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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.294 − 灯 (ともす) −
吾妻の嶺の頂(いただき)が白くなりました。冬の到来を告げる景色です。
流れが穏やかな川の岸辺、秋雨が残していった水溜り、水面に空の雲や山河が映っています。その風景は、晩秋の風情(ふぜい)を際立たせています。
このところ、秋が短く感じられます。齢を重ねたせいか、あるいは気象変動のせいなのか…。
深夜の霧時雨(きりしぐれ)、間延びした雨垂れ、メトロノームのように、縁側を叩いています。
静寂が辺(あた)りを支配している夜半、書物を読み耽(ふけ)っています。「灯火親しむべし」です。
文机の前、クリプトン電球のスタンドを置いています。30年以上も使っています。電球の交換は、その間、一度だけです。
汽車通で、窓の外に広がる橙色の電球の光に人生を感じて以来、白熱灯に温(ぬく)もりを感じます。
(vol.50 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=75)
(vol.106 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=134)
(vol.160 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=194)
LED電球の白さ、まだ馴染めません。
朝まだき、この時季、空は尚、群青(ぐんじょう)色を呈しています。群青色の下、星や月が、白銀のような、神々しい光を放っています。
太古、太陽、月を始めとした無数の星が放っている光こそが、祖先達にとって、神だったのではないでしょうか。天体は、時や季節の到来を知らせてくれる存在です。闇を照らし、方位を指し示し、温かさをもたらし、作物を育ててくれます。
蛍光灯の普及、経済効果だけではない筈です。
人々は、蛍光灯の白い光に、天体が放つ光と同じ神々しさを、心の奥底のどこかで、感じているのではないでしょうか。
人類が、火を自分の手の内(うち)にした時の驚きや喜び、戦後の停電や月明かりの夜道を知っている人間には、少し理解できます。
現代の照明、夜を昼にしてしまっています。職場は勿論、家屋にも翳(かげ)りがなくなっています。
光は、季節により、一日のなかで、変化します。光の強さや色味が、人間(ヒト)の心と身体に深く影響を与えています。
灯(あかり)の明るさ、人間に望みを抱かせます。ほの暗さ、心を鎮めてくれます。昼だけの一日にしてしまうと、心身の調和を保つのが難しくなります。
明暗と人間の関わりは、人類が、長い時を重ねて作り上げてきたものなのではないでしょうか。
我々の先人は、家に深い軒をつくりました。
これで、ウチ(内)とソト(外)、明と暗のあいまいな境界を作りました。私達は、光と陰(影)の間(あわい)を楽しむ文化を持っています。様々な地域から、様々な人々が集まって出来たクニの始まり、境界を明確にしないことの大切さを知った人々が創った知恵です。
適度に遮(さえぎ)られた光、遮っているモノの素材や色によってその表情を微妙に変えます。
座る、腰掛ける、それぞれの姿勢で、心地良さをもたらす光源の位置が違います。
灯(あかり)は人智を超えた存在、昔から、人々はそう捉えてきました。祀(まつ)りごとの松明(たいまつ)や灯明(とうみょう)は一つの例です。
(vol.270 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=307)
先人の夜はどの位の明るさだったのでしょうか…。
江戸時代の行灯(あんどん)は、60ワットの電球の50分の1、パイロットランプの明るさ位、と読んだ記憶があります。
当時の庶民には高嶺の花の蝋燭(ろうそく)、行灯の10倍位の明るさです。菜種油や魚油などが火種だったようです。
現代の日本人では、この明るさでは仕事は勿論、語らいも出来ないでしょう。
只、行灯のほの暗い明るさと和(やわ)らかさは、我が国独特の文化や慣習の形成に深く関わってきました。
今を生きる我々にも、安らぎを与えてくれます。
今週の花材、執務室は凛とした佇まい、秘書室は可憐さを感じます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
流れが穏やかな川の岸辺、秋雨が残していった水溜り、水面に空の雲や山河が映っています。その風景は、晩秋の風情(ふぜい)を際立たせています。
このところ、秋が短く感じられます。齢を重ねたせいか、あるいは気象変動のせいなのか…。
深夜の霧時雨(きりしぐれ)、間延びした雨垂れ、メトロノームのように、縁側を叩いています。
静寂が辺(あた)りを支配している夜半、書物を読み耽(ふけ)っています。「灯火親しむべし」です。
文机の前、クリプトン電球のスタンドを置いています。30年以上も使っています。電球の交換は、その間、一度だけです。
汽車通で、窓の外に広がる橙色の電球の光に人生を感じて以来、白熱灯に温(ぬく)もりを感じます。
(vol.50 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=75)
(vol.106 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=134)
(vol.160 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=194)
LED電球の白さ、まだ馴染めません。
朝まだき、この時季、空は尚、群青(ぐんじょう)色を呈しています。群青色の下、星や月が、白銀のような、神々しい光を放っています。
太古、太陽、月を始めとした無数の星が放っている光こそが、祖先達にとって、神だったのではないでしょうか。天体は、時や季節の到来を知らせてくれる存在です。闇を照らし、方位を指し示し、温かさをもたらし、作物を育ててくれます。
蛍光灯の普及、経済効果だけではない筈です。
人々は、蛍光灯の白い光に、天体が放つ光と同じ神々しさを、心の奥底のどこかで、感じているのではないでしょうか。
人類が、火を自分の手の内(うち)にした時の驚きや喜び、戦後の停電や月明かりの夜道を知っている人間には、少し理解できます。
現代の照明、夜を昼にしてしまっています。職場は勿論、家屋にも翳(かげ)りがなくなっています。
光は、季節により、一日のなかで、変化します。光の強さや色味が、人間(ヒト)の心と身体に深く影響を与えています。
灯(あかり)の明るさ、人間に望みを抱かせます。ほの暗さ、心を鎮めてくれます。昼だけの一日にしてしまうと、心身の調和を保つのが難しくなります。
明暗と人間の関わりは、人類が、長い時を重ねて作り上げてきたものなのではないでしょうか。
我々の先人は、家に深い軒をつくりました。
これで、ウチ(内)とソト(外)、明と暗のあいまいな境界を作りました。私達は、光と陰(影)の間(あわい)を楽しむ文化を持っています。様々な地域から、様々な人々が集まって出来たクニの始まり、境界を明確にしないことの大切さを知った人々が創った知恵です。
適度に遮(さえぎ)られた光、遮っているモノの素材や色によってその表情を微妙に変えます。
座る、腰掛ける、それぞれの姿勢で、心地良さをもたらす光源の位置が違います。
灯(あかり)は人智を超えた存在、昔から、人々はそう捉えてきました。祀(まつ)りごとの松明(たいまつ)や灯明(とうみょう)は一つの例です。
(vol.270 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=307)
先人の夜はどの位の明るさだったのでしょうか…。
江戸時代の行灯(あんどん)は、60ワットの電球の50分の1、パイロットランプの明るさ位、と読んだ記憶があります。
当時の庶民には高嶺の花の蝋燭(ろうそく)、行灯の10倍位の明るさです。菜種油や魚油などが火種だったようです。
現代の日本人では、この明るさでは仕事は勿論、語らいも出来ないでしょう。
只、行灯のほの暗い明るさと和(やわ)らかさは、我が国独特の文化や慣習の形成に深く関わってきました。
今を生きる我々にも、安らぎを与えてくれます。
今週の花材、執務室は凛とした佇まい、秘書室は可憐さを感じます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■木瓜(ボケ)〔舞妓〕 バラ科/落葉低木/《名前の
由来》中国名の木瓜(モッケ)から変化して“ボケ”。ウリ
のような大きな実をつけることから/6月頃に5〜6cm大
の実をつけ、果実酒や鎮痛剤の材料となる。丸みを帯び
た花が可愛らしく、庭木や盆栽でも人気。
■ピンクッション〔サクセション〕 ヤマモガシ科/常緑
低木/針山に待ち針を刺したような独特の花姿。待ち針
のような部分の一つひとつが雄しべ。「サクセション」はオ
レンジ色。
■コニファー〔マーブルクレスト〕 ヒノキ科/常緑低高木
/プランターなどの寄せ植えから垣根やシンボルツリーと
しても人気の針葉樹。樹形や葉色は様々で3000種を超
す。クリスマスリースなどの材料にも適す。「マーブルクレ
スト」は深緑に黄白い斑が入る。
■ヒペリカム〔マジカルピンク〕 オトギリソウ科/半常
緑低木/花期は初夏で小さな黄色い花が咲く。主に花後
の実を楽しむものとして流通。実色は赤ピンクを中心に緑
やオレンジなどもある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2941.jpg
■木瓜(ボケ)〔舞妓〕 バラ科/落葉低木/《名前の
由来》中国名の木瓜(モッケ)から変化して“ボケ”。ウリ
のような大きな実をつけることから/6月頃に5〜6cm大
の実をつけ、果実酒や鎮痛剤の材料となる。丸みを帯び
た花が可愛らしく、庭木や盆栽でも人気。
■ピンクッション〔サクセション〕 ヤマモガシ科/常緑
低木/針山に待ち針を刺したような独特の花姿。待ち針
のような部分の一つひとつが雄しべ。「サクセション」はオ
レンジ色。
■コニファー〔マーブルクレスト〕 ヒノキ科/常緑低高木
/プランターなどの寄せ植えから垣根やシンボルツリーと
しても人気の針葉樹。樹形や葉色は様々で3000種を超
す。クリスマスリースなどの材料にも適す。「マーブルクレ
スト」は深緑に黄白い斑が入る。
■ヒペリカム〔マジカルピンク〕 オトギリソウ科/半常
緑低木/花期は初夏で小さな黄色い花が咲く。主に花後
の実を楽しむものとして流通。実色は赤ピンクを中心に緑
やオレンジなどもある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2941.jpg
【秘書室】
■フリージア〔アラジン〕 アヤメ科/球根植物/甘い香りを
放つ春の代表花。花茎に8〜10輪程の花をつけ、次々と開花
する。「アラジン」は一重咲の黄色。
■ブバルディア アカネ科/常緑低木/4枚の花弁で十字
型に咲く筒状花。枝先に多数の花を房状に開花させる。
白「ロイヤルホワイト」(一重咲)
ピンク「ロイヤルダイヤモンドピンク」(八重咲)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2942.jpg
■フリージア〔アラジン〕 アヤメ科/球根植物/甘い香りを
放つ春の代表花。花茎に8〜10輪程の花をつけ、次々と開花
する。「アラジン」は一重咲の黄色。
■ブバルディア アカネ科/常緑低木/4枚の花弁で十字
型に咲く筒状花。枝先に多数の花を房状に開花させる。
白「ロイヤルホワイト」(一重咲)
ピンク「ロイヤルダイヤモンドピンク」(八重咲)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2942.jpg