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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.377 − 潜 (ひそむ) −
二十四節気では立秋、朝晩の風に秋の気配を感じます。
花火大会、東北の夏祭り、“夏の別れ”を告げており、“夏惜しむ”です。
八月の 雨の音
山の昼 雷の音
明かるみに うちまじり
雨そそぎ 草は鳴る
遠雷の 八月の
音をきく。 山の昼。
(右上へ)
三木露風
この時季は、大人にとっては“人生の夏休み”でもあります。取り留めの無い事を記します。
慌ただしい日々を送っていると平凡な日々の掛け替えの無さに気付きます。
過ぎゆく歳月は人間(ヒト)の境遇を変えます。過去は、殆(ほと)んどが苦いものです。しかし、若い頃に戻ってやり直すことはできません。
思い通りにいかないのが人生です。それでも思い通りにしようと努力するのも人間です。
“人間は何かをすれば何もしなくても責任を負う”ものです。
(vol.368 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=409)
度々(たびたび)途方に暮れました。そんな時は目の前の小さな、出来る事から取り組んで前に進みました。
私達は世の中の主人公でなく、世間の歯車の一つにしか過ぎません。しかし、平凡な日々の暮らしの中にある喜びや切なさは、その人間にしか味わえない人生です。そこでは己が主人公です。
食堂や居酒屋が櫛比(しっぴ)している街で、独り、仲間、弟子達と語る、これこそが“雑踏のなかの憩い”です。
ここでは一人ひとりが“人生という物語の主人公”です。
夏休み、読む本の一つが「史記」です。
「史記」の登場人物で人気のある人に荊軻(けいか)が居ます。
自由人でありながら、始皇帝に刃(やいば)を向けた男です。始皇帝暗殺を使命として引き受けた潔さに人気の源があります。「傍若無人」という言葉の元になった人と言われています。映画にも取り上げられており、志士として、今も讃(たた)えられています。
著者によれば、事を成し遂げたかどうかではなく、心映えと志ゆえに名声が後世に及んだのです。
彼の名を高めているのは一篇の詩です。
風蕭々として易水寒し (かぜしょうしょうとしてえきすいさむし)
壮士一たび去ってまた還らず (そうしひとたびさってまたかえらず)
国境を流れる易水という大河のほとりで刺客の荊軻を見送る友達が居ます。彼等の前で彼がこの詩を繰り返し詠い、唯一人、巨大な権力に立ち向う決死の覚悟を示した詩です。
陶潜(とうせん・陶淵明)も「荊軻を詠ず」という詩を詠んで彼を讃(たた)えています。
この詩を読む度に、野口英世の19歳での詩を思い出します。
それは、志を立て上京する際、生家の柱に刻んだものです。
志を得ざれば再び此の地を踏まず
まさか、野口英世が荊軻の詩を知っていたとは思えません。只、読む者に迫ってくるモノは同じです。
恒例の慈善美術展、今回の主題は“旅”です。
“旅”への憧れは、洋の東西を問わず、定住が常態となった古人、そして現代を生きる人々にとって憧れです。
旅先のなかに身を委(ゆだ)ねるのが“旅人”、
自分の殻(から)を脱がずに旅先の世界をみているのが“観光客”だそうです。
祖国を愛し、異郷にも優しい眼差しを持って描いたアルベール・マルケと東山魁夷(ひがしやま・かいい)が対比されて展示されています。
東山の乾いた、空気の流れ、マルケの鼠色(ねずみいろ)と称される潤いのある大気、違いが明らかです。
広重の「東海道五十三次」、色鮮やかに展示されています。
傑作の呼び声高い「蒲原宿」(かんばらしゅく)、「庄野宿」も間近の配置で見比べできます。
“旅”への憧れは、機械文明の発達とともに成立した近代国家の誕生とともに高まりました。
人々の活動範囲が遠くの地域、海外にまで広がった結果です。近代化、都市化が、人々の他者や自然への関心や憧憬(どうけい)を強くしていったのです。
今週の花材は、田中一村を思わせる色彩と形です。
(vol.16 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=32)
(vol.63 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=89)
(vol.283 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=320)
(vol.312 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=351)
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
花火大会、東北の夏祭り、“夏の別れ”を告げており、“夏惜しむ”です。
八月の 雨の音
山の昼 雷の音
明かるみに うちまじり
雨そそぎ 草は鳴る
遠雷の 八月の
音をきく。 山の昼。
(右上へ)
三木露風
この時季は、大人にとっては“人生の夏休み”でもあります。取り留めの無い事を記します。
慌ただしい日々を送っていると平凡な日々の掛け替えの無さに気付きます。
過ぎゆく歳月は人間(ヒト)の境遇を変えます。過去は、殆(ほと)んどが苦いものです。しかし、若い頃に戻ってやり直すことはできません。
思い通りにいかないのが人生です。それでも思い通りにしようと努力するのも人間です。
“人間は何かをすれば何もしなくても責任を負う”ものです。
(vol.368 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=409)
度々(たびたび)途方に暮れました。そんな時は目の前の小さな、出来る事から取り組んで前に進みました。
私達は世の中の主人公でなく、世間の歯車の一つにしか過ぎません。しかし、平凡な日々の暮らしの中にある喜びや切なさは、その人間にしか味わえない人生です。そこでは己が主人公です。
食堂や居酒屋が櫛比(しっぴ)している街で、独り、仲間、弟子達と語る、これこそが“雑踏のなかの憩い”です。
ここでは一人ひとりが“人生という物語の主人公”です。
夏休み、読む本の一つが「史記」です。
「史記」の登場人物で人気のある人に荊軻(けいか)が居ます。
自由人でありながら、始皇帝に刃(やいば)を向けた男です。始皇帝暗殺を使命として引き受けた潔さに人気の源があります。「傍若無人」という言葉の元になった人と言われています。映画にも取り上げられており、志士として、今も讃(たた)えられています。
著者によれば、事を成し遂げたかどうかではなく、心映えと志ゆえに名声が後世に及んだのです。
彼の名を高めているのは一篇の詩です。
風蕭々として易水寒し (かぜしょうしょうとしてえきすいさむし)
壮士一たび去ってまた還らず (そうしひとたびさってまたかえらず)
国境を流れる易水という大河のほとりで刺客の荊軻を見送る友達が居ます。彼等の前で彼がこの詩を繰り返し詠い、唯一人、巨大な権力に立ち向う決死の覚悟を示した詩です。
陶潜(とうせん・陶淵明)も「荊軻を詠ず」という詩を詠んで彼を讃(たた)えています。
この詩を読む度に、野口英世の19歳での詩を思い出します。
それは、志を立て上京する際、生家の柱に刻んだものです。
志を得ざれば再び此の地を踏まず
まさか、野口英世が荊軻の詩を知っていたとは思えません。只、読む者に迫ってくるモノは同じです。
恒例の慈善美術展、今回の主題は“旅”です。
“旅”への憧れは、洋の東西を問わず、定住が常態となった古人、そして現代を生きる人々にとって憧れです。
旅先のなかに身を委(ゆだ)ねるのが“旅人”、
自分の殻(から)を脱がずに旅先の世界をみているのが“観光客”だそうです。
祖国を愛し、異郷にも優しい眼差しを持って描いたアルベール・マルケと東山魁夷(ひがしやま・かいい)が対比されて展示されています。
東山の乾いた、空気の流れ、マルケの鼠色(ねずみいろ)と称される潤いのある大気、違いが明らかです。
広重の「東海道五十三次」、色鮮やかに展示されています。
傑作の呼び声高い「蒲原宿」(かんばらしゅく)、「庄野宿」も間近の配置で見比べできます。
“旅”への憧れは、機械文明の発達とともに成立した近代国家の誕生とともに高まりました。
人々の活動範囲が遠くの地域、海外にまで広がった結果です。近代化、都市化が、人々の他者や自然への関心や憧憬(どうけい)を強くしていったのです。
今週の花材は、田中一村を思わせる色彩と形です。
(vol.16 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=32)
(vol.63 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=89)
(vol.283 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=320)
(vol.312 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=351)
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■バンクシア〔フーケリアーナ〕 ヤマモガシ科
/ 円筒状ブラシのような個性的で存在感のある
花。1種を除きオーストラリアのみに分布する。乾
燥に強く、ドライフラワーにも適す。
■アマランサス ヒユ科/モコモコした小さな
毛糸玉が繋がったような花姿。紐状に垂れ下が
って咲き、「紐鶏頭」(ヒモケイトウ)の別名を持つ。
赤「ハンギングレッド」、緑「ハンギンググリーン」
■ボンベイケイトウ ヒユ科/花期は6〜9月
で、赤やピンク、オレンジ等の花穂を付ける。ボン
ベイケイトウは花穂が扇状の品種。 他に花穂が
丸い「久留米ケイトウ」 や羽のような「羽毛ケイト
ウ」などもある。
■ドラセナ〔コーディラインレッドエッジ〕
リュウゼツラン科/切花としても非常に長く楽し
める丈夫なグリーン。「レッドエッジ」は細葉で、
濃緑の葉の縁に赤が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3771.jpg
■バンクシア〔フーケリアーナ〕 ヤマモガシ科
/ 円筒状ブラシのような個性的で存在感のある
花。1種を除きオーストラリアのみに分布する。乾
燥に強く、ドライフラワーにも適す。
■アマランサス ヒユ科/モコモコした小さな
毛糸玉が繋がったような花姿。紐状に垂れ下が
って咲き、「紐鶏頭」(ヒモケイトウ)の別名を持つ。
赤「ハンギングレッド」、緑「ハンギンググリーン」
■ボンベイケイトウ ヒユ科/花期は6〜9月
で、赤やピンク、オレンジ等の花穂を付ける。ボン
ベイケイトウは花穂が扇状の品種。 他に花穂が
丸い「久留米ケイトウ」 や羽のような「羽毛ケイト
ウ」などもある。
■ドラセナ〔コーディラインレッドエッジ〕
リュウゼツラン科/切花としても非常に長く楽し
める丈夫なグリーン。「レッドエッジ」は細葉で、
濃緑の葉の縁に赤が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3771.jpg
【秘書室】
■モカラ〔カリプソ〕 ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケントルムの3
種の蘭を交配した人工種。鮮やかな花色が豊富な南国の花。「カリプソ」は
鮮やかなピンク。
■アンスリュウム〔ソナタ〕 サトイモ科/常緑多年草/ろう細工のような
造花と見間違うほど光沢のある花。花弁のように見える団扇状の部分は苞
で、棒状の部分が花序。「ソナタ」は濃いめのピンク色。
■アゲラタム キク科/多年草/熱帯アメリカを中心に30種が分布。
花期は初夏〜秋で、花色は青の他に白やピンク、紫など。 アザミに似た花
姿で「カッコウアザミ」の別名を持つ。
■利休草(リキュウソウ) ビャクブ科/茎の先端が蔓状になるしなやか
で涼しげな葉。 根にアルカロイド系の成分が含まれ、駆除剤などに利用さ
れる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3772.jpg
■モカラ〔カリプソ〕 ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケントルムの3
種の蘭を交配した人工種。鮮やかな花色が豊富な南国の花。「カリプソ」は
鮮やかなピンク。
■アンスリュウム〔ソナタ〕 サトイモ科/常緑多年草/ろう細工のような
造花と見間違うほど光沢のある花。花弁のように見える団扇状の部分は苞
で、棒状の部分が花序。「ソナタ」は濃いめのピンク色。
■アゲラタム キク科/多年草/熱帯アメリカを中心に30種が分布。
花期は初夏〜秋で、花色は青の他に白やピンク、紫など。 アザミに似た花
姿で「カッコウアザミ」の別名を持つ。
■利休草(リキュウソウ) ビャクブ科/茎の先端が蔓状になるしなやか
で涼しげな葉。 根にアルカロイド系の成分が含まれ、駆除剤などに利用さ
れる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3772.jpg