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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2009.11.10

vol.53  − 霜月 −

この時期、大学の構内や街路樹、そして庭の木々に留まっている黄色や赤い葉が最後の盛りを見せてくれています。入れ替わるように門扉前での白、そして露地の淡い桃色を交えた白の山茶花が夜露に濡れて、未だ薄暗い早朝の出勤を見送ってくれます。
通勤路での生垣の周りには花弁が落下し、地面の黒を背景にして華やかなコントラストを見せてくれています。

柿の木もすっかり葉を落として、実がたわわに実り、枝が撓っています。
子供の頃、渋柿と知っていても木に登って叱られたり、折れやすい枝のために転落して怪我をした友人がいました。柿の実は、昔は貴重な甘味の一つでした。今は、収穫もされず、カラスにも見向きもされません。時代が豊かになったせいか、甘さへの憧れがなくなったのでしょうか、あるいは嗜好の変化でしょうか。
子供の頃住んでいた地方には甘柿は殆どなく、柿といえば渋抜きをする柿が普通でした。会津の身不知柿が献上柿として当地では有名です。友人から、甘柿の代表として有名な富有柿が毎年送られてきます。この甘味は渋柿のそれとは全く異なり、毎年心待ちにしています。私はこれを、昔、「トミアリガキ」と呼んで失笑を買っていました。

福島のこの時期の朝が、私は一番好きです。
福島は盆地なので、日の出が、真に炎(かぎろひ)を呈し、峰々の縁取りが輝き、時間の経過と共に西にある吾妻の山々に山頂から裾野に向かって赤紫の帯が広がっていく様は圧巻です。この間、時間にして10〜15分位でしょうか。通勤時での楽しみの一つです。
何時だったか忘れましたが、柿本人麻呂の有名な歌の情景そのままを見たことがあります。大宇陀でなくても見ることの出来るこの季節だけの自然の贈り物です。

先月、日本経済新聞に南会津の記事が同日に複数掲載されており、南会津での勤務当時のことが走馬燈のように駆け巡りました。
今は舗装されたかも知れませんが、当時は砂利道で、悪路の先にある二岐温泉、ここで病院長着任祝いを事務の方々4、5人に催して戴きました。地元の人達も大切にしている秘湯です。江戸の宿場町がそのまま残っているとして、最近注目を浴びている大内宿が近くにあります。土地の人々の暖かさを想い出すと、新聞で紹介されているように「南会津は日本人の心の琴線の共鳴箱」という表現に頷けます。
紅葉の時期を選んで東京から会津西街道(下野街道)を入ったら、桃源郷という言葉が脳裡に浮かぶ筈です。勿論、鉄路も時の刻みを遅くしてくれます。

同じ日の新聞に、重要文化財に登録されているレトロな風情のある宿として、東山温泉(会津若松市)にある老舗旅館が紹介されていました。建物の佇まい、そして磨き抜かれた廊下をみると、安らぎと共にこれを守り続けている旅館の方々の努力に頭が下がります。私も南会津に勤務中、何度か訪問しました。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■雪柳  バラ科/《名前の由来》柳のように
茎がしなやかに垂れ、雪が降ったように花を散
らすことから。/春に小さな白い花を枝いっぱ
いに咲かせる。ピンクの雪柳もある。
■赤芽柳  ヤナギ科/《名前の由来》花芽
が赤いことから。/猫柳と山猫柳の雑種。花
芽の赤い皮が取れると銀白色のもこもこした
花穂があらわれる。
■風船唐綿  ガガイモ科/夏に小さな白い
花を咲かせる。トゲトゲした紙風船のような実
をつける。晩秋になり実が熟すとパカッと割れ
て、綿毛と種があらわれる。実を観賞するもの
として切花で流通する。
■スプレー菊  スプレー咲き(枝咲き)の菊。
先週の秘書室で使用した菊は八重の大輪咲
きで、今回の菊はシングル咲き。赤紫系で発
色の良い色で品種名は「チャーミングベル」。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/531.jpg
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【秘書室】
■葉ボタン  アブラナ科/《名前の由来》幾
重にも重なった葉が牡丹のように美しいことか
ら。/キャベツに似た観賞用の葉。門松やお
正月飾りに利用される。大輪・小輪や紅葉・白
葉、ギザギザの縮緬葉など多品種あり。園芸
種は花の少ない寒い季節に、花壇を華やかに
してくれることで人気。
■カーネーション(ムーンダスト)  ナデシコ科
/母の日のギフトとして長く親しまれている。
「ムーンダスト」は青いカーネーションとして20
04年度グッドデザイン金賞を受賞。今回使用
したのはムーンダストの中で一番淡い色「アク
アブルー」。
■ドラセナ  リュウゼツラン科/アフリカなど
熱帯地域を原産とする植物で種類が豊富。丈
夫で育て易く、観葉植物として多くの品種が流
通する。
■アトム(赤色)
■アトムビューティ  緑色の葉のフチに赤が
入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/532.jpg
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