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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.374 − 纏 (まとう) −
雷(かみなり)が轟(とどろ)き、その後の激しい雨、この情景、今も昔も変わりません。
梅雨明(つゆあけ)、気が付けば早や、蝉(セミ)の鳴き声が辺り(あたり)を覆っています。
蝉は、古来から、人々に無常の理(ことわり)を教えてくれています。
空蝉(うつせみ)、“現人”(うつせみ)から転じた言葉です。この世に生を受けた人間は必ず滅(めっ)することの象徴です。
端居(はしい)、子供の頃、軒先の縁台に座り、団扇(うちわ)を片手に夕涼みをしたものです。
空調の無い時代の話です。蚊取り線香の香りが甦(よみがえ)ってきます。
浜木綿(ハマユウ)、デュランタなどの紫、百合(ユリ)の白が涼やかさを際立たせています。
百日紅(サルスベリ)が鮮やかな紅をみせてくれています。
緑滴(したた)る樹々が花々を引き立てています。その日陰(緑陰)に、風が吹き込みます。
万緑や吾にまつはる風うまし
戸田明子
雨で天地が洗い流され、風が樹々や草々の緑の間を吹き抜けて、木々の香りを運び肌に達します。
汗まみれで帰宅するこの時季、運動の後、シャワーを浴びて、和服に着替えます。ここから自分の時間です。
7〜8月には上布(じょうふ)を愛用しています。上布は、麻を細かく裂いて紡(つむ)ぎ、撚(よ)り合わせた細かい糸を、各産地で独特の技法で織り上げる麻布です。
今着ているのは、越後上布として知られる塩沢紬(しおざわつむぎ)です。
紺色で、細かい十字紬、地が薄く、シボがさらりとして、着心地が爽(さわ)やかです。
この塩沢紬は、亡き父からのお譲りです。
上布として、他に自分で求めた能登上布と八重山上布を持っています。能登上布に纏(まつ)わる思い出は記しました。
(vol.180 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=214)
(vol.290 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=327)
皇女が伝えたという伝説を持つ能登上布、“羽衣よりも軽い”と形容される薄さと軽さが特徴です。
能登の風土を表わしているようなさらりとした肌ざわり、麻の持つシャリ感とひんやりとした風合(ふうあい)、そして丈夫さが着る者を魅了します。
石垣島まで出向いて手にした八重山上布です。
(vol.38 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=62)
(vol.290 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=327)
焦げ茶(こげちゃ)の絣(かすり)模様が清楚な白地に浮かぶ、我が国では唯一の茶絣上布です。
今、どの土地でも上布の作り手は数少なく、近い裡(うち)、幻の和服になってしまうのではと危惧されています。余りにも惜しい、寂しい限りです。
自分の体の一部のように着ることが出来るのが大島紬です。
(vol.332 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=371)
自然豊かな奄美大島で織り継がれてきた大島紬、特に泥大島(どろおおしま)は、職人さんが指で確かめながら浸し、揉(も)み、絞るを繰り返しながら染めていきます。
渋みのある色合、滑らかな風合を有しています。図案の作成から絣締め、泥染(どろぞめ)、織りと、気の遠くなるような手間の掛かる作業を経て生まれます。
渋い黒の和服は、着続けているうちにコシがとれて柔らかな風合が生まれます。
父親から受け継いで40年以上、すっかり己の体に馴染んでいます。
着物は、生産されている地域の風土、人々の暮らしや息使いまでも感じさせてくれます。
男の和服は“織り”です。生地(きじ)の織りをみていると、人生と重なります。
様々な形、色、時に不揃いの部分、織りなされて出来た生地の肌触り、人生そのものです。産地は同じ、生地も同じ、でも一つとして同じものはありません。
“人生の綾(あや)”とは、言い得て妙です。
“綾”とはモノの表面に顕(あら)われる様々な形や模様と辞書には記されています。そこから、表面上は何もないが、辿(たど)るとみえてくる入り組んだ人生や世間を表わす言葉になっています。
今週の花材は、対照的な色使いです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
梅雨明(つゆあけ)、気が付けば早や、蝉(セミ)の鳴き声が辺り(あたり)を覆っています。
蝉は、古来から、人々に無常の理(ことわり)を教えてくれています。
空蝉(うつせみ)、“現人”(うつせみ)から転じた言葉です。この世に生を受けた人間は必ず滅(めっ)することの象徴です。
端居(はしい)、子供の頃、軒先の縁台に座り、団扇(うちわ)を片手に夕涼みをしたものです。
空調の無い時代の話です。蚊取り線香の香りが甦(よみがえ)ってきます。
浜木綿(ハマユウ)、デュランタなどの紫、百合(ユリ)の白が涼やかさを際立たせています。
百日紅(サルスベリ)が鮮やかな紅をみせてくれています。
緑滴(したた)る樹々が花々を引き立てています。その日陰(緑陰)に、風が吹き込みます。
万緑や吾にまつはる風うまし
戸田明子
雨で天地が洗い流され、風が樹々や草々の緑の間を吹き抜けて、木々の香りを運び肌に達します。
汗まみれで帰宅するこの時季、運動の後、シャワーを浴びて、和服に着替えます。ここから自分の時間です。
7〜8月には上布(じょうふ)を愛用しています。上布は、麻を細かく裂いて紡(つむ)ぎ、撚(よ)り合わせた細かい糸を、各産地で独特の技法で織り上げる麻布です。
今着ているのは、越後上布として知られる塩沢紬(しおざわつむぎ)です。
紺色で、細かい十字紬、地が薄く、シボがさらりとして、着心地が爽(さわ)やかです。
この塩沢紬は、亡き父からのお譲りです。
上布として、他に自分で求めた能登上布と八重山上布を持っています。能登上布に纏(まつ)わる思い出は記しました。
(vol.180 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=214)
(vol.290 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=327)
皇女が伝えたという伝説を持つ能登上布、“羽衣よりも軽い”と形容される薄さと軽さが特徴です。
能登の風土を表わしているようなさらりとした肌ざわり、麻の持つシャリ感とひんやりとした風合(ふうあい)、そして丈夫さが着る者を魅了します。
石垣島まで出向いて手にした八重山上布です。
(vol.38 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=62)
(vol.290 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=327)
焦げ茶(こげちゃ)の絣(かすり)模様が清楚な白地に浮かぶ、我が国では唯一の茶絣上布です。
今、どの土地でも上布の作り手は数少なく、近い裡(うち)、幻の和服になってしまうのではと危惧されています。余りにも惜しい、寂しい限りです。
自分の体の一部のように着ることが出来るのが大島紬です。
(vol.332 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=371)
自然豊かな奄美大島で織り継がれてきた大島紬、特に泥大島(どろおおしま)は、職人さんが指で確かめながら浸し、揉(も)み、絞るを繰り返しながら染めていきます。
渋みのある色合、滑らかな風合を有しています。図案の作成から絣締め、泥染(どろぞめ)、織りと、気の遠くなるような手間の掛かる作業を経て生まれます。
渋い黒の和服は、着続けているうちにコシがとれて柔らかな風合が生まれます。
父親から受け継いで40年以上、すっかり己の体に馴染んでいます。
着物は、生産されている地域の風土、人々の暮らしや息使いまでも感じさせてくれます。
男の和服は“織り”です。生地(きじ)の織りをみていると、人生と重なります。
様々な形、色、時に不揃いの部分、織りなされて出来た生地の肌触り、人生そのものです。産地は同じ、生地も同じ、でも一つとして同じものはありません。
“人生の綾(あや)”とは、言い得て妙です。
“綾”とはモノの表面に顕(あら)われる様々な形や模様と辞書には記されています。そこから、表面上は何もないが、辿(たど)るとみえてくる入り組んだ人生や世間を表わす言葉になっています。
今週の花材は、対照的な色使いです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■クルクマ〔エメラルドチョコゼブラ〕 ショウガ科/球根植物/
幾重にも重なり花弁のように見える部分は苞で、その中に小さな花
が咲く。花自体は目立たず主に苞を鑑賞する。 「チョコゼブラ」は緑
と茶の複色で、特に花持ちが良い品種。
■アメリカテマリシモツケ〔ディアボロ〕 バラ科/落葉低木/花
期は5〜6月頃で、コデマリに似た白い花を多数咲かせる。「ディア
ボロ」は新芽から銅葉の品種。紅葉の時期はさらに赤みが増し、濃
いワインレッドのような色になる。
■ヒペリカム〔ピンキーフレア〕 オトギリソウ科/半常緑低木/
花期は初夏で黄色い花が咲く。 主に花後の実を鑑賞するものとし
て切り花で流通。
■ユーパトリウム〔フローレプレノ〕 キク科/多年草/花茎を長
くのばしアザミを小さくしたような花をまとめて咲かせる。藤袴(フジ
バカマ)に似た花姿で、「西洋フジバカマ」の別名を持つ。
■雲竜柳(ウンリュウヤナギ) ヤナギ科/落葉高木/竜が昇っ
ていくような曲線が特徴の樹。日本でも広く栽培され、庭木や生け
花に利用。
■ピンポン菊〔ルビーノ〕 キク科/多年草/真ん丸に咲く可愛
い菊で、花持ちの良い菊の中でも特に長く楽しめる。「ルビーノ」は
明るいグリーンがかった品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3741.jpg
■クルクマ〔エメラルドチョコゼブラ〕 ショウガ科/球根植物/
幾重にも重なり花弁のように見える部分は苞で、その中に小さな花
が咲く。花自体は目立たず主に苞を鑑賞する。 「チョコゼブラ」は緑
と茶の複色で、特に花持ちが良い品種。
■アメリカテマリシモツケ〔ディアボロ〕 バラ科/落葉低木/花
期は5〜6月頃で、コデマリに似た白い花を多数咲かせる。「ディア
ボロ」は新芽から銅葉の品種。紅葉の時期はさらに赤みが増し、濃
いワインレッドのような色になる。
■ヒペリカム〔ピンキーフレア〕 オトギリソウ科/半常緑低木/
花期は初夏で黄色い花が咲く。 主に花後の実を鑑賞するものとし
て切り花で流通。
■ユーパトリウム〔フローレプレノ〕 キク科/多年草/花茎を長
くのばしアザミを小さくしたような花をまとめて咲かせる。藤袴(フジ
バカマ)に似た花姿で、「西洋フジバカマ」の別名を持つ。
■雲竜柳(ウンリュウヤナギ) ヤナギ科/落葉高木/竜が昇っ
ていくような曲線が特徴の樹。日本でも広く栽培され、庭木や生け
花に利用。
■ピンポン菊〔ルビーノ〕 キク科/多年草/真ん丸に咲く可愛
い菊で、花持ちの良い菊の中でも特に長く楽しめる。「ルビーノ」は
明るいグリーンがかった品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3741.jpg
【秘書室】
■セロシア〔ルビーパフェ〕 ヒユ科/一年草/花期は7〜
11月頃で、モコモコした花穂が特徴。ろうそくの炎のような形
で、ドライフラワーにも適す。
■ガーベラ〔レンブラント〕 キク科/多年草/四季咲き性
で春から秋まで長期楽しめる。一重や八重咲、スパイダー咲
き、極小輪から大輪咲まで品種がとても豊富。「レンブラント」
は落ち着いた赤系の複色品種。
■カーネーション〔コマチ〕 ナデシコ科/多年草/母の日
の花として古くから親しまれる。 「コマチ」 は白色の花弁の縁
にピンクが入る可愛らしい品種。
■ルスカス〔丸葉ルスカス〕 ユリ科/葉のように見える部
分は小枝が変化した葉状茎で、本来の葉は退化。 葉状茎の
中心に白い花を咲かせる。
■ピンポン菊〔ロリポップパープル〕
(理事長室と同花材)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3742.jpg
■セロシア〔ルビーパフェ〕 ヒユ科/一年草/花期は7〜
11月頃で、モコモコした花穂が特徴。ろうそくの炎のような形
で、ドライフラワーにも適す。
■ガーベラ〔レンブラント〕 キク科/多年草/四季咲き性
で春から秋まで長期楽しめる。一重や八重咲、スパイダー咲
き、極小輪から大輪咲まで品種がとても豊富。「レンブラント」
は落ち着いた赤系の複色品種。
■カーネーション〔コマチ〕 ナデシコ科/多年草/母の日
の花として古くから親しまれる。 「コマチ」 は白色の花弁の縁
にピンクが入る可愛らしい品種。
■ルスカス〔丸葉ルスカス〕 ユリ科/葉のように見える部
分は小枝が変化した葉状茎で、本来の葉は退化。 葉状茎の
中心に白い花を咲かせる。
■ピンポン菊〔ロリポップパープル〕
(理事長室と同花材)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3742.jpg