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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.352 − 倣 (ならう) −
冷気、尚、肌に刺さるものの、高山(こうざん)の頂(いただき)には、「雪の果」(ゆきのはて)、残雪が光っています。
川に棲(す)む生き物達も、密やかな春の訪れを感じとって、動き出しているようです。
天地を吹き渡る冷たい風の中、池の中に置かれた岩や川の瀬に鷺(サギ)が佇(たたず)んでいます。
川風にもわずかながら温かさを感じます。早春を実感できるのももうすぐです
週末、都心の朝、足早に仕事先に向かっていると、潮の香りが届いてきました。
東風(こち)が運んでくれているのでしょうか。この時季、時々、潮の香りを味わいます。足を止め、空を見上げると、青空の下、白梅と紅梅が満開です。
払旦 梅花 一枝発す (ふったん ばいか いっしはっす)
融々 春気 茅茨に到る (ゆうゆう しゅんき ぼうしにいたる)
花有り 酒有り 吟詠有れば (はなあり さけあり ぎんえいあれば)
便ち是れ 書生 富貴の時なり (すなわちこれ しょせい ふうきのときなり)
祝允明(しゅく・いんめい)
年に一度でいいから、こんな場に我が身を置いてみたいものです。
日本の早春の兆(きざ)しに誘われて、再びの“和”です。
我が国は、様々な文化が西から、そして東から入って、この地で融合し、発展したものです。
(vol.308 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=347)
(vol.314 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=353)
(vol.343 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=383)
その間、明治維新と大東亜戦争での敗戦という劇的な変革を経て、現在に至っています。
「日本人だから、“和の文化”はよく知っている」、空気と同じ、自明(じめい)だと考えがちです。果たしてそうでしょうか。
浮世絵を最初に高く評価したのは、ヨーロッパに輸出する陶磁器を包んでいる紙に美を見い出した輸出先の人々です。
人気のある、有名な海外ブランドのバッグにみられるデザインは、元々は其(そ)の地に居たデザイナーが和服の柄や家紋にヒントを得たと言われています。
今、海外の三つ星レストランでの食後のティーサービスの器に“和”をみます。鉄が溶け出さないように内部をコーティングした、日本の小さな鉄瓶です。今や定番です。
建物の外観や内装、工芸品に和を感じる時、その作者が外国人であることは少なくありません。
戦後、新和風として今も話題に上るデザインがあります。
一つは、岐阜提灯(ぎふちょうちん)に手を入れたイサム・ノグチの「AKARI」シリーズです。
(vol.261 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=298)
提灯それ自体は、伝統的な暮らしの必需品です。それが、ちょっとした視点の転換で、“新たな和”が生み出されています。
もう一つは、今は販売されているかどうかは知りませんが、レイモンド・ローウィによる「ピース」という煙草の箱のデザインです。
この箱、一つひとつの意匠は“和”ではありません。しかし、全体としてみると典型的な、“新鮮な和”です。
この2つの作品、いずれも米国人の手によるものです。
こんなことを考えていると、日本人だから和の美や文化に詳しい、というのは“常識の嘘”です。だからこそ、文化の異なる海外の人々と交流することが大切なのです。
内に居ては当たり前で、何も感じていないモノやコトでも、外から我が国を観ている人々は、日本にしか無い、大切な何かが有ることを気付かせてくれます。
第三者の目、ということを考えていると“プロの罠”に思いが至ります。
複雑で高度な技能が求められる今という時代、一人ひとりがプロの職業人として仕事をしています。それだけに、時に、自分の視点でしか物事を考えなくなりがちです。
プロの人間は、時に、少し退(ひ)いて、俯瞰(ふかん)して物事を見つめることが大切です。“外からの和の発見”は、その事の大切さを教えてくれています。
今週の花材は、早や春の装いです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
川に棲(す)む生き物達も、密やかな春の訪れを感じとって、動き出しているようです。
天地を吹き渡る冷たい風の中、池の中に置かれた岩や川の瀬に鷺(サギ)が佇(たたず)んでいます。
川風にもわずかながら温かさを感じます。早春を実感できるのももうすぐです
週末、都心の朝、足早に仕事先に向かっていると、潮の香りが届いてきました。
東風(こち)が運んでくれているのでしょうか。この時季、時々、潮の香りを味わいます。足を止め、空を見上げると、青空の下、白梅と紅梅が満開です。
払旦 梅花 一枝発す (ふったん ばいか いっしはっす)
融々 春気 茅茨に到る (ゆうゆう しゅんき ぼうしにいたる)
花有り 酒有り 吟詠有れば (はなあり さけあり ぎんえいあれば)
便ち是れ 書生 富貴の時なり (すなわちこれ しょせい ふうきのときなり)
祝允明(しゅく・いんめい)
年に一度でいいから、こんな場に我が身を置いてみたいものです。
日本の早春の兆(きざ)しに誘われて、再びの“和”です。
我が国は、様々な文化が西から、そして東から入って、この地で融合し、発展したものです。
(vol.308 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=347)
(vol.314 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=353)
(vol.343 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=383)
その間、明治維新と大東亜戦争での敗戦という劇的な変革を経て、現在に至っています。
「日本人だから、“和の文化”はよく知っている」、空気と同じ、自明(じめい)だと考えがちです。果たしてそうでしょうか。
浮世絵を最初に高く評価したのは、ヨーロッパに輸出する陶磁器を包んでいる紙に美を見い出した輸出先の人々です。
人気のある、有名な海外ブランドのバッグにみられるデザインは、元々は其(そ)の地に居たデザイナーが和服の柄や家紋にヒントを得たと言われています。
今、海外の三つ星レストランでの食後のティーサービスの器に“和”をみます。鉄が溶け出さないように内部をコーティングした、日本の小さな鉄瓶です。今や定番です。
建物の外観や内装、工芸品に和を感じる時、その作者が外国人であることは少なくありません。
戦後、新和風として今も話題に上るデザインがあります。
一つは、岐阜提灯(ぎふちょうちん)に手を入れたイサム・ノグチの「AKARI」シリーズです。
(vol.261 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=298)
提灯それ自体は、伝統的な暮らしの必需品です。それが、ちょっとした視点の転換で、“新たな和”が生み出されています。
もう一つは、今は販売されているかどうかは知りませんが、レイモンド・ローウィによる「ピース」という煙草の箱のデザインです。
この箱、一つひとつの意匠は“和”ではありません。しかし、全体としてみると典型的な、“新鮮な和”です。
この2つの作品、いずれも米国人の手によるものです。
こんなことを考えていると、日本人だから和の美や文化に詳しい、というのは“常識の嘘”です。だからこそ、文化の異なる海外の人々と交流することが大切なのです。
内に居ては当たり前で、何も感じていないモノやコトでも、外から我が国を観ている人々は、日本にしか無い、大切な何かが有ることを気付かせてくれます。
第三者の目、ということを考えていると“プロの罠”に思いが至ります。
複雑で高度な技能が求められる今という時代、一人ひとりがプロの職業人として仕事をしています。それだけに、時に、自分の視点でしか物事を考えなくなりがちです。
プロの人間は、時に、少し退(ひ)いて、俯瞰(ふかん)して物事を見つめることが大切です。“外からの和の発見”は、その事の大切さを教えてくれています。
今週の花材は、早や春の装いです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■コブシ モクレン科/落葉高木/ 《名前の
由来》蕾または果実の姿が子供の拳に似ている
ことから/開花時期を目安に農作業していたこと
から「田打桜」(タウチザクラ)の別名をもつ。桜よ
り一足早く咲いて春の訪れを告げる花。 花は白
色で10cm程の大輪で香気があり、 3〜4月に
葉に先だって開花。
■カンパニュラ キキョウ科/多年草/《名前
の由来》ラテン語の「小さな鐘」を意味する語から
/世界に約300種あり、日本でも4種が自生。
風鈴のような可愛らしい花が連なって咲く。
■シレネ〔サクラコマチ〕 ナデシコ科/一年
草/花期は5〜7月頃で、よく分岐した枝先に小
花をまとまって咲かせる。 花の付け根や茎の節
からねばねばした分泌物を出し、虫がくっつくこと
から「ムシトリナデシコ」とも呼ばれる。
■エニシダ〔石化(セッカ)エニシダ〕 マメ科
/ヨーロッパ原産で江戸時代に渡来。放射状に
伸びる枝いっぱいに、蝶のような花を咲かせる。
花色は鮮やかな黄色の他、白やピンクもある。
「石化エニシダ」は白花エニシダの枝が平たく帯
化したもの。先端がうねるなどユニークな姿が特
徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3521.jpg
■コブシ モクレン科/落葉高木/ 《名前の
由来》蕾または果実の姿が子供の拳に似ている
ことから/開花時期を目安に農作業していたこと
から「田打桜」(タウチザクラ)の別名をもつ。桜よ
り一足早く咲いて春の訪れを告げる花。 花は白
色で10cm程の大輪で香気があり、 3〜4月に
葉に先だって開花。
■カンパニュラ キキョウ科/多年草/《名前
の由来》ラテン語の「小さな鐘」を意味する語から
/世界に約300種あり、日本でも4種が自生。
風鈴のような可愛らしい花が連なって咲く。
■シレネ〔サクラコマチ〕 ナデシコ科/一年
草/花期は5〜7月頃で、よく分岐した枝先に小
花をまとまって咲かせる。 花の付け根や茎の節
からねばねばした分泌物を出し、虫がくっつくこと
から「ムシトリナデシコ」とも呼ばれる。
■エニシダ〔石化(セッカ)エニシダ〕 マメ科
/ヨーロッパ原産で江戸時代に渡来。放射状に
伸びる枝いっぱいに、蝶のような花を咲かせる。
花色は鮮やかな黄色の他、白やピンクもある。
「石化エニシダ」は白花エニシダの枝が平たく帯
化したもの。先端がうねるなどユニークな姿が特
徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3521.jpg
【秘書室】
■カーネーション ナデシコ科/多年草/
母の日に贈る花として古くから親しまれる。バ
ラ・菊に並び世界的に生産量が多い。赤紫系
複色「ノビオバーガンディ」、ピンクベージュ「オ
リーブ」
■ラナンキュラス キンポウゲ科/球根植
物/《名前の由来》ラテン語の蛙(ラナ)に由
来。蛙の生息する湿地に自生することから/
幾重にも重なる柔らかい花弁が特徴。
■ルスカス〔丸葉(マルバ)ルスカス〕
ユリ科/艶やかで光沢のある深緑色の葉物。
葉のように見える部分は小枝が変化した葉状
茎で、本来の葉は退化。葉状茎の中心に白い
花を咲かせる。
■アランダ〔チャクワンブルー〕 ラン科/ア
ラクニスとバンダの交配種。類似のモカラ(アラ
クニス/バンダ/アスコケントルムの交配種)
に比べ、花が大きく花弁が細い。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3522.jpg
■カーネーション ナデシコ科/多年草/
母の日に贈る花として古くから親しまれる。バ
ラ・菊に並び世界的に生産量が多い。赤紫系
複色「ノビオバーガンディ」、ピンクベージュ「オ
リーブ」
■ラナンキュラス キンポウゲ科/球根植
物/《名前の由来》ラテン語の蛙(ラナ)に由
来。蛙の生息する湿地に自生することから/
幾重にも重なる柔らかい花弁が特徴。
■ルスカス〔丸葉(マルバ)ルスカス〕
ユリ科/艶やかで光沢のある深緑色の葉物。
葉のように見える部分は小枝が変化した葉状
茎で、本来の葉は退化。葉状茎の中心に白い
花を咲かせる。
■アランダ〔チャクワンブルー〕 ラン科/ア
ラクニスとバンダの交配種。類似のモカラ(アラ
クニス/バンダ/アスコケントルムの交配種)
に比べ、花が大きく花弁が細い。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3522.jpg