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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.318 − 比 (くらべる) −
夜、蛙の声が聞こえます。田圃(たんぼ)に水が張られたことをこれで知ります。
若葉、山々に目を遣(や)れば、常緑樹の濃い緑と落葉樹の淡い緑、抽象画のようです。
若葉に目も鮮やかな山法師(ヤマボウシ)、エゴノキの白、点描画です。
常盤木落葉(ときわぎおちば)、秋とは異なり、注目を浴びる事なく、新緑に席を譲った常緑樹の落葉が散り敷かれています。この時季を代表する情景の一つです。
桐、5月を代表する花です。控えめな藤色、華やぎがあります。
女紋(おんなもん)として知られているのが桐紋です。
会津桐の産地の中心が三島桐です。己も桐下駄を愛用しています。三島の里では、只見川沿い、道端、庭先、そして畑に桐の木をみます。
桐は不思議な木材です。年輪や木目を持っていながら、樹芯には穴が通っています。
暮らしの変化や輸入に押されて、桐箪笥は周りから消え、国産の桐産業は衰えてしまいました。
大切な物を火、湿気、害虫から守る為に用いられた桐箱、蓋を開け閉めする時の吸いつくような、エアクッションを思わせる感覚、小さな感動を覚えます。
新茶の便りが届きました。
茶摘みの歌が、この時季を教えてくれていました。
山門を出れば日本ぞ茶摘うた
菊舎
立春(2月4日)から数えて八十八夜、今年は5月2日です。我が国を代表する風物詩です。
「和」を代表する暮らしの必需品に和紙があります。
(vol.261 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=298)
(vol.292 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=329)
近年、手漉き(てすき)和紙の職人の方々の高齢化が進み、漉き手が少なくなってきています。
機械漉きと違って、手漉きは求める人に応じて、大きさ、厚さを加減できます。
手漉き和紙の大半は、楮紙(こうぞし)です。「鳥の子」の別名がある、美しい光沢と滑らかな地肌の雁皮紙(がんぴし)は、栽培が出来ません。紙幣の原料である三椏紙(みつまたがみ)、東大寺目録に使用されている麻紙(まし)などが今日まで伝えられています。
和紙は秀(すぐ)れた調光器でもあります。
ラトゥール(vol.67、231)、カラバッジョ(vol.67)に代表される強烈な光と闇の対比と違います。
(vol.67 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=93)
(vol.231 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=268)
和紙を貼った障子や行灯(あんどん)は、光を和(やわ)らかくして、光と影の中間をつくり、落ち着いた雰囲気をつくり出してくれます。
障子が重要な役割をしている建物として、大徳寺(だいとくじ)にある孤篷庵(こほうあん)の茶室「忘筌」(ぼうせん)、真珠庵(しんじゅあん)の茶室「庭玉軒」(ていぎょくけん)、祇王寺草庵の丸窓が心に残っています。
(vol.25 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=42)
(vol.245 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=282)
(vol.298 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=335)
ガラス越しの光にも「和」はあります。
磨き板ガラスではなく、昔の波打っているガラスやガラスの細い管を縦に並べた窓ガラスです。
部屋の中に入る光は、ガラスの透明度が低い分、熟成されたワインのような円(まろ)やかさを生み出します。
部屋の床や畳に映る樹々の影、優しげです。
強烈な人間の意志を感じさせる西洋のステンドグラスの光、一方、障子を通る光、対照的です。
建築をみてみます。
西洋建築は石造です。王侯貴族に象徴されます。日本建築は木造です。庶民の数寄屋造りに代表されます。これも対照的です。
涼やかな近代的空間、西洋の建築はすっきりした造形を際立たせるガラス、アクリル板、そして鉄という素材で構成されています。日本は、木材と紙です。
構造自体が空間の表現という日本の建築様式は、近代の西洋建築の新たな概念を打ち立てるのに大きな影響を与えました。
西洋と日本では、対称の捉え方が違います。西洋は常に対称を追求します。
一方、「和」は対称を崩します。折り合いや余情に通じる感覚です。恐らく、山河から学んだ知恵です。
今週の花材は、両室とも、色と佇まいでこの時季の大気と自然を象徴しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
若葉、山々に目を遣(や)れば、常緑樹の濃い緑と落葉樹の淡い緑、抽象画のようです。
若葉に目も鮮やかな山法師(ヤマボウシ)、エゴノキの白、点描画です。
常盤木落葉(ときわぎおちば)、秋とは異なり、注目を浴びる事なく、新緑に席を譲った常緑樹の落葉が散り敷かれています。この時季を代表する情景の一つです。
桐、5月を代表する花です。控えめな藤色、華やぎがあります。
女紋(おんなもん)として知られているのが桐紋です。
会津桐の産地の中心が三島桐です。己も桐下駄を愛用しています。三島の里では、只見川沿い、道端、庭先、そして畑に桐の木をみます。
桐は不思議な木材です。年輪や木目を持っていながら、樹芯には穴が通っています。
暮らしの変化や輸入に押されて、桐箪笥は周りから消え、国産の桐産業は衰えてしまいました。
大切な物を火、湿気、害虫から守る為に用いられた桐箱、蓋を開け閉めする時の吸いつくような、エアクッションを思わせる感覚、小さな感動を覚えます。
新茶の便りが届きました。
茶摘みの歌が、この時季を教えてくれていました。
山門を出れば日本ぞ茶摘うた
菊舎
立春(2月4日)から数えて八十八夜、今年は5月2日です。我が国を代表する風物詩です。
「和」を代表する暮らしの必需品に和紙があります。
(vol.261 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=298)
(vol.292 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=329)
近年、手漉き(てすき)和紙の職人の方々の高齢化が進み、漉き手が少なくなってきています。
機械漉きと違って、手漉きは求める人に応じて、大きさ、厚さを加減できます。
手漉き和紙の大半は、楮紙(こうぞし)です。「鳥の子」の別名がある、美しい光沢と滑らかな地肌の雁皮紙(がんぴし)は、栽培が出来ません。紙幣の原料である三椏紙(みつまたがみ)、東大寺目録に使用されている麻紙(まし)などが今日まで伝えられています。
和紙は秀(すぐ)れた調光器でもあります。
ラトゥール(vol.67、231)、カラバッジョ(vol.67)に代表される強烈な光と闇の対比と違います。
(vol.67 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=93)
(vol.231 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=268)
和紙を貼った障子や行灯(あんどん)は、光を和(やわ)らかくして、光と影の中間をつくり、落ち着いた雰囲気をつくり出してくれます。
障子が重要な役割をしている建物として、大徳寺(だいとくじ)にある孤篷庵(こほうあん)の茶室「忘筌」(ぼうせん)、真珠庵(しんじゅあん)の茶室「庭玉軒」(ていぎょくけん)、祇王寺草庵の丸窓が心に残っています。
(vol.25 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=42)
(vol.245 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=282)
(vol.298 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=335)
ガラス越しの光にも「和」はあります。
磨き板ガラスではなく、昔の波打っているガラスやガラスの細い管を縦に並べた窓ガラスです。
部屋の中に入る光は、ガラスの透明度が低い分、熟成されたワインのような円(まろ)やかさを生み出します。
部屋の床や畳に映る樹々の影、優しげです。
強烈な人間の意志を感じさせる西洋のステンドグラスの光、一方、障子を通る光、対照的です。
建築をみてみます。
西洋建築は石造です。王侯貴族に象徴されます。日本建築は木造です。庶民の数寄屋造りに代表されます。これも対照的です。
涼やかな近代的空間、西洋の建築はすっきりした造形を際立たせるガラス、アクリル板、そして鉄という素材で構成されています。日本は、木材と紙です。
構造自体が空間の表現という日本の建築様式は、近代の西洋建築の新たな概念を打ち立てるのに大きな影響を与えました。
西洋と日本では、対称の捉え方が違います。西洋は常に対称を追求します。
一方、「和」は対称を崩します。折り合いや余情に通じる感覚です。恐らく、山河から学んだ知恵です。
今週の花材は、両室とも、色と佇まいでこの時季の大気と自然を象徴しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■エピデンドラム ラン科/《名前の由来》ギリシャ語の“epi”
(上に)と“dendoron”(木)の2語より。本属が一般的に着生蘭
であることから/細く伸びた茎の先端に小さな花が密集して半球状
に開花。多肉植物のような肉厚な葉を持つ。
■LAユリ〔ハイドパーク〕 ユリ科/鉄砲百合(Longifrorum h
ybrid)とスカシユリ(Asiatic hybrid)の交配種。両種の良い所を持
ち合わせた中輪咲のユリ。「ハイドパーク」は濃いオレンジ。
■オンシジュウム〔ハニーエンジェル〕 ラン科/蝶が無数に舞い
飛んでいるような花姿。「ハニーエンジェル」は従来品種に入る斑が
無い鮮やかな花色。黄色が多いが他に白やピンクもある。
■ナルコラン ユリ科/多年草/日本の山野に群生。春にスズラ
ンのような白い小さな花が咲く。草丈は50cm程で、葉は斑が入り
涼しげなグリーン。とても強健な性質でガーデニングにも適す。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3181.jpg
■エピデンドラム ラン科/《名前の由来》ギリシャ語の“epi”
(上に)と“dendoron”(木)の2語より。本属が一般的に着生蘭
であることから/細く伸びた茎の先端に小さな花が密集して半球状
に開花。多肉植物のような肉厚な葉を持つ。
■LAユリ〔ハイドパーク〕 ユリ科/鉄砲百合(Longifrorum h
ybrid)とスカシユリ(Asiatic hybrid)の交配種。両種の良い所を持
ち合わせた中輪咲のユリ。「ハイドパーク」は濃いオレンジ。
■オンシジュウム〔ハニーエンジェル〕 ラン科/蝶が無数に舞い
飛んでいるような花姿。「ハニーエンジェル」は従来品種に入る斑が
無い鮮やかな花色。黄色が多いが他に白やピンクもある。
■ナルコラン ユリ科/多年草/日本の山野に群生。春にスズラ
ンのような白い小さな花が咲く。草丈は50cm程で、葉は斑が入り
涼しげなグリーン。とても強健な性質でガーデニングにも適す。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3181.jpg
【秘書室】
■アンスリュウム〔ソナタ〕 サトイモ科/常緑多年草/光
沢があり造花と見間違うような南国の花。花弁のように見え
る苞と棒状の花序を持つ。「ソナタ」は濃いピンク色。
■千日紅〔ストロベリーフィールド〕 ヒユ科/一年草/
《名前の由来》紅色が長く色褪せないことから。小花を密集し
た球状の頭状花序をつける。綺麗に花色が残り、ドライフラ
ワーとしても楽しめる。「ストロベリーフィールド」は苺のような
可愛い品種。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/4〜5月頃にス
ズランのような小さな白い花が咲く。新緑・花期・紅葉と一年
を通して楽しめ、庭木としても人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3182.jpg
■アンスリュウム〔ソナタ〕 サトイモ科/常緑多年草/光
沢があり造花と見間違うような南国の花。花弁のように見え
る苞と棒状の花序を持つ。「ソナタ」は濃いピンク色。
■千日紅〔ストロベリーフィールド〕 ヒユ科/一年草/
《名前の由来》紅色が長く色褪せないことから。小花を密集し
た球状の頭状花序をつける。綺麗に花色が残り、ドライフラ
ワーとしても楽しめる。「ストロベリーフィールド」は苺のような
可愛い品種。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/4〜5月頃にス
ズランのような小さな白い花が咲く。新緑・花期・紅葉と一年
を通して楽しめ、庭木としても人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3182.jpg