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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.323 − 惑 (まどう) −
梅雨空(つゆぞら)の下、水滴を載せている紫陽花(アジサイ)は、“和の粋”を代表する風景の一つです。
梅雨の合間、青空の下での紫陽花の青、天上の青です。藍染を思わせる濃い青、人間(ヒト)の心まで吸い寄せてしまう程、心惹かれる雰囲気があります。
側にある木槿(ムクゲ)や芙蓉(フヨウ)の白は、空の青との対比で、涼しさが際立っています。
土手下の庭先、摘果されることのない橙(だいだい)色の枇杷(ビワ)の実がたわわに実っています。鳥が寄ってきていません。鳥も贅沢になりました。
道端、雑木林の庭漆(ニワウルシ)の翼果(よくか)が、赤味の強い海老茶色が差し色となって、緑一色の風景に変化を与えています。只、この木の跋扈(ばっこ)振りが少々心配になります。
気がつけば、早や夏至(げし)を過ぎました。
信夫の里では、最も早い日の出(6月9日〜21日)は過ぎ、最も遅い日の入り(6月24日〜7月5日)も間もなく、早くなります。今年も折り返しを過ぎてゆこうとしています。時の早さ、たじろぐばかりです。
米国の西海岸、サンフランシスコのある北部では、マウンテンダンデライオン、カリフォルニアポピーの黄色、ストリームバイオレットの紫、アザミの青紫、モニュメントプラントの白に紫、彩(いろ)取り取りの野の花を従えて、red wood tree(セコイア)の大樹からなる森が、雄大な山河に広がっています。
セコイアの森に海から朝霧が流れ来て、樹々の間、霧の裂け目から朝陽が差し込んでいます。
北部の海岸は、絶壁のような崕(がけ)です。
西海岸という名称から受ける印象とは不似合な程の厳しい風景です。
海岸から森に辿り着いた夜霧が、早朝、雨となって樹々から降っています。
朝霧は音もなく流れ行き、まるで「松林図屏風」(長谷川等伯)(vol.281)が目の前にあるようです。
(vol.281 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=318)
その間、10分から20分位でしょうか。時の移ろいがみせてくれる、一瞬の美しさです。その後は、カリフォルニアの青空と太平洋の青い海が眼の前に展開します。
南部、サンディエゴ、道端にアフリカアイリスの黄色、ハイビスカスの赤、ジャカランダの紫(vol.222)、米国の西海岸を象徴する風景の一つです。
(vol.222 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=259)
去年の米国、東海岸への旅と比較すると、改めて米国の広大さと多様性を知らされます。
サンフランシスコの街を歩いていて、くしゃみをしたら、脇を通り掛かったピンクのワイシャツを着た2人連れが、“God bless you”(あなたに神の御加護を)、と私を追い越しながら呟いていったのです。話には聞いていましたが、体験したのは初めてです。
服装、東海岸とは対照的です。背広やネクタイ姿をほとんどみません。只、シャツは、いわゆるドレスシャツです。
今回の旅で、スタインベックの小説「怒りの葡萄」、「エデンの東」が描いている世界の一端を覗きました。
今は、広大なレタス畑で一団となって作業しているメキシコの人々の一群に、当時の面影を窺(うかが)えるだけです。ここにも時の移ろいを感じます。
米国は「してはならない国」、我が国は「しなければならない国」、という世間であることを感じます。
法律に違反しなければ何をしても良いと考えるか、社会に生きる人間として何をしなければならないか、と考えるかの違いです。
西海岸だからでしょうか、日本料理の影響の大きさにも驚きました。トウガラシ、ユズ、シソ、ジドリ、トウフという言葉の英語表記、ホテルの洗面台や皿に使われている益子焼、ドアに引き戸、刺子風デザインの手拭き、そして、今では当たり前になっているティーポットとしての鉄瓶などです。
今週の花材は、両室とも、ピンクや赤が、梅雨のなか、鮮やかです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
梅雨の合間、青空の下での紫陽花の青、天上の青です。藍染を思わせる濃い青、人間(ヒト)の心まで吸い寄せてしまう程、心惹かれる雰囲気があります。
側にある木槿(ムクゲ)や芙蓉(フヨウ)の白は、空の青との対比で、涼しさが際立っています。
土手下の庭先、摘果されることのない橙(だいだい)色の枇杷(ビワ)の実がたわわに実っています。鳥が寄ってきていません。鳥も贅沢になりました。
道端、雑木林の庭漆(ニワウルシ)の翼果(よくか)が、赤味の強い海老茶色が差し色となって、緑一色の風景に変化を与えています。只、この木の跋扈(ばっこ)振りが少々心配になります。
気がつけば、早や夏至(げし)を過ぎました。
信夫の里では、最も早い日の出(6月9日〜21日)は過ぎ、最も遅い日の入り(6月24日〜7月5日)も間もなく、早くなります。今年も折り返しを過ぎてゆこうとしています。時の早さ、たじろぐばかりです。
米国の西海岸、サンフランシスコのある北部では、マウンテンダンデライオン、カリフォルニアポピーの黄色、ストリームバイオレットの紫、アザミの青紫、モニュメントプラントの白に紫、彩(いろ)取り取りの野の花を従えて、red wood tree(セコイア)の大樹からなる森が、雄大な山河に広がっています。
セコイアの森に海から朝霧が流れ来て、樹々の間、霧の裂け目から朝陽が差し込んでいます。
北部の海岸は、絶壁のような崕(がけ)です。
西海岸という名称から受ける印象とは不似合な程の厳しい風景です。
海岸から森に辿り着いた夜霧が、早朝、雨となって樹々から降っています。
朝霧は音もなく流れ行き、まるで「松林図屏風」(長谷川等伯)(vol.281)が目の前にあるようです。
(vol.281 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=318)
その間、10分から20分位でしょうか。時の移ろいがみせてくれる、一瞬の美しさです。その後は、カリフォルニアの青空と太平洋の青い海が眼の前に展開します。
南部、サンディエゴ、道端にアフリカアイリスの黄色、ハイビスカスの赤、ジャカランダの紫(vol.222)、米国の西海岸を象徴する風景の一つです。
(vol.222 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=259)
去年の米国、東海岸への旅と比較すると、改めて米国の広大さと多様性を知らされます。
サンフランシスコの街を歩いていて、くしゃみをしたら、脇を通り掛かったピンクのワイシャツを着た2人連れが、“God bless you”(あなたに神の御加護を)、と私を追い越しながら呟いていったのです。話には聞いていましたが、体験したのは初めてです。
服装、東海岸とは対照的です。背広やネクタイ姿をほとんどみません。只、シャツは、いわゆるドレスシャツです。
今回の旅で、スタインベックの小説「怒りの葡萄」、「エデンの東」が描いている世界の一端を覗きました。
今は、広大なレタス畑で一団となって作業しているメキシコの人々の一群に、当時の面影を窺(うかが)えるだけです。ここにも時の移ろいを感じます。
米国は「してはならない国」、我が国は「しなければならない国」、という世間であることを感じます。
法律に違反しなければ何をしても良いと考えるか、社会に生きる人間として何をしなければならないか、と考えるかの違いです。
西海岸だからでしょうか、日本料理の影響の大きさにも驚きました。トウガラシ、ユズ、シソ、ジドリ、トウフという言葉の英語表記、ホテルの洗面台や皿に使われている益子焼、ドアに引き戸、刺子風デザインの手拭き、そして、今では当たり前になっているティーポットとしての鉄瓶などです。
今週の花材は、両室とも、ピンクや赤が、梅雨のなか、鮮やかです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ヘリコニア〔レッドイナズマ〕 バショウ科
/多年草/《名前の由来》ギリシャ神話で芸
術を司る女神が住んでいたと言われるヘリコン
山に由来。花の美しさからだと考えられる/長
く伸びた花径の先端に赤や黄色、オレンジな
どに彩られた派手な花穂を付ける。派手に彩
られた部分は苞でその中に花が咲く。
■ガマ ガマ科/多年草/日本全土の川
辺や沼、池などの湿地に自生。草丈は1.5〜
2mになり、菖蒲の葉を大型にしたような線
形。夏の花粉を乾燥したものが生薬の蒲黄
(ほおう)で、止血や利尿薬に利用される。
■LAユリ〔ミノー〕 ユリ科/球根植物/鉄
砲百合(Longifrorum)とスカシユリ(Asiatic)
の掛け合わせ。両種の良い所を持ち合わせた
中輪咲きのユリ。「ミノー」は発色の良い黄色。
■タニワタリ チャセンシダ科/常緑シダ植
物/日本南部の樹林にも自生し、樹上や岩上
などに着生するシダ植物。光沢のある鮮やか
な緑色で、波打つ大きな葉が特徴。丸める・裂
く・折るなど、形状を変えて活けたり、花止めと
しても利用できる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3231.jpg
■ヘリコニア〔レッドイナズマ〕 バショウ科
/多年草/《名前の由来》ギリシャ神話で芸
術を司る女神が住んでいたと言われるヘリコン
山に由来。花の美しさからだと考えられる/長
く伸びた花径の先端に赤や黄色、オレンジな
どに彩られた派手な花穂を付ける。派手に彩
られた部分は苞でその中に花が咲く。
■ガマ ガマ科/多年草/日本全土の川
辺や沼、池などの湿地に自生。草丈は1.5〜
2mになり、菖蒲の葉を大型にしたような線
形。夏の花粉を乾燥したものが生薬の蒲黄
(ほおう)で、止血や利尿薬に利用される。
■LAユリ〔ミノー〕 ユリ科/球根植物/鉄
砲百合(Longifrorum)とスカシユリ(Asiatic)
の掛け合わせ。両種の良い所を持ち合わせた
中輪咲きのユリ。「ミノー」は発色の良い黄色。
■タニワタリ チャセンシダ科/常緑シダ植
物/日本南部の樹林にも自生し、樹上や岩上
などに着生するシダ植物。光沢のある鮮やか
な緑色で、波打つ大きな葉が特徴。丸める・裂
く・折るなど、形状を変えて活けたり、花止めと
しても利用できる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3231.jpg
【秘書室】
■クルクマ〔シャローム〕 ショウガ科/球
根植物/幾重にも重なり花弁のように見える
部分は苞で、その中に小さな花が咲く/暑さ
に強く夏でも花持ちが良い。「シャローム」は代
表的なピンク色の品種。
■トルコギキョウ〔ピッコローサグリーン〕
リンドウ科/多年草/花の大きさや咲き方、
色合いが多岐にわたり、品種がとても豊富。
「ピッコローサ」シリーズは中輪八重咲で、バラ
に似た花形が特徴。
■ナルコユリ スズラン科〔ユリ科〕/春に
スズランのような白い小さな花が咲く。葉に斑
が入り、涼しげな印象のグリーン。とても強健
な性質でガーデニングにも最適。
■ユーパトリウム〔フローレプレノ〕 キク科
/多年草/花茎を長くのばし、アザミを小さく
したような花をまとめて咲かせる。「西洋フジバ
カマ」の別名をもち、藤袴に似た花姿。耐寒性
耐暑性に優れ、ガーデニングにも人気。「フ
ローレプレノ」はピンク系のアンティークカラー。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3232.jpg
■クルクマ〔シャローム〕 ショウガ科/球
根植物/幾重にも重なり花弁のように見える
部分は苞で、その中に小さな花が咲く/暑さ
に強く夏でも花持ちが良い。「シャローム」は代
表的なピンク色の品種。
■トルコギキョウ〔ピッコローサグリーン〕
リンドウ科/多年草/花の大きさや咲き方、
色合いが多岐にわたり、品種がとても豊富。
「ピッコローサ」シリーズは中輪八重咲で、バラ
に似た花形が特徴。
■ナルコユリ スズラン科〔ユリ科〕/春に
スズランのような白い小さな花が咲く。葉に斑
が入り、涼しげな印象のグリーン。とても強健
な性質でガーデニングにも最適。
■ユーパトリウム〔フローレプレノ〕 キク科
/多年草/花茎を長くのばし、アザミを小さく
したような花をまとめて咲かせる。「西洋フジバ
カマ」の別名をもち、藤袴に似た花姿。耐寒性
耐暑性に優れ、ガーデニングにも人気。「フ
ローレプレノ」はピンク系のアンティークカラー。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3232.jpg