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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.343 − 耽 (ふける) −
師走(しわす)です。
哀歓こもごもの1年の終わり、忙(せわ)しなさの中に、新たな年に希望を見い出す月でもあります。
この時季、日の入りが最も早くなります(3日〜11日)。「冬うらら」と氷雨(ひさめ)が交互に訪れます。
“巡る季節”のなか、毎年、同じ時、同じ様(よう)に行われる行事や風物詩は、“変わらない”からこそ、人々の心に平安を、社会に安寧をもたらします。
街は、クリスマスツリーや木々がイルミネーションで彩られています。LED照明の進歩で、暖色系の灯が心を暖めてくれます。
日本人は宗教に大(おお)らかです。この大らかさが宗教やイデオロギーへの寛容性に繋がっています。
今という時代、毎日、様々な厄介事(やっかいごと)に当たらなければなりません。そんな今だからこそ、“変わらないこと”が、愛(いと)おしくなります。
“時よ止まれ”(ゲーテ「ファウスト」)、師走の気持ちです。
大気が澄み、星がきれいです。北風がそれを際立たせています。
かぞふればわが身(み)につもる年月(としつき)を
おくりむかふとなにいそぐらむ
兼盛「和漢朗詠集」
夜半、机に向かい、倦(う)んで星を眺める時、己は今まで何をしてきたかと問われ、狼狽え(うろたえ)ます。
しみじみと見つめてあればただ一つ
ますぐに我に光る星あり
五島美代子
冴え冴えとした星空の下(もと)、子を亡くした母の気持ちを歌ったこの調べ、心に響きます。
この時季、花といえば、菊です。各地で菊の鑑賞会や大会が開催されています。
秋の土しづかに菊を咲かしめよ
天地(あめつち)澄むと思う朝なり
馬場あき子
只、江戸時代以来の熱狂的な愛し方は、失(う)せてしまったようにみえます。日比谷公園(東京)で開かれている「菊花まつり」も閑散としています。
完成し切った菊の造形は、今の感覚からすると余りにも、人工的、過剰装飾的で、現代の美的感覚にあわなくなってきているのでしょうか。むしろ、外国の人々が、菊栽培に関心を示しています。
そもそも“和”とは何でしょうか。
戦前からの長い歴史を有している根津美術館、我が国を代表する建築家である隈研吾氏の手に成(な)る展示棟を新たに纏(まと)い、敷地全体が和の美術館といった趣(おもむき)です。
ここを訪れる度、この疑問が脳裡を過(よぎ)ります。
財団創立75周年記念特別展の「根津青山の至宝」展、目を惹いたのが書です。
「無学祖元墨蹟」(むがくそげんぼくせき)、「宗峰妙超墨蹟」(しゅうほうみょうちょうぼくせき)、「一山一寧墨蹟」(いっさんいちねいぼくせき)、「明極楚俊墨蹟」(みんきそしゅんぼくせき)、何(いず)れも凛(りん)とした、そして確かな空気が伝わってきます。
伝 西行の「落葉色紙」、歴史上の人物と対面できます。
この稀代の蒐集者(しゅうしゅうしゃ)、時とともに、中国の完璧、堅牢な“中華の美”から、疵(きず)、染み(しみ)、割れ、歪(ゆがみ)、非対称、といった“和の美”に関心が移っていったようにもみえます。
古くは“西から”朝鮮半島を経由して中国から文物(ぶんぶつ)の流入がありました。明治維新後は“海(洋)を越えて”、欧州や米国から強く影響を受けました。
洋という字の語源と齟齬(そご)を来(きた)すのは承知のうえで、独断の答です。自然観を大切にしている日本列島を舞台にして、古今の“西洋文化”が融合して発展したのが“和”ではないかと。
こんな答えが浮かぶのが根津美術館です。
この“和”の文化、不変ではありません。時代とともに変わってきています。現代の人々が、和服で過ごす、正座やあぐらで座る、火鉢(ひばち)で暖(だん)を取る、そんな生活に耐えられるとも思えません。
これからも“和の文化”は不断に、変化し続けていく筈(はず)です。
今週の花は、花器と相俟(あいま)って、気品と静謐(せいひつ)が感じられます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
哀歓こもごもの1年の終わり、忙(せわ)しなさの中に、新たな年に希望を見い出す月でもあります。
この時季、日の入りが最も早くなります(3日〜11日)。「冬うらら」と氷雨(ひさめ)が交互に訪れます。
“巡る季節”のなか、毎年、同じ時、同じ様(よう)に行われる行事や風物詩は、“変わらない”からこそ、人々の心に平安を、社会に安寧をもたらします。
街は、クリスマスツリーや木々がイルミネーションで彩られています。LED照明の進歩で、暖色系の灯が心を暖めてくれます。
日本人は宗教に大(おお)らかです。この大らかさが宗教やイデオロギーへの寛容性に繋がっています。
今という時代、毎日、様々な厄介事(やっかいごと)に当たらなければなりません。そんな今だからこそ、“変わらないこと”が、愛(いと)おしくなります。
“時よ止まれ”(ゲーテ「ファウスト」)、師走の気持ちです。
大気が澄み、星がきれいです。北風がそれを際立たせています。
かぞふればわが身(み)につもる年月(としつき)を
おくりむかふとなにいそぐらむ
兼盛「和漢朗詠集」
夜半、机に向かい、倦(う)んで星を眺める時、己は今まで何をしてきたかと問われ、狼狽え(うろたえ)ます。
しみじみと見つめてあればただ一つ
ますぐに我に光る星あり
五島美代子
冴え冴えとした星空の下(もと)、子を亡くした母の気持ちを歌ったこの調べ、心に響きます。
この時季、花といえば、菊です。各地で菊の鑑賞会や大会が開催されています。
秋の土しづかに菊を咲かしめよ
天地(あめつち)澄むと思う朝なり
馬場あき子
只、江戸時代以来の熱狂的な愛し方は、失(う)せてしまったようにみえます。日比谷公園(東京)で開かれている「菊花まつり」も閑散としています。
完成し切った菊の造形は、今の感覚からすると余りにも、人工的、過剰装飾的で、現代の美的感覚にあわなくなってきているのでしょうか。むしろ、外国の人々が、菊栽培に関心を示しています。
そもそも“和”とは何でしょうか。
戦前からの長い歴史を有している根津美術館、我が国を代表する建築家である隈研吾氏の手に成(な)る展示棟を新たに纏(まと)い、敷地全体が和の美術館といった趣(おもむき)です。
ここを訪れる度、この疑問が脳裡を過(よぎ)ります。
財団創立75周年記念特別展の「根津青山の至宝」展、目を惹いたのが書です。
「無学祖元墨蹟」(むがくそげんぼくせき)、「宗峰妙超墨蹟」(しゅうほうみょうちょうぼくせき)、「一山一寧墨蹟」(いっさんいちねいぼくせき)、「明極楚俊墨蹟」(みんきそしゅんぼくせき)、何(いず)れも凛(りん)とした、そして確かな空気が伝わってきます。
伝 西行の「落葉色紙」、歴史上の人物と対面できます。
この稀代の蒐集者(しゅうしゅうしゃ)、時とともに、中国の完璧、堅牢な“中華の美”から、疵(きず)、染み(しみ)、割れ、歪(ゆがみ)、非対称、といった“和の美”に関心が移っていったようにもみえます。
古くは“西から”朝鮮半島を経由して中国から文物(ぶんぶつ)の流入がありました。明治維新後は“海(洋)を越えて”、欧州や米国から強く影響を受けました。
洋という字の語源と齟齬(そご)を来(きた)すのは承知のうえで、独断の答です。自然観を大切にしている日本列島を舞台にして、古今の“西洋文化”が融合して発展したのが“和”ではないかと。
こんな答えが浮かぶのが根津美術館です。
この“和”の文化、不変ではありません。時代とともに変わってきています。現代の人々が、和服で過ごす、正座やあぐらで座る、火鉢(ひばち)で暖(だん)を取る、そんな生活に耐えられるとも思えません。
これからも“和の文化”は不断に、変化し続けていく筈(はず)です。
今週の花は、花器と相俟(あいま)って、気品と静謐(せいひつ)が感じられます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■フリージア アヤメ科/球根植物/《名前の由来》発見
者の友人、ドイツ人医師フレーゼの名にちなんで/甘い香りが
特徴の春の花。花茎に8〜10輪の筒状花を付け、次々と開
花する。「アヌーク」白色一重咲、「マーキュリウス」白紫の複
色一重咲。
■バンダ ラン科/樹木や岩肌に根を張りつかせて育つ。
洋ランの中でも特異なブルー系の美しい花色。花弁は大きな
丸弁で網目模様が入る。
■てまり草 ナデシコ科/多年草/花はマリモや芝を思わ
せる独特な花姿。フサフサした部分は、花・雄しべ・雌しべが
萼片(がくへん)のように変化したもの。
■ピンポン菊〔ロリポップパープル〕 キク科/多年草/ピ
ンポン玉のように真ん丸に咲く菊。可愛らしさから、仏事祝事
問わず人気のある菊。
■バーゼリア〔ラヌギノーサ〕 ブルニア科/常緑低木/南
アフリカ原産のワイルドフラワー。枝の先端に球状の蕾を房状
に多数つける。「ラヌギノーサ」は赤茶色に色付く品種。
■ウラジロモミ マツ科/常緑高木/《名前の由来》モミに
似た姿で葉裏が白いことから/自然に円錐形に樹形が整い、
クリスマスツリーなどに利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3431.jpg
■フリージア アヤメ科/球根植物/《名前の由来》発見
者の友人、ドイツ人医師フレーゼの名にちなんで/甘い香りが
特徴の春の花。花茎に8〜10輪の筒状花を付け、次々と開
花する。「アヌーク」白色一重咲、「マーキュリウス」白紫の複
色一重咲。
■バンダ ラン科/樹木や岩肌に根を張りつかせて育つ。
洋ランの中でも特異なブルー系の美しい花色。花弁は大きな
丸弁で網目模様が入る。
■てまり草 ナデシコ科/多年草/花はマリモや芝を思わ
せる独特な花姿。フサフサした部分は、花・雄しべ・雌しべが
萼片(がくへん)のように変化したもの。
■ピンポン菊〔ロリポップパープル〕 キク科/多年草/ピ
ンポン玉のように真ん丸に咲く菊。可愛らしさから、仏事祝事
問わず人気のある菊。
■バーゼリア〔ラヌギノーサ〕 ブルニア科/常緑低木/南
アフリカ原産のワイルドフラワー。枝の先端に球状の蕾を房状
に多数つける。「ラヌギノーサ」は赤茶色に色付く品種。
■ウラジロモミ マツ科/常緑高木/《名前の由来》モミに
似た姿で葉裏が白いことから/自然に円錐形に樹形が整い、
クリスマスツリーなどに利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3431.jpg
【秘書室】
■カラー〔フロレックスゴールド〕 サトイモ科/球根植物
/《名前の由来》花形(苞)がワイシャツの襟に似ていること
から/花弁のように見える筒状の部分は苞で、その中の棒
状が花序。
■オーニソガラム〔サンデルシー〕 ユリ科/球根植物/
ヨーロッパ〜西アジア、アフリカに約100種。長い茎頂に6
片の星形の花を次々と円形状に咲かせる。
■ドラセナ〔マジナータマジェンダ〕 リュウゼツラン科/
常緑低木/細長い葉が放射状に広がるグリーン。 「マジナ
ータマジェンダ」は緑地に赤紫の覆輪斑(ふくりんふ)が幅広
く入る品種。
■フィロデンドロン〔ブラックカーディナル〕 サトイモ科/
常緑多年草/亜熱帯地方に約200種あり、光沢のある綺麗
な葉を持つ。「ブラックカーディナル」は黒みを帯びた暗赤色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3432.jpg
■カラー〔フロレックスゴールド〕 サトイモ科/球根植物
/《名前の由来》花形(苞)がワイシャツの襟に似ていること
から/花弁のように見える筒状の部分は苞で、その中の棒
状が花序。
■オーニソガラム〔サンデルシー〕 ユリ科/球根植物/
ヨーロッパ〜西アジア、アフリカに約100種。長い茎頂に6
片の星形の花を次々と円形状に咲かせる。
■ドラセナ〔マジナータマジェンダ〕 リュウゼツラン科/
常緑低木/細長い葉が放射状に広がるグリーン。 「マジナ
ータマジェンダ」は緑地に赤紫の覆輪斑(ふくりんふ)が幅広
く入る品種。
■フィロデンドロン〔ブラックカーディナル〕 サトイモ科/
常緑多年草/亜熱帯地方に約200種あり、光沢のある綺麗
な葉を持つ。「ブラックカーディナル」は黒みを帯びた暗赤色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3432.jpg