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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.350 − 繰 (くる) −
大寒、寒さ極(きわ)まるなか、“冬朝焼け”、“冬夕焼け”が華やかです。
一面の雪景色は、瞬(またた)く間に消えてしまいました。その後の青空は、幼き日、雪が降ると、その後に必ず訪れる青空を待っていた気持ちを思い出させてくれます。
雪へ雪ふるしづけさにをる
山頭火
降る雪は人間(ヒト)の心にまで静けさをもたらし、それが景色の静謐(せいひつ)さを、一層、際立たせてくれます。
日々利用している新幹線、東京駅近くでは、車窓からみると、高層ビルを覆っているガラスや鏡面仕上げの外壁が、往き交う列車を鏡のように映しています。
壁に映っている新幹線は、まるで、空中を浮遊している舟のようです。
乗っている者は、一瞬、異次元の世界に身を置いているような感覚に陥(おちい)ります。
心の片隅では、旧家に残されている、昔の製法で作られた歪みのあるガラスを描いてもいます。そこには、ガラスに映る景色に己の思い出を重ねているもう一人の自分が居ます。
(vol.318 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=357)
車窓からぼんやりと外を眺めているのが好きです。
風景が目の前を飛んでいきます。遠くの山河が一斉にこちらに向かい、あっという間もなく、形を変えて彼方へ去っていきます。
鏡のように乱反射している長く、広い川面(かわも)も、光の輝きを変えながら、一瞬のうちに近くに迫り、輝きを失って、穏やかな川に変わり、視界から遠ざかります。
この時季は、無音という“音”が響いている水墨画の情景をみることがあります。
飽くことなく観(み)ていると、いつの間にか眠りに落ちています。
己が入局したと同時に本学に赴任してこられた教授は、「新幹線が開通してからは、ウイスキーの小瓶一つ飲み終わらないうちに福島に着いてしまう」と嘆いていました。
このことを記憶の底から手繰り(たぐり)寄せて、奥会津の小さな病院に赴任していた時、浅草駅(東京都)から鬼怒川温泉駅(栃木県)までの約2時間、ウイスキーの小瓶とつまみを買って乗り込み、追体験したことがあります。
人生の絶えざる嘆惜(たんせき)の一コマです。
列車や車に乗っている時、思うことがあります。それは、車輪の存在です。
車輪を使わずに、船以外で、大量に、人や物を移動させることが出来る手段はありません。
如何(いか)に車輪の発明が偉大か、この事実をみても分かります。
恐らく、車輪は人類史上、最も重要な発明の一つです。
只、己には、車輪が回転していて、その上に載っている車体には何ら影響しない理屈が良く分かりません。車軸、軸受けなど、調べると出てきますが、恥ずかしながら理解出来ずにいます。
革命直後のルーマニア、講演の為に訪問した時の一コマです。
ブカレストの国際空港の前の道路で、荷車(にぐるま)を引いた馬が、乗用車に混じって、堂々と運搬手段の主役を演じているのです。驚きました。自動車の前、主たる移動・運搬手段が馬車であったことの何頼(なにより)の証明です。
映画「ベンハー」でみる限り、車輪の歴史は、相当、昔まで遡(さかのぼ)れます。タイヤ、空気入りタイヤの出現は19世紀も半ば過ぎです。
我が国に目を転ずると、海外とは異なった歴史を辿っていることが分かります。平安時代の絵巻にみられる牛車、侍の乗馬、そして江戸時代の駕籠(かご)といった流れでしょうか。
源平合戦では、騎馬が戦いの帰趨(きすう)を決しています。
何故、我が国で馬車に至らず、大八車止まりの車輪文化だったのでしょうか。
国土の大半を山地が占め、平坦な道路が殆(ほと)んどなかったことが理由なのでしょうか。謎の一つです。
今週の花材は、桜をはじめとした淡い暖色が早春の訪れを待つ気持ちを表わしています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
一面の雪景色は、瞬(またた)く間に消えてしまいました。その後の青空は、幼き日、雪が降ると、その後に必ず訪れる青空を待っていた気持ちを思い出させてくれます。
雪へ雪ふるしづけさにをる
山頭火
降る雪は人間(ヒト)の心にまで静けさをもたらし、それが景色の静謐(せいひつ)さを、一層、際立たせてくれます。
日々利用している新幹線、東京駅近くでは、車窓からみると、高層ビルを覆っているガラスや鏡面仕上げの外壁が、往き交う列車を鏡のように映しています。
壁に映っている新幹線は、まるで、空中を浮遊している舟のようです。
乗っている者は、一瞬、異次元の世界に身を置いているような感覚に陥(おちい)ります。
心の片隅では、旧家に残されている、昔の製法で作られた歪みのあるガラスを描いてもいます。そこには、ガラスに映る景色に己の思い出を重ねているもう一人の自分が居ます。
(vol.318 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=357)
車窓からぼんやりと外を眺めているのが好きです。
風景が目の前を飛んでいきます。遠くの山河が一斉にこちらに向かい、あっという間もなく、形を変えて彼方へ去っていきます。
鏡のように乱反射している長く、広い川面(かわも)も、光の輝きを変えながら、一瞬のうちに近くに迫り、輝きを失って、穏やかな川に変わり、視界から遠ざかります。
この時季は、無音という“音”が響いている水墨画の情景をみることがあります。
飽くことなく観(み)ていると、いつの間にか眠りに落ちています。
己が入局したと同時に本学に赴任してこられた教授は、「新幹線が開通してからは、ウイスキーの小瓶一つ飲み終わらないうちに福島に着いてしまう」と嘆いていました。
このことを記憶の底から手繰り(たぐり)寄せて、奥会津の小さな病院に赴任していた時、浅草駅(東京都)から鬼怒川温泉駅(栃木県)までの約2時間、ウイスキーの小瓶とつまみを買って乗り込み、追体験したことがあります。
人生の絶えざる嘆惜(たんせき)の一コマです。
列車や車に乗っている時、思うことがあります。それは、車輪の存在です。
車輪を使わずに、船以外で、大量に、人や物を移動させることが出来る手段はありません。
如何(いか)に車輪の発明が偉大か、この事実をみても分かります。
恐らく、車輪は人類史上、最も重要な発明の一つです。
只、己には、車輪が回転していて、その上に載っている車体には何ら影響しない理屈が良く分かりません。車軸、軸受けなど、調べると出てきますが、恥ずかしながら理解出来ずにいます。
革命直後のルーマニア、講演の為に訪問した時の一コマです。
ブカレストの国際空港の前の道路で、荷車(にぐるま)を引いた馬が、乗用車に混じって、堂々と運搬手段の主役を演じているのです。驚きました。自動車の前、主たる移動・運搬手段が馬車であったことの何頼(なにより)の証明です。
映画「ベンハー」でみる限り、車輪の歴史は、相当、昔まで遡(さかのぼ)れます。タイヤ、空気入りタイヤの出現は19世紀も半ば過ぎです。
我が国に目を転ずると、海外とは異なった歴史を辿っていることが分かります。平安時代の絵巻にみられる牛車、侍の乗馬、そして江戸時代の駕籠(かご)といった流れでしょうか。
源平合戦では、騎馬が戦いの帰趨(きすう)を決しています。
何故、我が国で馬車に至らず、大八車止まりの車輪文化だったのでしょうか。
国土の大半を山地が占め、平坦な道路が殆(ほと)んどなかったことが理由なのでしょうか。謎の一つです。
今週の花材は、桜をはじめとした淡い暖色が早春の訪れを待つ気持ちを表わしています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■桜〔オカメザクラ〕 バラ科/落葉高木/
古くから親しまれる春の代表樹。 「オカメザク
ラ」は「マメザクラ」と「カンヒザクラ」の雑種。薄
紅色の一重咲きで早咲き種。
■ピンポンマム キク科/多年草/ピンポ
ン玉のように真ん丸に開花する可愛い菊。 花
持ちのよい菊の中でも特に長く楽しめる。「ロリ
ポップパープル」「ロリポップピンク」「フィーリン
ググリーン」「フィーリングホワイト」4色を使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3501.jpg
■桜〔オカメザクラ〕 バラ科/落葉高木/
古くから親しまれる春の代表樹。 「オカメザク
ラ」は「マメザクラ」と「カンヒザクラ」の雑種。薄
紅色の一重咲きで早咲き種。
■ピンポンマム キク科/多年草/ピンポ
ン玉のように真ん丸に開花する可愛い菊。 花
持ちのよい菊の中でも特に長く楽しめる。「ロリ
ポップパープル」「ロリポップピンク」「フィーリン
ググリーン」「フィーリングホワイト」4色を使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3501.jpg
【秘書室】
■グラジオラス〔ミルカ〕 アヤメ科/球根植物/《名前の由来》葉の形
に由来し、ラテン語で「剣」を意味する“gladius”から/1000超の園芸品
種があり、花色がとても豊富。1m程の草丈で、漏斗状の花が花茎いっぱ
いに次々と開花する。「ミルカ」は綺麗な薄紫色。
■デルフィニュウム〔ベラドンナ・トリック〕 キンポウゲ科/多年草/長い
花穂に多数の小花を咲かせる豪華な花姿が特徴。花色はブルー系を中心
に、白やピンクもある。「ベラドンナ」は細い茎に一重の花をまばらにつけ、よ
く分岐する。「トリック」はやや落ち着きのある風合いの花色。
■ユーカリ〔銀丸葉ユーカリ〕 フトモモ科/常緑高木/オーストラリアの
森の4分の3がユーカリといわれ、約600種が分布。成長が早く、10年で2
0m程に育つ。「銀丸葉ユーカリ」は白銀色の綺麗な丸葉が特徴。芳香も強
く、サシェなどにも利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3502.jpg
■グラジオラス〔ミルカ〕 アヤメ科/球根植物/《名前の由来》葉の形
に由来し、ラテン語で「剣」を意味する“gladius”から/1000超の園芸品
種があり、花色がとても豊富。1m程の草丈で、漏斗状の花が花茎いっぱ
いに次々と開花する。「ミルカ」は綺麗な薄紫色。
■デルフィニュウム〔ベラドンナ・トリック〕 キンポウゲ科/多年草/長い
花穂に多数の小花を咲かせる豪華な花姿が特徴。花色はブルー系を中心
に、白やピンクもある。「ベラドンナ」は細い茎に一重の花をまばらにつけ、よ
く分岐する。「トリック」はやや落ち着きのある風合いの花色。
■ユーカリ〔銀丸葉ユーカリ〕 フトモモ科/常緑高木/オーストラリアの
森の4分の3がユーカリといわれ、約600種が分布。成長が早く、10年で2
0m程に育つ。「銀丸葉ユーカリ」は白銀色の綺麗な丸葉が特徴。芳香も強
く、サシェなどにも利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3502.jpg