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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2009.10.30

vol.52  − 時雨 (しぐれ) −

先日、今年初めての時雨が、わずかな時間でしたが福島盆地を訪れました。
去年の花だより(vol.12) http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=27を見ると10月29日でした。
「年年歳歳花相似たり、年年歳歳人同じからず」ならぬ「年年歳歳時雨相似たり」と、淡々とした自然の営みを感じます。落ち葉が足元にまとわりつき、木々から葉の落ちる様を見て、風の動きが視えます。
只、時雨も落ち葉も相似たりですが、それでも時がもたらす影響や変化は明らかに見て取れます。

先日、高校卒業以来、初めて母校を訪れました。
小・中・高校と、卒業以来母校を訪れたことはありませんでした。「過去は振り返らない」と決心していたからです。昭和40年(1965年)の卒業以来ですから40年以上の時が経っています。
我々の時代には校舎として使われていた明治22年建築の本館は、当時の場所に創建時のまま存在していました。只、今は国重要文化財に指定されて資料館に変わっていました。下駄を鳴らしていた当時と比べて、校内には女性コーラスが流れており、否応なく時の経過を意識させられました。

高校時代、私は検事に憧れていました。結局、医療の道に進むことにしましたが、出来の悪い生徒でした。
そのことを含め、医学部志望の生徒約100人を前にして、補欠合格でも一人前になれると励まし、そして医療に身を置くことの誇り、不条理な現場の厳しさ、そして協調性の必要性を話してきました。

誰にでも、高校時代に忘れられない出来事がいくつかあります。私にもあります。
私は小学校から無遅刻、無欠席を続けてきました。高校時代、列車が遅れて一度だけ遅刻をしました。最初の授業担当の教師に理由を報告して遅刻扱いにされないようにお願いしました。教師は「君には大事なことだもんな!」と見下すような笑いと共に言われてしまいました。
私は、子供の頃から継続することの大切さを諭されてきました。事実、小学生時代に発熱があっても習い事を休むことを許されず、夜道を歩く度に足からの衝撃が頭に響き、辛かったことを覚えています。帰宅後、熱を計ったら40度でした。

そんな私は、後年、凡庸な人間に出来る唯一の武器は「愚直なる継続」であると、明確に意識するようになりました。
その先生にとっては深い考えもなく何気なく言われたのでしょうが、私にとっては怒りと哀しさに身を切られるような思いをしました。
この一瞬の情景は今でも自分の心の真ん中にあります。

自分では気付かずに、相手に屈辱を与えているかも知れないということはよくあることです。シェークスピアの戯曲にも似たようなセリフがあったように記憶しています。
それでも人間は同じ過ちを犯してしまいます。しかし、自覚していないよりは少しはマシのような気がします。
教える立場になった時、相手の価値観を大切にして教育することの大切さをここから学びました。

舞い落ちる落ち葉、道を彷徨っている枯葉、そこに我々は風を視る洞察力が必要です。
何故なら「ドラマは外側にあるのではなく、人の心のなかにある」(北上次郎)からです。

今週の花材も、コンセプトは先週と同じです。設えをして戴いている方が、心身共に疲れ果てている私を見ての心配りでしょう。
側に居る人との関わりが人生だとすれば、側に居る人への思い遣りを持った知己を私は持っていると思います。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■木瓜(ボケ)バラ科
原産:中国/《名前の由来》中国名の木瓜(も
っけ)から変化して「ボケ」。瓜のような大きな
実をつけることから。/6月頃に5〜6cm大の
実を付け、果実酒や鎮痛剤の材料になる。渡
来当初は薬木として利用され、明治大正にな
ってから観賞されるようになる。丸みをおびた
花が可愛く、庭木や盆栽として人気がある。花
持ちがよく、切花でも次々と蕾まで綺麗に咲
く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/521.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■シマフトイ(縞太藺)
カヤツリグサ科/原産:日本/池や沼などの
湿地帯に群生する多年草。シマフトイは白い
斑が横縞にはいる。縦縞に斑の入るタテシマ
フトイもある。真っ直ぐなラインをいかしたり、折
り曲げて使用できる。
■スプレー菊
キク科/原産:中国/スプレー咲き(枝咲き)
の菊。菊というと仏用と思われがちだが、洋花
との相性が良く可愛い花が多い。品種改良が
盛んで、ビビッド〜パステルカラーまで多品種
あり。ピンク色「ディアンサ」クリーム色「ゼンブ
ラクリーム」
■秋色アジサイ
ユキノシタ科/《名前の由来》秋色アジサイと
いう品種はなく、最盛期を過ぎ、花色がアンテ
ィーク
カラーに変化した西洋アジサイの流通名。西
洋アジサイは日本原産のアジサイに比べ、花
が大きく華やかなものが多い。ドライフラワー
にも適し、リースなどに利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/522.jpg
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