HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2014.10.31

vol.291  − 暮 (くらす) −

車窓からみる田圃(たんぼ)、刈り取りの終わった大地は黄色味を帯びています。その姿、人間と同じように、一仕事を終えほっとしているようにみえます。

帰宅、山茶花(サザンカ)がいくつか、満開で迎えてくれました。白の初々しさ、中心に黄色の花芯のせいでしょうか、形、色、宋の白磁、藤田嗣治やユトリロ(vol.62、86、235)の白とは違う、可憐さです。
         (vol.62 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=88
         (vol.86 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=112
         (vol.235 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=272

落ち葉が、道路際で風に舞う様(さま)、風流と思う一方、始末に金が掛かると考えている自分が居ます。

一雨毎に、風景は寂しさを増し、静寂が朝夕の暗さを支配しています。
日捲(ひめく)り暦も薄くなってきました。時の過ぎ往く早さに、たじろぎます。

“新なる事は新しい事を見付ける”、いつもと違う河川敷を歩いてそう感じました。

福島の市街地は、河川を中心に形成されていません。地勢上の理由や維新後の歴史が関わっています。只、それだけでない何かがあるのではと思っていました。

川の辺(ほとり)に、祠(ほこら)や水難の碑が立っています。
由来を読むと、江戸時代の中頃、大正時代と、度々、街を壊滅させる程の水害があったようです。人々は、“暴れ川”を避けるように川から離れる如くに街を広げていったようです。

震災の後、被害を受けた家屋が取り壊された更地が目立ちます。住民は去ってしまっています。

呼び戻すことも然(さ)ることながら、今残って頑張っている人々に報いるという視点も大切です。同時に、住む、訪れる、何(いず)れでも、新たな人々をどう招くか、素人目にも、思い切った対策が必要です。
そうしないと、残って、黙々と頑張っている人々が報われません。

原発事故に向き合って4年目も半ばを過ぎました。先日、第3回の県民の健康を護(まも)る国際会議が開催されました。海外の出席者達から、本学の報告に対して、最大級の労(ねぎら)いと賛辞が寄せられました。最前線で頑張っている職員の頑張り、誇りを感じました。

原発事故で、日々、求められる役割を果たしていると、「生きる」、「人生」、「人類の歴史」を考えざるを得ません。
一瞬の「人間の一生」はもとより、人類の歴史も、地球規模でみると、天変地異で左右されてしまいます。人間の生命(いのち)は、移ろいゆく、儚(はかな)いものです。

我が国では奥州藤原氏の繁栄、海外では民族の大移動、フランス革命、ナポレオンやヒトラーの戦いなどに異常気象が関係していることが知られています。

東日本大震災に伴う地球規模での自然へ与える大きな影響、例えば気象変動、地震、火山の噴火など、これから長く、突然に、しかも頻繁に顕(あらわ)れると覚悟しておく必要があります。

自然に対する人間の無力さは、歴史が教えてくれていることです。
だからこそ、生を享(う)けている間は、人間(ヒト)は与えられた場で一所懸命生きなければなりません。

生まれた時には父の公職追放、学生時代の大学紛争、社会人として直面した原発事故の対応、自分ではどうにも手に余る出来事、人生は、自分が考えていたそれとは大きく変わってしまいました。
         (vol.52 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=78
         (学長からの手紙 No.26 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/026.html

人間(ヒト)の歩む道は儘(まま)ならないものです。
予想もしていない諸々(もろもろ)に翻弄(ほんろう)されて、人は生きていくのです。

只、覚悟さえ持っていれば何とかなる、というのも分かりました。
日々、愚直に向き合っていると、多少のことでは挫(くじ)けなくなります。そうして、人間(ヒト)は、心と身体に折り合いをつけながら生きていく術(すべ)を身につけていきます。

人間の一生とはそんなものなのでしょう。

今週の花材は、執務室には日溜り(ひだまり)を感じます。秘書室では花と花器の朱が共鳴しています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)




今週の花


【理事長室】
■フォックスフェイス   ナス科/《名前の由
来》キツネの顔に似た実をつけることから。1本
に20〜30個の独特の形の実をつける。水に
つけなくても1ヵ月以上楽しめる。
■かぼちゃ〔プッチーニ〕   ウリ科/ズッキ
ーニなどと同じペポカボチャの一種。淡い黄橙
色の可愛いカボチャ。手の平サイズの小型で
ハロウィンの飾りとしても人気。
■スプレー菊〔ベアー〕   キク科/多年草/
茎が分岐し1本に数輪の花が咲くスプレー咲
きの菊。大菊・小菊に比べ可愛らしい印象で
花色も豊富。「ベアー」はオレンジ色で花弁が
筒状の変わり咲。
■トルコギキョウ〔ロジーナイエロー〕
リンドウ科/多年草/花の咲き方や大きさ、
花色がとても豊富。品種改良が盛んで毎年多
くの新種が登場する。「ロジーナ」シリーズは
バラのような花姿の品種。
■ヒペリカム〔シャイニーロマンス〕
オトギリソウ科/半常緑低木/花期は初夏で
黄色い小さな花が咲く。主に花後の実を楽し
むものとして流通。実色は赤ピンク系を中心に
緑や茶色、オレンジなどもある。
■フェジョア   フトモモ科/常緑低木/グァ
バに似た熱帯果実でパイナップルのような味
の実をつける。丸みを帯びた肉厚な葉で、葉
物として流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2911.jpg

【秘書室】
■シンフォリカルポス〔チハヤパープル〕
スイカズラ科/落葉低木/《名前の由来》ギリ
シャ語の“symphorein”(ともに生ずる)と“kar
pos”(果実)の2語から。果実が房状になって
いることから/花期は7〜9月で、秋に真珠の
ような実をつける。「チハヤパープル」は赤紫色
で、他に白やピンクもある。
■ピンポン菊〔オペラピンク〕   キク科/多年
草/お供え花だけでなく、お祝い用途にも人気
の菊。ピンポン菊はピンポン玉のように丸く咲く
可愛い菊。「オペラ」シリーズはダリアに似たデ
コラ咲。
■ドラセナ〔コーディラインホワイト〕
リュウゼツラン科/日本で流通する観葉植物の
代表種。コーディラインホワイトは青葉。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2912.jpg

▲TOPへ