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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.378 − 斃 (たおれる) −
列車の窓を打つ掠雨(りゃくう)、雨滴と雨音が心の裡(うち)まで届きます。
雨に煙(けむ)る家々の灯が飛ぶように去っていきます。泣いているが如く車窓に映っています。列車の速度と時の流れのスピード感は若い頃とは格段に違うと、ぼんやり考えています。
“山出し”と嗤(わら)われ、野暮な振る舞いを矯(ただ)そうとしていた若い頃を思い出します。
一雨ごとに夏が去りゆき、秋が近づきます。
青や白の竜胆(リンドウ)もそのことを知らせてくれます。
8月は喪の月でもあります。
8月15日が巡ってきました。毎年、全国戦没者追悼式が執り行われています。
戦ひにはてし我が子を思ふとき
幾ほどもなき命なりけり
釈 迢空(しゃく・ちょうくう)
戦死によって親と子の死が逆転するという悲劇、この慟哭(どうこく)の挽歌(ばんか)の悲痛な叫びの重さは、戦後を生きてきた己には、到底理解が及びません。
“戦争と革命の20世紀”でした。
我が国も、明治での2度の国家総力戦、その後の第一次大戦と大東亜戦争、近代日本の歩みは戦いの連続です。多くの国民が斃(たお)れました。
明治維新後、欧米列強の挟間(はざま)のなかで、先人達を取り巻く環境は苛酷(かこく)を極めました。
戦争を知らない己でも少しは想いが至ります。
先の戦争では、お盆の15日が戦いの終わった日です。 お盆と終戦(敗戦)の日が同じなのは偶然なのでしょうか。
13日が迎え火、16日は送り火です。旧暦7月15日は十五夜、16日が十六夜(いざよい)の満月です。
晩夏を迎え、月夜の盆踊りは、先祖と今を生きる人々が交わる場でもあります。先人の優しい心根(こころね)が今に伝わる行事です。
今年は暦の関係から、人々の動きは日付よりも曜日が優先されているようです。
時の移ろいです。“歳月は人間(ヒト)の境遇を変える”、一面の真実です。
先人の営(いとな)みから今に想いを馳せてみます。
このところ、日本人の良き気質が崩れてきているのではと、気になります。一流といわれる大企業や老舗(しにせ)の杜撰(ずさん)な仕事振り、プロとしての自負はどこへ捨ててきたのかと問い掛けたくなります。
己の人生と重なる、戦後の復興、東日本大震災、そこでは人々は寡黙に努力し、毅然とした態度で、求められる役割を果たしていました。制服を着た人々の“プロとしての覚悟”もみました。対極にある姿です。
この悲しい姿は、職人であること、その仕事が家族や周囲から尊敬される空気が薄くなってきた時期と軌を一(きをいつ)にしています。
己の親の世代には確かにあった勤勉、誠実な働き振り、彼女・彼等は、自らの仕事に誇りを持って臨んでいるようにみえました。
“失われた二十年”と喧伝(けんでん)されているバブル崩壊の時でもそうでした。
人々は懸命に国や組織の立て直しに努力しました。当時、欧米を含むメディアの論調は、“日本は決断が遅く、徹底した改革が出来ない。我々は日本の轍(てつ)を踏まぬ”と、今からみれば、傲慢(ごうまん)です。
今、我が国のメガバンクは3つに収斂(しゅうれん)され、世界で唯一、長期資金が調達できる体制が出来ています。孜々営々(ししえいえい)と身を粉(こ)にして努力してきた結果です。“失われた歳月”ではなかったのです。今、先進・新興の諸国が、嘗(かつ)て日本が歩んだ道を後追いしています。
“プロを大切にする世情”を取り戻す必要があります。
それには、先(ま)ずプロがプロとしての仕事を国民にみせることです。その結果、世間に、プロとしての職人とその精神に敬意を払う空気が甦(よみがえ)ります。
今週の花材の青、白、そして暗紅色は、晩夏の今、心に涼風を吹き込んでくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
雨に煙(けむ)る家々の灯が飛ぶように去っていきます。泣いているが如く車窓に映っています。列車の速度と時の流れのスピード感は若い頃とは格段に違うと、ぼんやり考えています。
“山出し”と嗤(わら)われ、野暮な振る舞いを矯(ただ)そうとしていた若い頃を思い出します。
一雨ごとに夏が去りゆき、秋が近づきます。
青や白の竜胆(リンドウ)もそのことを知らせてくれます。
8月は喪の月でもあります。
8月15日が巡ってきました。毎年、全国戦没者追悼式が執り行われています。
戦ひにはてし我が子を思ふとき
幾ほどもなき命なりけり
釈 迢空(しゃく・ちょうくう)
戦死によって親と子の死が逆転するという悲劇、この慟哭(どうこく)の挽歌(ばんか)の悲痛な叫びの重さは、戦後を生きてきた己には、到底理解が及びません。
“戦争と革命の20世紀”でした。
我が国も、明治での2度の国家総力戦、その後の第一次大戦と大東亜戦争、近代日本の歩みは戦いの連続です。多くの国民が斃(たお)れました。
明治維新後、欧米列強の挟間(はざま)のなかで、先人達を取り巻く環境は苛酷(かこく)を極めました。
戦争を知らない己でも少しは想いが至ります。
先の戦争では、お盆の15日が戦いの終わった日です。 お盆と終戦(敗戦)の日が同じなのは偶然なのでしょうか。
13日が迎え火、16日は送り火です。旧暦7月15日は十五夜、16日が十六夜(いざよい)の満月です。
晩夏を迎え、月夜の盆踊りは、先祖と今を生きる人々が交わる場でもあります。先人の優しい心根(こころね)が今に伝わる行事です。
今年は暦の関係から、人々の動きは日付よりも曜日が優先されているようです。
時の移ろいです。“歳月は人間(ヒト)の境遇を変える”、一面の真実です。
先人の営(いとな)みから今に想いを馳せてみます。
このところ、日本人の良き気質が崩れてきているのではと、気になります。一流といわれる大企業や老舗(しにせ)の杜撰(ずさん)な仕事振り、プロとしての自負はどこへ捨ててきたのかと問い掛けたくなります。
己の人生と重なる、戦後の復興、東日本大震災、そこでは人々は寡黙に努力し、毅然とした態度で、求められる役割を果たしていました。制服を着た人々の“プロとしての覚悟”もみました。対極にある姿です。
この悲しい姿は、職人であること、その仕事が家族や周囲から尊敬される空気が薄くなってきた時期と軌を一(きをいつ)にしています。
己の親の世代には確かにあった勤勉、誠実な働き振り、彼女・彼等は、自らの仕事に誇りを持って臨んでいるようにみえました。
“失われた二十年”と喧伝(けんでん)されているバブル崩壊の時でもそうでした。
人々は懸命に国や組織の立て直しに努力しました。当時、欧米を含むメディアの論調は、“日本は決断が遅く、徹底した改革が出来ない。我々は日本の轍(てつ)を踏まぬ”と、今からみれば、傲慢(ごうまん)です。
今、我が国のメガバンクは3つに収斂(しゅうれん)され、世界で唯一、長期資金が調達できる体制が出来ています。孜々営々(ししえいえい)と身を粉(こ)にして努力してきた結果です。“失われた歳月”ではなかったのです。今、先進・新興の諸国が、嘗(かつ)て日本が歩んだ道を後追いしています。
“プロを大切にする世情”を取り戻す必要があります。
それには、先(ま)ずプロがプロとしての仕事を国民にみせることです。その結果、世間に、プロとしての職人とその精神に敬意を払う空気が甦(よみがえ)ります。
今週の花材の青、白、そして暗紅色は、晩夏の今、心に涼風を吹き込んでくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■デルフィニュウム〔オーロラブルー〕
キンポウゲ科/多年草/《名前の由来》 蕾の
形がイルカに似ていることから “Dolphin” →
「Delpinum」。ブルーからホワイト系の花色が
豊富で約250種。「オーロラ」シリーズはしっか
りとした茎にたくさん花を付けるジャイアント系。
八重咲でボリュームがあり華やかな品種。
■OHユリ〔ザンベジ〕 ユリ科/球根植物/
ヤマユリやサクユリを基に育成されたオリエン
タルハイブリッド系ユリ。 大輪咲で優雅な花姿
と芳香が魅力。 ユリの中で一番知られる品種
「カサブランカ」も同種。
■ワレモコウ バラ科/多年草/先端の実
のように見える部分は小さな花の集まりで花弁
は無い。日本全土の山野に自生し、7〜10月
頃に咲く。根はタンニンを多く含み、漢方では止
血剤等に用いられる。漢字では「吾亦紅」「吾木
香」とも表記される。
■ドラセナコンシンネ〔レインボー〕
リュウゼツラン科/常緑低木/縦縞模様の細
い葉をもつドラセナ。「レインボー」は赤みが強
い品種で、他に「ホワイボリー」や「トリカラー」
もある。
■スチールグラス ユリ科/名前の通り、ワ
イヤーのように細く長く硬い葉。シャープなライ
ンを描くのに最適なグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3781.jpg
■デルフィニュウム〔オーロラブルー〕
キンポウゲ科/多年草/《名前の由来》 蕾の
形がイルカに似ていることから “Dolphin” →
「Delpinum」。ブルーからホワイト系の花色が
豊富で約250種。「オーロラ」シリーズはしっか
りとした茎にたくさん花を付けるジャイアント系。
八重咲でボリュームがあり華やかな品種。
■OHユリ〔ザンベジ〕 ユリ科/球根植物/
ヤマユリやサクユリを基に育成されたオリエン
タルハイブリッド系ユリ。 大輪咲で優雅な花姿
と芳香が魅力。 ユリの中で一番知られる品種
「カサブランカ」も同種。
■ワレモコウ バラ科/多年草/先端の実
のように見える部分は小さな花の集まりで花弁
は無い。日本全土の山野に自生し、7〜10月
頃に咲く。根はタンニンを多く含み、漢方では止
血剤等に用いられる。漢字では「吾亦紅」「吾木
香」とも表記される。
■ドラセナコンシンネ〔レインボー〕
リュウゼツラン科/常緑低木/縦縞模様の細
い葉をもつドラセナ。「レインボー」は赤みが強
い品種で、他に「ホワイボリー」や「トリカラー」
もある。
■スチールグラス ユリ科/名前の通り、ワ
イヤーのように細く長く硬い葉。シャープなライ
ンを描くのに最適なグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3781.jpg
【秘書室】
■クルクマ〔プーディンプリンセス〕 ショウガ科/球根植物/幾重にも重
なり花弁のように見える苞を持ち、その間に小さな花が咲く。花自体は目立
たず苞を鑑賞する。「プーディンプリンセス」 はミニタイプでほんのりピンクの
優しい花色。
■アンスリュウム〔みどり〕 サトイモ科/常緑多年草/ろう細工の造花と
見間違うような光沢のある花。花弁のように見える団扇状の部分は苞で、棒
状の部分が花序。
■ブバルディア アカネ科/常緑低木/4枚の花弁で十字型に咲く筒状
花。小花が枝先に密集して房状に次々と開花する。
■ヒペリカム オトギリソウ科/半常緑低木/花期は初夏で黄色い花が
咲く。主に花後の実を鑑賞するものとして流通。実色は赤系を中心に、緑や
茶色もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3782.jpg
■クルクマ〔プーディンプリンセス〕 ショウガ科/球根植物/幾重にも重
なり花弁のように見える苞を持ち、その間に小さな花が咲く。花自体は目立
たず苞を鑑賞する。「プーディンプリンセス」 はミニタイプでほんのりピンクの
優しい花色。
■アンスリュウム〔みどり〕 サトイモ科/常緑多年草/ろう細工の造花と
見間違うような光沢のある花。花弁のように見える団扇状の部分は苞で、棒
状の部分が花序。
■ブバルディア アカネ科/常緑低木/4枚の花弁で十字型に咲く筒状
花。小花が枝先に密集して房状に次々と開花する。
■ヒペリカム オトギリソウ科/半常緑低木/花期は初夏で黄色い花が
咲く。主に花後の実を鑑賞するものとして流通。実色は赤系を中心に、緑や
茶色もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3782.jpg