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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.316 − 抗 (あらがう) −
信夫の里の今、卯の花(ウノハナ)、栃の木(トチノキ)、灯台躑躅(ドウダンツツジ)、馬酔木(アシビ)、小手毬(コデマリ)、白い花が大地を飾っています。
庭にはタンポポ、冠毛(かんもう)で運ばれて、あちこちに花を咲かせています。
川岸、早朝と深夜、ヒヨドリでしょうか、鳴き声がよく聞こえてきます。
会津の里山、青空の下、新緑のなかに点在している名残りの桜、山全体が霞んでいるようにみえます。美しい山河の風景の一つです。
この時季、旧(ふる)い人間には高野辰之作詞の「朧月夜(おぼろづきよ)」、「春の小川」、「春がきた」など一連の抒情歌が、歌詞とともに脳裡を過(よぎ)ります。
音楽は、一人ひとりの人生にとっての伴侶であり、道標(みちしるべ)です。歌は時代の象徴にもなってきました。 (vol.229 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=266)
時は移り、今、「時代の歌」が「世代の歌」に、「私達の歌」が「私の歌」に変わってきています。
あの時代、世代を越えて共有していた歌が、確かにありました。何時(いつ)から変わったのでしょうか。記憶や書物からみると、1970年(昭和45年)前後が分水嶺(ぶんすいれい)のようです。
振り返れば、スタンダードナンバーと言われている曲を、モダンジャズを通して知りました。元々は昔の流行歌(はやりうた)です。
ジャズの発祥地である米国、旋律(メロディー)と歌詞が一体となったポピュラーソングの黄金時代の終わりは、1960年代後半だそうです。
「キャバレー」や「シカゴ」などのブロードウェイミュージカルの作曲家として知られているジョン・カンダーが経験した象徴的な秘話からそれを知りました。
そこでは、ロックの登場が終焉(しゅうえん)の切っ掛けだと述べられています。
メロディーと歌詞が一体となって愛されていた歌の時代から、今、皆に口ずさまれる歌詞はなくなってしまいました。メロディーは、リズムに取って代わられました。
日々の暮らしのなか、メロディーと歌詞が一体となった歌、人々の人生を紡いでいた音楽の時代はもう終わってしまったのでしょうか。
時代を象徴する名曲、その歌を聴くと当時の雰囲気までもが再現できるという時代は、永遠に来ないのでしょうか。
ジャズにも同じ事が言えます。誰が聴いてもジャズと感じられる音楽は、今や、伝統音楽の一つとして生きているかのようです。
ジャズの歴史を語る時、その定義すら、今は良く分からなくなっています。この分岐点も1970年代頃です。
1950、60年代のモダンジャズ、クラシック音楽が、今尚、時空を越えて世界中で人々に愛されているのは、そのなかに人々の琴線(きんせん)に触れる何かが宿っているからではないでしょうか。
人々は何故か、短調の曲に哀愁を感じ、感傷的になります。ショパンの「幻想即興曲」、ブラームスの交響曲第3番の第3楽章などが思い浮かびます。勿論、己には短調が何かは知りませんが。
叙情的と言えば、シベリウスの交響曲第2番があります。折りに触れてBGMとして流しています。手元にある5枚のCDをみてみます。演奏時間が、最短で44分25秒、最長で47分27秒と、約3分も差があります。
指揮者は、この時間の流れや音の強弱により、曲に表情をつくり、個性を発揮します。
音楽は、作曲家の旋律、作詞家による歌詞、歌手や指揮者、そして演奏者、これらが一体になった時、不朽の名曲が生まれるのでしょう。
日本語も、旧い日本語と新しい日本語に分かれるようです。室町時代が移行期で、両者を橋渡しできるのが世阿弥だそうです。
普遍的な言語さえ時とともに変わってゆく、この世は万物流転(ばんぶつるてん)です。
今週の花材は、執務室は芍薬(シャクヤク)を中心にした白で、秘書室は紫系で統一しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※来週の「理事長室からの花だより」は休載させていただきます。
5月15日(金)より連載再開いたします。
庭にはタンポポ、冠毛(かんもう)で運ばれて、あちこちに花を咲かせています。
川岸、早朝と深夜、ヒヨドリでしょうか、鳴き声がよく聞こえてきます。
会津の里山、青空の下、新緑のなかに点在している名残りの桜、山全体が霞んでいるようにみえます。美しい山河の風景の一つです。
この時季、旧(ふる)い人間には高野辰之作詞の「朧月夜(おぼろづきよ)」、「春の小川」、「春がきた」など一連の抒情歌が、歌詞とともに脳裡を過(よぎ)ります。
音楽は、一人ひとりの人生にとっての伴侶であり、道標(みちしるべ)です。歌は時代の象徴にもなってきました。 (vol.229 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=266)
時は移り、今、「時代の歌」が「世代の歌」に、「私達の歌」が「私の歌」に変わってきています。
あの時代、世代を越えて共有していた歌が、確かにありました。何時(いつ)から変わったのでしょうか。記憶や書物からみると、1970年(昭和45年)前後が分水嶺(ぶんすいれい)のようです。
振り返れば、スタンダードナンバーと言われている曲を、モダンジャズを通して知りました。元々は昔の流行歌(はやりうた)です。
ジャズの発祥地である米国、旋律(メロディー)と歌詞が一体となったポピュラーソングの黄金時代の終わりは、1960年代後半だそうです。
「キャバレー」や「シカゴ」などのブロードウェイミュージカルの作曲家として知られているジョン・カンダーが経験した象徴的な秘話からそれを知りました。
そこでは、ロックの登場が終焉(しゅうえん)の切っ掛けだと述べられています。
メロディーと歌詞が一体となって愛されていた歌の時代から、今、皆に口ずさまれる歌詞はなくなってしまいました。メロディーは、リズムに取って代わられました。
日々の暮らしのなか、メロディーと歌詞が一体となった歌、人々の人生を紡いでいた音楽の時代はもう終わってしまったのでしょうか。
時代を象徴する名曲、その歌を聴くと当時の雰囲気までもが再現できるという時代は、永遠に来ないのでしょうか。
ジャズにも同じ事が言えます。誰が聴いてもジャズと感じられる音楽は、今や、伝統音楽の一つとして生きているかのようです。
ジャズの歴史を語る時、その定義すら、今は良く分からなくなっています。この分岐点も1970年代頃です。
1950、60年代のモダンジャズ、クラシック音楽が、今尚、時空を越えて世界中で人々に愛されているのは、そのなかに人々の琴線(きんせん)に触れる何かが宿っているからではないでしょうか。
人々は何故か、短調の曲に哀愁を感じ、感傷的になります。ショパンの「幻想即興曲」、ブラームスの交響曲第3番の第3楽章などが思い浮かびます。勿論、己には短調が何かは知りませんが。
叙情的と言えば、シベリウスの交響曲第2番があります。折りに触れてBGMとして流しています。手元にある5枚のCDをみてみます。演奏時間が、最短で44分25秒、最長で47分27秒と、約3分も差があります。
指揮者は、この時間の流れや音の強弱により、曲に表情をつくり、個性を発揮します。
音楽は、作曲家の旋律、作詞家による歌詞、歌手や指揮者、そして演奏者、これらが一体になった時、不朽の名曲が生まれるのでしょう。
日本語も、旧い日本語と新しい日本語に分かれるようです。室町時代が移行期で、両者を橋渡しできるのが世阿弥だそうです。
普遍的な言語さえ時とともに変わってゆく、この世は万物流転(ばんぶつるてん)です。
今週の花材は、執務室は芍薬(シャクヤク)を中心にした白で、秘書室は紫系で統一しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※来週の「理事長室からの花だより」は休載させていただきます。
5月15日(金)より連載再開いたします。
今週の花
【理事長室】
■ナツハゼ ツツジ科/落葉低木/《名前
の由来》夏にハゼのように紅葉することから/
北海道から九州にかけて、山地や丘陵地に生
育。春の芽吹きの頃から赤みを帯びた葉色が
特徴。花期は5〜6月頃で、ベル状の小さな
花を多数咲かせる。
■アルストロメリア〔アスティ〕 ヒガンバナ
科/球根植物/《名前の由来》スウェーデン
の植物学者アルストレメールの名前から/1
本の茎から5〜8本の花茎を伸ばし花を咲か
せる。一つひとつの花はユリを小さくしたような
形で、花弁に入る斑が特徴。
■シャクヤク〔ラテンドール〕 ボタン科/多
年草/平安時代に薬用として日本に渡来。花
期は5〜6月頃でボタンに似た花を咲かせる。
同じボタン科の植物だが、ボタンは「木」でシャ
クヤクは「草」。「ラテンドール」は白色の八重
咲でわずかにピンクがかる。
■アンスリュウム〔エスメラルダ〕 サトイモ
科/常緑多年草/光沢があり造花と見間違う
ような南国の花。花弁のように見える苞と棒状
の花序を持つ。「エスメラルダ」はライトグリー
ンの品種。
■ドラセナ〔コーディラインスノーホワイト〕
リュウゼツラン科/日本で流通する観葉植物
の代表種。「コーディラインスノーホワイト」は
青葉。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3161.jpg
■ナツハゼ ツツジ科/落葉低木/《名前
の由来》夏にハゼのように紅葉することから/
北海道から九州にかけて、山地や丘陵地に生
育。春の芽吹きの頃から赤みを帯びた葉色が
特徴。花期は5〜6月頃で、ベル状の小さな
花を多数咲かせる。
■アルストロメリア〔アスティ〕 ヒガンバナ
科/球根植物/《名前の由来》スウェーデン
の植物学者アルストレメールの名前から/1
本の茎から5〜8本の花茎を伸ばし花を咲か
せる。一つひとつの花はユリを小さくしたような
形で、花弁に入る斑が特徴。
■シャクヤク〔ラテンドール〕 ボタン科/多
年草/平安時代に薬用として日本に渡来。花
期は5〜6月頃でボタンに似た花を咲かせる。
同じボタン科の植物だが、ボタンは「木」でシャ
クヤクは「草」。「ラテンドール」は白色の八重
咲でわずかにピンクがかる。
■アンスリュウム〔エスメラルダ〕 サトイモ
科/常緑多年草/光沢があり造花と見間違う
ような南国の花。花弁のように見える苞と棒状
の花序を持つ。「エスメラルダ」はライトグリー
ンの品種。
■ドラセナ〔コーディラインスノーホワイト〕
リュウゼツラン科/日本で流通する観葉植物
の代表種。「コーディラインスノーホワイト」は
青葉。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3161.jpg
【秘書室】
■カンパニュラ〔チャンピオンピンク〕 キキョウ科/多年草/《名
前の由来》“小さな鐘”を意味するラテン語から/世界に約300種あ
り、日本でも4種が自生。風鈴のような可愛らしい花が連なって咲く。
■エリンジュウム〔ブルーダイナマイト〕 セリ科/多年草/長く鋭
い苞と松かさのような花が特徴。成長とともに青みを帯びる。非常に
花持ちが良く、ドライフラワーにも適す。
■アランダ〔ノーラブルー〕 ラン科/バンダとアラクニスの交配
種。蝋質の花で暑さに強く花持ちが良い。「ノーラブルー」は綺麗な
薄紫色。
■オオデマリ〔ジェミニ〕 スイカズラ科/落葉低木/花期は4〜5
月頃で、小花が密集して紫陽花に似た手毬状の花が咲く。暑さ寒さ
に強く、庭木としても人気。「ジェミニ」は1本の木から桃色と白色を咲
かせる品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3162.jpg
■カンパニュラ〔チャンピオンピンク〕 キキョウ科/多年草/《名
前の由来》“小さな鐘”を意味するラテン語から/世界に約300種あ
り、日本でも4種が自生。風鈴のような可愛らしい花が連なって咲く。
■エリンジュウム〔ブルーダイナマイト〕 セリ科/多年草/長く鋭
い苞と松かさのような花が特徴。成長とともに青みを帯びる。非常に
花持ちが良く、ドライフラワーにも適す。
■アランダ〔ノーラブルー〕 ラン科/バンダとアラクニスの交配
種。蝋質の花で暑さに強く花持ちが良い。「ノーラブルー」は綺麗な
薄紫色。
■オオデマリ〔ジェミニ〕 スイカズラ科/落葉低木/花期は4〜5
月頃で、小花が密集して紫陽花に似た手毬状の花が咲く。暑さ寒さ
に強く、庭木としても人気。「ジェミニ」は1本の木から桃色と白色を咲
かせる品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3162.jpg