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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.371 − 靡 (なびく) −
文月(ふみづき)、七夕に由来する名称を持つ7月です。
梅雨が明けようとする今、七十二候では半夏生(はんげしょう)と言います。夏至から数えて11日目ですから、この時季になります。
庭では梔子(クチナシ)が盛りです。百日紅(サルスベリ)も咲き出しました。
道路脇には、自然の街路灯の様に、アカシアの白い花が咲き誇っています。朝陽のなか、雨に濡れて輝いています。
真っ青な田圃(たんぼ)の上を吹き渡る青田風(あおたかぜ)、清々(すがすが)しい初夏の風物です。
松風の中を青田のそよぎかな
内藤丈草(ないとう・じょうそう)
ここ信夫の里や会津地方の郊外では、この詩そのままの情景が、青空の下、展開しています。
山々に目を転ずれば、“山滴る”(やましたたる)です。緑なす山々の瑞々(みずみず)しい姿を、水の滴りで形容した言葉です。
この言葉は、“夏山蒼翠(そうすい)にして滴(したた)るが如く(郭煕〔かくき〕)”に由来するそうです。
この時季を象徴する色の一つが黄色です。
山形県の最上地方では、紅花(ベニバナ)がこの時季に黄赤色(きあかいろ)の花を咲かせます。
“トランク”(己が卒後の研修をしていた時、関連病院への派遣の俗称)で、医師になって半年後、上司が週替わりに来るという山形県米沢市にある病院に独りで勤務していました。
その時、紅花が一面に咲いている光景を目にしたことがあります。今考えると“一炊(いっすい)の夢”です。
藍色(あいいろ)、紫陽花(アジサイ)に代表されるこの色も、今の季節と深く結びついています。
明治維新の前後、我が国を訪れた外国人は、庶民の暮らしに藍色が溢れているのが印象的だったようです。その有り様を“ジャパンブルー”と讃(たた)えています。
藍色が暮らしに多かったのには理由(わけ)があります。それは、木綿です。
昔、庶民にとって、木綿は、衣類や暮らしに用いる繊維の主役でした。この木綿に馴染む染色は藍だけだったのです。
山河は、然(しか)るべき時季に、然るべき姿と色をみせてくれます。
しかも、毎年同じというわけではありません。ここに自然の造化(ぞうか)の妙があります。
人間も季節毎(ごと)に暮らしの設(しつら)えを変えます。“クールビズ”や衣更え(ころもがえ)もその一つです。
(vol.175 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=209)
只、己には集団に「空気を読む」潮流があって、皆が一斉に同じ方向に走っている様にも映ります。
ココ・シャネル(1883〜1971)が、女性を窮屈な服装から解放しました。そして今、男はネクタイや背広から、女性はスカートやワンピースから解放されました。今の服装の多様性、眩(まぶ)しい程です。
型に嵌(は)まった服装の因襲(いんしゅう)からの解放を謳歌(おうか)しているうちに、いつの間にか得られた姿がジーンズやチノパンツに代表される、同じ服装になっています。
暫(しばら)くすると、以前にも増して、皆が似たような恰好になっています。“因襲から解き放たれると却って画一化が進む”という皮肉な結果です。
“変化”は、人間を不安に陥れ、その不安を打ち消す為に皆が似てしまうのでしょうか。
“華胥(かしょ)の国に遊ぶ自由”を失いたくないものです。
“華胥の自由”は、音楽や芸術を考えると分かります。音楽、芸術をどう受け取るかに、年齢、職業、地位、貧富は関係なく、人間(ヒト)様々です。
服装にも、自分の想いを大切にして良いのです。“個の貫き”、少し独りよがりでも良いから“前向きな気概”、“痩せ我慢”(やせがまん)も時には必要です。
今週の花材は、両室とも慎ましげな佇(たたず)まいです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
梅雨が明けようとする今、七十二候では半夏生(はんげしょう)と言います。夏至から数えて11日目ですから、この時季になります。
庭では梔子(クチナシ)が盛りです。百日紅(サルスベリ)も咲き出しました。
道路脇には、自然の街路灯の様に、アカシアの白い花が咲き誇っています。朝陽のなか、雨に濡れて輝いています。
真っ青な田圃(たんぼ)の上を吹き渡る青田風(あおたかぜ)、清々(すがすが)しい初夏の風物です。
松風の中を青田のそよぎかな
内藤丈草(ないとう・じょうそう)
ここ信夫の里や会津地方の郊外では、この詩そのままの情景が、青空の下、展開しています。
山々に目を転ずれば、“山滴る”(やましたたる)です。緑なす山々の瑞々(みずみず)しい姿を、水の滴りで形容した言葉です。
この言葉は、“夏山蒼翠(そうすい)にして滴(したた)るが如く(郭煕〔かくき〕)”に由来するそうです。
この時季を象徴する色の一つが黄色です。
山形県の最上地方では、紅花(ベニバナ)がこの時季に黄赤色(きあかいろ)の花を咲かせます。
“トランク”(己が卒後の研修をしていた時、関連病院への派遣の俗称)で、医師になって半年後、上司が週替わりに来るという山形県米沢市にある病院に独りで勤務していました。
その時、紅花が一面に咲いている光景を目にしたことがあります。今考えると“一炊(いっすい)の夢”です。
藍色(あいいろ)、紫陽花(アジサイ)に代表されるこの色も、今の季節と深く結びついています。
明治維新の前後、我が国を訪れた外国人は、庶民の暮らしに藍色が溢れているのが印象的だったようです。その有り様を“ジャパンブルー”と讃(たた)えています。
藍色が暮らしに多かったのには理由(わけ)があります。それは、木綿です。
昔、庶民にとって、木綿は、衣類や暮らしに用いる繊維の主役でした。この木綿に馴染む染色は藍だけだったのです。
山河は、然(しか)るべき時季に、然るべき姿と色をみせてくれます。
しかも、毎年同じというわけではありません。ここに自然の造化(ぞうか)の妙があります。
人間も季節毎(ごと)に暮らしの設(しつら)えを変えます。“クールビズ”や衣更え(ころもがえ)もその一つです。
(vol.175 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=209)
只、己には集団に「空気を読む」潮流があって、皆が一斉に同じ方向に走っている様にも映ります。
ココ・シャネル(1883〜1971)が、女性を窮屈な服装から解放しました。そして今、男はネクタイや背広から、女性はスカートやワンピースから解放されました。今の服装の多様性、眩(まぶ)しい程です。
型に嵌(は)まった服装の因襲(いんしゅう)からの解放を謳歌(おうか)しているうちに、いつの間にか得られた姿がジーンズやチノパンツに代表される、同じ服装になっています。
暫(しばら)くすると、以前にも増して、皆が似たような恰好になっています。“因襲から解き放たれると却って画一化が進む”という皮肉な結果です。
“変化”は、人間を不安に陥れ、その不安を打ち消す為に皆が似てしまうのでしょうか。
“華胥(かしょ)の国に遊ぶ自由”を失いたくないものです。
“華胥の自由”は、音楽や芸術を考えると分かります。音楽、芸術をどう受け取るかに、年齢、職業、地位、貧富は関係なく、人間(ヒト)様々です。
服装にも、自分の想いを大切にして良いのです。“個の貫き”、少し独りよがりでも良いから“前向きな気概”、“痩せ我慢”(やせがまん)も時には必要です。
今週の花材は、両室とも慎ましげな佇(たたず)まいです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ディサ〔ロージーフェイス〕 ラン科/真っ
直ぐに伸びた花茎に、萼が大きく発達した三角
の花を3〜5輪程咲かせる。 花色はピンク、オ
レンジ、 紫、 白などがあり、鮮やかな色彩で目
を引く。暑さ寒さに弱く栽培が難しく、“幻の洋ラ
ン”と呼ばれる。
■アガパンサス〔ロイヤルパープル〕
ユリ科/多年草/花期は6〜7月で長く伸びた
茎の先端に多数の花を咲かせる。さわやかな
涼感のあるブルー系の品種が豊富。強健な性
質で手がかからないので公園等の植え込みに
も人気。
■エキノプシス〔ベッチーズブルー〕
キク科/多年草/《名前の由来》ギリシャ語で
“ハリネズミに似た”という意味/アザミに似た
葉と瑠璃色の球状花から「ルリ玉アザミ」の和
名を持つ。茎の先端に青紫色の小花を4〜5
cmの球状につける。
■ドラセナ〔コーディラインフォーカラーズ〕
リュウゼツラン科/切花としても非常に長く楽
しめる丈夫なグリーン。以前ドラセナに分類さ
れていたため、本来はコルジリネだがドラセナ
で流通。「フォーカラーズ」は茶系の葉色で小
葉の品種。
■トルコギキョウ〔セルジュハート〕
リンドウ科/多年草/花の大きさや咲き方、花
色がとても豊富な夏の花。 品種改良が盛んで
毎年多くの新種が登場する。「セルジュハート」
はアプリコット系の品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3711.jpg
■ディサ〔ロージーフェイス〕 ラン科/真っ
直ぐに伸びた花茎に、萼が大きく発達した三角
の花を3〜5輪程咲かせる。 花色はピンク、オ
レンジ、 紫、 白などがあり、鮮やかな色彩で目
を引く。暑さ寒さに弱く栽培が難しく、“幻の洋ラ
ン”と呼ばれる。
■アガパンサス〔ロイヤルパープル〕
ユリ科/多年草/花期は6〜7月で長く伸びた
茎の先端に多数の花を咲かせる。さわやかな
涼感のあるブルー系の品種が豊富。強健な性
質で手がかからないので公園等の植え込みに
も人気。
■エキノプシス〔ベッチーズブルー〕
キク科/多年草/《名前の由来》ギリシャ語で
“ハリネズミに似た”という意味/アザミに似た
葉と瑠璃色の球状花から「ルリ玉アザミ」の和
名を持つ。茎の先端に青紫色の小花を4〜5
cmの球状につける。
■ドラセナ〔コーディラインフォーカラーズ〕
リュウゼツラン科/切花としても非常に長く楽
しめる丈夫なグリーン。以前ドラセナに分類さ
れていたため、本来はコルジリネだがドラセナ
で流通。「フォーカラーズ」は茶系の葉色で小
葉の品種。
■トルコギキョウ〔セルジュハート〕
リンドウ科/多年草/花の大きさや咲き方、花
色がとても豊富な夏の花。 品種改良が盛んで
毎年多くの新種が登場する。「セルジュハート」
はアプリコット系の品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3711.jpg
【秘書室】
■リュウカデンドロン(サファリサンセット)
ヤマモガシ科/常緑低木/花弁のように見え
る部分は苞で、その中に花序がある。 非常に
花持ちが良く、ドライフラワーにも適す。「サファ
リサンセット」は赤茶色。
■ユーカリ(テトラゴナ) フトモモ科/枝先
に1.5cm程のベル型の実を多数つける。果
実は木質で硬く、先端部に穴が開く。そのまま
ドライになり、リースの材料にも利用される。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/新
緑、花期、紅葉と一年を通して楽しめる樹木。
花期は4〜5月でスズランのような白い小さな
花が咲く。赤色の花が咲く「ベニバナドウダン」
や縞模様の「更紗ドウダン」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3712.jpg
■リュウカデンドロン(サファリサンセット)
ヤマモガシ科/常緑低木/花弁のように見え
る部分は苞で、その中に花序がある。 非常に
花持ちが良く、ドライフラワーにも適す。「サファ
リサンセット」は赤茶色。
■ユーカリ(テトラゴナ) フトモモ科/枝先
に1.5cm程のベル型の実を多数つける。果
実は木質で硬く、先端部に穴が開く。そのまま
ドライになり、リースの材料にも利用される。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/新
緑、花期、紅葉と一年を通して楽しめる樹木。
花期は4〜5月でスズランのような白い小さな
花が咲く。赤色の花が咲く「ベニバナドウダン」
や縞模様の「更紗ドウダン」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3712.jpg