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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.311 − 惧 (おそれる) −
梅、桃、桜、咲く順序を知っているかのように、間違えず、咲き出します。一雨(ひとあめ)毎に、春の気配を濃くしていきます。移ろいゆく山河を楽しむ時です。
梅の花咲きて散りなば桜花
継ぎて咲くべくなりにてあらずや
藥師張氏福子
「万葉集」巻5−829
都心でもっとも早い外務省の桜、向いの農水省の一角に若木ながら紅(あか)い桜が咲き、辛夷(コブシ)、木蓮(モクレン)が満開です。桜の下の雪柳、白を際立たせています。生垣の寒椿も紅や桃の花を咲かせています。花の世界は春です。
学位記授与式が終わりました。高校などの卒業式にあたります。
毎年、送り出す言葉を紡いでいます。「出会いは人生を豊かに、別れは人を成長させる」ことを説いています。
(平成26年度学位記授与式式辞 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/sotu_sikiji.html)
己はと言えば、卒業後、父の早い死が人生を変えました。
生来の激しい気性(きしょう)、挫(くじ)けまいとする佶屈(きっくつ)な意志から‟尊大な態度、寸鉄人を刺す言葉”で、無器用に、夢中で、当て所無い(あてどない)人生を送ってきました。
知らないところで人々を傷つけている筈です。もう一度会って、お詫びの言葉を述べたいと思っている患者さんや関係者が、多く居ます。
知人なら、嗤(わら)い出しそうな台詞(セリフ)ですが、「針鼠のように神経を逆立てて気を配り、絹のように人間(ヒト)に接し、鋼(はがね)のような意志で動く」を信条として生きてきたつもりです。
人間(ヒト)は、自分に何が足りないかを知ると、それを克服するべく努力します。それが、その人の個性や習い性(ならいしょう)を作っていくのです。
「人生の扉は他人が開く」ことを、今は理解出来ない若者は、居ます。
挨拶をしても、端末電話で話すのが大事で、ぞんざいに一瞥(いちべつ)をくれ、顎で会釈している学生、ポケットに手を突っ込んだまま挨拶もろくにしない職員が、います。
教育者としての無力感を、行く末に不安も感じます。
移ろい行く世情、只、人間の心や価値観はそう変わるものではありません。
情報技術(IT化)の劇的変化は、時に、旧(ふる)い人間を戸惑わせます。
己には、海外留学中、恩師や実家から送られてくる日本の食料品、新聞、雑誌、待ち焦がれていた記憶、今尚、生々しく残っています。
その経験から、教職に就いてからは、弟子や知己の海外留学には、毎月、新聞や雑誌、食料品を送っていました。
ある時、一人から「新聞はパソコンで好きな時に、いくらでもみることができる。要らない」と、斬りつけるような言葉を浴びせられました。「雑誌はいつでも買うことが出来る」とも。
そんな時代になった事は、承知はしていました。しかし、毎月送っているのは、モノも然(さ)ることながら、気持ちも一緒に送っていると勝手に思い込んでいました。
以来、誰にも送る事をやめました。今、人々はどんな形で、表現で、‟貴方のことを案じている”という事を伝えているのでしょうか。
社会が複雑、便利になるにつれ、人間関係が希薄になっているのは感じます。だからこそ、人間と人間の繋がりを大切にしないと…。
休館、石橋美術館は閉館というブリヂストン美術館、欧米の著名な個人美術館に勝るとも劣らない作品を所蔵しています。休館前の、「ベスト・オブ・ザ・ベスト」展に足を運びました。
名高い作品の一挙展示には、圧倒されてしまいます。
さっと一巡後、ルオーの作品を目指しました。「郊外のキリスト」、「ピエロ」、いつ観ても、観る者の心を鎮め、穏やかな気持ちにさせてくれます。この作風は、技術なのか、人柄なのか、考えさせられます。
アンス・アルトゥングの絵に惹かれました。琳派(りんぱ)のような雰囲気です。
今週の花材、両室とも、黄色と薄緑の組み合わせです。爽やかな春です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
梅の花咲きて散りなば桜花
継ぎて咲くべくなりにてあらずや
藥師張氏福子
「万葉集」巻5−829
都心でもっとも早い外務省の桜、向いの農水省の一角に若木ながら紅(あか)い桜が咲き、辛夷(コブシ)、木蓮(モクレン)が満開です。桜の下の雪柳、白を際立たせています。生垣の寒椿も紅や桃の花を咲かせています。花の世界は春です。
学位記授与式が終わりました。高校などの卒業式にあたります。
毎年、送り出す言葉を紡いでいます。「出会いは人生を豊かに、別れは人を成長させる」ことを説いています。
(平成26年度学位記授与式式辞 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/sotu_sikiji.html)
己はと言えば、卒業後、父の早い死が人生を変えました。
生来の激しい気性(きしょう)、挫(くじ)けまいとする佶屈(きっくつ)な意志から‟尊大な態度、寸鉄人を刺す言葉”で、無器用に、夢中で、当て所無い(あてどない)人生を送ってきました。
知らないところで人々を傷つけている筈です。もう一度会って、お詫びの言葉を述べたいと思っている患者さんや関係者が、多く居ます。
知人なら、嗤(わら)い出しそうな台詞(セリフ)ですが、「針鼠のように神経を逆立てて気を配り、絹のように人間(ヒト)に接し、鋼(はがね)のような意志で動く」を信条として生きてきたつもりです。
人間(ヒト)は、自分に何が足りないかを知ると、それを克服するべく努力します。それが、その人の個性や習い性(ならいしょう)を作っていくのです。
「人生の扉は他人が開く」ことを、今は理解出来ない若者は、居ます。
挨拶をしても、端末電話で話すのが大事で、ぞんざいに一瞥(いちべつ)をくれ、顎で会釈している学生、ポケットに手を突っ込んだまま挨拶もろくにしない職員が、います。
教育者としての無力感を、行く末に不安も感じます。
移ろい行く世情、只、人間の心や価値観はそう変わるものではありません。
情報技術(IT化)の劇的変化は、時に、旧(ふる)い人間を戸惑わせます。
己には、海外留学中、恩師や実家から送られてくる日本の食料品、新聞、雑誌、待ち焦がれていた記憶、今尚、生々しく残っています。
その経験から、教職に就いてからは、弟子や知己の海外留学には、毎月、新聞や雑誌、食料品を送っていました。
ある時、一人から「新聞はパソコンで好きな時に、いくらでもみることができる。要らない」と、斬りつけるような言葉を浴びせられました。「雑誌はいつでも買うことが出来る」とも。
そんな時代になった事は、承知はしていました。しかし、毎月送っているのは、モノも然(さ)ることながら、気持ちも一緒に送っていると勝手に思い込んでいました。
以来、誰にも送る事をやめました。今、人々はどんな形で、表現で、‟貴方のことを案じている”という事を伝えているのでしょうか。
社会が複雑、便利になるにつれ、人間関係が希薄になっているのは感じます。だからこそ、人間と人間の繋がりを大切にしないと…。
休館、石橋美術館は閉館というブリヂストン美術館、欧米の著名な個人美術館に勝るとも劣らない作品を所蔵しています。休館前の、「ベスト・オブ・ザ・ベスト」展に足を運びました。
名高い作品の一挙展示には、圧倒されてしまいます。
さっと一巡後、ルオーの作品を目指しました。「郊外のキリスト」、「ピエロ」、いつ観ても、観る者の心を鎮め、穏やかな気持ちにさせてくれます。この作風は、技術なのか、人柄なのか、考えさせられます。
アンス・アルトゥングの絵に惹かれました。琳派(りんぱ)のような雰囲気です。
今週の花材、両室とも、黄色と薄緑の組み合わせです。爽やかな春です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■山吹 バラ科/落葉低木/万葉時代か
ら春の花として日本人に親しまれた植物。花
の色が「黄色」を表す代表的な色名。しなやか
な枝が山で風に揺れている姿を表現し「山振」
(ヤマブリ)とも呼ばれる。
■LAユリ〔ダゼル〕 ユリ科/球根植物/
鉄砲百合とスカシユリの掛け合わせ品種(Lo
ngifrorum Asiatic Hybrid)。双方の良い
所を持ち合わせた中輪咲き。「ダゼル」は黄色。
■サンダーソニア ユリ科/球根植物/細
い茎にベル型の花が連なって咲く。ランプを灯
したような可愛らしいオレンジ色の花。原産地
南アフリカでクリスマス頃に開花するため「クリ
スマスベル」の別名を持つ。
■アンスリュウム〔みどり〕 サトイモ科/
常緑多年草/蝋細工のようなツヤツヤの苞が
特徴の南国の花。花弁のように見える団扇状
の部分は苞で、棒状の部分が花。主に苞を鑑
賞するため、非常に長く楽しめる。
■ドラセナ〔サンデリアーナホワイト〕 リュ
ウゼツラン科/日本で流通する観葉植物の代
表種。「サンデリアーナホワイト」は笹のような
細長い葉とストライプの斑が特徴。他に黄味の
強い「サンデリアーナゴールド」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3111.jpg
■山吹 バラ科/落葉低木/万葉時代か
ら春の花として日本人に親しまれた植物。花
の色が「黄色」を表す代表的な色名。しなやか
な枝が山で風に揺れている姿を表現し「山振」
(ヤマブリ)とも呼ばれる。
■LAユリ〔ダゼル〕 ユリ科/球根植物/
鉄砲百合とスカシユリの掛け合わせ品種(Lo
ngifrorum Asiatic Hybrid)。双方の良い
所を持ち合わせた中輪咲き。「ダゼル」は黄色。
■サンダーソニア ユリ科/球根植物/細
い茎にベル型の花が連なって咲く。ランプを灯
したような可愛らしいオレンジ色の花。原産地
南アフリカでクリスマス頃に開花するため「クリ
スマスベル」の別名を持つ。
■アンスリュウム〔みどり〕 サトイモ科/
常緑多年草/蝋細工のようなツヤツヤの苞が
特徴の南国の花。花弁のように見える団扇状
の部分は苞で、棒状の部分が花。主に苞を鑑
賞するため、非常に長く楽しめる。
■ドラセナ〔サンデリアーナホワイト〕 リュ
ウゼツラン科/日本で流通する観葉植物の代
表種。「サンデリアーナホワイト」は笹のような
細長い葉とストライプの斑が特徴。他に黄味の
強い「サンデリアーナゴールド」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3111.jpg
【秘書室】
■モルセラ シソ科/一年草/爽やかなライトグリーンと独特
な茎のラインが特徴。花期は春で白っぽい花が咲く。主に花を包む
ような大きな萼(ガク)を鑑賞するグリーンとして流通。ミントのよう
な芳香がある。
■ラナンキュラス〔エムピュアイエロー〕 キンポウゲ科/球根
植物/幾重にも重なる柔らかい花弁が特徴。品種名の「エム」は
育種された宮崎県の「M」より。「エム」シリーズは花色が豊富で茎
が細い。
■ヒペリカム〔ココリオ〕 オトギリソウ科/半常緑低木/花後
の実を楽しむものとして流通。実色は赤ピンク系を中心に茶色や
緑、クリームなどもある。「ココリオ」は明るい赤で丸い実の品種。
■テマリソウ ナデシコ科/多年草/真ん丸でマリモや芝を連
想させる個性的な花。ふさふさした部分は雄しべ・雌しべ・花弁が
萼片のように変化したもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3112.jpg
■モルセラ シソ科/一年草/爽やかなライトグリーンと独特
な茎のラインが特徴。花期は春で白っぽい花が咲く。主に花を包む
ような大きな萼(ガク)を鑑賞するグリーンとして流通。ミントのよう
な芳香がある。
■ラナンキュラス〔エムピュアイエロー〕 キンポウゲ科/球根
植物/幾重にも重なる柔らかい花弁が特徴。品種名の「エム」は
育種された宮崎県の「M」より。「エム」シリーズは花色が豊富で茎
が細い。
■ヒペリカム〔ココリオ〕 オトギリソウ科/半常緑低木/花後
の実を楽しむものとして流通。実色は赤ピンク系を中心に茶色や
緑、クリームなどもある。「ココリオ」は明るい赤で丸い実の品種。
■テマリソウ ナデシコ科/多年草/真ん丸でマリモや芝を連
想させる個性的な花。ふさふさした部分は雄しべ・雌しべ・花弁が
萼片のように変化したもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3112.jpg