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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.331 − 訪 (おとずれる ) −
長月、二百十日(にひゃくとおか)、“太陽の季節”は既に過ぎ、山河には衰えが色濃くなってきます。
一雨毎(ひとあめごと)の秋です。朝晩、時に肌寒く、例年より早く秋の装いが濃くなっています。
夕暮れ時、昼の光が早く薄れゆき、風景から色が消えてゆきます。
早稲田(わせだ)は、早や、刈り取りに入ります。
秋近し電球の球のぬくもりの
さはれば指の皮膚に親しき
石川啄木
電球のぬくもり、この歌を実感できるのはどの年齢層まででしょうか。
昭和は遠くなりにけり、です。
海に囲まれている我が国、多くの港町が時の移ろいのなか、登場しては消え去っています。
内陸の田舎で育った己には、子供の頃、港町は外国でした。海と海辺の町は、今も憧れです。
哀愁を感じさせる港町に惹かれて、国内外の港町を訪ね歩いています。
ニシン漁で栄えた江差港(北海道)、築地塀越しに寺院と教会が一つの風景に同居している平戸(長崎県)が、若い頃の旅で心に残っています。
(vol.299 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=336)
安東水軍(あんどうすいぐん)と大津波で往時の面影を失い、今はシジミで名高い十三湊(じゅうさんみなと・青森県)は、無言の裡(うち)に、諸行無常(しょぎょうむじょう)の理(ことわり)を諭(さと)してくれます。
五能線と夕陽、今は観光地として知られている深浦(青森県)、風待ち港として栄えた安良里(静岡県)、遊郭の建物に栄華の面影を残している室津(むろつ・兵庫県)は、移ろいゆく時の儚さと自らを振り返るに相応(ふさわ)しい港町です。
朝鮮来聘使(ちょうせんらいへいし)の歴史を今に伝え、風光明媚な牛窓(岡山県)、鞆(とも・広島県)は、朝鮮半島と我が国との古くからの交流を今に伝えています。
穏やかな港町で、今は烏賊(イカ)漁で名高く、草原が印象に残っている呼子(よぶこ・佐賀県)、南蛮貿易から石炭積み出し港として栄えた口之津(長崎県)、鉄道の開通で昔の町並みが今に残った平潟(茨城県)、密貿易で栄えた坊津(ぼうのつ・鹿児島県)、一時、幕末の歴史に登場する下田(静岡県)は、明るい寂れで、旅人の心を慰めてくれます。
今も栄えている港もあります。只、多くの港で、往時を偲ばせるのは、残っている家並(いえなみ)と地勢に添った道、そして街の雰囲気です。
往時の賑わい振り、役割を終えて静かに佇んでいる今、この対比、現代に生きる人間は、そこに王義之の嘆惜(たんせき)をみます。
(vol.300 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=337)
今も、時の移ろいは港の風景を変えている筈です。
“時代とともに変わる”は、食する魚も例外ではありません。戦後から高度成長期、普通の家庭には冷蔵庫が有りません。田舎では、当時、刺身は晴れ(ハレ)の御馳走です。
(vol.319 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=358)
刺身は、鮪(マグロ)などより、皮の付いた鰹(カツオ)が御馳走、と思われていた記憶があります。只、子供にとって、身についている皮は固く、苦手でした。鰹の叩きは口にしたことがありませんでした。この料理法は、保存の利かない時代の先人の知恵です。
鮪を“猫跨ぎ”(ねこまたぎ)と呼ぶ言葉がまだ残っていました。只、田舎では鮪は手に入らなかったというだけの事かも知れません。
方言でサガンボ、鮫の切身が、度々(たびたび)、食卓に上っていました。淡泊な白身の魚です。煮付けで供されていたように思いますが、今や朧げ(おぼろげ)です。子供には御馳走でした。
冷蔵庫が普及していなかった時代、この魚は他の魚より長く鮮度を保つということで、広く流通していました。値段が安いという事もあったのかも知れません。
この魚も、今は殆(ほと)んど食卓に上りません。世の中が豊かになったせいでしょうか、或いは人々の嗜好の変化でしょうか。
今週の花材は、里の秋と都会の秋を象徴しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
一雨毎(ひとあめごと)の秋です。朝晩、時に肌寒く、例年より早く秋の装いが濃くなっています。
夕暮れ時、昼の光が早く薄れゆき、風景から色が消えてゆきます。
早稲田(わせだ)は、早や、刈り取りに入ります。
秋近し電球の球のぬくもりの
さはれば指の皮膚に親しき
石川啄木
電球のぬくもり、この歌を実感できるのはどの年齢層まででしょうか。
昭和は遠くなりにけり、です。
海に囲まれている我が国、多くの港町が時の移ろいのなか、登場しては消え去っています。
内陸の田舎で育った己には、子供の頃、港町は外国でした。海と海辺の町は、今も憧れです。
哀愁を感じさせる港町に惹かれて、国内外の港町を訪ね歩いています。
ニシン漁で栄えた江差港(北海道)、築地塀越しに寺院と教会が一つの風景に同居している平戸(長崎県)が、若い頃の旅で心に残っています。
(vol.299 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=336)
安東水軍(あんどうすいぐん)と大津波で往時の面影を失い、今はシジミで名高い十三湊(じゅうさんみなと・青森県)は、無言の裡(うち)に、諸行無常(しょぎょうむじょう)の理(ことわり)を諭(さと)してくれます。
五能線と夕陽、今は観光地として知られている深浦(青森県)、風待ち港として栄えた安良里(静岡県)、遊郭の建物に栄華の面影を残している室津(むろつ・兵庫県)は、移ろいゆく時の儚さと自らを振り返るに相応(ふさわ)しい港町です。
朝鮮来聘使(ちょうせんらいへいし)の歴史を今に伝え、風光明媚な牛窓(岡山県)、鞆(とも・広島県)は、朝鮮半島と我が国との古くからの交流を今に伝えています。
穏やかな港町で、今は烏賊(イカ)漁で名高く、草原が印象に残っている呼子(よぶこ・佐賀県)、南蛮貿易から石炭積み出し港として栄えた口之津(長崎県)、鉄道の開通で昔の町並みが今に残った平潟(茨城県)、密貿易で栄えた坊津(ぼうのつ・鹿児島県)、一時、幕末の歴史に登場する下田(静岡県)は、明るい寂れで、旅人の心を慰めてくれます。
今も栄えている港もあります。只、多くの港で、往時を偲ばせるのは、残っている家並(いえなみ)と地勢に添った道、そして街の雰囲気です。
往時の賑わい振り、役割を終えて静かに佇んでいる今、この対比、現代に生きる人間は、そこに王義之の嘆惜(たんせき)をみます。
(vol.300 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=337)
今も、時の移ろいは港の風景を変えている筈です。
“時代とともに変わる”は、食する魚も例外ではありません。戦後から高度成長期、普通の家庭には冷蔵庫が有りません。田舎では、当時、刺身は晴れ(ハレ)の御馳走です。
(vol.319 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=358)
刺身は、鮪(マグロ)などより、皮の付いた鰹(カツオ)が御馳走、と思われていた記憶があります。只、子供にとって、身についている皮は固く、苦手でした。鰹の叩きは口にしたことがありませんでした。この料理法は、保存の利かない時代の先人の知恵です。
鮪を“猫跨ぎ”(ねこまたぎ)と呼ぶ言葉がまだ残っていました。只、田舎では鮪は手に入らなかったというだけの事かも知れません。
方言でサガンボ、鮫の切身が、度々(たびたび)、食卓に上っていました。淡泊な白身の魚です。煮付けで供されていたように思いますが、今や朧げ(おぼろげ)です。子供には御馳走でした。
冷蔵庫が普及していなかった時代、この魚は他の魚より長く鮮度を保つということで、広く流通していました。値段が安いという事もあったのかも知れません。
この魚も、今は殆(ほと)んど食卓に上りません。世の中が豊かになったせいでしょうか、或いは人々の嗜好の変化でしょうか。
今週の花材は、里の秋と都会の秋を象徴しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■栗 ブナ科/落葉高木/5〜6月頃に黄
白っぽい芳香のある穂状の花が咲く。秋に実
が成熟するとイガが裂けて中から硬い実があ
らわれる。材は堅く耐久性があり腐りにくいの
で、建築材や家具などに利用される。
■ユリ〔ブーレスカ〕 ユリ科/球根植物/
大きく優雅な花姿と芳香が特徴のオリエンタ
ルハイブリッド種。「ブーレスカ」は淡いピンク。
■ケイトウ〔ボンベイグリーン〕 ヒユ科/
一年草/花期は6〜9月で、赤やピンク、オレ
ンジ等の花穂を付ける。「ボンベイケイトウ」は
扇状の花穂をつける。他に花穂が丸い「久留
米ケイトウ」や羽のような「羽毛ケイトウ」なども
ある。
■リンドウ〔みやこ〕 リンドウ科/多年草
/秋の代表花で野草として古くから親しまれ
る。花色は青紫色を中心に、白やピンク、複色
もある。薬草としても知られ、根や茎に健胃作
用がある。
■ピンポン菊〔ボンボンダーク〕 キク科/
多年草/真ん丸に開花する可愛らしい菊。花
持ちの良い菊の中でも特に長く楽しめる。
■ハイビスカスローゼル アオイ科/非耐寒
性常緑低木/一般的なハイビスカスとは異な
り、萼が肥大する食用種。ハイビスカスティー
の原料でジャムやソースなどにも使用される。
花期は秋で、花後に赤暗色の実をつける。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕 リュ
ウゼツラン科/日本で流通する観葉植物の代
表種。「カプチーノ」は赤黒の葉の縁に白色が
入る品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3311.jpg
■栗 ブナ科/落葉高木/5〜6月頃に黄
白っぽい芳香のある穂状の花が咲く。秋に実
が成熟するとイガが裂けて中から硬い実があ
らわれる。材は堅く耐久性があり腐りにくいの
で、建築材や家具などに利用される。
■ユリ〔ブーレスカ〕 ユリ科/球根植物/
大きく優雅な花姿と芳香が特徴のオリエンタ
ルハイブリッド種。「ブーレスカ」は淡いピンク。
■ケイトウ〔ボンベイグリーン〕 ヒユ科/
一年草/花期は6〜9月で、赤やピンク、オレ
ンジ等の花穂を付ける。「ボンベイケイトウ」は
扇状の花穂をつける。他に花穂が丸い「久留
米ケイトウ」や羽のような「羽毛ケイトウ」なども
ある。
■リンドウ〔みやこ〕 リンドウ科/多年草
/秋の代表花で野草として古くから親しまれ
る。花色は青紫色を中心に、白やピンク、複色
もある。薬草としても知られ、根や茎に健胃作
用がある。
■ピンポン菊〔ボンボンダーク〕 キク科/
多年草/真ん丸に開花する可愛らしい菊。花
持ちの良い菊の中でも特に長く楽しめる。
■ハイビスカスローゼル アオイ科/非耐寒
性常緑低木/一般的なハイビスカスとは異な
り、萼が肥大する食用種。ハイビスカスティー
の原料でジャムやソースなどにも使用される。
花期は秋で、花後に赤暗色の実をつける。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕 リュ
ウゼツラン科/日本で流通する観葉植物の代
表種。「カプチーノ」は赤黒の葉の縁に白色が
入る品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3311.jpg
【秘書室】
■風船唐綿(フウセントウワタ) ガガイモ科/花期は夏で小さな白い
花が咲く。トゲトゲした紙風船のような実を鑑賞。晩秋に実が熟すと、パ
カッと割れて綿毛と種子があらわれる。
■モカラ〔カリプソ〕 ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケントルムの3
種の蘭を交配した人工種。鮮やかな花色が豊富な南国の花。「カリプソ」
は鮮やかなピンク。
■アンスリュウム〔みどり〕 サトイモ科/常緑多年草/ロウ細工のよ
うな光沢があり、造花と見間違うような花。花弁のように見える部分は苞
で、棒状の部分が花。主に苞を鑑賞するため、とても長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3312.jpg
■風船唐綿(フウセントウワタ) ガガイモ科/花期は夏で小さな白い
花が咲く。トゲトゲした紙風船のような実を鑑賞。晩秋に実が熟すと、パ
カッと割れて綿毛と種子があらわれる。
■モカラ〔カリプソ〕 ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケントルムの3
種の蘭を交配した人工種。鮮やかな花色が豊富な南国の花。「カリプソ」
は鮮やかなピンク。
■アンスリュウム〔みどり〕 サトイモ科/常緑多年草/ロウ細工のよ
うな光沢があり、造花と見間違うような花。花弁のように見える部分は苞
で、棒状の部分が花。主に苞を鑑賞するため、とても長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3312.jpg