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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.300 − 始 (はじめる) −
信夫の里、最も遅い日の出(6時54分)が巡ってきました。心の四季、最後の折り返しです。暁方(あかつきがた)、満月と星が群青(ぐんじょう)の空を背景に輝いていて、一時(いっとき)の天空劇場です。
札幌に行ってきました。
関東平野の抜けるような青空の下、機上から眺める富士、白い輝きを見続けてしまいました。
田子の浦にうち出でてみれば
白妙(しろたへ)の富士の高嶺(たかね)に雪は降りつつ
山部赤人
「白妙」とは、今は菓子店の名前として有名ですが、元々は、古代、穀の木(カジノキ)や楮(コウゾ)の樹皮で作った白い布を言います。
初めて目にした雪を頂いた富士の、清々(すがすが)しい秀麗な姿、作者の感激した気持ちを実感できました。
300回、「文章を読むとその人の年輪と顔がわかる文体がある」(立原正秋)といいます。
この連載を通して、等身大以上の文(ふみ)は紡(つむ)ぎだせない、ということを実感しています。
この企画を始めた頃の思い出です。
就任初日、警備員の方に泥棒と間違われてしまいました。早朝、執務室で荷解(にほど)きをしていた時です。巡回の方が不審に思い、尋問されてしまいました。時間から言って、荷解きが荷造りに見違えるのも仕方ありません。身分が証明されて、恐縮していましたが、警備員の対応が正しいのです。
心豊かになる逸話です。
この間、嬉しい手応えもありました。若い時から、早朝、昼、消灯時の廻診を己(おのれ)に課していました。
理由については「学長からの手紙」に記しました。
(No.164 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/164.html)
(No.168 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/168.html)
(No.172 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/172.html)
(No.179 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/179.html)
(No.196 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/196.html)
学長就任当初しばらくは、執務室からみえる臨床研究棟には、灯は、己が所属していた教室に寄って点けていた部屋以外にはみえませんでした。
今、多くの部屋に明かりを認めます。早朝、擦れ違った医師が、「先生の教えに倣(なら)って、毎朝、始業前に廻診しています」と言ってくれました。
教育への考え方も変わりました。
文字通り、教え育(はぐく)むと捉えていました。その後、各人の才能や特性を見い出し、それに相応(ふさわ)しい場の提供をすることと変わりました。
そして今、無言の裡(うち)に自ら動き、その後姿をみて各人がそこから何かを学び取れば宜(よ)し、昔、自分が理想としていた学ぶ姿こそが師と弟子、教育の出発点であるという原点に戻りました。
7日(1989、昭和64年)、昭和天皇が崩御された日です。振り返れば、既に平成も27年です。
「降る雪や明治は遠くなりにけり」(中村草田男)。明治の終わりから20年後に詠まれた歌のようです。
(vol.182 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=216)
明治を昭和に置き換えると、平成からみる昭和、既に30年近くを経ています。
今の若者も30年経つと、「束の間に、はや旧跡」、「後世から今日を見れば、今日から往昔を見ると同様」(王義之)です。
(vol.189 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=225)
(vol.277 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=314)
人間は、過去をみながら後ろ向きに未来に向かって歩いているようなものです。
(vol.232 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=269)
「人生はすべてこの絶えざる嘆惜のうちに過ぎる」のです。
(vol.45 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=70)
(vol.180 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=214)
(vol.189 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=225)
(vol.277 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=314)
20世紀、昭和を象徴する文明機器の一つがテレビです。世界のブラウン管テレビの生産が来年にも終了するということが報じられています。
戦後、高度成長期の前、地方では、夜、床屋さんに観(み)に行きました。我が家にはテレビは長い間ありませんでした。友人の家では床の間に置かれていました。床の間の変質です。
茶袱台(ちゃぶだい)を囲む対面から、テレビに向いて座るという劇的な団欒(だんらん)の姿の変化です。
今週の花材は、執務室は新春の穏やかななかにも凛とした雰囲気を、秘書室は早春の兆(きざ)しを象徴しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
札幌に行ってきました。
関東平野の抜けるような青空の下、機上から眺める富士、白い輝きを見続けてしまいました。
田子の浦にうち出でてみれば
白妙(しろたへ)の富士の高嶺(たかね)に雪は降りつつ
山部赤人
「白妙」とは、今は菓子店の名前として有名ですが、元々は、古代、穀の木(カジノキ)や楮(コウゾ)の樹皮で作った白い布を言います。
初めて目にした雪を頂いた富士の、清々(すがすが)しい秀麗な姿、作者の感激した気持ちを実感できました。
300回、「文章を読むとその人の年輪と顔がわかる文体がある」(立原正秋)といいます。
この連載を通して、等身大以上の文(ふみ)は紡(つむ)ぎだせない、ということを実感しています。
この企画を始めた頃の思い出です。
就任初日、警備員の方に泥棒と間違われてしまいました。早朝、執務室で荷解(にほど)きをしていた時です。巡回の方が不審に思い、尋問されてしまいました。時間から言って、荷解きが荷造りに見違えるのも仕方ありません。身分が証明されて、恐縮していましたが、警備員の対応が正しいのです。
心豊かになる逸話です。
この間、嬉しい手応えもありました。若い時から、早朝、昼、消灯時の廻診を己(おのれ)に課していました。
理由については「学長からの手紙」に記しました。
(No.164 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/164.html)
(No.168 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/168.html)
(No.172 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/172.html)
(No.179 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/179.html)
(No.196 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/196.html)
学長就任当初しばらくは、執務室からみえる臨床研究棟には、灯は、己が所属していた教室に寄って点けていた部屋以外にはみえませんでした。
今、多くの部屋に明かりを認めます。早朝、擦れ違った医師が、「先生の教えに倣(なら)って、毎朝、始業前に廻診しています」と言ってくれました。
教育への考え方も変わりました。
文字通り、教え育(はぐく)むと捉えていました。その後、各人の才能や特性を見い出し、それに相応(ふさわ)しい場の提供をすることと変わりました。
そして今、無言の裡(うち)に自ら動き、その後姿をみて各人がそこから何かを学び取れば宜(よ)し、昔、自分が理想としていた学ぶ姿こそが師と弟子、教育の出発点であるという原点に戻りました。
7日(1989、昭和64年)、昭和天皇が崩御された日です。振り返れば、既に平成も27年です。
「降る雪や明治は遠くなりにけり」(中村草田男)。明治の終わりから20年後に詠まれた歌のようです。
(vol.182 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=216)
明治を昭和に置き換えると、平成からみる昭和、既に30年近くを経ています。
今の若者も30年経つと、「束の間に、はや旧跡」、「後世から今日を見れば、今日から往昔を見ると同様」(王義之)です。
(vol.189 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=225)
(vol.277 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=314)
人間は、過去をみながら後ろ向きに未来に向かって歩いているようなものです。
(vol.232 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=269)
「人生はすべてこの絶えざる嘆惜のうちに過ぎる」のです。
(vol.45 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=70)
(vol.180 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=214)
(vol.189 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=225)
(vol.277 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=314)
20世紀、昭和を象徴する文明機器の一つがテレビです。世界のブラウン管テレビの生産が来年にも終了するということが報じられています。
戦後、高度成長期の前、地方では、夜、床屋さんに観(み)に行きました。我が家にはテレビは長い間ありませんでした。友人の家では床の間に置かれていました。床の間の変質です。
茶袱台(ちゃぶだい)を囲む対面から、テレビに向いて座るという劇的な団欒(だんらん)の姿の変化です。
今週の花材は、執務室は新春の穏やかななかにも凛とした雰囲気を、秘書室は早春の兆(きざ)しを象徴しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■松〔根引松〕(ネビキマツ) マツ科/常
緑で冬でも青々としていることから長寿の象徴
とされる。門松飾りは年神様が降臨する目印
といわれている。「根引松」は根っこごと引き抜
かれた松。京都では門松よりも根引松を一対
で飾るのが一般的。
■梅〔冬至梅〕 バラ科/落葉小高木/
中国渡来種の他、品種改良が進み300種以
上ある。観賞用の花梅(ハナウメ)と、実の採
取を目的とした実梅(ミウメ)に分かれる。
「冬至梅」は冬至の頃に開花する白色の早咲
き品種。
■南天 メギ科/常緑低木/“難を転じて
福となす”に通じることから縁起木として親しま
れる。古くから家の鬼門などに植えられる。葉
は解熱や健胃作用が、実は咳止め薬となる。
■グロリオサ〔ニューレッド〕 ユリ科/球根
植物/花弁が反り返り、赤く燃える炎のような
独特の花姿。半蔓性で他の植物や支柱に絡
まって成長する。他に絡まる為、葉先が巻きヒ
ゲになるのが特徴。
■菊〔ピンポン菊・スプレー菊〕 キク科/
多年草/ピンポン菊…ピンポン玉のように真
ん丸に咲く菊/スプレー菊…茎が分岐し1本
に数輪の花が咲くスプレー咲の菊。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3001.jpg
■松〔根引松〕(ネビキマツ) マツ科/常
緑で冬でも青々としていることから長寿の象徴
とされる。門松飾りは年神様が降臨する目印
といわれている。「根引松」は根っこごと引き抜
かれた松。京都では門松よりも根引松を一対
で飾るのが一般的。
■梅〔冬至梅〕 バラ科/落葉小高木/
中国渡来種の他、品種改良が進み300種以
上ある。観賞用の花梅(ハナウメ)と、実の採
取を目的とした実梅(ミウメ)に分かれる。
「冬至梅」は冬至の頃に開花する白色の早咲
き品種。
■南天 メギ科/常緑低木/“難を転じて
福となす”に通じることから縁起木として親しま
れる。古くから家の鬼門などに植えられる。葉
は解熱や健胃作用が、実は咳止め薬となる。
■グロリオサ〔ニューレッド〕 ユリ科/球根
植物/花弁が反り返り、赤く燃える炎のような
独特の花姿。半蔓性で他の植物や支柱に絡
まって成長する。他に絡まる為、葉先が巻きヒ
ゲになるのが特徴。
■菊〔ピンポン菊・スプレー菊〕 キク科/
多年草/ピンポン菊…ピンポン玉のように真
ん丸に咲く菊/スプレー菊…茎が分岐し1本
に数輪の花が咲くスプレー咲の菊。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3001.jpg
【秘書室】
■松〔若松〕(理事長室と同花材)
「若松」は黒松(クロマツ)の実生苗を密集させ、年月をかけ
て徒長(とちょう)させたもの。若松に比べ年月が経ち太いも
のを「門松」、若く側枝のないものを「カラゲ松」と呼ぶ。
■千両 センリョウ科/“千両”という縁起の良い名前と
不浄なものを清めるといわれる赤実から、お正月飾りに欠
かせない花材。黄色の実をつける「黄実千両」(キミノセンリ
ョウ)もある。
■カラー〔ウェディングマーチ〕 サトイモ科/球根植物/
《名前の由来》メガホン状の苞がワイシャツの襟に似ている
ことから/江戸時代に渡来し別名は“オランダから来た芋”
を意味する「阿蘭陀海芋」(オランダカイウ)。
■バラ〔ブルーミルフィーユ〕 バラ科/落葉低木/古く
から親しまれ、現代でも人気の高い花。花色や花形等多岐
にわたり、世界で約2万種を超す。「ブルーミルフィーユ」は
紫系の色で花弁が多い品種。
■菊〔ピンポン菊〕(理事長室と同花材)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3002.jpg
■松〔若松〕(理事長室と同花材)
「若松」は黒松(クロマツ)の実生苗を密集させ、年月をかけ
て徒長(とちょう)させたもの。若松に比べ年月が経ち太いも
のを「門松」、若く側枝のないものを「カラゲ松」と呼ぶ。
■千両 センリョウ科/“千両”という縁起の良い名前と
不浄なものを清めるといわれる赤実から、お正月飾りに欠
かせない花材。黄色の実をつける「黄実千両」(キミノセンリ
ョウ)もある。
■カラー〔ウェディングマーチ〕 サトイモ科/球根植物/
《名前の由来》メガホン状の苞がワイシャツの襟に似ている
ことから/江戸時代に渡来し別名は“オランダから来た芋”
を意味する「阿蘭陀海芋」(オランダカイウ)。
■バラ〔ブルーミルフィーユ〕 バラ科/落葉低木/古く
から親しまれ、現代でも人気の高い花。花色や花形等多岐
にわたり、世界で約2万種を超す。「ブルーミルフィーユ」は
紫系の色で花弁が多い品種。
■菊〔ピンポン菊〕(理事長室と同花材)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3002.jpg