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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.348 − 捜 (さがす) −
年が明け、忙(せわ)しない日常が戻りました。
往来(おうらい)には“山茶花散らし(さざんかちらし)”、寒空のなか、水仙が健気(けなげ)に咲いています。
小学生の頃、正月を新暦と旧暦で2回していました。家では、旧暦でした。今も、“正月は春”という気分が抜けません。
この冬、初めての寒波、風花(かざはな)が舞っています。
出掛ける時は未だ明けやらず、帰る時は闇深く、家の中が寒いと、“孤独”や“老い”を考えてしまいます。
人間、“老い“は避けられません。
“どう生きるか”を考えさせられる光景を、時々、目にします。
休日、バス停での一場面です。
東京で暮らしている子どもに身を寄せて間もないであろう元気な高齢の女性に出会いました。
「コーヒーを2杯も飲んで、もう喫茶店には居られない」、「夕方まで家に戻れない。どこか時間を潰(つぶ)す所がないか」と問うのです。来客、子どもの行事とか、何か真直(まっす)ぐに家に戻れない理由があると察しました。直ぐに、迷わずに行ける公園やデパート、盛り場を考えました。しかし、「地下鉄には乗ったことがない」、「乗り換えは出来ない」とのことで、決め兼ねていました。
予定のある我が身、都会の真中(まんなか)で途方に暮れているこの女性の身を案じながら、後ろ髪を引かれる思いで、そこを去りました。
別な光景です。
アパートの中庭、ベンチに男性の老人が独(ひと)り、ぽつねんと座っていました。気になったので、時々目を遣(や)ると、3時間経ってもまだそこに座って居るのです。
それをみて、“残酷な孤独”を考えてしまいました。
子育てを終え、仕事を退(しりぞ)き、独りになった親、この方の子どもは、恐らく、良かれと思って、独りになった親を都会に引き取ったのです。
親にしてみれば、先の事を考えて、子どもの勧めに従ったのでしょう。しかし、親は、住み慣れた地域、友人や知人と切り離されて、大都会という慣れない環境に放り込まれてしまうのです。
仕事と家族を抱えている子どもの営みのなかで、“独り”の親の置かれている立場は、“序で”(ついで)、“二の次”になってしまいがちです。そこには、“老い”の成熟とは別の、“孤の哀しみ”があるようにみえます。
人間(ヒト)は、“独りの勁(つよ)さ”も、身に付ける必要があると感じました。
老いて尚、凛(りん)として生きるとは、
住する所なきを、まず花と知るべし
世阿弥「風姿花伝」
(vol.307 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=346)
老いても華(はな)であり続けるためには、立ち止まらないこと、過去にしがみつかないことです。
イタリア映画「山猫」で、
「繁栄を続けたいなら、変わらなければならない」(We must change to remain the same.)
時代の変化に立ちすくんでいる人々を励ます場面でのこの言葉、世阿弥のそれと同じです。
そして、子には、孤独な親の居心地を察する気持ちが求められます。
一方で、東京駅、日本橋口のコンコース(大通路)での光景です。
ここは、団体の待ち合わせの場になっています。連日、観光に出掛ける高齢者の団体が数多くみられます。
この差は、収入の格差、個人の性格、年齢の差、あるいはそれらの総和の結果なのでしょうか。
“老い”は誰にでも訪れます。その時、”老い“とどう折り合うかは、大切な課題です。
親は、そして子どもは、いつか迎えるこの状況にどう向き合うべきなのでしょうか、暫(しば)し考えさせられました。しかも、時とともに、親と子の立場は入れ変わるのです。
いつかは迎える老い、人生はこの絶えざる嘆惜(たんせき)の裡(うち)に過ぎてゆきます。
今週の花材は、山茱萸(サンシュユ)の色や姿形が早春を感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
往来(おうらい)には“山茶花散らし(さざんかちらし)”、寒空のなか、水仙が健気(けなげ)に咲いています。
小学生の頃、正月を新暦と旧暦で2回していました。家では、旧暦でした。今も、“正月は春”という気分が抜けません。
この冬、初めての寒波、風花(かざはな)が舞っています。
出掛ける時は未だ明けやらず、帰る時は闇深く、家の中が寒いと、“孤独”や“老い”を考えてしまいます。
人間、“老い“は避けられません。
“どう生きるか”を考えさせられる光景を、時々、目にします。
休日、バス停での一場面です。
東京で暮らしている子どもに身を寄せて間もないであろう元気な高齢の女性に出会いました。
「コーヒーを2杯も飲んで、もう喫茶店には居られない」、「夕方まで家に戻れない。どこか時間を潰(つぶ)す所がないか」と問うのです。来客、子どもの行事とか、何か真直(まっす)ぐに家に戻れない理由があると察しました。直ぐに、迷わずに行ける公園やデパート、盛り場を考えました。しかし、「地下鉄には乗ったことがない」、「乗り換えは出来ない」とのことで、決め兼ねていました。
予定のある我が身、都会の真中(まんなか)で途方に暮れているこの女性の身を案じながら、後ろ髪を引かれる思いで、そこを去りました。
別な光景です。
アパートの中庭、ベンチに男性の老人が独(ひと)り、ぽつねんと座っていました。気になったので、時々目を遣(や)ると、3時間経ってもまだそこに座って居るのです。
それをみて、“残酷な孤独”を考えてしまいました。
子育てを終え、仕事を退(しりぞ)き、独りになった親、この方の子どもは、恐らく、良かれと思って、独りになった親を都会に引き取ったのです。
親にしてみれば、先の事を考えて、子どもの勧めに従ったのでしょう。しかし、親は、住み慣れた地域、友人や知人と切り離されて、大都会という慣れない環境に放り込まれてしまうのです。
仕事と家族を抱えている子どもの営みのなかで、“独り”の親の置かれている立場は、“序で”(ついで)、“二の次”になってしまいがちです。そこには、“老い”の成熟とは別の、“孤の哀しみ”があるようにみえます。
人間(ヒト)は、“独りの勁(つよ)さ”も、身に付ける必要があると感じました。
老いて尚、凛(りん)として生きるとは、
住する所なきを、まず花と知るべし
世阿弥「風姿花伝」
(vol.307 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=346)
老いても華(はな)であり続けるためには、立ち止まらないこと、過去にしがみつかないことです。
イタリア映画「山猫」で、
「繁栄を続けたいなら、変わらなければならない」(We must change to remain the same.)
時代の変化に立ちすくんでいる人々を励ます場面でのこの言葉、世阿弥のそれと同じです。
そして、子には、孤独な親の居心地を察する気持ちが求められます。
一方で、東京駅、日本橋口のコンコース(大通路)での光景です。
ここは、団体の待ち合わせの場になっています。連日、観光に出掛ける高齢者の団体が数多くみられます。
この差は、収入の格差、個人の性格、年齢の差、あるいはそれらの総和の結果なのでしょうか。
“老い”は誰にでも訪れます。その時、”老い“とどう折り合うかは、大切な課題です。
親は、そして子どもは、いつか迎えるこの状況にどう向き合うべきなのでしょうか、暫(しば)し考えさせられました。しかも、時とともに、親と子の立場は入れ変わるのです。
いつかは迎える老い、人生はこの絶えざる嘆惜(たんせき)の裡(うち)に過ぎてゆきます。
今週の花材は、山茱萸(サンシュユ)の色や姿形が早春を感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■サンシュユ ミズキ科/落葉小高木/《名
前の由来》 中国名 「山茱萸」(シャンヂュユー)の
音読みから/葉が芽吹く前に、小さな黄色い花を
枝いっぱいに咲かせる。 “茱萸”とはグミのことを
指し、グミに似た果実をつける。春を告げる花木と
して親しまれる。
■LAユリ〔パピア〕 ユリ科/球根植物/鉄砲
百合とスカシユリの掛け合わせ品種。両種の良い
ところを持ち合わせた中輪咲のユリ。 茎が硬く病
気になりにくく、上向きに開花し花持ちが良い。
「パピア」は濃い黄色。
■アンスリュウム〔チアーズグリーン〕 サトイ
モ科/常緑多年草/ロウ細工のような光沢があ
り、造花と見間違うような花。花弁のようにみえる
団扇状の部分は苞で、棒状の部分が花序。主に
苞を鑑賞するため、非常に長く楽しめる。「チアー
ズグリーン」は淡いピンクと緑の複色。
■ダリア〔黒蝶〕(コクチョウ) キク科/多年草/
世界に3万種以上もあり、品種がとても豊富。一
重咲・八重咲の他、花弁が尖ったオーキッド咲や
花弁が波打つピオニー咲、ピンポン菊のようなボ
ール咲などもある。「黒蝶」は赤黒のシックな花色。
■モンステラ〔デリシオサ〕 サトイモ科/蔓性
植物/成長するにつれ葉に深い切れ込みや穴が
開くグリーン。独特の葉形が面白く、モチーフとして
も人気の熱帯植物。「デリシオサ」は葉長が1mに
もなる大型品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3481.jpg
■サンシュユ ミズキ科/落葉小高木/《名
前の由来》 中国名 「山茱萸」(シャンヂュユー)の
音読みから/葉が芽吹く前に、小さな黄色い花を
枝いっぱいに咲かせる。 “茱萸”とはグミのことを
指し、グミに似た果実をつける。春を告げる花木と
して親しまれる。
■LAユリ〔パピア〕 ユリ科/球根植物/鉄砲
百合とスカシユリの掛け合わせ品種。両種の良い
ところを持ち合わせた中輪咲のユリ。 茎が硬く病
気になりにくく、上向きに開花し花持ちが良い。
「パピア」は濃い黄色。
■アンスリュウム〔チアーズグリーン〕 サトイ
モ科/常緑多年草/ロウ細工のような光沢があ
り、造花と見間違うような花。花弁のようにみえる
団扇状の部分は苞で、棒状の部分が花序。主に
苞を鑑賞するため、非常に長く楽しめる。「チアー
ズグリーン」は淡いピンクと緑の複色。
■ダリア〔黒蝶〕(コクチョウ) キク科/多年草/
世界に3万種以上もあり、品種がとても豊富。一
重咲・八重咲の他、花弁が尖ったオーキッド咲や
花弁が波打つピオニー咲、ピンポン菊のようなボ
ール咲などもある。「黒蝶」は赤黒のシックな花色。
■モンステラ〔デリシオサ〕 サトイモ科/蔓性
植物/成長するにつれ葉に深い切れ込みや穴が
開くグリーン。独特の葉形が面白く、モチーフとして
も人気の熱帯植物。「デリシオサ」は葉長が1mに
もなる大型品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3481.jpg
【秘書室】
■エピデンドラム ラン科/非耐寒性常緑多年草/《名前の由
来》ギリシャ語の“epi”(上に)と“dendron”(木)から。本属が一般
的に着生蘭であることから/細く伸びた茎の先に小さな花が密集し
て半円形に開花する。花芽に中心に蕾をつくり次々と開花するため、
鑑賞期間が長い。
■ピンポン菊〔オペラピンク〕 キク科/多年草/一般的な大菊や
スプレー菊に比べ、花持ちが良く長く楽しめる。 「オペラ」シリーズは
ダリア似た姿のデコラ咲品種。 他に「オペラオレンジ」や「オペラベー
ジュ」等もある。
■ドラセナ〔サンデリアーナホワイト〕 リュウゼツラン科/笹のよう
な細長い葉とストライプの斑が特徴。 「ホワイト」の他に、黄味の強い
「ゴールド」や緑が濃い「バリケード」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3482.jpg
■エピデンドラム ラン科/非耐寒性常緑多年草/《名前の由
来》ギリシャ語の“epi”(上に)と“dendron”(木)から。本属が一般
的に着生蘭であることから/細く伸びた茎の先に小さな花が密集し
て半円形に開花する。花芽に中心に蕾をつくり次々と開花するため、
鑑賞期間が長い。
■ピンポン菊〔オペラピンク〕 キク科/多年草/一般的な大菊や
スプレー菊に比べ、花持ちが良く長く楽しめる。 「オペラ」シリーズは
ダリア似た姿のデコラ咲品種。 他に「オペラオレンジ」や「オペラベー
ジュ」等もある。
■ドラセナ〔サンデリアーナホワイト〕 リュウゼツラン科/笹のよう
な細長い葉とストライプの斑が特徴。 「ホワイト」の他に、黄味の強い
「ゴールド」や緑が濃い「バリケード」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3482.jpg