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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.02.19

vol.66  − 無常 −

鉄路の窓から見る景色は、先日の一面の雪原という純白の世界から一転して、道路や家屋がその姿を露わにし、残雪が田畑や入会地の北面にまだらや筋状にみられます。
列車を降りると、肌をなでる風は春の近いことを知らせてくれます。

庭もそうですが、人工の熱の及ばないところでは、みるみる雪が溶けるということはありません。
そんなことを考えていると、この雪原を縦横に走る直線道路、屹立(きつりつ)している鉄塔、そして散在している近代的家屋を視界から消して視ると、漂泊の紀行者・学者であった菅江真澄や「北越雪譜」を著した鈴木牧之の視た北の風景に、少しは近づけるのかと考えていました。

夜半に新幹線で東京へ向かうと、大宮に入る手前で、左手に近代建造物の機能美をみることが出来ます。それは、漆黒の闇を背景に、高速道路の街路灯が大きな半円を描いて彼方へ延びて消えていく2本の光の帯です。
単純、規則的、そして幾何学的な黄色の並行線です。いつもこの一帯に近づくと目を凝らしています。多分、東大宮バイパスの街路灯ではないかと思いますが…。
 
   船のように年逝く人をこぼしつつ(矢島渚男)
長谷川櫂の「国民的俳句百選」で知った句です。心に刻み込まれて今に至っています。
側に居る人との関わりが人生だとすると、知人がまた一人、船からこぼれ落ちてしまいました。

   朝日  夕盛セ不(ず)
   川流  常ニ宵征ス。
   生は懸水ノ溜(た)ルル猶(ごと)ク
   死ハ波瀾ノ停マル若(ごと)シ。
   当年  意を得ルヲ貴ブ
   何ゾ能く虚名ヲ競ハン。          (孔欣)

   人生百ニ満タ不(ず)
   常ニ千歳ノ憂ヲ懐(いだ)ク。       (無名氏)

   人生古(いにしえ)ヨリ誰カ死無カラン  (文天祥)

いずれも生者必滅を歌っていますが、私のような凡人にはなかなかここまで悟れません。
一時、父や母の、戦後の苦難に満ちた生涯に思いを馳せました。

今週の花材は、執務室は外来種の競演です。
この活け花のように、「華のある所作」が身に付けばと思います。
秘書室は紫が映えます。紫は、色として気品のある華やかさを出すのが最も難しいと感じています。
幸い、今週の花は訪問者に爽やかさを与えてくれています。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植物/原産:西アジア・ヨーロッパ/《名前の由来》ラテン語の蛙(ラナ)に由来。蛙の生息する湿地を好んで咲くことから/薄く柔らかい花弁が幾重にも重なリ、ボリューム感のある花。
■ゲットウ(黄斑ゲットウ)   ショウガ科/常緑多年草/原産:東南アジア/東南アジアやインド南部なのど亜熱帯に群生。初夏に白い花が咲き、秋に赤茶色の実をつける。葉に芳香があり、防虫効果や消臭効果、芳香剤やハーブティなどに利用。防虫効果を利用し沖縄では庭木に多く使われる。「黄斑ゲットウ」は葉に黄色い斑がはいったもの。
■クロトン   トウダイグサ科/常緑低木/和名「変葉木」/和名で変葉木(ヘンヨウボク)と呼ばれるほど、葉色や葉形が多様。日本で200種、世界に1000種といわれる。熱帯地域の植物で、日を浴びるほど綺麗な葉色になる。沖縄では垣根にも利用される。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/66_zoom1.jpg
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【秘書室】
■アルストロメリア(ドルフィン)   ヒガンバナ科、アルストロメリア科/球根植物/原産:南アメリカ/和名「百合水仙」/《名前の由来》スウェーデンの植物学者アルストレメールの名より/南米に50種ほど分布。日本には昭和初期に渡来。一本の茎から花茎を伸ばし5〜8輪の花が咲き、非常に花持ちが良い。花弁に入る独特の斑が特徴で、百合を小さくしたような花姿。白・黄・ピンク・赤・紫などの濃淡や複色など多彩な花色をもつ。
■ミスカンサス   ユリ科/多年草/白いラインの入ったしなやかな細長い葉。耐寒性・耐陰性が強く、ガーデニングなどでも人気の、非常に丈夫な植物。切葉としても非常に長く楽しめる。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/66_zoom2.jpg
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