HOME > 理事長室からの花だより
理事長室からの花だより
新着 30 件
理事長室からの花だより
vol.334 − 護 (まもる) −
10月、後(のち)の衣更(ころもがえ)の時季です。着物は、袷(あわせ)です。
蕎麦(ソバ)の花の白、稲穂の黄金色(こがねいろ)の対比が終わり、大地は秋桜(コスモス)と稲穂の組み合わせです。樹々、土手のオオイヌノフグリ、秋桜の上を風が吹き渡り、その戦(そよ)ぎが風情(ふぜい)をより深くします。
昼下がりの陽射しは優しげです。
黄金色の月、中秋の名月は9月27日です。夜半(よわ)、夜更(よふけ)、そして、暁方(あかつきがた)と、刻々の美しさを楽しめます。
季節の風情として月を楽しんでいる今、灯(あかり)の無かった時代は、月は夜道の灯としてなど、暮らしや営(いとな)みでの役割は今より遥かに大きかった筈(はず)です。
変わる事のない月の巡り、変わる世相、移りゆく人生、立場、年齢により、月に寄せる想いは人間(ヒト)、様々です。
あめつちに わが悲しみと月光と
あまねき秋の夜となりにけり
石川啄木
この歌には、秋の澄み切った大気のもと、若者の希望や不安が交錯する響きを感じます。
憧れの海、海上の中秋の名月、未だ経験ありません。
(vol.159 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=193)
海は絶対的な防禦(ぼうぎょ)の砦(とりで)です。日本は、古来、多くの自然の災厄に遭っています。
只、大陸での民族の存亡を賭けた戦いは、蒙古襲来を除いて、経験していません。
最強の軍事国家を経て、江戸時代の鎖国は、平和をもたらしました。
明治には、欧米の植民地化を免(まぬが)れる為に、政府は富国強兵策で、中央集権化を図りました。
戦後は、政府の傾斜生産方式により、速(すみ)やかな復興を果たしました。
大都市の人口の比率、欧米諸国では、第二次大戦以降、今に至るまで変わっていません。
一方、我が国は東京への一極集中が進み、今もその潮流は止まっていません。
歴史を俯瞰(ふかん)してみると、国柄や民族の特徴は、成るべくしてなっていることが理解できます。
地球規模での経済活動は、今までに無く、海や国境の壁を低くしています。
民族や国の帰属意識は、却って、高まっています。民族間の紛争は、その象徴です。
日本は、1言語1国で独立した文明圏を構成している特異な国です。
(vol.178 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=212)
(vol.259 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=296)
(vol.328 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=367)
「お前の言いたい事は聞かなくても分かる」、「そこまで言うな」との言葉に、「沈黙は金」という日本人の生き方が顕(あらわ)れています。
歴史は、己には理解出来ない、異質なモノとの出会いから新しい何かが生まれることも教えてくれています。
出会いの大切さがここにあります。
こんな時代だからこそ、自らの文化を大切にする必要があります。今は亡き敬愛する医師に「急激なグローバル化の今、日本は自らの文化をどう守っていくのか」、と真顔で尋ねられたことがあります。
自らを見詰め直し、それから、お互いを学んで生きていく必要があります。学び合う知恵は、歴史が我々日本人に授けてくれた財産です。
生誕200年記念「伊豆の長八」展、この企画は二度と出会わないだろうと、足を運びました。
幕末から明治にかけて、天才と謳(うた)われた左官です。確かな造型、妖艶な女性像の雰囲気が鏝絵(こてえ)から醸(かも)し出されています。
感銘を受けたのは壁に刻み込んだ漆喰(しっくい)の「漣(さざなみ)の屏風」です。今は彫り込まれた跡だけが残っている造型と情感は、福田平八郎の「漣」と同じです。
現代の建築から土壁がなくなりつつあり、左官の技術の継承が危惧されます。
幸い、現代の左官の名工達、仁五(じんご・後藤五郎)、久住有生(くすみなおき)、挾土秀平(はさどしゅうへい)等が居ます。彼等の活躍が、再び注目を浴びつつあるのは、漆喰壁の技の継承や発展にとって良い事です。
今週の花材は、両室とも、秋の静やかなる華やぎです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
蕎麦(ソバ)の花の白、稲穂の黄金色(こがねいろ)の対比が終わり、大地は秋桜(コスモス)と稲穂の組み合わせです。樹々、土手のオオイヌノフグリ、秋桜の上を風が吹き渡り、その戦(そよ)ぎが風情(ふぜい)をより深くします。
昼下がりの陽射しは優しげです。
黄金色の月、中秋の名月は9月27日です。夜半(よわ)、夜更(よふけ)、そして、暁方(あかつきがた)と、刻々の美しさを楽しめます。
季節の風情として月を楽しんでいる今、灯(あかり)の無かった時代は、月は夜道の灯としてなど、暮らしや営(いとな)みでの役割は今より遥かに大きかった筈(はず)です。
変わる事のない月の巡り、変わる世相、移りゆく人生、立場、年齢により、月に寄せる想いは人間(ヒト)、様々です。
あめつちに わが悲しみと月光と
あまねき秋の夜となりにけり
石川啄木
この歌には、秋の澄み切った大気のもと、若者の希望や不安が交錯する響きを感じます。
憧れの海、海上の中秋の名月、未だ経験ありません。
(vol.159 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=193)
海は絶対的な防禦(ぼうぎょ)の砦(とりで)です。日本は、古来、多くの自然の災厄に遭っています。
只、大陸での民族の存亡を賭けた戦いは、蒙古襲来を除いて、経験していません。
最強の軍事国家を経て、江戸時代の鎖国は、平和をもたらしました。
明治には、欧米の植民地化を免(まぬが)れる為に、政府は富国強兵策で、中央集権化を図りました。
戦後は、政府の傾斜生産方式により、速(すみ)やかな復興を果たしました。
大都市の人口の比率、欧米諸国では、第二次大戦以降、今に至るまで変わっていません。
一方、我が国は東京への一極集中が進み、今もその潮流は止まっていません。
歴史を俯瞰(ふかん)してみると、国柄や民族の特徴は、成るべくしてなっていることが理解できます。
地球規模での経済活動は、今までに無く、海や国境の壁を低くしています。
民族や国の帰属意識は、却って、高まっています。民族間の紛争は、その象徴です。
日本は、1言語1国で独立した文明圏を構成している特異な国です。
(vol.178 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=212)
(vol.259 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=296)
(vol.328 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=367)
「お前の言いたい事は聞かなくても分かる」、「そこまで言うな」との言葉に、「沈黙は金」という日本人の生き方が顕(あらわ)れています。
歴史は、己には理解出来ない、異質なモノとの出会いから新しい何かが生まれることも教えてくれています。
出会いの大切さがここにあります。
こんな時代だからこそ、自らの文化を大切にする必要があります。今は亡き敬愛する医師に「急激なグローバル化の今、日本は自らの文化をどう守っていくのか」、と真顔で尋ねられたことがあります。
自らを見詰め直し、それから、お互いを学んで生きていく必要があります。学び合う知恵は、歴史が我々日本人に授けてくれた財産です。
生誕200年記念「伊豆の長八」展、この企画は二度と出会わないだろうと、足を運びました。
幕末から明治にかけて、天才と謳(うた)われた左官です。確かな造型、妖艶な女性像の雰囲気が鏝絵(こてえ)から醸(かも)し出されています。
感銘を受けたのは壁に刻み込んだ漆喰(しっくい)の「漣(さざなみ)の屏風」です。今は彫り込まれた跡だけが残っている造型と情感は、福田平八郎の「漣」と同じです。
現代の建築から土壁がなくなりつつあり、左官の技術の継承が危惧されます。
幸い、現代の左官の名工達、仁五(じんご・後藤五郎)、久住有生(くすみなおき)、挾土秀平(はさどしゅうへい)等が居ます。彼等の活躍が、再び注目を浴びつつあるのは、漆喰壁の技の継承や発展にとって良い事です。
今週の花材は、両室とも、秋の静やかなる華やぎです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■木瓜〔ボケ〕 バラ科/落葉低木/《名前の由来》中国名の
木瓜(モッケ)から変化して“ボケ”。ウリのような大きな実をつける
ことから/6月頃に5〜6cmの実をつけ、果実酒や鎮痛剤の材料
となる。丸みを帯びた花が可愛らしく、庭木や盆栽でも人気。
■ホトトギス ユリ科/《名前の由来》花弁の斑点模様が鳥の
ホトトギスに似ていることから/山野草として人気があり、約20種
あるうちの10種が日本原産。趣がある渋い花で茶花でも人気。
■りんどう〔オータムピンクアシロ〕 リンドウ科/多年草/日本
の秋を代表する花で世界に400種。薬草としても知られ、根や茎
根に健胃作用がある。
■ダリア〔ムーンワルツ〕 キク科/多年草/品種がとても豊富
で、世界に3万種以上ある。花径が3cm程の極小輪から30cm以
上にもなる巨大輪まである。「ムーンワルツ」はピンクとオレンジの
複色。
■ユーカリ〔ポポラス〕 フトモモ科/常緑高木/コアラが食べる
木として有名。「ポポラス」は大きい丸葉が特徴の品種。
■トルコギキョウ〔パティオオレンジ〕 リンドウ科/多年草/花
の大きさや咲き方が多岐にわたり、品種がとても豊富。「パティオ
オレンジ」はピンクオレンジ系の八重咲。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3341.jpg
■木瓜〔ボケ〕 バラ科/落葉低木/《名前の由来》中国名の
木瓜(モッケ)から変化して“ボケ”。ウリのような大きな実をつける
ことから/6月頃に5〜6cmの実をつけ、果実酒や鎮痛剤の材料
となる。丸みを帯びた花が可愛らしく、庭木や盆栽でも人気。
■ホトトギス ユリ科/《名前の由来》花弁の斑点模様が鳥の
ホトトギスに似ていることから/山野草として人気があり、約20種
あるうちの10種が日本原産。趣がある渋い花で茶花でも人気。
■りんどう〔オータムピンクアシロ〕 リンドウ科/多年草/日本
の秋を代表する花で世界に400種。薬草としても知られ、根や茎
根に健胃作用がある。
■ダリア〔ムーンワルツ〕 キク科/多年草/品種がとても豊富
で、世界に3万種以上ある。花径が3cm程の極小輪から30cm以
上にもなる巨大輪まである。「ムーンワルツ」はピンクとオレンジの
複色。
■ユーカリ〔ポポラス〕 フトモモ科/常緑高木/コアラが食べる
木として有名。「ポポラス」は大きい丸葉が特徴の品種。
■トルコギキョウ〔パティオオレンジ〕 リンドウ科/多年草/花
の大きさや咲き方が多岐にわたり、品種がとても豊富。「パティオ
オレンジ」はピンクオレンジ系の八重咲。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3341.jpg
【秘書室】
■トウガラシ〔コニカルブラック〕 ナス科/一年草/観賞用のトウ
ガラシ。光沢のある丸みを帯びた真っ黒な実をつける。
■セダム〔オータムジョイ〕 ベンケイソウ科/600種以上ある多
肉植物の一種。肉厚な葉を持ち、耐寒性耐暑性に優れ乾燥にも強い。
■ポリポジュウム ウラボシ科/常緑シダ植物/タニワタリのよう
な葉の先端に切れ込みが入りうねる。海藻を思わせるような独特な
姿が魅力。
■アンスリュウム〔チアーズ〕 サトイモ科/常緑多年草/蝋細工
のような光沢があり、造花と見間違うような花。花弁のように見える
部分は苞で、棒状の部分が花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3342.jpg
■トウガラシ〔コニカルブラック〕 ナス科/一年草/観賞用のトウ
ガラシ。光沢のある丸みを帯びた真っ黒な実をつける。
■セダム〔オータムジョイ〕 ベンケイソウ科/600種以上ある多
肉植物の一種。肉厚な葉を持ち、耐寒性耐暑性に優れ乾燥にも強い。
■ポリポジュウム ウラボシ科/常緑シダ植物/タニワタリのよう
な葉の先端に切れ込みが入りうねる。海藻を思わせるような独特な
姿が魅力。
■アンスリュウム〔チアーズ〕 サトイモ科/常緑多年草/蝋細工
のような光沢があり、造花と見間違うような花。花弁のように見える
部分は苞で、棒状の部分が花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3342.jpg