HOME > 理事長室からの花だより
理事長室からの花だより
新着 30 件
理事長室からの花だより
vol.307 − 結 (むすぶ) −
信夫の里、暁方(あかつきがた)、濃い群青の空に黄金色(こがねいろ)の月が輝いています。
西には、壁のようにそそり立っている吾妻の嶺々、その頂(いただき)は白銀です。
顔を出していない朝陽を受けて輝いています。裾野は、黒い森を思わせる深い緑が和三盆(わさんぼん)を薄くまぶしたように薄く雪をかぶっています。早春のこの時季だけの風景です。
東をみれば、雲居の空です。
濃い縹色(はなだいろ)に冴え渡った空を背景に、雲の縁(ふち)が茜色に染まっています。この時季ならではの朝の天空や残雪に覆われた山脈(やまなみ)の美しさ、タクシーの運転手さんと語り合っているうちに大学に到着します。
日比谷公園を突っ切っていくと、足元には犬陰嚢(イヌフグリ)、小さな青い花の群生、遠目には梅が咲いています。時間短縮どころか、暫(しば)し、足を止めて時間を喰ってしまう始末です。
梅のはな枝にしらじら咲きそむる
つめたき春のなりにけるかな
若山牧水
関東平野からの秀麗な富士の姿、この時季になると、大気の潤いが増し、見え難くなってきます。
会津の里、抜けるような青空の下、地上は一面の銀世界です。用水路の法面(のりめん)に大きく張り出した雪の壁、冬の厳しさを物語っています。
遠くに目を遣ると、小高く、小さな丘に古い石の墓標(ぼひょう)、一塊となって、静かに蹲(うずくま)っています。
香月泰男(vol.22、62、74、207)の黒の慟哭をみるようです。
(vol.22 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=39)
(vol.62 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=88)
(vol.74 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=100)
(vol.207 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=244)
山河は早や春です。
執務室の鍵を開ける手元が少し明るくなりました。
北に住む人々は、山河の移ろいを愛(め)でながら、指折り数えて、訪れる春を待ちます。
本学には、原発事故を巡る課題が、毎日、重く伸(の)し掛かってきます。ここが他の被災県との違いです。
新しい知事が誕生しました。
新聞で知る限り、身体が大丈夫かと心配になる程、東奔西走の日々を送っています。心配して尋ねました。
知事曰く「副知事時代のスケジュールのほうが遥かにきつかった」。
本当に大変で、大切なのは、目にみえない所の働きにあります。そこでの務めを全う(まっとう)出来ないと、求められる役割は果たせません。陰徳です。
文人達は易しい詩でそのことを教えてくれています。
昼のお星はめにみえぬ
見えぬけれどもあるんだよ
見えぬものでもあるんだよ
金子みずゞ
肝心なことは目に見えないんだよ
サン=テグジュペリ
瞽目(こもく)とは能(よ)く耳を以(もっ)て物を視(み)、
聾瘂(ろうあ)は能く目を以て物を聴く
人心の霊の頼(たの)むに足(た)る者
此(かく)の如(ごと)し
佐藤一斎
心眼を開いて感じとれということでしょう。
考え込んでいる時、深夜の闇から時空を越えた本のこゑ(声)が聞こえてきます。
(vol.235 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=272)
住する所なきを、まず花と知るべし
世阿弥
華であり続けるには、立ち止まってはいけません。そして、過去にしがみつかないことです。
輝きを保っている為には変わり続けなければならないのです。
(vol.176 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=210)
心がもがいている時は、「移ろわぬ美」や美酒に逃げるに如(し)かずです。
米田知子の作品(群馬県渋川市、原美術館別館ハラミュージアムアーク)、発想の奇想天外さに打たれました。20世紀の著名人の眼鏡を通してみた作品群(Between visible and invisible)です。
出入りの洋服店の壁にも彼女の作品が架けてあり、惹かれるようになりました。
己はといえば、歩きます。歩くことに没頭すると頭の中が空(から)になるからです。
動くことをせずに無(空)になれれば、悟りということになるのでしょうか。
今週の花材は、両室とも、赤や紫の色が華やぎを感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
西には、壁のようにそそり立っている吾妻の嶺々、その頂(いただき)は白銀です。
顔を出していない朝陽を受けて輝いています。裾野は、黒い森を思わせる深い緑が和三盆(わさんぼん)を薄くまぶしたように薄く雪をかぶっています。早春のこの時季だけの風景です。
東をみれば、雲居の空です。
濃い縹色(はなだいろ)に冴え渡った空を背景に、雲の縁(ふち)が茜色に染まっています。この時季ならではの朝の天空や残雪に覆われた山脈(やまなみ)の美しさ、タクシーの運転手さんと語り合っているうちに大学に到着します。
日比谷公園を突っ切っていくと、足元には犬陰嚢(イヌフグリ)、小さな青い花の群生、遠目には梅が咲いています。時間短縮どころか、暫(しば)し、足を止めて時間を喰ってしまう始末です。
梅のはな枝にしらじら咲きそむる
つめたき春のなりにけるかな
若山牧水
関東平野からの秀麗な富士の姿、この時季になると、大気の潤いが増し、見え難くなってきます。
会津の里、抜けるような青空の下、地上は一面の銀世界です。用水路の法面(のりめん)に大きく張り出した雪の壁、冬の厳しさを物語っています。
遠くに目を遣ると、小高く、小さな丘に古い石の墓標(ぼひょう)、一塊となって、静かに蹲(うずくま)っています。
香月泰男(vol.22、62、74、207)の黒の慟哭をみるようです。
(vol.22 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=39)
(vol.62 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=88)
(vol.74 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=100)
(vol.207 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=244)
山河は早や春です。
執務室の鍵を開ける手元が少し明るくなりました。
北に住む人々は、山河の移ろいを愛(め)でながら、指折り数えて、訪れる春を待ちます。
本学には、原発事故を巡る課題が、毎日、重く伸(の)し掛かってきます。ここが他の被災県との違いです。
新しい知事が誕生しました。
新聞で知る限り、身体が大丈夫かと心配になる程、東奔西走の日々を送っています。心配して尋ねました。
知事曰く「副知事時代のスケジュールのほうが遥かにきつかった」。
本当に大変で、大切なのは、目にみえない所の働きにあります。そこでの務めを全う(まっとう)出来ないと、求められる役割は果たせません。陰徳です。
文人達は易しい詩でそのことを教えてくれています。
昼のお星はめにみえぬ
見えぬけれどもあるんだよ
見えぬものでもあるんだよ
金子みずゞ
肝心なことは目に見えないんだよ
サン=テグジュペリ
瞽目(こもく)とは能(よ)く耳を以(もっ)て物を視(み)、
聾瘂(ろうあ)は能く目を以て物を聴く
人心の霊の頼(たの)むに足(た)る者
此(かく)の如(ごと)し
佐藤一斎
心眼を開いて感じとれということでしょう。
考え込んでいる時、深夜の闇から時空を越えた本のこゑ(声)が聞こえてきます。
(vol.235 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=272)
住する所なきを、まず花と知るべし
世阿弥
華であり続けるには、立ち止まってはいけません。そして、過去にしがみつかないことです。
輝きを保っている為には変わり続けなければならないのです。
(vol.176 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=210)
心がもがいている時は、「移ろわぬ美」や美酒に逃げるに如(し)かずです。
米田知子の作品(群馬県渋川市、原美術館別館ハラミュージアムアーク)、発想の奇想天外さに打たれました。20世紀の著名人の眼鏡を通してみた作品群(Between visible and invisible)です。
出入りの洋服店の壁にも彼女の作品が架けてあり、惹かれるようになりました。
己はといえば、歩きます。歩くことに没頭すると頭の中が空(から)になるからです。
動くことをせずに無(空)になれれば、悟りということになるのでしょうか。
今週の花材は、両室とも、赤や紫の色が華やぎを感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■キイチゴ バラ科/半落葉低木/ラズベ
リーやブラックベリーなどの総称で木になるイ
チゴ。春にイチゴに似た小さな花が咲く。ヤツ
デのように切れ込みの深い葉をもつ。
■グズマニア〔サブリナ〕 パイナップル科
/常緑多年草/鮮やかな色が目を引くトロピ
カルな花。花に見える部分は苞で、苞の間に
小さな花が咲く。赤や黄色など原色の品種が
多い。「サブリナ」はクリームからピンクパープ
ルへのグラデーションが綺麗な品種。
■エピデンドラム ラン科/細く伸びた茎の
先端に小さな花が密集して半円形の一つの花
のように開花。 次々と開花し、 切り花としても
長く楽しめる。葉は多肉植物のように肉厚で、
一列に互生する。
■スターチス イソマツ科/一年草・多年草
/枝が良く分岐し、先端に花序をつける。綺麗
に色付き花のように見える部分はガクで、その
中に小花が咲く。 花が散ってもガクは綺麗な
色のまま残るため、ドライフラワーにも適す。
■ドラセナ〔コーディラインホワイト〕 リュウ
ゼツラン科/日本で流通する観葉植物の代表
種。葉色や葉姿も様々で約50種。切花として
も丈夫で日持ちのするグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3071.jpg
■キイチゴ バラ科/半落葉低木/ラズベ
リーやブラックベリーなどの総称で木になるイ
チゴ。春にイチゴに似た小さな花が咲く。ヤツ
デのように切れ込みの深い葉をもつ。
■グズマニア〔サブリナ〕 パイナップル科
/常緑多年草/鮮やかな色が目を引くトロピ
カルな花。花に見える部分は苞で、苞の間に
小さな花が咲く。赤や黄色など原色の品種が
多い。「サブリナ」はクリームからピンクパープ
ルへのグラデーションが綺麗な品種。
■エピデンドラム ラン科/細く伸びた茎の
先端に小さな花が密集して半円形の一つの花
のように開花。 次々と開花し、 切り花としても
長く楽しめる。葉は多肉植物のように肉厚で、
一列に互生する。
■スターチス イソマツ科/一年草・多年草
/枝が良く分岐し、先端に花序をつける。綺麗
に色付き花のように見える部分はガクで、その
中に小花が咲く。 花が散ってもガクは綺麗な
色のまま残るため、ドライフラワーにも適す。
■ドラセナ〔コーディラインホワイト〕 リュウ
ゼツラン科/日本で流通する観葉植物の代表
種。葉色や葉姿も様々で約50種。切花として
も丈夫で日持ちのするグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3071.jpg
【秘書室】
■アネモネ〔デカンシリーズ〕 キンポウゲ科/球根植
物/一茎に一花、大輪の花を咲かせ「牡丹一華」(ボタン
イチゲ)「花一華」(ハナイチゲ)とも呼ばれる。花弁に見え
る部分はガク片の集まり。チューリップと同様に、明るいと
開花し暗いと閉じる。「デカン」シリーズは大輪の一重咲き
品種。他に八重咲の「セントブリジット」や草丈の高い「モ
ナリザ」、低い「ポルト」などがある。
■シレネ〔サクラコマチ〕 ナデシコ科/一年草/花期は
5〜7月頃で、よく分岐した枝先に小花をまとまって咲か
せる。花の付け根や茎の節からねばねばした分泌物を出
し、虫がくっつくことから“ムシトリナデシコ”とも呼ばれる。
「サクラコマチ」は淡いピンク色で可愛らしい品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3072.jpg
■アネモネ〔デカンシリーズ〕 キンポウゲ科/球根植
物/一茎に一花、大輪の花を咲かせ「牡丹一華」(ボタン
イチゲ)「花一華」(ハナイチゲ)とも呼ばれる。花弁に見え
る部分はガク片の集まり。チューリップと同様に、明るいと
開花し暗いと閉じる。「デカン」シリーズは大輪の一重咲き
品種。他に八重咲の「セントブリジット」や草丈の高い「モ
ナリザ」、低い「ポルト」などがある。
■シレネ〔サクラコマチ〕 ナデシコ科/一年草/花期は
5〜7月頃で、よく分岐した枝先に小花をまとまって咲か
せる。花の付け根や茎の節からねばねばした分泌物を出
し、虫がくっつくことから“ムシトリナデシコ”とも呼ばれる。
「サクラコマチ」は淡いピンク色で可愛らしい品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3072.jpg