうじ)、酒造メーカーのオーナーにも外国人が居る時代です。Sakeの時代になりました。
庶民が酒を飲む場と言えば、昔も今も、居酒屋です。江戸時代(寛延年間、9代将軍徳川家重の時代)には、居酒屋という名称が使われているとのことです。今、人気の立ち飲みが、原初の姿のようです。
女性が少なく、男性優位の江戸では、食事も賄えるように酒の肴(さかな)として、食物もだすようになりました。その様子は浮世絵にも描かれています。
修業時代、自転車で通勤の帰り、時々、独り、馴染みの小料理屋で遅い食事をしていました。
将来に何の希望も持てず、鬱々としていた時代です。女将さん、仲居さん、板前さんに愚痴を聞いてもらっていました。今は3人とも逝(い)ってしまい、この世には居ません。すべてが過ぎ去っていってしまいます。
独り考えて動いている今、あの時のような居心地のいい店を探したり、聞いたりしています。しかし、最早、探す時間も気力も残っておらず、理想の居酒屋を頭の中で作って、自らを慰めています。
日向燗の酒、煮付けの魚、そして話相手になってくれる相方が居れば、理想です。
今週の花材は、両室とも少し寂し気な秋の気配です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■アロニア〔アルブティフォリア〕 バラ科/落葉低
木/別名:チョコベリー・チョークベリー/白色の花を咲
かせ、ブルーベリーに似た実を房状に付ける。「アルブ
ティフォリア」は赤実で、他に黒や黒紫の品種もある。
生食では苦味が強く、ジャムや果実酒など加工食に向
く。
■大輪ユリ〔シベリア〕 ユリ科/球根植物/一番
有名なユリ「カサブランカ」と同じオリエンタルハイブリッ
ド種。大きく優雅な花姿と芳香が特徴。「シベリア」は白
色の人気種。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/新緑・花
期・紅葉と一年を通して楽しめる樹木。4〜5月頃にス
ズランのような小さな白い花が咲く。生垣やシンボルツ
リーなど、庭木としても人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2891.jpg
■アロニア〔アルブティフォリア〕 バラ科/落葉低
木/別名:チョコベリー・チョークベリー/白色の花を咲
かせ、ブルーベリーに似た実を房状に付ける。「アルブ
ティフォリア」は赤実で、他に黒や黒紫の品種もある。
生食では苦味が強く、ジャムや果実酒など加工食に向
く。
■大輪ユリ〔シベリア〕 ユリ科/球根植物/一番
有名なユリ「カサブランカ」と同じオリエンタルハイブリッ
ド種。大きく優雅な花姿と芳香が特徴。「シベリア」は白
色の人気種。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/新緑・花
期・紅葉と一年を通して楽しめる樹木。4〜5月頃にス
ズランのような小さな白い花が咲く。生垣やシンボルツ
リーなど、庭木としても人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2891.jpg
【秘書室】
■風船唐綿(フウセントウワタ) ガガイモ科/花期は夏で小さな白
い花が咲く。トゲトゲした紙風船のような実を鑑賞する。晩秋に実が熟す
と、割れて種子があらわれる。
■クルクマ ショウガ科/球根植物/幾重にも重なり花弁のように見
える部分は苞。花は苞の間に咲く。主に苞を楽しむ為、鑑賞期間が長い。
■コニカル ナス科/観賞用のトウガラシの一種。艶やかな丸い実を
たくさん付ける。今回は黒を使用、他に赤や黄色、オレンジなどもある。
■クロトン トウダイグサ科/常緑低木/肉厚な葉で葉色・葉形が多
岐にわたり品種が豊富。沖縄などの暖地では生垣などにも利用される。
切花としても丈夫で、長期間綺麗な葉色が楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2892.jpg
■風船唐綿(フウセントウワタ) ガガイモ科/花期は夏で小さな白
い花が咲く。トゲトゲした紙風船のような実を鑑賞する。晩秋に実が熟す
と、割れて種子があらわれる。
■クルクマ ショウガ科/球根植物/幾重にも重なり花弁のように見
える部分は苞。花は苞の間に咲く。主に苞を楽しむ為、鑑賞期間が長い。
■コニカル ナス科/観賞用のトウガラシの一種。艶やかな丸い実を
たくさん付ける。今回は黒を使用、他に赤や黄色、オレンジなどもある。
■クロトン トウダイグサ科/常緑低木/肉厚な葉で葉色・葉形が多
岐にわたり品種が豊富。沖縄などの暖地では生垣などにも利用される。
切花としても丈夫で、長期間綺麗な葉色が楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2892.jpg