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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2015.07.17

vol.325  − 羨 (うらやむ) −

夏の到来を待ち受けるような凌霄花(ノウゼンカズラ)、高々と橙色を目立たせています。
緑の葉を背にした梔子(クチナシ)の白、立葵(タチアオイ)の桃色、梅雨空(つゆぞら)の下(もと)、鮮やかです。合歓(ネム)の花も咲き出しています。

雨は嫌いではありません。雨音は好きです。只、そんな己でも湿気は鬱陶(うっとう)しく感じます。
そんな時、剣のような緑の葉を背にした深紫のグラジオラス、薄桃色のトルコキキョウ、大気を和(なご)ませます。

今の花々、一目(ひとめ)では何か分からない程、色や形が多彩です。人間の飽くなき探求心のなせる業(わざ)です。江戸時代の朝顔の品種改良を行った庶民の遺伝子、今も受け継がれています。

構想(夢)、そこに至る道筋、必要な手配り、毎日、四六時中考えています。そんな時、脈拍が早くなります。
疲れ果てて自宅にたどり着いた時、チョコレートを口に入れます。
普段は、子供の頃に、只、只、憧れの対象だった板チョコです。味の半分は懐かしさです。

チョコレート、海外に出掛けた時、彼我(ひが)を比較すると、己にとっては意外で、驚くことの一つです。
彼・彼女等がチョコレートを目にした時の嬉しそうな顔、何故(なにゆえ)にこれ程喜ぶのか、と訝(いぶか)しがる程です。食事の後のデザート、お勧めには、必ず、チョコレートが一番先に載っています。

好奇心から、海外の旅先でチョコレートを買ったり、食べ漁るようになりました。チョコレートの多様な味に驚きます。そして、そこにはお国柄が反映されています。

そもそもチョコレートの定義が国によって違います。
米国は素朴というか、無骨というか、“米国の味”です。老生には、時々、歯が立たない程、固いチョコレートがあります。
欧州では、ベルギーを筆頭に、スイス、フランス、英国、各国が特色を競っています。スイスチョコレートには楽しい思い出もあります。
         (vol.158 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=192

30年前から40年前、仕事で欧州へ足を運んだ折には、現地でしか手に入らないチョコレートを買うのは、海外出張での楽しみの一つでした。
今や、我が国で手に入らない“名の知られたチョコレート”はありません。

我が国でのチョコレートの歴史は、江戸時代の出島に始まります。
産業として生産を始めたのは、現在の森永製菓で、明治の末です。
戦後、高度成長期になると、一挙に国民の間に広がりました。只、田舎に住んでいた己には、出前の支那そばと同様、チョコレートは、年に数度味わえるかどうかという、高嶺の花でした。

チョコレートの起源は、紀元前のメキシコのカカオ豆まで遡(さかのぼ)ることが出来るようです。17世紀、栽培が中南米に、19世紀にはアフリカにまで広がり、現代に至っています。
華やかなチョコレートを光とすれば、影の歴史もあります。この間、ヨーロッパ、アフリカ、中南米を繋ぐ忌まわしい“三角貿易”が生まれました。
その後、ココアは飲み物から固型の食べるモノへと進化して、今のチョコレートがあります。

チョコレートといえば、バレンタインデーの贈り物という印象が、己には未(いま)だにあります。この習慣は、英国から始まりました。我が国では1970年代に定着した、と様々な書物に記されています。
老生の若かった頃、このような行事の存在に全く気付きませんでした。恐らく全国に普及したのは、テレビなどのメディアの浸透と軌を一(きをいつ)にしているのではないでしょうか。

チョコレートをモチーフ(題材)にして映画といえば、「ショコラ」です。西欧の人情話です。

今週の花材は対照的です。執務室は秘めた情熱を、秘書室は涼やかな情熱を感じます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)




今週の花


【理事長室】
■アガパンサス〔水車〕   ユリ科/球根植
物/《名前の由来》 ギリシャ語の“アガベ:
愛”と“アンサス:花”の2語から/園芸品種は
300種以上あり、草丈や開花時期などバラエ
ティに富む。花茎の先端に数十輪の花を放射
状に開花させる。
■クルクマ〔ライトピンク〕   ショウガ科/球
根植物/幾重にも重なり花弁のように見える
部分は苞で、その中に小さな花が咲く。暑さに
強く夏でも花持ちが良く、水中花としても楽し
める。
■ユーパトリウム〔フローレプレノ〕   キク科
/多年草/花茎を長くのばしアザミを小さくし
たような花をまとめて咲かせる。「西洋フジバカ
マ」の別名を持ち、藤袴に似た花姿。耐寒性
耐暑性に優れ、ガーデニングにも人気。
■トルコギキョウ〔セシルピンク〕   リンドウ
科/多年草/花の大きさや咲き方、色合いが
多岐にわたる。祝事仏事を問わず人気の高い
夏の花。「セシル」シリーズは一重剣弁星形品
種で可憐な印象。
■ピンポン菊   キク科/多年草/ピンポン
玉のように真ん丸に咲く可愛い菊。花色が豊
富で祝事用にも多く利用される。
■ドラセナ〔コーディラインレッド〕   リュウゼ
ツラン科/日本で流通する観葉植物の代表種
で、切花としても長く楽しめる。「コーディライン
レッド」は赤葉で、正式にはコルジリネ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3251.jpg

【秘書室】
■カラー〔ブラックマジック〕   サトイモ科/球根植物/メガホン状
の苞をもち、その中に棒状の花序がある。主に苞を鑑賞するので、花
持ちが良い。「ブラックマジック」は淡い黄色。
■ヒマワリ〔サンリッチレモン〕   キク科/一年草/夏を代表する
人気花で、花色や咲き方等品種が豊富。「サンリッチ」シリーズは花
粉の出ない品種。花色は「レモン」の他、濃淡で「パイン」や「オレン
ジ」「マンゴー」等もある。
■ギボウシ   ユリ科/多年草/斑入りやブルー系ライム系など、
葉色がとても綺麗で観賞価値の高いグリーン。初夏から秋にかけて
花が咲くが、寿命は短く1日で萎(しぼ)む。
■ピンポン菊 ■トルコギキョウ   (理事長室と同花材)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3252.jpg

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