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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2009.10.09

vol.49  − 様々な美 −

この時期、首都高速道路を西に向かうと、赤く染まったビルの谷間に沈む、赤みを増した夕陽を見ることができます。大都会での秋の一情景です。
昔、上京した時に驚いたことの一つは、晩秋から冬にかけての夕陽の大きさと美しさでした。

先日、仕事で和歌山へ、休みをもらって京都へ行ってきました。
様々な形の美に接して心の緊張を少し解すことができました。

和歌山県立近代美術館では、佐伯祐三のコレクションが目を引きました。大都市の壁やドアに美のあることを発見した晩年の作品は誰でも知っていますが、有名画家の模倣かと見紛う初期の作品からの変遷が展示されていました。後刻、ある歯科医のコレクションだと教えて戴き、驚きました。地方都市に行くと、個人で蒐集したコレクションが公開されていますが、これを見付けるのも出張の楽しみの一つです。
「自宅から美術館へ」展という特別展が開催されていました。この美術品のコレクションは、市井の勤め人(後日、新聞で、大学教員をしていたと判明)のコレクションでした。ご本人が自らガイドをして下さり、彼女の美に対する考え方を含めて説明して戴きました。この特別展は、「移りゆく時代精神」として後日、新聞に紹介されていました。(京都新聞9月29日、夕刊)

京都では、MIHO MUSEUMで伊藤若沖展をみることができました。I・Mペイの、景観を計算に入れた美術館は、ル・コルビュジェに通じるものが感じられ、一見の価値があります。
若沖展も、密度の濃い内容でした。私には墨画が印象に残りました。
(※註:伊藤若沖の「沖」の「さんずい」は、正しくは「にすい」となります)

伝道風筆 本阿弥切 巻尾(益田家伝来)という掛け物の特別展示を目当てに、北村美術館へ足を運びました。しかし、書について基本的な知識や技術を持たない自分には、真に「猫に小判」でした。小林秀雄の有名になり過ぎて独り歩きしている感無きにしも非ずの、「美しい花がある。花の美しさというものはない」という名言が聞こえてきそうです。

宿で外を眺めていると、砂利や石、瓦やこけら葺き、そして木々の葉を通して雨が奏でる「昔の雨音」は、道路は舗装され、屋根はトタンやコンクリートに、庭は芝(人工芝)やベランダが主体になってしまった「今の雨音」とは違うのではないかと思い至りました。古い佇まいの家屋や庭で聴く雨音は、下宿の二階の窓に腰掛けて聞いた昔のそれでした。これは、「私」にとっての美の一つです。

美しいものは、一時、人を心優しい人にしてくれます。
残された人生、時間を作って美しいものに接しようと改めて決心させてくれた数日でした。

今週の花、執務室はマユミです。初めてみました。華やかで、しかし儚なげです。自分の人生の黙示録でなければ良いのですが…(尤も“儚なさ”は私には似合わないことは、自分が一番知っています)。
秘書室の花では、蓮台に目が行きました。私は、何故か、これをみると骨董や工芸品としての鼓の胴を連想してしまいます。そう思うのは、川瀬敏郎の作品(?)をみた記憶があるせいかもしれません。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■マユミ
ニシキギ科/《名前の由来》枝が良くしなり、
弓の材料として利用されたことから/5〜6月
頃に花が咲き、黄緑色の実をつける。秋に実
がピンクに色づき、熟すと4つに裂けて朱色の
種が現れる。花はあまり目立たないが、実の
美しさが好まれ庭木や盆栽に利用される。
■トルコギキョウ(アンバーダブルマロン)
リンドウ科/《名前の由来》桔梗に似た紫色と
トルコ人のターバンに似た花型からという一説
/「アンバーダブルマロン」は2007年の新
種。ヨーロピアン調のシックな色合いが特徴。
アンバーシリーズは花びらが硬く、花傷みが
少なくて花持ちが良い。他にアンバーブラウ
ン、アンバーパープルがある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/49_1.jpg
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【秘書室】
■ハイビスカスローゼル
アオイ科/赤や黄色の鮮やかな花を咲かせる観賞用のハイビス
カスとは異なり、アフリカ原産のガクが肥大する食用種。ハイビス
カスティーの原料で、他にジャムやソース、サラダなどにも利用。
花は観賞用のハイビスカスと同様に一日花で、花後に赤暗色の
実をつける。枝自体も実と同色で、秋らしいアレンジなどに適す。
■雪柳(塗雪柳)
バラ科/《名前の由来》花を散らした様子が雪が降ったかのよう
で、茎が柳のようにしなやかに垂れることから/春に小さな白い
花を枝いっぱいに咲かせる。塗雪柳は、紅葉したかのように赤く
染めたもの。
■蓮台(ハスの実)
スイレン科/蓮の花が咲き、枯れて花びらが散ると蓮台になる。
若い実は食用として漢方や薬膳料理にも利用される。ドライフラ
ワーとしても良く利用される。《「蓮」の名前の由来》花托(蓮台)
に小さな穴がたくさんあり、蜂の巣に似ていることから「蜂巣」(ハ
チス)の略で「ハス」。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/49_2.jpg
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