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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.01.22

vol.63  − 孤城落日 −

万葉集では、雪は月に次いで多い季語(「季語の誕生」宮坂静生)ですが、今の私には雪を花に見立てて歌を楽しむ遊び心はありません。
底の抜けた桶に水を汲むような作業を続けていて、覚悟していたよりも挫折感が大きいと、自身がダメになってしまいそうです。

人生の警句として、「本質的な下劣さという点では、どんな人間も大差ない」(「偽りの名画」アーロン・エルキング)を心の裡に秘めて仕事をしているつもりです。
しかし、不祥事がこうも続いては、「みんな失敗しながら生きている。そのうえに、もっとひどいことが起こる。でも、みんなベストを尽くしているんです」(「立証責任」スコット・トゥロー)、
頭では分かっていても、面識のない人間の不始末に結果責任を問われると、自分の人生の選択を後悔してしまいます。

私の心象は、小泉八雲に「神のような人」と慕われたと伝えられている会津藩士・秋月悌次郎の「行くに輿(こし)なく帰るに家なし」の絶唱、エドワード・ホッパーの「灯台の丘」(ダラス美術館)の荒涼です。

世の中には変わるものも多いですが、変わらないものはもっと多いのです。
私は、誰にでも実践出来ることの一つとして「愚直なる継続」、そして絆の背景に存在する「信頼と敬意」の大切さを弟子や部下に説いてきました。
この歳になって、自分の哲学の無力さを見せつけられるとは思いませんでした。

残り少ない人生、シェークスピアのセリフのように、雑務や気苦労から解放され、死への準備をすべきなのでしょうか、あるいはどうせ悲しい人の世ならば、せめて楽しいふりをしよう、とやり過ごした方がいいのでしょうか。迷います。

今週の花材は、執務室は田中一村の絵のように鮮烈な印象を与えます。
「勁く生きよ」と言われているようです。
秘書室は、きりっとした立ち姿で、この側を通って部屋に入るときにこちらまで背を伸ばしてしまいます。
しかも、可憐さと粋が同居していて、不思議な雰囲気を醸しだしています。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
     ※来週は更新をお休みさせていただきます。

今週の花


【理事長室】
■ラナンキュラス
キンポウゲ科/球根植物/原産:西アジア・ヨーロッパ/
《名前の由来》ラテン語の「蛙」に由来。蛙の生息する湿
地に好んで咲くことから/薄く柔らかい花弁が幾重にもか
さなり、バラのような花姿。パステル系からビビッドなもの
まで花色が豊富。今回のラナンキュラスは大輪咲きで、
かなりボリューム感があり、バラやトルコギキョウをも凌ぐ
華やかさを持つ。
■モンステラ
サトイモ科/多年草/原産:熱帯アメリカ/《名前の由
来》ラテン語の「モンストラム」(異常・怪物の意)に由来/
切れ込みや穴のあいた葉が特徴の蔓性植物。インテリア
グリーンとしても人気。ハワイアンキルトをはじめ、ファブリ
ック等のモチーフに利用される。今回は、今まで5回(vol.
2・16・26・51・58)使用した中で一番大きく、葉の直径
は50cm程。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/63_zoom1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■エピデンドラム
ラン科/非耐寒性常緑多年草/原産:中南米/《名前の由来》ギリシャ語のe
pi(上に)とdendron(木)から。本属が一般的に着生ランであることから/細く
伸びた茎の先に小さな花が密集し、半円形の一つの花のように見える。次々と
花が咲くので、非常に観賞期間が長い。
■ストロベリーキャンドル
マメ科/一年草/原産:ヨーロッパ/別名「紅花詰草」/《名前の由来》苺のよ
うな花穂がろうそくを灯したように見えることから。クローバーの仲間。花や葉は
サラダやお茶に利用される。草丈が長く50〜80cmになるので、切花としても
人気。長く活けていると、光の方向に花茎が曲がっていく。今回は赤と白を混ぜ
て使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/63_zoom2.jpg
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