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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.315 − 謳 (うたう) −
この時季、山河は土までもが優しく語り掛けてくれます。
海棠(カイドウ)、反対側にあるライラックの薄紫色、樹々の若緑と相俟(あいま)って、春の穏やかさが庭に拡がっています。
連翹(レンギョウ)、蘇芳(スオウ)、花桃(ハナモモ)、躑躅(ツツジ)、雪柳、チューリップ、菜の花、色取り取り、真に百花繚乱の大地です。
植え込みや生垣のポピー、欧州の人々には悲しい記憶を呼び覚ます花です。
(vol.246 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=283)
1週間、京都、福岡へ2度、広島、東京と日帰りの旅を繰り返し、大学へは1日しか居ませんでした。
心身の疲れを癒してくれたのは、車窓からの山河の姿です。
東海道新幹線では、田圃(たんぼ)にレンゲやシロツメクサが咲き乱れていました。野焼き、田起こし、苗代(なわしろ)、農作業が既に始まっています。
近江の山間(やまあい)、白っぽい桜がまだ点々と残っており、春の雨で霞(かすみ)がかって、昔の里山の風景をみるようです。
車窓からみる雨に煙(けむ)った山河、セピア色の風景写真です。土手の菜の花が鮮やかです。山河は勿論、車、桜の散った後の寂しい人の心をも、一時、雨が優しく包み込んでいる静かな情景です。
山陽新幹線、山々は低く、なだらかで、伸びやかです。風土の気配は人間の心根にも影響している筈です。
(vol.110 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=138)
桜が散り始めて、俄然、存在感を主張しているのが椿です。椿は、日本を源とする世界中で人気の花(学名:カメリアヤポニカ)です。
我が国では、燃料として、文様(もんよう)、食用、染色にと、昔から、暮らしのなかで身近な存在です。
この時季、濃い緑の葉を繁らせた高々として木の中の鮮やかな紅や白の彩(いろどり)、若葉の薄緑とも調和し、春の旬を告げています。
一輪差しの凛とした大輪(たいりん)の姿も、部屋の雰囲気をガラっと変えてくれます。
落(おち)ざまに水こぼしけり花椿
芭蕉
椿は、桜のようには心が乱されることはなく、観る者に一種の緊張感を与えてくれます。花自体も然(さ)ることながら、葉の緑の深さと固さが、それに与(あずか)っています。
真紅の石楠花(シャクナゲ)も目につきます。福島の県花としての石楠花は、淡紅色で、静かなる華やぎです。
ふと立ち止まり、周囲を見渡せば、次の主役は、花水木(ハナミズキ)です。自然は、動きはそれとみえなくても、いつの間にか確実に変わって、季節が巡ります。
子供の頃、武道に励んだことがあります。「静の中に動、動の中に静」と諭されても、呪文のようにしか受け止められませんでした。
今なら分かります。これが、先人が自然の中から学んだ真理で、西洋のスポーツと異なることを。
孤高の書家、井上有一の「遠くて近い井上有一展」に足を運びました。
入口の「佛」を始め、「上」、「孝」など、濃い墨での一字の大作、圧倒的な迫力です。これだけ勁(つよ)く、素朴な、それでいて熱い書、誰も居ない館内、暫(しば)し、見入ってしまいました。
書を書道としてみると、先(ま)ず何が書いてあるか、何という字かを知ろうとします。何故なら、日本人にとって、書いてあるのは母国語だからです。
逆に、意匠(デザイン)として書をみて、それから何という字かを知ると、こんな書き方もあるのかと別な視点で鑑賞できます。
書が、芸術として海外の人々に早くから人気があるのは、絵画の視点からみたからではないでしょうか。
井上有一の書は、濃い墨の一文字に情念が乗り移ったようです。これに何かもう一つ加えるか、引くかすると副島種臣の書(vol.73、101)になるのではと、門外漢には感じられました。
(vol.73 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=99)
(vol.101 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=129)
今週の花材は、両室とも、春の豊かな彩(いろどり)を象徴しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
海棠(カイドウ)、反対側にあるライラックの薄紫色、樹々の若緑と相俟(あいま)って、春の穏やかさが庭に拡がっています。
連翹(レンギョウ)、蘇芳(スオウ)、花桃(ハナモモ)、躑躅(ツツジ)、雪柳、チューリップ、菜の花、色取り取り、真に百花繚乱の大地です。
植え込みや生垣のポピー、欧州の人々には悲しい記憶を呼び覚ます花です。
(vol.246 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=283)
1週間、京都、福岡へ2度、広島、東京と日帰りの旅を繰り返し、大学へは1日しか居ませんでした。
心身の疲れを癒してくれたのは、車窓からの山河の姿です。
東海道新幹線では、田圃(たんぼ)にレンゲやシロツメクサが咲き乱れていました。野焼き、田起こし、苗代(なわしろ)、農作業が既に始まっています。
近江の山間(やまあい)、白っぽい桜がまだ点々と残っており、春の雨で霞(かすみ)がかって、昔の里山の風景をみるようです。
車窓からみる雨に煙(けむ)った山河、セピア色の風景写真です。土手の菜の花が鮮やかです。山河は勿論、車、桜の散った後の寂しい人の心をも、一時、雨が優しく包み込んでいる静かな情景です。
山陽新幹線、山々は低く、なだらかで、伸びやかです。風土の気配は人間の心根にも影響している筈です。
(vol.110 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=138)
桜が散り始めて、俄然、存在感を主張しているのが椿です。椿は、日本を源とする世界中で人気の花(学名:カメリアヤポニカ)です。
我が国では、燃料として、文様(もんよう)、食用、染色にと、昔から、暮らしのなかで身近な存在です。
この時季、濃い緑の葉を繁らせた高々として木の中の鮮やかな紅や白の彩(いろどり)、若葉の薄緑とも調和し、春の旬を告げています。
一輪差しの凛とした大輪(たいりん)の姿も、部屋の雰囲気をガラっと変えてくれます。
落(おち)ざまに水こぼしけり花椿
芭蕉
椿は、桜のようには心が乱されることはなく、観る者に一種の緊張感を与えてくれます。花自体も然(さ)ることながら、葉の緑の深さと固さが、それに与(あずか)っています。
真紅の石楠花(シャクナゲ)も目につきます。福島の県花としての石楠花は、淡紅色で、静かなる華やぎです。
ふと立ち止まり、周囲を見渡せば、次の主役は、花水木(ハナミズキ)です。自然は、動きはそれとみえなくても、いつの間にか確実に変わって、季節が巡ります。
子供の頃、武道に励んだことがあります。「静の中に動、動の中に静」と諭されても、呪文のようにしか受け止められませんでした。
今なら分かります。これが、先人が自然の中から学んだ真理で、西洋のスポーツと異なることを。
孤高の書家、井上有一の「遠くて近い井上有一展」に足を運びました。
入口の「佛」を始め、「上」、「孝」など、濃い墨での一字の大作、圧倒的な迫力です。これだけ勁(つよ)く、素朴な、それでいて熱い書、誰も居ない館内、暫(しば)し、見入ってしまいました。
書を書道としてみると、先(ま)ず何が書いてあるか、何という字かを知ろうとします。何故なら、日本人にとって、書いてあるのは母国語だからです。
逆に、意匠(デザイン)として書をみて、それから何という字かを知ると、こんな書き方もあるのかと別な視点で鑑賞できます。
書が、芸術として海外の人々に早くから人気があるのは、絵画の視点からみたからではないでしょうか。
井上有一の書は、濃い墨の一文字に情念が乗り移ったようです。これに何かもう一つ加えるか、引くかすると副島種臣の書(vol.73、101)になるのではと、門外漢には感じられました。
(vol.73 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=99)
(vol.101 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=129)
今週の花材は、両室とも、春の豊かな彩(いろどり)を象徴しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■バンダ〔バンドーラダークブルー〕 ラン科
/樹木や岩肌に根を張りつかせて育つ。洋ラ
ンの中でも特異なブルー系の美しい花色。10
cm程の大きな丸弁で網目模様が入る花弁。
■アルストロメリア〔ギャラクシー〕 ヒガン
バナ科/球根植物/《名前の由来》スウェー
デンの植物学者アルストレメールの名前から
/1本の茎から5〜8本の花茎を伸ばし花を咲
かせる。一つひとつの花はユリを小さくしたよう
な形で、花弁に入る斑が特徴。「ギャラクシー」
はラベンダー色の品種。
■トルコギキョウ〔ストロベリーパフェ〕 リン
ドウ科/多年草/アメリカ原産で当初は紫色
の一重咲のみ。1970年代以降多彩な色や
花形が楽しめる様になる。品種改良の中心は
日本で、現在出回っている品種のほとんどが
日本産。「ストロベリーパフェ」はピンクの大輪
八重咲き。
■ゴアナクロー 《名前の由来》“トカゲ(ゴア
ナ)の爪(クロー)”という意味/茎が黒と緑の
斑点で覆われる。葉がくるくるとカールし独特
の雰囲気が楽しめる。ドライフラワーでも人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3151.jpg
■バンダ〔バンドーラダークブルー〕 ラン科
/樹木や岩肌に根を張りつかせて育つ。洋ラ
ンの中でも特異なブルー系の美しい花色。10
cm程の大きな丸弁で網目模様が入る花弁。
■アルストロメリア〔ギャラクシー〕 ヒガン
バナ科/球根植物/《名前の由来》スウェー
デンの植物学者アルストレメールの名前から
/1本の茎から5〜8本の花茎を伸ばし花を咲
かせる。一つひとつの花はユリを小さくしたよう
な形で、花弁に入る斑が特徴。「ギャラクシー」
はラベンダー色の品種。
■トルコギキョウ〔ストロベリーパフェ〕 リン
ドウ科/多年草/アメリカ原産で当初は紫色
の一重咲のみ。1970年代以降多彩な色や
花形が楽しめる様になる。品種改良の中心は
日本で、現在出回っている品種のほとんどが
日本産。「ストロベリーパフェ」はピンクの大輪
八重咲き。
■ゴアナクロー 《名前の由来》“トカゲ(ゴア
ナ)の爪(クロー)”という意味/茎が黒と緑の
斑点で覆われる。葉がくるくるとカールし独特
の雰囲気が楽しめる。ドライフラワーでも人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3151.jpg
【秘書室】
■アマリリス〔ダズラー〕 ヒガンバナ科/球根植物/花期は4〜
6月(秋咲は10月)でユリに似た花を咲かせる。スッと伸びた太い茎
に花径10〜20cmほどの花が咲き、一株でも見応えがある。花色
は赤やピンクの他複色もある。「ダズラー」は大輪一重咲の白色。
■ピンポン菊〔ジェニーオレンジ〕 キク科/多年草/通常の菊と
異なり真ん丸に咲く可愛い菊。花持ちも良く、仏事に限らず幅広く利
用される。
■モカラ ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケントルムの3種の
蘭を交配した人工種。南国らしい赤や黄色などの鮮やかな花色の品
種が豊富。
■アルストロメリア〔ゴメラ〕 (理事長室と同花材)
「ゴメラ」はオレンジ色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3152.jpg
■アマリリス〔ダズラー〕 ヒガンバナ科/球根植物/花期は4〜
6月(秋咲は10月)でユリに似た花を咲かせる。スッと伸びた太い茎
に花径10〜20cmほどの花が咲き、一株でも見応えがある。花色
は赤やピンクの他複色もある。「ダズラー」は大輪一重咲の白色。
■ピンポン菊〔ジェニーオレンジ〕 キク科/多年草/通常の菊と
異なり真ん丸に咲く可愛い菊。花持ちも良く、仏事に限らず幅広く利
用される。
■モカラ ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケントルムの3種の
蘭を交配した人工種。南国らしい赤や黄色などの鮮やかな花色の品
種が豊富。
■アルストロメリア〔ゴメラ〕 (理事長室と同花材)
「ゴメラ」はオレンジ色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3152.jpg