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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.27 − 春、別れの時 −
このコラムの枠は、ホームページに何か「華」が欲しいというプロの担当者の要望に応えて、始まりました。
プロ並み(自称!)という本学職員の腕を信じて、撮影をお願いしてきました。それも今回が最後です。彼は3月31日をもって定年退官していきました。
写真だけでは素っ気ないというプロの助言で、雑文ならと気軽に引き受けました。やり直しなど出来ないからこそ懐かしい、掛替えのない過去を振り返り、思いつくままにここまで書いてきました。自分の歩んできた道に幾分愛しさと哀しみの交ざった曖昧な記憶を漠然と蘇らせながらの作業でもありました。
毎週の二人三脚でのコラム作成の終了は、井伏鱒二の名訳で知られる、千武陵の五言絶句「勧酒」の心境です。
間もなくこういう時が来るのは知っていましたが、いざ実際にその時になると、「愛しい日々」が過去になるのだということを実感します。しかし、彼が大学を出ていくことはあっても彼の心から大学が出ていくことは決してないと確信しています。
彼のこの欄の最後の写真ということで、華やかな生花を、と業者さんにお願いしたのが、これらの作品です。
花の主人公は連翹(れんぎょう)です。連翹といえば、高村光太郎の連翹忌(4月2日)を連想します。
高村光太郎といえば、彼の妻であった智恵子の生家が大学から車で15分位のところにあります。現在は記念館になっており、彼女の紙絵(切り絵)などが展示されています。これらの作品を見ると、当時としては極めて珍しい女性の洋画家だった彼女、その才能が光太郎を含め世間に認められなかった彼女の哀しみや苦しみが伝わってきます。もしかしたら、光太郎は彼女の才能に嫉妬を感じ、彼女はそれとの葛藤もあり、それも精神変調を来した一因になっているのではないかと思う程の何かを、私は彼女の紙絵から感じます。
連翹の黄色は、蝋梅と同様に、青空の青が似合います。
青は、古今東西多くの名称で呼ばれています。それだけ青には様々な色があり、その数だけ呼び名が作られ我々には身近な色です。我が国の様々な青の名称は、「四季の日本」を感じさせます。
絵画では、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のフェルメールブルー(ポスターをカンファレンスルームに飾っていたら、学生に眼差しが気持ち悪いと言われ、落ち込みました)、葛飾北斎の「富嶽三十六景」の紺青が代表的です。
高貴なブルーとしては、バカラグラスにみるバカラブルーや薩摩切子(最近復元に成功したようです)の藍色切子船形鉢(http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/27_kiriko.jpg・※サントリー美術館蔵) にみるブルーに止めを刺すと思いますが、如何ですか?
連翹の黄色は、桃山時代に誕生した黄瀬戸を連想させます。
MOA美術館の黄瀬戸梅花文銅羅鉢(下記リンクからご覧ください)、五島美術館の黄瀬戸立鼓花生、難波や朝比奈といった名茶碗、あるいは加藤唐九郎の黄瀬戸茶碗が代表でしょうか。
連翹と青空という組み合わせは、「華」があるだけに、若くして亡くなった高名な解剖学者である細川宏の遺稿集「病者・花」、「花さまざま」の章の最後に掲載されている連翹の歌からは、読む者に作者の諦念を含んだ心の叫びが聞こえてきます。
一方では、昔私が担当医だった木下弘子さんの歌集「水の音」にある「連翹の黄の色燃ゆる一叢をふり向きみればなおもかがやく」に心惹かれます。
これらの歌は、連翹は人々が色々な想いを馳せる花であることを教えている気がします。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
■「薩摩切子 藍色被船形鉢」は、現在開催中のサントリー美術館(東京・赤坂)「一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子」展にて、実物をご覧いただくことができます。5月17日(日)まで開催中です。
サントリー美術館 http://www.suntory.co.jp/sma/
■「黄瀬戸梅花文銅鑼鉢 美濃」MOA美術館蔵
http://crayon.securesites.net/moaart/owned.php?id=733
MOA美術館 http://crayon.securesites.net/moaart/
プロ並み(自称!)という本学職員の腕を信じて、撮影をお願いしてきました。それも今回が最後です。彼は3月31日をもって定年退官していきました。
写真だけでは素っ気ないというプロの助言で、雑文ならと気軽に引き受けました。やり直しなど出来ないからこそ懐かしい、掛替えのない過去を振り返り、思いつくままにここまで書いてきました。自分の歩んできた道に幾分愛しさと哀しみの交ざった曖昧な記憶を漠然と蘇らせながらの作業でもありました。
毎週の二人三脚でのコラム作成の終了は、井伏鱒二の名訳で知られる、千武陵の五言絶句「勧酒」の心境です。
間もなくこういう時が来るのは知っていましたが、いざ実際にその時になると、「愛しい日々」が過去になるのだということを実感します。しかし、彼が大学を出ていくことはあっても彼の心から大学が出ていくことは決してないと確信しています。
彼のこの欄の最後の写真ということで、華やかな生花を、と業者さんにお願いしたのが、これらの作品です。
花の主人公は連翹(れんぎょう)です。連翹といえば、高村光太郎の連翹忌(4月2日)を連想します。
高村光太郎といえば、彼の妻であった智恵子の生家が大学から車で15分位のところにあります。現在は記念館になっており、彼女の紙絵(切り絵)などが展示されています。これらの作品を見ると、当時としては極めて珍しい女性の洋画家だった彼女、その才能が光太郎を含め世間に認められなかった彼女の哀しみや苦しみが伝わってきます。もしかしたら、光太郎は彼女の才能に嫉妬を感じ、彼女はそれとの葛藤もあり、それも精神変調を来した一因になっているのではないかと思う程の何かを、私は彼女の紙絵から感じます。
連翹の黄色は、蝋梅と同様に、青空の青が似合います。
青は、古今東西多くの名称で呼ばれています。それだけ青には様々な色があり、その数だけ呼び名が作られ我々には身近な色です。我が国の様々な青の名称は、「四季の日本」を感じさせます。
絵画では、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のフェルメールブルー(ポスターをカンファレンスルームに飾っていたら、学生に眼差しが気持ち悪いと言われ、落ち込みました)、葛飾北斎の「富嶽三十六景」の紺青が代表的です。
高貴なブルーとしては、バカラグラスにみるバカラブルーや薩摩切子(最近復元に成功したようです)の藍色切子船形鉢(http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/27_kiriko.jpg・※サントリー美術館蔵) にみるブルーに止めを刺すと思いますが、如何ですか?
連翹の黄色は、桃山時代に誕生した黄瀬戸を連想させます。
MOA美術館の黄瀬戸梅花文銅羅鉢(下記リンクからご覧ください)、五島美術館の黄瀬戸立鼓花生、難波や朝比奈といった名茶碗、あるいは加藤唐九郎の黄瀬戸茶碗が代表でしょうか。
連翹と青空という組み合わせは、「華」があるだけに、若くして亡くなった高名な解剖学者である細川宏の遺稿集「病者・花」、「花さまざま」の章の最後に掲載されている連翹の歌からは、読む者に作者の諦念を含んだ心の叫びが聞こえてきます。
一方では、昔私が担当医だった木下弘子さんの歌集「水の音」にある「連翹の黄の色燃ゆる一叢をふり向きみればなおもかがやく」に心惹かれます。
これらの歌は、連翹は人々が色々な想いを馳せる花であることを教えている気がします。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
■「薩摩切子 藍色被船形鉢」は、現在開催中のサントリー美術館(東京・赤坂)「一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子」展にて、実物をご覧いただくことができます。5月17日(日)まで開催中です。
サントリー美術館 http://www.suntory.co.jp/sma/
■「黄瀬戸梅花文銅鑼鉢 美濃」MOA美術館蔵
http://crayon.securesites.net/moaart/owned.php?id=733
MOA美術館 http://crayon.securesites.net/moaart/
今週の花
【理事長室】
■レンギョウ
モクセイ科 落葉低木
原産:中国
英名:ゴールデンベル
早春の代表的な花木。
耐寒性耐暑性にすぐれとても丈夫で育てやす
いので、生垣や公園などにも利用される。
葉に先立って、黄金色の4花弁の花を枝いっ
ぱいに咲かせる。
■フリージア(ピンクマーベル)
アヤメ科 球根植物
原産:南アフリカ
和名:アサギスイセン
甘い香りが特徴の春の花。
花色や大きさ、一重咲きや八重咲きなど品種
が豊富。ピンクマーベルは花フチがピンクで花
の中心部分が黄色がかった一重咲きの品種。
■グリーントリュフ
ナデシコ科 多年草
原産:ヨーロッパ東南部
一月に使用した手まり草のスプレー咲きタイ
プ。芝のような草にしか見えないが、カーネシ
ョンと同じナデシコ科の花。
■レンギョウ
モクセイ科 落葉低木
原産:中国
英名:ゴールデンベル
早春の代表的な花木。
耐寒性耐暑性にすぐれとても丈夫で育てやす
いので、生垣や公園などにも利用される。
葉に先立って、黄金色の4花弁の花を枝いっ
ぱいに咲かせる。
■フリージア(ピンクマーベル)
アヤメ科 球根植物
原産:南アフリカ
和名:アサギスイセン
甘い香りが特徴の春の花。
花色や大きさ、一重咲きや八重咲きなど品種
が豊富。ピンクマーベルは花フチがピンクで花
の中心部分が黄色がかった一重咲きの品種。
■グリーントリュフ
ナデシコ科 多年草
原産:ヨーロッパ東南部
一月に使用した手まり草のスプレー咲きタイ
プ。芝のような草にしか見えないが、カーネシ
ョンと同じナデシコ科の花。
【秘書室】
■グロリオサ(ミサトレッド)
ユリ科 球根植物
原産:アフリカ 熱帯アジア
名前の由来 栄光や見事なを意味するラテン語のグラリオラスか
ら。メラメラと燃える炎のような花姿が特徴。
ミサトレッドは高知県美里の独自品種で、2002年に世界一の評
価を受けた花。
■ユリ(シーラ)
ユリ科 球根植物
大輪の淡いピンクのユリ。
2002年から開催されている、もっともユリの似合う女性有名人を
表彰するイベント「ミズリリー」でシーラは2006年に選ばれた品
種。(受賞者は女優の木村佳乃さん)
■コデマリ
バラ科 落葉低木
原産:中国
小さな花が密集して半球状の一つの花のように咲く。
枝垂れる姿が優雅で、庭木としても人気。
■レンギョウ
(理事長室コメントをご参照ください)
(写真:伊藤俊一 氏) 感謝の意を捧げます
■グロリオサ(ミサトレッド)
ユリ科 球根植物
原産:アフリカ 熱帯アジア
名前の由来 栄光や見事なを意味するラテン語のグラリオラスか
ら。メラメラと燃える炎のような花姿が特徴。
ミサトレッドは高知県美里の独自品種で、2002年に世界一の評
価を受けた花。
■ユリ(シーラ)
ユリ科 球根植物
大輪の淡いピンクのユリ。
2002年から開催されている、もっともユリの似合う女性有名人を
表彰するイベント「ミズリリー」でシーラは2006年に選ばれた品
種。(受賞者は女優の木村佳乃さん)
■コデマリ
バラ科 落葉低木
原産:中国
小さな花が密集して半球状の一つの花のように咲く。
枝垂れる姿が優雅で、庭木としても人気。
■レンギョウ
(理事長室コメントをご参照ください)
(写真:伊藤俊一 氏) 感謝の意を捧げます