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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.359 − 誓 (ちかう) −
桜前線のニュースが心を浮き立たせます。
観たことのない吉野の桜、その吉野桜の満開の生け花を観ました。哀しみや儚(はかな)さを覚える程の白さ、古来、人々の心騒いだ理由が分かります。
構内や街中では木蓮(モクレン)、辛夷(コブシ)、観る者の心を高貴な白で洗ってくれます。
庭では木瓜(ボケ)の深紅、道端には連翹(レンギョウ)の黄色が、鮮烈な存在感を放っています。
先日、多くの若者を送り出しました。
何時も(いつも)、送る言葉の作成に呻吟(しんぎん)しています。送られるうちの1人でも、「送る言葉」の片言隻句(へんげんせっく)を心に刻み、人生を歩んでくれることを祈っています。
君に勧(すす)む 惜しむ莫(なか)れ 金縷(きんる)の衣(い)
君に勧む 須(すべか)らく惜しむべし 少年の時
花開(ひら)いて 折るに堪(た)えなば 直(ただ)ちに須らく折るべし
花無(な)きを待って 空しく枝を折る莫れ
杜秋娘(としゅうじょう)
二度と訪れない青春の輝きを大切にすることを説いています。
いつの時代も人々の心に響いたのでしょう、今に伝わっている詩です。
花は垂楊(すいよう)に映(えい)じて
漢水(かんすい)清(きよ)し
微風林裏(びふうりんり)一枝(いっし)軽(かろ)し
・・・・・
常建(じょうけん)
紅(くれない)の花はしだれ柳の緑に映じ、漢水(漢江・かんこう)の流れは清らかに澄んでいます。
そよ風が林の中を吹き過ぎていき、しなやかな枝が風に揺れています。
有名なこの春の描写、透明感のある美しさを写し取っています。
春といえば土牛(とぎゅう)です。
(vol.272 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=309)
「絵は人柄である」との言葉を体現(たいげん)している画家、奥村土牛の−画業ひとすじ100年のあゆみ−展は、充実した構成です。
彼の画(え)からは、澄み切った風景のなかに暖かい大気が流れているのを感じます。
高齢になってからの彼の作品、人柄が滲(にじ)み出ているのではと思わせる穏やかな雰囲気が観る者に伝わってきます。
切手に取り上げられた「醍醐」(だいご)、「門」、「鳴門」の他にも、「城」、「輪島の夕照」(わじまのせきしょう)、後年の風景画には、画家の自然や時に対する畏敬(いけい)が漂っています。
春の空気感、淡い緑の色、こちらの心まで温かくしてくれます。
一転、旅立つ人へ「未来の覚悟」を問うようなカラヴァッジョです。
我が国では2回目となるカラヴァッジョ展、彼の画の多くは祭壇画で、動かせません。そんななか、10点以上の作品が集まっています。
彼は、波乱万丈の人生を送った画家です。
(vol.67 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=93)
彼の生涯に付き纏(まと)った狂気と光と闇を創り出している絵の静謐(せいひつ)さ、この乖離(かいり)、素人には理解が困難です。光と闇の対比を描く画法で、後(のち)の時代の画家達に大きな影響を与えています。画題によっては凄惨(せいさん)さすら感じます。
彼の死後、一時、彼は美術史上忘れ去られた存在でした。今再び、歴史上偉大な画家として位置付けられています。
今回の展示、照明の工夫のせいか、彼の画の色彩は鮮やかで、勁(つよ)い光が、闇を浮き立たせています。
彼の影響を受けた、光の画家であるジョルジュ・ド・ラ・トゥールの画も2点、展示されていました。
(vol.67 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=93)
(vol.231 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=268)
(vol.318 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=357)
後世、穏やかさを光で表現するとこうなる、と人々に言わしめた彼の作品です。
もう一人、黒漆(くろうるし)の底光りするような光を生み出したレンブラントも脳裡に描いて展示作品をみると、カラヴァッジョの荒々しくも、大胆な筆使いが、当時の人々にとって如何(いか)に衝撃的であったかが理解できます。
このような美術展が開催されている今の日本、我が国の豊かさと成熟さに改めて思いを馳(は)せます。
今週の花材は、両室とも、色、姿が若者の未来の覚悟を問うている様(よう)です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
観たことのない吉野の桜、その吉野桜の満開の生け花を観ました。哀しみや儚(はかな)さを覚える程の白さ、古来、人々の心騒いだ理由が分かります。
構内や街中では木蓮(モクレン)、辛夷(コブシ)、観る者の心を高貴な白で洗ってくれます。
庭では木瓜(ボケ)の深紅、道端には連翹(レンギョウ)の黄色が、鮮烈な存在感を放っています。
先日、多くの若者を送り出しました。
何時も(いつも)、送る言葉の作成に呻吟(しんぎん)しています。送られるうちの1人でも、「送る言葉」の片言隻句(へんげんせっく)を心に刻み、人生を歩んでくれることを祈っています。
君に勧(すす)む 惜しむ莫(なか)れ 金縷(きんる)の衣(い)
君に勧む 須(すべか)らく惜しむべし 少年の時
花開(ひら)いて 折るに堪(た)えなば 直(ただ)ちに須らく折るべし
花無(な)きを待って 空しく枝を折る莫れ
杜秋娘(としゅうじょう)
二度と訪れない青春の輝きを大切にすることを説いています。
いつの時代も人々の心に響いたのでしょう、今に伝わっている詩です。
花は垂楊(すいよう)に映(えい)じて
漢水(かんすい)清(きよ)し
微風林裏(びふうりんり)一枝(いっし)軽(かろ)し
・・・・・
常建(じょうけん)
紅(くれない)の花はしだれ柳の緑に映じ、漢水(漢江・かんこう)の流れは清らかに澄んでいます。
そよ風が林の中を吹き過ぎていき、しなやかな枝が風に揺れています。
有名なこの春の描写、透明感のある美しさを写し取っています。
春といえば土牛(とぎゅう)です。
(vol.272 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=309)
「絵は人柄である」との言葉を体現(たいげん)している画家、奥村土牛の−画業ひとすじ100年のあゆみ−展は、充実した構成です。
彼の画(え)からは、澄み切った風景のなかに暖かい大気が流れているのを感じます。
高齢になってからの彼の作品、人柄が滲(にじ)み出ているのではと思わせる穏やかな雰囲気が観る者に伝わってきます。
切手に取り上げられた「醍醐」(だいご)、「門」、「鳴門」の他にも、「城」、「輪島の夕照」(わじまのせきしょう)、後年の風景画には、画家の自然や時に対する畏敬(いけい)が漂っています。
春の空気感、淡い緑の色、こちらの心まで温かくしてくれます。
一転、旅立つ人へ「未来の覚悟」を問うようなカラヴァッジョです。
我が国では2回目となるカラヴァッジョ展、彼の画の多くは祭壇画で、動かせません。そんななか、10点以上の作品が集まっています。
彼は、波乱万丈の人生を送った画家です。
(vol.67 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=93)
彼の生涯に付き纏(まと)った狂気と光と闇を創り出している絵の静謐(せいひつ)さ、この乖離(かいり)、素人には理解が困難です。光と闇の対比を描く画法で、後(のち)の時代の画家達に大きな影響を与えています。画題によっては凄惨(せいさん)さすら感じます。
彼の死後、一時、彼は美術史上忘れ去られた存在でした。今再び、歴史上偉大な画家として位置付けられています。
今回の展示、照明の工夫のせいか、彼の画の色彩は鮮やかで、勁(つよ)い光が、闇を浮き立たせています。
彼の影響を受けた、光の画家であるジョルジュ・ド・ラ・トゥールの画も2点、展示されていました。
(vol.67 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=93)
(vol.231 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=268)
(vol.318 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=357)
後世、穏やかさを光で表現するとこうなる、と人々に言わしめた彼の作品です。
もう一人、黒漆(くろうるし)の底光りするような光を生み出したレンブラントも脳裡に描いて展示作品をみると、カラヴァッジョの荒々しくも、大胆な筆使いが、当時の人々にとって如何(いか)に衝撃的であったかが理解できます。
このような美術展が開催されている今の日本、我が国の豊かさと成熟さに改めて思いを馳(は)せます。
今週の花材は、両室とも、色、姿が若者の未来の覚悟を問うている様(よう)です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■レネゾーン サトイモ科/アンスリュウムの葉。葉がフリル
のように波打つ大きなグリーン。タニワタリに似た姿で、しっかり
とした硬さがあり葉色も濃い。
■モルセラ シソ科/一年草/花期は春で、大きな緑色のガ
クの中に白っぽい花が咲く。花自体に鑑賞価値はなく、独特な茎
のラインが魅力の葉物として流通。ミントに似た芳香がある。
「グリーンゴッデス」はグリーンと白のコントラストが綺麗な品種。
■カラー〔グリーンゴッデス〕 サトイモ科/球根植物/花のよう
に見えるメガホン状の部分は苞で、その中に棒状の花序を持つ。
■菊〔フエゴダーク〕 キク科/多年草/花弁の表と裏の色が異
なる巨大輪品種。一輪でも存在感があり、他にない花色が魅力。
「フエゴ」はスペイン語で“炎”を意味する。
■エリンジュウム セリ科/多年草/長く鋭い苞と松かさのよ
うな花が特徴。成長と共に青味を帯びる。花持ちも良く、ドライフ
ラワーにも適す。
■ベロニカ〔ブルーエイリアン〕 ゴマノハグサ科/世界に300
種ほどあり、日本にも約20種が自生。直立の高性種からグランド
カバーになる這い性までバラエティに富む。「ブルーエイリアン」は
綺麗な花色で、ケイトウのように花穂が平たい。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3591.jpg
■レネゾーン サトイモ科/アンスリュウムの葉。葉がフリル
のように波打つ大きなグリーン。タニワタリに似た姿で、しっかり
とした硬さがあり葉色も濃い。
■モルセラ シソ科/一年草/花期は春で、大きな緑色のガ
クの中に白っぽい花が咲く。花自体に鑑賞価値はなく、独特な茎
のラインが魅力の葉物として流通。ミントに似た芳香がある。
「グリーンゴッデス」はグリーンと白のコントラストが綺麗な品種。
■カラー〔グリーンゴッデス〕 サトイモ科/球根植物/花のよう
に見えるメガホン状の部分は苞で、その中に棒状の花序を持つ。
■菊〔フエゴダーク〕 キク科/多年草/花弁の表と裏の色が異
なる巨大輪品種。一輪でも存在感があり、他にない花色が魅力。
「フエゴ」はスペイン語で“炎”を意味する。
■エリンジュウム セリ科/多年草/長く鋭い苞と松かさのよ
うな花が特徴。成長と共に青味を帯びる。花持ちも良く、ドライフ
ラワーにも適す。
■ベロニカ〔ブルーエイリアン〕 ゴマノハグサ科/世界に300
種ほどあり、日本にも約20種が自生。直立の高性種からグランド
カバーになる這い性までバラエティに富む。「ブルーエイリアン」は
綺麗な花色で、ケイトウのように花穂が平たい。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3591.jpg
【秘書室】
■フリージア〔エアリーローズ〕 アヤメ科/球根植物/甘い香りを
放つ春の代表花。花茎に8〜10輪程の花をつけ、次々と開花する。
「エアリー」シリーズは2012年発表の石川県オリジナル品種で全7
種。「エアリーローズ」はピンクの八重咲。
■ユーカリ・テトラゴナ フトモモ科/常緑高木。ユーカリの一種。
枝先に1.5cmほどのベル型の実を多数つける。果実は木質で硬く、
先端部に穴が開く。
■ブラックリーフ リュウゼツラン科/常緑低木/光沢があり一見、
皮のようにも見える大きな葉。他にない黒色が魅力のグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3592.jpg
■フリージア〔エアリーローズ〕 アヤメ科/球根植物/甘い香りを
放つ春の代表花。花茎に8〜10輪程の花をつけ、次々と開花する。
「エアリー」シリーズは2012年発表の石川県オリジナル品種で全7
種。「エアリーローズ」はピンクの八重咲。
■ユーカリ・テトラゴナ フトモモ科/常緑高木。ユーカリの一種。
枝先に1.5cmほどのベル型の実を多数つける。果実は木質で硬く、
先端部に穴が開く。
■ブラックリーフ リュウゼツラン科/常緑低木/光沢があり一見、
皮のようにも見える大きな葉。他にない黒色が魅力のグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3592.jpg