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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.328 − 鎮 (しずめる) −
8月、鎮魂の月です。
炎熱(えんねつ)の下の蝉時雨(せみしぐれ)、命の限りを尽くして鳴いています。
夾竹桃(キョウチクトウ)がその情景をより深くしています。
(vol.42 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=67)
音もなく我より去りしものなれど
書きて偲びぬ明日という字を
木村久夫
学徒出陣した学生が、戦犯として、理不尽な処刑を前にしての悲痛な叫びです。
戦後生まれの我々、作者と同年代の今の若者、真正面からこの歌を受け止め、考えなければなりません。
1つの言語、1つの国だけで独自の文明を確立しているのは、世界で、我が国だけです。
日本列島、人間の力が及ばない四季の移ろい、長い歴史のなか、度々(たびたび)発生している天変地異、人々はそこから自然への畏怖(いふ)を学びました。
様々な地域から渡来して共生してきた営み、自然に寄り添い、譲り合って生きる術(すべ)を身につけました。
“諦観”、“折り合い”、“律儀”、古来、日本人が育(はぐく)んできた知恵です。
海外との交流が当たり前の今、日本人は個の主張が弱いゆえに、時にそれが弱みとなります。
沈黙は金、相手も自分と同じように考えているという勝手な思い込み(察し)が、後悔を招くこともあります。
利益の為に、成長を求め、絶えず拡大の力が働く経済活動の今という時代、価値基準が、国により、世代によっても違う、を実感します。
こんな世相だからこそ、長い時を掛けて培ってきた、日本人の特質を大切にする必要があります。
激しさを増す万物流転の今、前号(vol.327)に記したように、人の一生、ある人の生涯への評価は、「評価は他人がする」という当たり前の事に、今、心許(こころもと)ない思いがします。
(vol.327 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=366)
結局、「他人の評価はどうでも良くて、自身が自分の生き方や人生に納得しているかどうか」ではないかと。
逃げ様の無い、瞬時の判断が求められている時、自分はぶれなかったか、その後もぶれずに生きたか、この世を去る時、自らが自分の心に問い掛ける筈だからです。
本学は、約5年前、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故に際して、いきなり、医療の最前線に立たされました。
当時、混乱は極まり、情報は殆(ほと)んど入らず、入ってくる僅かな情報も錯綜(さくそう)していました。
現場は、真に修羅の場です。「地獄への道は善意で舗装されている」という箴言(しんげん)を実感しました。
(学長からの手紙番外編、臨床整形外科46(6):586,2011
http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/extra013.html)
人間の偉大さ、愚かさ、勁(つよ)さ、弱さもみました。
大分(だいぶ)日日(ひにち)が経ってから、当時、それぞれの地域で、人々がどのような状況に置かれていたかについて情報が出揃ってきました。
時系列で、俯瞰(ふかん)的に当時を知ることが出来るようになったのは、そんなに昔のことではありません。
当時、すべての県民や関係者は、各々(おのおの)が置かれている状況が分かっていた、という誤解を前提に、場違いな非難や批判、的外れな提言が、時々みられます。
その時、本県では、誰もが、何も、分からないまま、自らの決断を信じて行動していたというのが実態です。
しかも、暫(しばらく)くの間、輸送手段すら得られず、支援の車両は県境までしか来てはくれませんでした。
その後、“放射線は伝染する”、“福島県民は伝染病の源”のような酷(むご)い場面の出現、歴史上の事実です。
当時の現場の実体を、有りのままに次代に伝えていかないと、誤った教訓が独り歩きしてしまいます。
当時の混迷振りは、現場に居合わせた人間しか分からない、という苦い思いがあります。
「時の評価」すら、儚(はかな)いものなのかも知れません。
次代を担う人々に何を伝えていくかは、当時の現場で動いて、今、生を享(う)けている人間の責務です。
今週の花材は、南国の熱情と渓谷の涼風を象徴しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※来週の「理事長室からの花だより」は休載させていただきます。
8月21日(金)より再開いたします。
炎熱(えんねつ)の下の蝉時雨(せみしぐれ)、命の限りを尽くして鳴いています。
夾竹桃(キョウチクトウ)がその情景をより深くしています。
(vol.42 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=67)
音もなく我より去りしものなれど
書きて偲びぬ明日という字を
木村久夫
学徒出陣した学生が、戦犯として、理不尽な処刑を前にしての悲痛な叫びです。
戦後生まれの我々、作者と同年代の今の若者、真正面からこの歌を受け止め、考えなければなりません。
1つの言語、1つの国だけで独自の文明を確立しているのは、世界で、我が国だけです。
日本列島、人間の力が及ばない四季の移ろい、長い歴史のなか、度々(たびたび)発生している天変地異、人々はそこから自然への畏怖(いふ)を学びました。
様々な地域から渡来して共生してきた営み、自然に寄り添い、譲り合って生きる術(すべ)を身につけました。
“諦観”、“折り合い”、“律儀”、古来、日本人が育(はぐく)んできた知恵です。
海外との交流が当たり前の今、日本人は個の主張が弱いゆえに、時にそれが弱みとなります。
沈黙は金、相手も自分と同じように考えているという勝手な思い込み(察し)が、後悔を招くこともあります。
利益の為に、成長を求め、絶えず拡大の力が働く経済活動の今という時代、価値基準が、国により、世代によっても違う、を実感します。
こんな世相だからこそ、長い時を掛けて培ってきた、日本人の特質を大切にする必要があります。
激しさを増す万物流転の今、前号(vol.327)に記したように、人の一生、ある人の生涯への評価は、「評価は他人がする」という当たり前の事に、今、心許(こころもと)ない思いがします。
(vol.327 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=366)
結局、「他人の評価はどうでも良くて、自身が自分の生き方や人生に納得しているかどうか」ではないかと。
逃げ様の無い、瞬時の判断が求められている時、自分はぶれなかったか、その後もぶれずに生きたか、この世を去る時、自らが自分の心に問い掛ける筈だからです。
本学は、約5年前、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故に際して、いきなり、医療の最前線に立たされました。
当時、混乱は極まり、情報は殆(ほと)んど入らず、入ってくる僅かな情報も錯綜(さくそう)していました。
現場は、真に修羅の場です。「地獄への道は善意で舗装されている」という箴言(しんげん)を実感しました。
(学長からの手紙番外編、臨床整形外科46(6):586,2011
http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/extra013.html)
人間の偉大さ、愚かさ、勁(つよ)さ、弱さもみました。
大分(だいぶ)日日(ひにち)が経ってから、当時、それぞれの地域で、人々がどのような状況に置かれていたかについて情報が出揃ってきました。
時系列で、俯瞰(ふかん)的に当時を知ることが出来るようになったのは、そんなに昔のことではありません。
当時、すべての県民や関係者は、各々(おのおの)が置かれている状況が分かっていた、という誤解を前提に、場違いな非難や批判、的外れな提言が、時々みられます。
その時、本県では、誰もが、何も、分からないまま、自らの決断を信じて行動していたというのが実態です。
しかも、暫(しばらく)くの間、輸送手段すら得られず、支援の車両は県境までしか来てはくれませんでした。
その後、“放射線は伝染する”、“福島県民は伝染病の源”のような酷(むご)い場面の出現、歴史上の事実です。
当時の現場の実体を、有りのままに次代に伝えていかないと、誤った教訓が独り歩きしてしまいます。
当時の混迷振りは、現場に居合わせた人間しか分からない、という苦い思いがあります。
「時の評価」すら、儚(はかな)いものなのかも知れません。
次代を担う人々に何を伝えていくかは、当時の現場で動いて、今、生を享(う)けている人間の責務です。
今週の花材は、南国の熱情と渓谷の涼風を象徴しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※来週の「理事長室からの花だより」は休載させていただきます。
8月21日(金)より再開いたします。
今週の花
【理事長室】
■ピンクッション〔サクセション〕 ヤマモガ
シ科/常緑低木/《名前の由来》マチ針を刺
した針山のような花姿から/マチ針のように見
えるひとつひとつが雄しべ。独特な花姿と南国
らしい原色が特徴の個性的な花。
■クルクマ〔エメラルドチョコゼブラ〕 ショウ
ガ科/球根植物/幾重にも重なり花弁のよう
に見える部分は苞で、その中に小さな花が咲
く。花自体は目立たず、主に苞を鑑賞する。
「チョコゼブラ」は緑と茶色で、特に花持ちが良
い品種。
■トルコギキョウ〔セルジュハート〕 リンド
ウ科/多年草/アメリカ原産で、当初は紫色
の一重咲のみ。1970年代以降に多彩な花
色や花形が楽しめるようになる。現在出回って
いる品種の大半が日本産。「セルジュハート」
はフリンジ八重咲のアプリコットカラー。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン玉
のように真ん丸に開花する菊。日持ちのする
菊の中でも、特に長く楽しめる。可愛らしい花
形で、仏事に限らずブーケやアレンジに人気。
■ドラセナ 〔コーディラインファンテングリー
ン〕 リュウゼツラン科/シャープな細長い
葉が特徴。「ファンテングリーン」は葉の縁に赤
色が入る。縁に白色が入る「ファンテンホワイ
ト」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3281.jpg
■ピンクッション〔サクセション〕 ヤマモガ
シ科/常緑低木/《名前の由来》マチ針を刺
した針山のような花姿から/マチ針のように見
えるひとつひとつが雄しべ。独特な花姿と南国
らしい原色が特徴の個性的な花。
■クルクマ〔エメラルドチョコゼブラ〕 ショウ
ガ科/球根植物/幾重にも重なり花弁のよう
に見える部分は苞で、その中に小さな花が咲
く。花自体は目立たず、主に苞を鑑賞する。
「チョコゼブラ」は緑と茶色で、特に花持ちが良
い品種。
■トルコギキョウ〔セルジュハート〕 リンド
ウ科/多年草/アメリカ原産で、当初は紫色
の一重咲のみ。1970年代以降に多彩な花
色や花形が楽しめるようになる。現在出回って
いる品種の大半が日本産。「セルジュハート」
はフリンジ八重咲のアプリコットカラー。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン玉
のように真ん丸に開花する菊。日持ちのする
菊の中でも、特に長く楽しめる。可愛らしい花
形で、仏事に限らずブーケやアレンジに人気。
■ドラセナ 〔コーディラインファンテングリー
ン〕 リュウゼツラン科/シャープな細長い
葉が特徴。「ファンテングリーン」は葉の縁に赤
色が入る。縁に白色が入る「ファンテンホワイ
ト」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3281.jpg
【秘書室】
■トルコギキョウ〔ラパン〕 (理事長室と同花材)
「ラパン」は白色の中輪八重咲き。
■ブバルディア アカネ科/常緑低木/《名前の由来》
ルイ13世の侍医でフランス王室庭園長のブバールの名か
ら/4丁の花弁で十字型に咲く筒状花。枝先に多数の花
を房状に開花させる。白「ホワイトシュープリーム」、緑「グ
リーンサマー」
■セダム ベンケイソウ科/600種以上ある多肉植
物。肉厚の葉をもち、耐寒性耐暑性があり乾燥にも強い。
切花で流通する花が咲く品種も、丈夫で長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3282.jpg
■トルコギキョウ〔ラパン〕 (理事長室と同花材)
「ラパン」は白色の中輪八重咲き。
■ブバルディア アカネ科/常緑低木/《名前の由来》
ルイ13世の侍医でフランス王室庭園長のブバールの名か
ら/4丁の花弁で十字型に咲く筒状花。枝先に多数の花
を房状に開花させる。白「ホワイトシュープリーム」、緑「グ
リーンサマー」
■セダム ベンケイソウ科/600種以上ある多肉植
物。肉厚の葉をもち、耐寒性耐暑性があり乾燥にも強い。
切花で流通する花が咲く品種も、丈夫で長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3282.jpg