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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.375 − 溶 (とける) −
夏休みに入り、駅や列車が混雑しています。子供達のさんざめき、生命(いのち)漲(みなぎ)る華やぎがあります。暑中見舞いが届き、返事を書きながら久しく会っていない人に思いを馳せます。
蓮見(はすみ)、花見に対比する言葉です。江戸時代には盛んに行われていた風物詩です。敬愛する友に誘われて足を運んだ蓮見、心安らぎます。
撫子(ナデシコ)のピンク、竜胆(リンドウ)、矢車菊(ヤグルマギク)の青紫、鬼灯(ホオズキ)の赤、山百合(ヤマユリ)の白、蝉時雨(せみしぐれ)の中、夏の色を際立たせています。
己の一日の始まりは、判で押した様(よう)に同じです。
早朝、出勤してポットに水を入れ、お湯を沸かします。お香を焚いて執務室を香りで満たし、音楽を流します。
机の上に積み上げられた書類、手紙、資料を整理し終わる頃に秘書が出勤してきます。
日々支えて下さっている事務局の仲間達と抹茶を喫します。
次に、コーヒーか紅茶を飲みながら、一日の段取りを打ち合わせ、懸案(けんあん)を処理していきます。
一つの仕事を片付けたら抹茶、仕事をしながらコーヒーか紅茶を味わいます。
今や、コーヒーは我が国の暮らしにすっかり根を下ろしています。コーヒーに就(つ)いては何度か記しました。
(vol.230 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=267)
(vol.236 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=273)
(vol.342 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=381)
子供の頃、昭和の田舎の家庭にはコーヒーはありませんでした。
学生時代、自家焙煎の街の喫茶店が溜(た)まり場です。静かな店内、店主のこだわりの音楽、そしてネルドリップやサイフォンで淹(い)れるブレンドコーヒーが主役です。
卒業してから、インスタントコーヒーが職場での日常の飲み物になってきます。
趣味や嗜好(しこう)から、日本茶と同じ世界です。
1990年代終わり頃からカフェスタイルが登場します。シアトル系カフェがその代表です。人々のコーヒーへの意識も拘(こだわ)りに変わっていきます。
その後、サードウェーブと呼ばれる新しい波が北米西海岸や北欧から届きます。店の形態はコーヒースタンドです。小さな室内で、立ち飲み、持ち帰りが基本です。バリスタが主役の世界です。
新しい潮流の源は、 “珈琲道”(コーヒーどう)ともいえる我が国の文化です。
日本は、剣、茶、花、踊りも“道”となる程、各分野で確たる哲学を作り出してきました。日本の喫茶店のマスターの勤勉でストイック(禁欲的)なコーヒーの淹れ方(いれかた)が、サードウェーブの流儀になっています。
コーヒーの淹れ方まで芸術にしてしまう日本の文化、今や“和の風情”と一体です。
コーヒー店永遠に在り秋の雨
永田耕衣(ながた・こうい)
コーヒーの香りと雨の音が漂う室内は日本の人々だけが持っている情感溢(あふ)れる空間です。
人口に膾炙(じんこうにかいしゃ)したこの歌は、コーヒーという海外の味と和の文化の融合を象徴しています。
「近代洋画・もうひとつの正統 原田直次郎展」、彼は森鴎外の終生の友です。
「若(も)し明治の油画が一の歴史をなすに足るものであるならば、原田の如きは、必ずや特筆して伝うべきタイプであるだろう」という、原田直次郎への森鴎外の言葉が全てを物語っています。
彼の「靴屋の親爺(おやじ)」は教科書にも掲載されており、多くの人が目にしています。彼の一生を辿(たど)るという企画は、遺作展以来100年以上なかったというのですから、事実上、初の美術展です。
来て良かったと心から思える構成です。肖像画の「老人」、「老人像」、「神父」、「毛利敬親肖像」から、その人間の歩んできた人生や気質さえ伝わってきます。
会場の神奈川県立近代美術館 葉山は、海を見下す高台にあり、後ろの山と一体になって光に満ちて、心安らげる美術館です。
今週の花材は、寒色と暖色の取り合わせが落ち着きを感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
蓮見(はすみ)、花見に対比する言葉です。江戸時代には盛んに行われていた風物詩です。敬愛する友に誘われて足を運んだ蓮見、心安らぎます。
撫子(ナデシコ)のピンク、竜胆(リンドウ)、矢車菊(ヤグルマギク)の青紫、鬼灯(ホオズキ)の赤、山百合(ヤマユリ)の白、蝉時雨(せみしぐれ)の中、夏の色を際立たせています。
己の一日の始まりは、判で押した様(よう)に同じです。
早朝、出勤してポットに水を入れ、お湯を沸かします。お香を焚いて執務室を香りで満たし、音楽を流します。
机の上に積み上げられた書類、手紙、資料を整理し終わる頃に秘書が出勤してきます。
日々支えて下さっている事務局の仲間達と抹茶を喫します。
次に、コーヒーか紅茶を飲みながら、一日の段取りを打ち合わせ、懸案(けんあん)を処理していきます。
一つの仕事を片付けたら抹茶、仕事をしながらコーヒーか紅茶を味わいます。
今や、コーヒーは我が国の暮らしにすっかり根を下ろしています。コーヒーに就(つ)いては何度か記しました。
(vol.230 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=267)
(vol.236 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=273)
(vol.342 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=381)
子供の頃、昭和の田舎の家庭にはコーヒーはありませんでした。
学生時代、自家焙煎の街の喫茶店が溜(た)まり場です。静かな店内、店主のこだわりの音楽、そしてネルドリップやサイフォンで淹(い)れるブレンドコーヒーが主役です。
卒業してから、インスタントコーヒーが職場での日常の飲み物になってきます。
趣味や嗜好(しこう)から、日本茶と同じ世界です。
1990年代終わり頃からカフェスタイルが登場します。シアトル系カフェがその代表です。人々のコーヒーへの意識も拘(こだわ)りに変わっていきます。
その後、サードウェーブと呼ばれる新しい波が北米西海岸や北欧から届きます。店の形態はコーヒースタンドです。小さな室内で、立ち飲み、持ち帰りが基本です。バリスタが主役の世界です。
新しい潮流の源は、 “珈琲道”(コーヒーどう)ともいえる我が国の文化です。
日本は、剣、茶、花、踊りも“道”となる程、各分野で確たる哲学を作り出してきました。日本の喫茶店のマスターの勤勉でストイック(禁欲的)なコーヒーの淹れ方(いれかた)が、サードウェーブの流儀になっています。
コーヒーの淹れ方まで芸術にしてしまう日本の文化、今や“和の風情”と一体です。
コーヒー店永遠に在り秋の雨
永田耕衣(ながた・こうい)
コーヒーの香りと雨の音が漂う室内は日本の人々だけが持っている情感溢(あふ)れる空間です。
人口に膾炙(じんこうにかいしゃ)したこの歌は、コーヒーという海外の味と和の文化の融合を象徴しています。
「近代洋画・もうひとつの正統 原田直次郎展」、彼は森鴎外の終生の友です。
「若(も)し明治の油画が一の歴史をなすに足るものであるならば、原田の如きは、必ずや特筆して伝うべきタイプであるだろう」という、原田直次郎への森鴎外の言葉が全てを物語っています。
彼の「靴屋の親爺(おやじ)」は教科書にも掲載されており、多くの人が目にしています。彼の一生を辿(たど)るという企画は、遺作展以来100年以上なかったというのですから、事実上、初の美術展です。
来て良かったと心から思える構成です。肖像画の「老人」、「老人像」、「神父」、「毛利敬親肖像」から、その人間の歩んできた人生や気質さえ伝わってきます。
会場の神奈川県立近代美術館 葉山は、海を見下す高台にあり、後ろの山と一体になって光に満ちて、心安らげる美術館です。
今週の花材は、寒色と暖色の取り合わせが落ち着きを感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■リンドウ〔パステルベル〕 リンドウ科/多年草/
《名前の由来》根が薬になり、竜の胆のように苦いこと
から「竜胆」(りんどう)/日本の秋を代表する花で、世
界に約400種。「パステルベル」は水色×白の涼しげ
な花色。
■カーネーション〔バイパーワイン〕 ナデシコ科/多
年草/母の日の花として古くから親しまれる。「コマチ」
は白色の花弁の縁にピンクが入る可愛らしい品種。
■トルコギキョウ〔ラフールレッド〕 リンドウ科/多年
草/花色、大きさ、花形など様々で品種がとても豊富。
現在出回っている品種の大半が日本産。「ラフール」
シリーズは小輪バラ咲きで、花弁が厚く花持ちが良い。
■雪柳(ユキヤナギ) バラ科/落葉低木/《名前
の由来》柳のように枝がしなやかに垂れることと、花を
散らした様子が雪が降ったように見えることから。春に
小さな白い花を枝いっぱいに咲かせる。
■菊〔ディスバッドマム〕 キク科/多年草/スプレ
ー菊の脇芽をかいて、一輪に仕立て大輪に咲かせた
菊。咲かせてから出荷されるため、ボリュームがあり
豪華で存在感がある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3751.jpg
■リンドウ〔パステルベル〕 リンドウ科/多年草/
《名前の由来》根が薬になり、竜の胆のように苦いこと
から「竜胆」(りんどう)/日本の秋を代表する花で、世
界に約400種。「パステルベル」は水色×白の涼しげ
な花色。
■カーネーション〔バイパーワイン〕 ナデシコ科/多
年草/母の日の花として古くから親しまれる。「コマチ」
は白色の花弁の縁にピンクが入る可愛らしい品種。
■トルコギキョウ〔ラフールレッド〕 リンドウ科/多年
草/花色、大きさ、花形など様々で品種がとても豊富。
現在出回っている品種の大半が日本産。「ラフール」
シリーズは小輪バラ咲きで、花弁が厚く花持ちが良い。
■雪柳(ユキヤナギ) バラ科/落葉低木/《名前
の由来》柳のように枝がしなやかに垂れることと、花を
散らした様子が雪が降ったように見えることから。春に
小さな白い花を枝いっぱいに咲かせる。
■菊〔ディスバッドマム〕 キク科/多年草/スプレ
ー菊の脇芽をかいて、一輪に仕立て大輪に咲かせた
菊。咲かせてから出荷されるため、ボリュームがあり
豪華で存在感がある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3751.jpg
【秘書室】
■リンドウ〔ホワイトベル〕 (理事長室と同花材)
■ハイブリッドスターチス〔ミシガンブルー〕 イソマツ科/多年草/スター
チスをもとに作出された園芸品種。
本来のスターチスに比べ花が小さく、カスミ草のような添え花として人気。花
持ちが良く落花もせず、ドライフラワーにも適す。
■クルクマ〔エメラルドパゴダ〕 ショウガ科/球根植物/幾重にも重なり
花弁のように見える部分は苞で、その中に小さな花が咲く。花自体は目立た
ず主に苞を鑑賞する。「エメラルドパゴダ」は爽やかな緑色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3752.jpg
■リンドウ〔ホワイトベル〕 (理事長室と同花材)
■ハイブリッドスターチス〔ミシガンブルー〕 イソマツ科/多年草/スター
チスをもとに作出された園芸品種。
本来のスターチスに比べ花が小さく、カスミ草のような添え花として人気。花
持ちが良く落花もせず、ドライフラワーにも適す。
■クルクマ〔エメラルドパゴダ〕 ショウガ科/球根植物/幾重にも重なり
花弁のように見える部分は苞で、その中に小さな花が咲く。花自体は目立た
ず主に苞を鑑賞する。「エメラルドパゴダ」は爽やかな緑色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3752.jpg